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護衛依頼出発

2023/06/01 誤字を修正しました。

「ライト様、おはようございます!」


ロンド商会の護衛依頼に参加する為、俺は集合場所である南門へとやって来た。

売却と仕入に関する物品運搬の護衛なんだが…。


「なぜ、ロンド殿がここにいる?」


ロンド商会は小さな商会ではない。

仕入れ等の実働は各番頭が担っていて、商会主が自ら動く事はまず無いだろう。

あぁ、見送りか?別に良いのに…。


「ライト様。今回は私も同行する事に致しました!」


違った…。おいおい、正気か?


「ロンド殿、本気で言っているのか?当然守るが…危険が伴う事に変わりはないぞ?」

「はい。私も現場を見る良い機会です。むしろ、現場を見る上では最も安全な状態と言えるでしょう」


まぁ、別の機会に同行するよりは安全かもしれないが…。


「それに…単純にライト様の活躍が気になりますし…」

「そうか、それなら別に構わないが…」


本人を前にして正直な人だな…。まぁ良いか…。


「ライト様。では、他の冒険者を紹介致します」


ロンドさんがそう言うと、5人の冒険者が出てくる。

この人達はCランクなんだろう。Dランクの俺に挨拶に来させられるとか…業腹なんじゃないだろうか?

すると、冒険者の真ん中に立つ男が挨拶をしてくる。


「久しぶりだな。俺達はCランクパーティ『ワイバーンの翼』。俺はリーダーのガルトだ」


久しぶり?確かに見覚えが…。


「やはり覚えてないか…。俺たちはレイオスとリッケルトを行ったり来たりしている。って言えば分かるか?」

「……。あぁ、ゴブリンロードの時の…」


思い出した。確かアリアさん達と一緒に戦ってた人達だ。


「その通りだ。あなたの事はギルマスに口止めされてたんだが、もう表舞台に出ても大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。ありがとう。バルにも感謝を伝えに行く必要があるな」


俺達が勝手に話し始めたのを見て、ロンドさんはとても驚いている…。


「どうやら…知り合いだった様ですね。しかもリッケルトで?」

「はい。ロンドさんならリッケルトのゴブリンキング騒動は知ってますか?」

「ガルトくん、もちろんだ」

「実はその話、キングじゃなくてロードなんですよ。そして、それを解決したのがこの人なんです」

「なっ!?」


ロンドさんが驚いた表情でこちらを見る。


「ライト様…本当ですか?」

「あぁ、解決と言われると分からんが、ロードを倒したのは事実だな」

「さ…流石ですな…」


ロンドさんはすぐに納得してくれた。何ならロードの首を出そうと思っていたが不要そうだ。


「と言うか、名前はライトと言うんだな。仮面の男だと聞いてもしやと思っていたが、当たっていて良かったよ」

「以前は隠していて悪かったな。それで、これからどうするんだ?」


俺は何も分かっていなかったので、素直にガルトへ聞いてみた。


「あんなに強いのに冒険者としての基礎を知らないというのは本当なんだな…。では今回は俺が指揮を取らせてもらおう」

「是非頼む。普通のやり方を教えてくれ」

「はは…。あんたの役に立つのか微妙だがな…」


という事で、ガルトさんに仕切ってもらう事になった。今回は勉強させてもらいましょう。


「目的地はビオス王国の最南端にある町ドルツ。同じ国だが険しい山脈に阻まれていて、街道の人通りは少ない。山賊が出る可能性が高いので気をつけてくれ」


山賊か…もし襲って来たら初めての対人実戦だな…。


「ロンドさんの希望もあって、ライトは箱馬車に乗ってくれ。俺達ワイバーンの翼は馬で周囲を護衛する」


ロンド商会の部隊は、人が乗る箱馬車と大きな荷馬車の2台編成になっていた。

ワイバーンの翼には悪いけど、依頼主のオーダーだから聞いておきましょう。

そう言えば…最近ジャジャに乗ってないな…。


「片道5日、滞在2日で合計12日の予定になる。ただ、何かあれば変更される可能性もあるから認識しておいてくれ」


正直な話、帰りはゲートを使うのが楽なんだけど…バレッタから出来るだけ控えて欲しいと言われていた。

Dランク護衛の金額でサービス内容がSランクになると、ギルドとしては困ってしまうらしい。

極論として、俺が全てアイテムボックスに詰めてゲートで運べば安全だが、それは既に護衛依頼ではない。ギルドの基準が狂うらしい。

まぁギルドの都合なので、俺の好きにして良いらしいが…ひとまず普通に行こうと思う。


「では移動を開始しよう。ロンドさんとライトは馬車に乗ってくれ」

「あぁ、わかった」


そして全員の準備が整い出発を開始する。という所で…俺は一つの事に気が付いた…。


「ロンド殿…。ロンド商会では人身売買でもやっているのか?」

「ん?ビオス王国では奴隷制度は廃止されているし、人身売買は扱っていないが?」


国が違っていれば普通にあるのか…。それはそれとして…。

俺は箱馬車の上に登って、積んであった荷物を解く。


「ライト様。どうされました?」


ロンドさんには反応せず、キャリーケースを1つ持ってゆっくりと下に降りた。

そして、人差し指を立てた手を口に当てて『しーーっ』としてから、キャリーケースの蓋を開ける…。


ガチャッ…

「あ、あら…?皆さんどうされました?」


中にいる人が…しれっとした顔で発言した…。


「セリア…お前は何をしているんだ…?」

「お父様…私も連れて行って下さいませ!」


よく入ったな…。それにしても、おてんばが過ぎるだろう…。


「駄目だ。これは旅行じゃなくて仕事だ。お前は家で待っていなさい!」

「そんな…。私もライト様の活躍が見たいです…」


うーん…。セリアさんには孤児院を見てて欲しいしな。俺も説得するか…。


俺はセリアに近づくと、セリアの耳元でボソボソと呟いた。

セリアの顔は、悲しんだり喜んだり…百面相だ。


「ライト様…約束ですわよ?」

「あぁ。俺は約束を守る」


お、納得してくれたかな?

