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バヒム・モズリア・ドルツ

予約設定のミスで1度変なものが上がってしまいました。ご覧になられた方、申し訳ありません。

あと、今週も0時に間に合いませんでした…。

今は「土日の夜+α」を基本としていたのですが、4月中旬までは不定期掲載にさせて頂こうと思います。宜しくお願いします。

「はぁ、暇だな…。早く町に行きてぇな」

「この前行ったばっかりじゃねーか。次に俺らの番になるのは随分と先だぜ」


 男に聞いた場所には、岩山をくり抜いた様な洞穴(ほらあな)があって、見張りらしき男が2人立っていた。見張りは何やら雑談をしている。


 どうして会話が聞こえるのかというと、彼らの近くに小さなゲートを開いていて、そこから拾った音がこちらに届いていた。

 他には、風属性魔法とかでも聞けそうだなぁ…。


 何か油断してるし、さっさと倒しちゃいましょう。できる限り殺さない様にしたいと思います。

 と言う事で、僕は雷属性魔法を使った。ただし、いつもみたいには飛ばさないで、自分の手の周りに纏わりつかせる。纏雷(てんらい)という感じかな。


「2人の見張りの背後にゲートを開いて…と…。この使い方は初めてだからどうなるかな…」


 そして僕は、2つのゲートに片手ずつ突っ込んだ…。


 バヂィィィィィィィィッ!


 何をやったのか簡単に言うとスタンガンです。2人の首筋を鷲掴みにして電気を走らせました。


「よし。2人とも気絶したな…」


 そして、更に2人の足元にゲートを開くと…僕はそのゲートに2人を落とした。前にゴブリンロードの所で作られていたゲート落とし穴ですね。

 その落とし穴がどこに繋がっているのかと言うと、待機しているガルト達の所です。ガルトには、送った奴をどんどん縛る様にお願いしてある。


「ガルト。こんな感じでどんどん送る。大丈夫か?」

「あ…あぁ…声だけ聞こえるな…。了解。大丈夫だ」


 大丈夫そうなので僕は落とし穴を閉じた。残しておくと危ないからね…。


「ふぅ…。自分でやっておいて何だけど…これは酷い不意打ちだなぁ…」


 ゲートも不意打ちとか多角的な連続攻撃に応用できそうですね…。今度じっくり考えてみよう。


「さて、それじゃ内部を調べますか」


 僕は洞穴の中に入って行くと、探知魔法を使った。


「脇道の方に…牢屋かな?何人か捉えられてる。まずは山賊を倒しながら牢屋に行ってみよう」


 そして僕は、一番近くにいる山賊の元へと転移した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 バヂィィィィィィィィッ!ドサッ…


 俺は牢屋の前にいた見張りも気絶させて、ゲートへと投げ捨てる。

 山賊を気絶させてはガルトの元へ送るのを繰り返して、僕は牢屋の前まで辿り着いていた。


 牢屋の中を見ると、1人の女性と沢山の子供達が捉えられている。泣き疲れて寝ている子…嗚咽を漏らして泣いている子…。俺は山賊に対する怒りが抑えられなくなって来ていた…。

