平常心って難しい
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「見張りについては2名体制で3つに分ける」
当然だが俺とワイバーンの翼の6人で夜の見張りを行う事になった。
「3時間づつで交代だ。今から始めればちょうど夜明け頃になるだろう。起床後は30分で出発する」
えっと…今が20時くらいだから朝5時に全員起きて…5時半に出発か…はやっ…。
日が出てる時間を有効活用するのが大事なんだな…。
これが電灯の無い世界の普通か…。
「ライトは俺とだ。見張りをしながら色々と教える。1組目でやってしまおう」
「あぁ、助かる」
最初の見張り担当は俺とガルトになった。すると、他の面々はすぐに就寝する。プロって感じだ…。
何処でも早く寝れる事も重要そうだな。
そして見張りが始まると、俺は1番気になっていた事を最初に質問した。
「ガルト。教えてくれ。3時間ってどうやって測ってるんだ?」
そうなんだ…。この世界の時間は地球と同じなんだけど…それをどうやって認識しているんだろう?
クラスメイトには腕時計を付けてきてた人もいて、俺達は時計で確認していた。
ちなみに、スマホは通話ができないので電源を切って封印している。
「時間の把握は基本的に太陽と星だな。今の時期だと日が沈んでいるのが11時間だから、あの星があそこら辺まで行けば3時間になる」
おぉ!何だか冒険家っぽい。
「なるほど。ちなみに迷宮だとどうするんだ?」
「それが迷宮の恐ろしい所だ。蝋燭やランタン油の消費量でざっくりとは把握できるが、最終的には感覚頼りになる」
「そうか。身体で覚えるしかないんだな」
迷宮だとストレスで早く感じたりするから…結構難しいんじゃないだろうか…。
「俺も聞いて良いか?」
「あぁ、なんだ?」
「基本的に1人で行動してるんだろう?夜はいつもどうしてるんだ?」
それには表向きの回答と裏の回答がある…ひとまず表向きの回答をしておこう。
「寝ていても敵意は感じとれる。すぐに起きて対応可能だ。後は…聖域を張っておけば安全だな」
「聖域って言うと、アリアを回復してたやつか?」
「そうだ。敵を排除する回復空間を作り出す」
ちなみに裏の回答…つまり真実は、何処からでも宿に帰って宿で寝ている…。帰れない時はバス頼りだ…。
「やはり、俺が教える事はお前の役に立たなそうだな…」
「まぁ、一応教えてくれ」
「そうか?じゃあまずは火だが…」
俺は火の重要性や薪の選び方、気配の探り方や魔物に襲われた場合の対処方法等を教わった。
確かに…俺1人でいる時には役に立たない情報だった…。例えば…。
「ガルト。ダイアウルフに囲まれているので撃退して良いか?」
「囲まれているのか?分からんな…」
襲われる前に検知してしまうから、火による威嚇や襲われた場合の対処とか…俺には関係ない…。
さて、寝てる人を起こさない様にしないと。
俺はいつも通りに転移を繰り返して、刀でダイアウルフを倒して行った。この前大量に売却したばっかりなんだけどな…。
「ガルト。終わったぞ。21頭だった」
「そうか…戦闘してるのも全然分からなかった…」
その後はガルトと話をしてる間に交代の時間となり、そのまま何事もなく朝を迎えた。
俺たちの後には魔物の出現は無かったらしい。
「そろそろ出発するが全員準備は良いか?」
「はい。大丈夫です」
ワイバーンの翼の面々は出発前の打ち合わせをしている。
「あと、明日からも夜の見張りはこの順番で行こうと思う。ライトが魔物を狩り尽くすと、その後が安全だからな…」
「賛成です…」
まぁ俺も経験値貰えた方が嬉しいからwin-winな関係という事で…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから3日目までは同じ様な内容だった。
時々魔物に襲われるくらいで、その他は順調だ。俺も野営の準備に慣れてきたと思う。
そして、今は切り立った山の中を進んでいる。
壁沿いに道が作られている感じなんだが…ちょっと道を外れただけで崖から転落しそうだ…。
「ライト様。ここの山賊は残虐で有名です。もし捕まったら、男の我々は殺される事になるでしょう…。奴等の事は人間だと思わない様にしてください…」
「女なら殺されないのか?」
「死より辛い思いをする事になると思います…」
そんなにか…。犯罪者の集まりだしな…。
「何故そんな山賊が野放しになっているんだ?」
「国も捕らえようと努力しているのですが…地形の問題もあって追うのが困難なのです」
確かにこの切り立った山の中では、慣れていない者は転落の恐れが出てくる…。
「アジトは分かっていないのか?」
「一度判明したのですが…。大軍で向かってみると、もぬけの殻になっていたのです…」
先回りされたという事は…内通者か…。
「なるほど。情報が漏れている可能性があるな」
「その通りです。その為、慎重に調査している最中という所です…」
「了解だ。情報が欲しいな。もし襲ってきたら出来る限り生け捕りにしよう」
「おぉ、それは助かります」
そうして山道を進んでいると、俺の探知魔法に引っかかる者がいた。
山賊が待ち構えている…という訳ではなさそうだ。
これは…既に誰かが襲われている?