俺は孤児院についてセリアにしか任せられず、とても頼りにしている事を伝えた。

あと、クエストが終わった後の都合が良い日に、ゲートを使ってドルツに連れて行き、日帰りで案内をする約束をした。


「分かりました。今回は家で留守番をしています」

「おぉ、セリア。分かってくれたか!」

「はい。お父様。お土産を楽しみにしておりますわ」

「うむうむ。分かった。楽しみに待っていてくれ!」


ふぅ…これでやっと出発だ…。前途多難だな…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ロンド殿。前方からオークが近づいている。このままだと10分程でぶつかるな」


1日目の午前中は、何事も起きずに進んでいた。レイオスの近くなので危険性も低かったのだ。

しかし、離れるに連れて魔物の遭遇率も増えてきた。

先を急ぐのであれば、馬車を逃がす為の時間稼ぎ。安全に行くなら倒すか…。危険な敵なら荷物を諦めるか…犠牲を覚悟するか…。その判断をするのはロンドさんの役目だ。

その為、ロンドさんへオークの遭遇を伝えた。


「オークですか…。保存食の消費を抑える為にも狩っておきましょう」

「わかった」


俺は箱馬車の横を並走するガルトに声を掛ける。


「前方にオーク、10分後にぶつかる。倒す方針だが戦闘はどうする?」

「そんな事が良く分かるな…。オークなら俺達で対処する。ライトは念のため護衛をしててくれ」

「了解だ。オークを解体したら俺に言ってくれ。肉や素材は運ぼう」


まぁ冒険者側の効率の為なら…これくらいは良いよね?


「ライト様。彼らだけで大丈夫そうですか?」

「何か例外的な事が発生しなければ問題ないと思う。いざとなれば助けるし、回復もできるから、ひとまず任せてみよう」

「ライト様がそう言うのであれば。承知しました」


それから、想定通りオーク3体と遭遇して戦闘となり、ワイバーンの翼が対応する。

うん。危なげなく1体ずつ対応している。


「ロンド殿。やはり問題なく対応できている。任せて問題なさそうだ」

「良かったです。それでは我々はゆっくりさせて頂きましょう」


それからしばらくすると、解体を終わらせたガルトが呼びに来た。

そして、オーク3体の素材と肉をアイテムボックスへ回収すると、まぁ…当然そう考えるよね?って内容を聞かれた。


「なぁ…これって…あんたが荷物を全部運べばクエスト終わるんじゃないか?」


その通りなんだけどね…。


「それだと、護衛依頼そのものが無くなるが良いのか?」

「あー、そうなるのか…」

「俺としても、護衛ではなく行商代行って事になるな」

「なるほど。こっちに合わせてくれているんだな。理解した。ありがとう」


ガルトがわきまえている人で助かった。人によっては納得しなさそうな内容だしな…。


「それでは出発する!今日の野営予定地まであと少しだ!この調子なら予定より早く着けるから頑張ってくれ」


そして馬車に乗り込むと、改めて街道を進み出した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



それからしばらく行くと、野営予定地の水場へ無事に到着する事ができた。

池があって、その横で野営するみたいだ。


「ライト。お前に必要なのか分からんが…必要なら野営準備のやり方を教えるがどうする?」

「あぁ、是非頼む」

「そうか。それじゃこっちに来てくれ」


まぁ何事も経験だし、知っておく事は悪い事じゃない。

それから俺は、ガルトからテントの建て方やポイント等を教わった。

何と言うか…旧式の面倒なテントという感じだ…。

現代地球式な簡単に建てられるテントとか販売したら凄く売れるんじゃないだろうか…。


それから今日の晩御飯となった。

本来の護衛中のご飯は、結構質素な物になる事が多いらしい。

ただ、今日はオークの肉があるので、豪勢にステーキだ。


「おぉ、美味そうだな」

「これもライト様が肉を運んでくださったお陰ですね」

「まぁ倒したのはワイバーンの翼の面々だがな」


ではお肉が冷めない内に頂きましょう。


じーーーーーー………


みんなが俺を見ている…。


「どうした?俺に何か?」

「あ…いや…」

「その…何でもないです…」


いやいや…気になるだろう…。なんなんだ?

そんな混乱している俺に、ガルトが答えを教えてくれた…。


「はぁ…。みんなお前がどうやって飯を食うのか気になってるみたいだな…。もしかして素顔を見れるかも?とかな…」

「そう…か……」


そんな事か…。じゃあ、俺も答えを教えてあげましょう。

俺は、目の前に小さいゲートを開いた。そして、切り分けた肉をゲートに入れる。


モグモグモグモグ…。


「美味いな。どうした?食わないのか?」


何をしたのかと言うと、自分の口の中とゲートを繋げたのだ…。

素顔を見れなくて残念そうな顔をしてる奴、能力の無駄使いだと呆れた顔をした奴…。様々な反応だな…。


という事で、別に仮面つけたままでも食べれるけど…。ご飯は普通に食べたいなぁ…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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