 落ち着け…この人達を怖がらせる…。落ち着け…。


 牢屋に近づいて行くと、女性が俺に気づいて話しかけてきた。


「あ…あなたは…何者ですか…?」

「冒険者だ。ライトと言う。山賊を討伐しに来たんだが…状況を教えて貰えるか?」

「えっ!私達…助かるんですか?」

「あぁ、必ず助ける」

「うぅ…。良かった…良かった…」


 この状況だ…希望など見いだせなかったのだろう…。


「お前達は一緒に捕まったのか?」

「いえ、違います…。日々増えていて…一番古い子は2週間くらい前になるみたいです…」

「お前は?」

「私は1週間前に街道で襲われて…。もう…おしまいかと思ってました…うっ…うぅ……」

「そう…か…」


 こんな時は何て声を掛ければ良いんだろう…。気の利いた言葉が思いつかない…。俺って情けないな…。

 でも、まだ聞きたい事があるので話を進めなくては…。


「子供達も街道で襲われたのか?」

「ぐす…。いえ…。そういう子も少しはいますが、殆どはドルツで誘拐されてきたみたいです…」


 サハルが言っていたやつだな…。ルルちゃんもこうなる可能性があったのか…。


「分かった。攫われてきた者はここにいるので全員か?」

「多分…そのはずです」

「そうか。では、少しここで待っていてくれ」

「え?何処かに行かれてしまわれるのですか?」


 女性はとても不安な顔をしている…。


「先に山賊を全て倒してくる。いま牢屋から出してしまうと子供達が散り散りになってしまいそうだからな」

「は…はい。わかりました」


 俺は一旦牢屋から離れると、洞穴の奥へと歩き始めた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「てめぇ…どこのどいつだ?」


