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ドン引き

文の頭にブランクを入れる様にしてみました…。

2023/03/27 誤記を修正しました。

「ドルツから『逃走』か…。あー…。お前はドルツに住んでいたのか?悪いな名乗りもせずに。俺はライトだ。冒険者をしている」


 相手の名前を呼ぼうとして、自己紹介もしていない事に気が付いた…。


「いえ、こちらこそ…。私はドルツで生まれ育ったサハルと言います。あと、妻のマリーに娘のルルです」


 マリーさんとルルちゃんが会釈をしてくる。それに合わせて、俺も軽く会釈を返した。


「何故、生まれ育ったドルツを出ようと思ったんだ?」

「ドルツはいま…最悪の状態なんです…」


 サハルさんは何だか辛そうな表情をしている…。最悪な状況になった故郷を思い出しているんだろう…。

 これから向かう場所だし、何があったのか気になるな…。


「どう最悪なんだ?」

「色々ありますが…麻薬が横行していたり…誘拐とか日常茶飯事です…。ルルもいつ誘拐されるか…」

「なるほど。しかし、それなら乗合馬車は使えたんじゃないか?」


 3人での徒歩移動なんて危険極まりない…。乗合馬車が使えればかなりマシだったと思うけど…。


「私達は家族で宿屋をやっていました。慎ましいながらも普通に生活できていたのです…」

「そうか。ならば問題無い様に感じるが?」

「ある日、領主様の使いの方が突然いらっしゃったんです…」


 ドルツの領主はバヒム・モズリア・ドルツ男爵だったかな?着いたら商品持って挨拶に行くとかロンドが言ってた…。


「貴族の使いが一介の宿屋に何の用で?」

「宿屋で働く妻の噂を何処かで聞きつけたみたいで…妻を差し出せと…」

「なに?領民が苦しんでいる中で領主が何をやっているんだ」

「領主様の命令でも、私には妻を差し出す事はできませんでした…」

「いや、当然だろう…」

「それでドルツを逃げ出したのですが…領主様の追っ手があって乗合馬車等が使えなかったのです…」


 領主の追っ手という事は兵士か?それが検問の様な真似を?それって…。


「なんだそれは…。犯罪者扱いではないか」


 サハルさんは申し訳なさそうに下を向いている…。

 するとロンドが、理解できていない俺に対して補足してくれた…。


「ライト様…。犯罪者扱い(・・)ではなく…犯罪です…」

「ロンド…。どういう事だ?」

「う…あ…いや…その……。うぅ……」


 しまった…。あまりの内容に覇気が出てしまっていた…。落ち着け俺…。


「ロンド、すまない。教えてもらえるか?」

「は…はい。内容はさておき、領主からの召喚命令を一方的に無視して脱走した状態です。これは逃走罪になります…。領主としては捕縛による強制召喚が可能です…」


 この世界の常識…。この国の法律なのか?納得が…行かないな…。


「内容はさておけないだろう…」

「今回は悪用されているのかもしれませんが、本当に犯罪者を相手とする場合には領主に必要な権限なのです…」

「その悪用が問題ではないのか?」

「残念ながら…まだ悪用とは確定しておりません。もちろん私もその可能性が高いとは思いますが…」

「では、言われるがまま、マリーさんを差し出すしか無かったと言うのか?」

「例えば…同格以上の貴族に保護して貰うとか…」

「無理だろう。そもそも伝手が必要だし、辿り着けない。逃走した後における可能性の1つでしかないな」


 いきなり裏道か…。正式な方法は無いのか…。


「国の仕組みとしてはどうなっているんだ?」

「正式に異議を申し立てる事は可能です…。ただ…時間は掛かりますし、その間はマリーさんが捕らわれる事になります…。更に言えば、根回しされて棄却される可能性が高いです…」


 ある程度分かってはいたが…平民の立場が弱い世界なんだな…。


「そうか…。残念だ。となると、ひとまず逃げるしかない訳か…」

「確かにそうかもしれません…」

「それで…3人で隠れながら移動してきました…。でも…結局は余計に危険な目に合わせる結果に…うぅ…」


 居た堪れないな…。ロンドはドルツ男爵の事を何か知らないのだろうか?


