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ゴーレム

「アクル王国のSランクには色々と痛い目にあわされててね…。悪いけど警戒が必要なんだよ…」

「そうか。所で、いったい何をされたんだ?」


 バルトロ帝国ってこの大陸の最大国家なんだけど、そんな国に何をしたのか気になる所です。


「んー…。アクル王国って野心が凄くてね。帝国に何度も喧嘩を売りにきてるんだ」


 アクル王国はどこまで行ってもアクル王国ですね…。って事は、あーさんも戦争に参加してたのかな?


「まぁ、今の所は追い返せてるんだけど、いつも強い新人が増えてて面倒なんだよな…」

「あの国王は本当にバカですわ。さっさと息子に王位を譲れば宜しいのに」

「ん?その戦争にあーさんが参加してるんじゃないのか?」


 問題なく追い返せてるみたいだから、あーさんに襲われてる訳では無さそうです。じゃあ…どういう事なんでしょう…。


「あ、ごめん。誤解させたかな。問題は追い返す時なんだよ。帝国としては追い討ちかけてアクル王国の兵力を削りたい所なんだけど、そこで毎回邪魔をしてくるのが奴なんだ」

「なるほど。攻撃には参加しないけど仲間の守護はしてるって感じなのか…」

「その時にこちらの被害も出るし、大打撃を与えられないからアクル王国の復活が早い。ホントに邪魔な奴なんだ…」


 なるほどね。確かに厄介な奴だな…。でもSランクって言ってもたった1人なんだから、バルトロ帝国なら対抗できないのかな?


「バルトロ帝国にSランク冒険者はいないのか?」

「いないどころか最多だよ。とは言っても2人だけど」

「それなら、その2人で対抗できそうな気がするが?」

「所属とは言ってもその国で登録したってだけだからね…。それに冒険者ギルドのSランクであって国に属してる訳じゃないし」

「言われてみればそうか…」


 俺はビオス王国に所属してるけど、ビオス王国の命令なんて聞く気は無い…。自分自身が実例だった…。


「まぁ普通は出身地で登録するし知り合いも多くなるから、所属を優先する人は多いけどね。でも帝国所属の1人は冒険者ギルドのグランドマスターだから立場的に自国を贔屓した動きはしないかな」

「ギルドは国を横断した組織だからか」

「そう言う事だね。それと、もう1人のSランクは参戦してるんだけど…向かうと到着する前に逃げられるらしい…」

「そうか。会ったこと無いんだもんな」

「……何か言ったかな?」

「いや…」


 余計な事を言ってしまった…ハルトがこっちを睨んでる…。仕方がないのでこの事に触れるのは止めよう。と思ったのだが…更に王女様が余計な事を言いだした…。


「逃げられまくりでラインハルトは情けないですわ」


 おいおい。こっちを睨むな。これは俺の所為じゃないだろう…。正体を隠したいならこの王女と一緒にいちゃ駄目だと思うぞ…。


「まったく…。俺の姿勢を宣言しておこう。俺がいま話しているのはハルトという冒険者であって、ラインハルトなんて男は知らない」

「ははは…悪いな…」


 ハルトは俺の宣言を聞いて安心してくれたっぽい。バレッタの目的からしても仲良くしてた方が良さそうだし、個人的にも何だか憎めない奴なので向こうの都合に合わせておこうと思います。