 奥に行くと、山賊のボスっぽい男と3人の部下がいた。


「別にただの冒険者だ。ところで…後はお前ら4人だけだぞ?」

「ちっ!急に何なんだよ」

「悪い事はそう続かないという事だ」

「ちきしょう!てめぇら!行け!」


 部下が襲い掛かって来ようとしている。

 さてどうしよう…。試してみたい事があったから、ちょっとやってみようかな。


 俺は立っていた所から移動せず、そのまま前蹴りをした。山賊達との距離はまだ離れているので、彼らからすれば謎の行動だろう…。


「ぐぼぉっ!」


 部下の1人が突然後ろへ吹き飛び、腹を押えて悶絶している。

 身体強化無しでやってみたけど、なかなか良い感じだ。


 試してみたのはさっき考えたゲートの応用技で、一瞬だけ自分と相手の前にゲートを開いて、そこを通して蹴りを入れた。

 タイミング間違えて足を切り落とさない様に気を付けないと…。


「な…何をしやがった!?」

「さて、何をしたんだろうな」


 当然ながら教えてあげる必要なんてありません…。

 俺は残りの部下も蹴りで倒すと、山賊頭に対して質問をした。


「なぁ、教えてくれ。誘拐した女性や子供達はどうするつもりだったんだ?」

「言う訳ないだろうが…」

「そうか…」


 俺は山賊頭の首元にゲートを開くと、首を前から鷲掴みにした。


「ぐ…ぐぅ…。この…」


 山賊頭はナイフで俺の手を刺そうとするが、全く通用していなかった。

 漆黒の鎧(ルティーヤー)は全身を包む様な形状をしていて手の部分も守られている。戦隊ヒーローをイメージして貰うと分かりやすいかもしれない…。

 そして、ナイフ如きが通る様な素材ではない。


 そのまま山賊頭の首を掴んで持ち上げると、山賊頭の足は宙に浮いた。


「ぐ…うぐ……」

「どうする?少しは喋る気になったか?」

「わ…分かった…。下ろしてくれ…」


 思ったより早く素直になったな…。俺は山賊頭を床に下ろしてから改めて質問した。


「で?女性と子供達はどうする予定だったんだ?」

「他国に…奴隷として売るんだよ…」


 予想はしてたが…本当にこういう奴はいるんだな…。


「売り先は何処だ?複数あるのか?」

「いや…今のところ1か所だ…」

「なるほど。専属契約か」


 1か所だけなら、既に売られてしまった人も助け出せるかもしれないな。


「売却先は何処だ?」

「…王国だ…」

「ん?良く聞こえなかったぞ」

「アクル王国だ…」


 マジか…。あの国は本当に色々と出て来るな…。


「アクル王国の商人という事か?まさか…国か?」

「知らねぇーよ…」

「やり取りしている相手の名は?」

「ヘルマンって名乗ってた…。本名かどうかは知らねぇがな…」


 ヘルマンか…知らないな…。今度探ってみよう…。


「分かった。ではお前達を拘束してドルツまで連行する。無駄な抵抗は止めておけ」

「あぁ…お前相手に抵抗なんざしねぇよ…」


 俺は山賊頭達を拘束すると、同じ様にゲートでガルトの元へと送った。


「ガルト。山賊は今ので最後だ」

「了解だ。凄い人数だぞ…」

「あと捕まっていた人達がいるので助け出してからそちらに向かう」

「そうか。不安だろうから早く助け出してやれ」

「そうだな。では行ってくる」


 と言う事で牢屋に向かうと、女性と子供達はとても不安そうな顔をしていた。


「どうした?」

「もしかしたらあなたが殺されているかもしれないと思って…気が気じゃありませんでした…」

「そうか。心配かけたな」

「それで…山賊達はどうなったんですか?」

「あぁ、全員捕縛した。これからドルツに向かうので、全員ついて来てくれ」


 俺は牢屋の鍵を掴んで力を込める。鍵はぐにゃりと曲がった後、ぶちんと千切れた…。


「ライトさんは力持ちなんですね…」

「まぁ、それなりにな」


 子供たちは…憧れの目線や恐怖の目線…色々だな…。


「ではドルツに帰るぞ」


 俺は、助けた人達を連れてロンドの元へと戻った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ロンド。待たせて悪かったな。いま戻った」

「いえいえ。お疲れ様でした」

「アジトに居た者は全員送ったが、何人になった?」

「合計で32名になります。外出していたものがいるかもしれませんが、ほぼ壊滅したと言って良い状態だと思います」


 確かに偵察に出てた奴とかがいるかもしれないな…。


「この山賊はどうするのが望ましいと思う?」

「そうですね…。賊は殺しても問題ありません。この人数で移動するのも大変なので…始末してしまうのもアリです…」


 ロンド…。商人なだけあってドライな面があるな…。


「ライト様はどう思われますか?」

「そうだな。法の元に裁かれて、それが周知されるべきだと考える」

「ほぅ…それは何故でしょうか?」

「抑止力の為だ。そもそも法の罰則とは、その法を犯したら『こういう目にあわせるぞ』という脅しだと思っている。『法を犯しても割りに合う』と思われてしまえば、犯罪を犯す者が出て来る」


 人によっては違う解釈なのかもしれないが…。


「なるほど…」

「つまり、こいつらを『犯罪は割りに合わない』と実感させるのに使えればベストだと思う」


 俺も俺で残酷な事を言っているな…。


「分かりました。ではドルツまで連れて行って軍に引き渡しましょう」

「あぁ。ロンドが問題無いのであれば」

「通常であれば何かあった場合の反乱が怖い所ですが、ライト様がいらっしゃいますし大丈夫でしょう。問題ありません」


 それから助けた者達と山賊をぞろぞろと連れて、ドルツへと向かった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ロンド準男爵だ。通門手続きを頼む」

「はっ!承知致しました!」

「あと、ドルツに来る途中で山賊を討伐した。身柄を引き渡したい。誘拐されていた者についても親元への返還を頼む」

「なっ…。山賊を討伐されたのですか…承知しました。全員こちらで引き取らせて頂きます」

「あぁ。厳しい罰則を頼む」

「はっ!」


 無事に引き渡す事ができた。これで少し肩の荷が下りました…。


「ライト様!ありがとうございました!」

「仮面のおじちゃん。ありがとう!」


 おじちゃん…か……。


「あぁ。もう捕まるなよ」


 さてと…。やっとドルツに到着した…。

 ここで2日間の滞在予定だけど、何かが起きそうな気がするな…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「モズリア様…。ロンド商会が町に来た様です」


 モズリアと呼ばれた男…ドルツ領主であるバヒム・モズリア・ドルツ男爵は、裸の女性を複数人侍らせながらワインを傾ける。


「知らんな。そいつらは何か面白い商品を扱っているのか?」

「どうやら絵画や調度品の類を持ってきた様です」

「つまらんな…。ビオス王国の商人も、少しはアクル王国を見習うべきだとは思わんか?」

「左様でございます」


 ドルツ男爵はワインを飲もうとしてグラスが空である事に気付くと、一番近くにいた女性に対して鞭を振るった。


「グラスが空ではないか!さっさと注がんか!!」

「も…申し訳ありません…」


 そして、ワインが注がれたグラスを傾けてから執事に指示を出す。


「もし取引の邪魔になる様なら消しておけ」

「はっ。承知致しました」


 確かに…何かが起きそうではあった…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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[気になる点] 法で裁く? 日本人的というか地球人というか、発想が違和感ありまくり。 [一言] 商人も納得するなや!コントなのか?
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