「ロンド。その領主の事を何か知らないのか?」

「正直な所…分かりません…。ドルツは国政が行き届かず独立してしまっていて…」


 ドルツを擁護する発言が多い気がするな…。まさか…。


「ロンド。お前も麻薬とかに関わっているのか?」

「なっ!?ち、違います!違法な物品には手を出しておりません!少なくとも…私の代では…」


 まぁ、祖先のことは俺は追及しない。親の罪で子が苦しむのは違うと思うしね…。ただ…苦しめられた当人とかは別だろうが…。


「ただ…ドルツで貧富の差が激しくなっているのは認識しております…。今回も裕福層向けの商品販売が目的です…」

「そうか…セリア嬢であれば貧する者の事も考えそうだがな…」

「ぐぅ…」

「まぁ、商売だ。犯罪とかでないのなら細かい事は言わん」

「は…はい…」


 俺とロンドさんの関係性が謎になってきたな…。

 でも、とりあえず事情は分かった。じゃあ次は安全を確保しよう。


「サハル。お前達は何処を目指していた?」

「人の出入りが多い町…レイオスかリッケルトまで行ければと思っていました…」

「分かった。俺が送ろう」


 バレッタからは控えてほしいと言われてるけど、これは仕方がないだろう…。


「え?護衛頂けるのですか?そんなご迷惑をお掛けする訳には…」


 …………。そんな事を言っている場合なのか?


「サハル。話が2つある」

「え…?はい…」

「1つは、これは護衛ではない。一瞬で運ぶ方法があるので、それでレイオスに連れて行こうと思う」

「そ…そんな方法が…でもそんなご迷惑を「2つ目だが」


 サハルがビクっとする…。


「遠慮して家族を危険に晒してどうする。いまはまず家族の安全を考えろ。頼れる事があるなら頼れ」

「あ…」


 サハルは妻と娘を見る…。そして唇を噛みしめた。


「わかりました。宜しくお願いします!」

「あぁ。それでいい。ロンド、3人をレイオスに連れて行く。少し待っていて欲しい」

「承知致しました」


 山賊の本隊が危険だけど、数分で戻るつもりなので大丈夫でしょう。ロンドの許可も得たので、俺はレイオスの冒険者ギルドに対してゲートを開いた。


「こ…これは?」

「時空属性の魔法でゲートと言う。この中に入ればレイオスの冒険者ギルドに到着だ」

「時空魔法!?ラ…ライト様は凄い方なのですね…」

「行った先は狭い部屋なので、ゲートを通ったら立ち止まらずに壁まで進んでくれ」

「は、はい。わかりました!」


 サハルはマリーさんとルルちゃんの手を握ってゲートの前に来た。ルルちゃんがちょっと怖がってるかな…。

 俺はルルちゃんの頭を優しく撫でながら小声で話をする。


「初めて見る物で怖いよね。でも大丈夫だよ。ここを通ればパパとママと安全に暮らせる所に行けるから…。勇気を出して」

「うん!お兄ちゃんありがとう!」


 怖がらせたくなくて口調を変えたから一瞬ルルちゃんがびっくりしてたけど、ニカッと笑って答えてくれた。

 俺はルルちゃんの頭をポンポンっと2回撫でるとサハルさんに話しかけた。


「では行こうか。その闇の中に入ってくれ」

「はい!」


 そして、サハルさん達と一緒に、1度レイオスに戻ったのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「こ…ここがもうレイオス…なのですか?」