「ロンド!誰かが山賊に襲われている!俺は先に行くからお前達は後から来い」
「あ…はい!わかりました!」
山賊が人を刺そうとしている姿が脳裏に写る。まずは止めないと。
「どうか…どうか…妻と娘だけは…」
「ひゃーはっはっはっ!どっかの変態が新しいパパになってくれるから心配すんじゃねーよ!安心してあの世に逝きな!」
「パパー!」
ガシッ…
俺は転移魔法で2人の間に割って入ると、突き出された剣を素手で掴んで止めた。
周りは…俺には理解できない風景が広がっている…。
何だこれは…。
二十歳前後の女性に馬乗りになって服を引き裂いている奴…。
それを見てニヤニヤしてる奴…。
幼女の首筋にナイフを当てて笑ってる奴…。
刺されそうだった男の身体は満身創痍だ…加虐的に切り刻まれたのだろう…。
何なんだ!これはっ!!!!!
身体中の血が逆流してる様な…そんな感覚に襲われる…。
駄目だ…。絶対に駄目だ…。こんな事が許されちゃいけない…。
あぁ…こいつらは確かに…人間じゃない!!
「突然現れやがって!何なんだてめぇは!?」
剣を突き出していた奴が何か喋ってる。うるさいな…。
ボフッ…
俺は…身体強化している状態で、目の前にあった顔面をぶん殴った…んだろう… 。
剣を突き出した男の首から上は……無くなっていた…。
駄目だ…冷静になれ…。情報を引き出さないと…。
「お…おい!てめぇ何しやがる!動くんじゃねぇ!動いたらこのガキをぶっ殺すぞ!」
幼女の首にナイフを押し当てながら男が叫ぶ。
何でこいつらは…俺の平常心を奪うのがこんなに上手いんだ……。
「その腕で、どうやってその子を殺すんだ?」
「は?何言って…う…うわぁあああ!!」
ディメンションブレードによって本人も気付かぬ内に切り落とされた両腕が…地面を転がっていた…。
そして、女性を襲っていた男達がこちらの騒ぎに気付き、武器を構えて近づいてくる。
「それで…俺をどうにかできるつもりか?」
俺は構えもせずに、ツカツカと男達と距離を詰めた。
「てめぇ!なめてんじゃねーぞ!!」
女性に馬乗りになっていた男が、剣を振りかぶって襲い掛かってくる。
舐めてるのはどっちだ…。
他人の人生を舐めているのは…どっちだ!?
俺は振り下ろされた剣を半身になって避けると、相手の膝を正面から踏み抜いて砕く。
更に相手の右腕を掴み、肘を逆に折った。
「うわぁ!いてぇ…いてぇよぉ…」
倒れた男が呻き声を上げているが、俺は無視してもう1人の男…女性が襲われているのを見てニヤニヤしていた男を見る。
「ひ…ひぃ…。無理だぁ…」
ニヤニヤしていた男は振り返ると、逃げ出そうとして走り出した。
ピュン……。ドサッ…
「くそぉ…。逃げねぇと…逃げねぇと……」
膝から下が無くなった男は、匍匐前進で逃げようと藻掻いている。
全然進んでないから放っておいても大丈夫だろう。
両腕を切り落とした男は失血によって気を失っているし、膝を砕かれた男も立てそうにない。
これで全員動きは封じたな。
俺は刺されそうになっていた男性の元へと向かう。
多分、夫婦と娘なのだろう。父親の元には、襲われていた女性と幼女が身を寄せていた。
「た…助けて頂いて…ありがとうございます…。どうか…妻と娘を……」
「あなたっ!」
「パパァ……」
父親の傷が酷い…。トドメを刺されなくても…もうすぐ命は尽きると覚悟が出来ているみたいだ…。
無駄に覚悟させてしまったな…。
「悪いが、家族との幸せは自分で味わってくれ。聖域」
光の空間に包まれると、父親を始め全員の怪我が治療される。
「き…傷が…あんなに身体中を切り刻まれていたのに…。ありがとうございます!」
そして、俺はアイテムボックスからローブを取り出すと奥さんに渡す。引き裂かれた服が…見るに忍びない…。
「申し訳ないが女性物の服を持ち合わせていない。ひとまずこれを羽織っていてくれ」
「あ…ありがとうございます」
「ライト様!」
そして、丁度良い所にロンド達が来た。
「ロンド殿。山賊は4人。3人は生け捕りにしてある」
「生け捕り…確かに生きてはいますな…」
「何か問題があったか?」
「いえ、ライト様は優しいだけではないのだと…気を引き締めただけです」
優しさ?厳しさ?んー…。
「こいつらを甘やかす事は、間接的に、善良な者を傷つける事に参加しているのと同義だと感じた。それだけだ」
「おっしゃる通りです」
日本的感覚で言えばこいつらにも人権があるんだろう…。だが、それを守る為に他の人を危険にさらすのは違う気がする…。
それと…これで終わりじゃないと思う…。
「ロンド殿に聞きたいのだが、山賊とは4人程度で動くものか?」
「いえ、斥候でしょう。たまたまこの家族を発見して、自分達だけで行けると判断したのではないかと」
「やはりそうか。ではこいつらの本隊がいるな」
「その通りです」
こいつらの本隊は潰す。その為に情報が必要だが…その前にこの家族だ。質問してから安全確保をしなくては。
俺は父親に向かって質問をする。
「この山が危険な事は周知の事実だろう。なぜ危険を冒して家族だけで移動を?」
「実は……。我々はドルツから逃走して来たのです…」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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