「それにしても相手の目撃情報くらいはないのか?」

「うーん…。昔からいるらしいんだけど姿の情報がまちまちなんだよ…。最新の情報だと子供だったってさ…んな訳ないよな…」

「昔ってどれくらいなんだ?」

「数百年単位だね。詳細はわからない」

「そうなると…名前と立場を継承してるとかか?」

「どうかな…。もしそうならギルド規約違反になる。人単位で登録するから、代替わりしたら登録しなおさないと駄目なはずだよ」


 確かにそうなんだけど…。それは継承してない証明にはならないかな…。だって…。


「規約違反なんて気にしてない可能性もあるんじゃないか?」

「あー。確かにその可能性はあるな…」


 俺もそうだし…。気にして無いって言うか必要に迫られてだけど、トールとライトの2人を登録してる。バレたら怒られるんだろうな…。


「とりあえず、そう言う感じでアクル王国のSランクは謎だらけで困った奴なんだ。まぁ、Sランクは大半が謎だらけだけどな…」

「ハルトありがとう。色々な情報助かった」

「え?あ…。ははは……」


 本来は俺への尋問だったはずなんだけど、途中からは完全に勉強会になってました…。

 そして俺からのお礼を聞いたハルトは、いつの間にやら疑う事を忘れて普通に話してしまってた事に気付いて苦笑いを浮かべてます。


「ミレーヌ様。とりあえずライトはアクル王国のSランクでは無いと思います」


 ハルトは俺があーさんでは無さそうだと報告を行った。しかし、報告を聞いたミレーヌは『何言ってるの?』という顔でハルトに返す…。


「わたくしは最初から怪しんでおりませんわ。あなたが勝手に警戒してただけです」

「そうですね。言い出したのは俺っすね。はい。ライトくん無罪放免です。おめでとー」


 王女の相手が疲れるのも分かるけど投げやりにはなるなよ…。まぁいいや。かなり時間もかかってるし行くなら早く行きたい。


「じゃあ、そろそろ奥に行くか?」

「そうだな。お土産を探しに行かないとな」

「待ちくたびれましたわ」

「コクヨク。俺たちは奥に行ってくるからここで待っていてくれ」

「ブルルルルル…」


 コクヨクは俺からのお願いに頷いてくれる。

 通路は人が3人は通れるし、剣が振れるくらいには広い。しかしコクヨクが通れるほどの高さは無かった。


「ライトって明かりの代わりになる魔法とか使えるか?」

「大丈夫だ」

「お、便利だね。じゃあ頼むよ」


 俺は光球を出してふよふよと浮かせた。360度のLEDライトという感じでかなり明るい。


「これ…さっき壁を壊してた奴?大丈夫なのか?」

「見た目は似てるが別物だから大丈夫だ」

「そうか…りょーかい。じゃあ行こうか」


…………。

………。

……。


 俺たちは通路を進んでいた。俺とハルトが先頭を歩き、ミレーヌはその後。ハルトの仲間達は更に後ろで殿(しんがり)を務める。

 何度か曲がる場所はあったが、今のところ通路は一本道だ。そして道なりに進んでいくと金属製の扉に辿り着いた。扉には何やら文字が彫り込まれている。


『関係者以外立ち入り禁止。もし入ったら命の保証は致しかねます』


「ハルト。何だか危険な事が書かれてるぞ」

「やっぱり戻ろうか…」

「駄目です!わたくしを脅す愚か者は成敗なさい」

「はいはい…。わかりましたよミレーヌ様…」


 ギギギギギギィ…。


 しばらく開閉してなかったみたいで扉が錆びついている。そして、重い扉を開けて中へ入ると……そこにはマネキンが立っていた。マネキンはメイド服を着ている。


「なぜこんな所にマネキンが?」

「ライト。これはマネキンって言うのか?」

「たぶん…」


 ハルトと話をしていると、更に不思議な事が起こった。


「入館権限ヲ所持シテイル方ハ提示ヲオ願ィ致シマス」

「ラインハルト!このゴーレム喋りましたわ!」


 ゴーレム?なるほど…。そういう位置付けになるのか…。


「網膜パターン適合者無シ。声紋パターン適合者無シ。侵入者ト判断シマシタ。防衛システムヲ起動シマス」


 こんなゴーレムを作れる奴の防衛システム…。何だかヤバそうな気がします…。


 ズン…ズン…ズン…。

 ガシャン…ガシャン…。


 奥から音が近づいてくる…。

 しばらくすると、闇の中から無数の赤い光が現われた…。それは…赤い眼をしたゴーレムの集団だった…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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