「あぁ。冒険者ギルドの1室だ。付いて来てくれ」


 俺は部屋を出ると、バレッタの所へと向かった。バレッタはいつもの席で仕事をしている。


「バレッタ。頼みがある」

「え…ライト様?お…お帰りなさいませですわ。えっと…如何いたしましたか?」

「こちらのサハル一家を匿って欲しい」

「匿う…ですか…」


 バレッタが何か考えている…。


「承知致しました。まだロンド商会の護衛依頼は途中で、何かが起きたものとお見受けします。詳しい事はまたお帰りになられてからお聞かせ下さい」

「バレッタ…」

「はい」

「完璧だ」

「え!?あ、ありがとうございますですわ!」


 流石はバレッタ。いま俺が求める最高の行動です。


「サハル。ひとまずバレッタの指示に従っていてくれ。あと、何か困った事があった時もバレッタを頼ってくれ」

「はい!」

「7日前後で戻る予定なので、今後の話はその時にしよう」

「分かりました。何から何までありがとうございます」


 俺は深々とお辞儀をしてくるサハルさんの肩を叩くとバレッタに向かって話をする。


「ロンドを待たせているのでそろそろ戻る。後は任せた」

「承知致しました。いってらっしゃいませ」


 さて…戻って山賊のアジトを聞きださなければ…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ロンド、待たせたな」

「いえ全く。むしろこの短時間でレイオスに戻れるとは…羨ましい限りです」

「バレッタ曰く、1回金貨100枚で請け負って良いらしいぞ」

「いざという時はお願い致します」


 流石はロンド商会の当主。金貨100枚くらいでは動揺しないか…。


「では、山賊からアジトを聞き出そう」

「はい。息のある3名は集めております。ただ…」

「どうした?」

「意識があるのは関節を砕いた者だけになります…。腕を切った者と足を切った者は意識がありません」

「失血が酷かったからな。ドルツまでは持ちそうか?」

「血止めはしておいたので大丈夫かと」


 じゃあ関節を砕いた奴…確かマリーさんに馬乗りになっていた奴か…こいつから聞き出そう。

 俺は関節が砕けた男の前に移動すると、男へと問い掛けた。


「お前達のアジトは何処だ?」

「ふざけんじゃねぇ!言う訳がねぇだろうが!くそぅ…いてぇよ…」

「先に言っておこう。俺はお前達に対して一切手加減をするつもりがない…。言わない場合は相応の苦しみを与える。もう1度聞くぞ?アジトは何処だ?」

「言わねぇって言ってんだろうが!」

「そうか…」


 俺は男の頭を掴んで引きずり、気絶している2人から離れると放り投げた。


「ぐはっ…。てめぇ…この程度で喋ると思ってんのか!?」

「もちろん思っていない。聖域」


 聖域を展開すると、砕かれていた男の肘と膝が回復する。


「え?お?なんだ治してくれたのか?てめぇそれで許されると『バキィッ!』


 俺は男の右手を掴むと、中指と薬指の第2関節を逆に折っていた。


「うぎゃぁ!いてぇ!いてぇよぉ!!」


 そして…折れた指は治療される…。


「はぁ…はぁ…。お前なんてこ『バキバキバキバキッ』ぎゃあああああ!!!」


 男の右足は、甲から指にかけて踏み潰され、地面にめり込んでいる…。

 聖域は即座に治療する空間だ。しかし、怪我をする時のダメージを軽減してくれる訳ではない。治療される前の苦しみは普通に存在する…。何度でも…何度でも…。


「とりあえず、泣こうが喚こうが一定時間繰り返す。次の質問タイムまで回答は受け付けない」

「い…言います!喋ります!」

「駄目だ」


 ボギィィッ!!


「うぎゃぁあああああああ!!!」


…………。

………。

……。


 約30分が経過していた…。


「ヒィッ…ヒィィ…。すいません…すいません…」

「では質問タイムだ。回答しなかったり嘘を付いたら、また適当な時間繰り返す」

「はい!はいっ!!何でも答えます!!」

「質問はさっきと同じだ。お前達のアジトは何処だ?」

「はい!ここから2キロくらい進んだ所から山の中に入って、大きな木の所を右に行って……」


 今度は非常に素直に話してくれた。嘘を付いてる感じもしないな…。これでアジトの場所が分かった。


「また逃げられるかもしれないので、このまま潰そう。アジトには俺が1人で行く。ロンド達は山道で待機していてくれ」


 そう言いながら俺が振り向くと…ロンドとワイバーンの翼の面々はドン引きしていた…。

 やり過ぎ…ましたかね…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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