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アリアの目標

2023/03/17 誤記を修正しました。

「助けに入るぞ?」

「ありがとう。悪いんだけど、ポイズンスパイダーの群れを横から攻めて貰える?」

「了解だ!」


ポイズンスパイダーの群れはアリアさんの方に向かっている。それを横から攻撃して引き剥がして欲しいみたいだね。


「俺とフリッツとジャイロで突っ込むぞ。リーシアとトールは魔法でサポート。キールは両方を見てリスクの排除。頼んだ!」


僕の担当は魔法でのサポートらしい。

剣で戦ってみたい気持ちもあるけど、黙ってリーダーの言う事を聞くべきだろう。今は相談してる時間なんて無いからね。


そして、タンクのフリッツさんを先頭に、3人はポイズンスパイダーの群れに突っ込んだ。

フリッツさんがシールドバッシュで相手の体制を崩すと、カインとジャイロさんがそれぞれトドメを刺していく。


「あっ!カインの後ろに!」


僕は、カイン達に忍び寄る影を発見した。後ろから襲い掛かろうとしてるみたいだ!


「大丈夫。俺がやる。2人は狙い撃ちできる魔法を詠唱しておいて」


キールさんはそう言うと、忍び寄っていたポイズンスパイダーに矢を放ち、見事に命中させる。

不意の攻撃によって一瞬動きを止めたポイズンスパイダーは、その存在に気付いたジャイロさんによってすぐさま切り裂かれた。

僕はキールさんに言われた通り魔法を準備しなきゃ。


「水よ矢になって…ゴニョゴニョゴニョゴニョ…」


僕は小声で詠唱している風を装って、水の矢を5本ほど出す。本当は100本以上出せるけど、普通は5本くらいらしい。

ふふふ…勉強に余念は無いのだ。


「トール…。ウォーターランスを5本同時か…」


え?どういう事…?

えっと…アローは細かいのを5本くらい出す魔法で、ランスは大きいのを1本出す魔法だよね…?


「トール…。ランスを同時にそんなに出せるなんて凄い魔力量ね…。私はアローにしておくわ…」


リーシアさんのを見ると確かに細いな…。どうやら僕が出したのをランスと間違われたらしい…。


「は…はは……」


僕はただただ苦笑を返した…。


「まぁいいや。トールは右のジャイロ側、リーシアは左のカイン側にいる奴を撃って。3人には前方に集中してもらおう」

「了解!」


そして僕とリーシアさんは、ポイズンスパイダーに向かって魔法を発射した。

僕の魔法は一撃でポイズンスパイダーを貫き、更に奥にいる敵をも貫いていく。

リーシアさんの魔法は狙ったポイズンスパイダーに刺さって、隙が出来た所をカインがトドメを刺していった。


良い感じだ!っと思ったんだけど…ここでカインが余計な事を言い出してしまう…。


「おい!そっちばっかり楽できてズルいぞ!」


横でリーシアさんが小さい声で『あ゛ぁ?』って言うのが聞こえた…。


「ウインドアローじゃ不満ですか…。そうですか…」


リーシアさんは、魔法をウインドアローからウインドランスに変更する…。

詠唱が終わるとリーシアさんの前に風の槍ができて、ポイズンスパイダーに向かって飛んで行った。その威力は十分で、そのまま相手を貫ぬく。

そして…また詠唱を…。


いやいや。それじゃ手数減るし魔力消費も多くなる…。

リーシアさんは怒っていて、売られた喧嘩を買った感じになってるみたいだ…。


「リーシアさん。アローに戻しましょう。コスパが悪くなってます。バカなカインに働かせれば良い事ですよ!」

「トールの言う通りだね。リーシア抑え目で。カイン!今は敵を倒すのに集中して!」


キールさんが皆んなに指示を出してくれる。

リーシアさんはちょっと落ち着いて、ウインドアローに戻してくれました。助かった…。

顔は怒ってるけどね…。


ちなみに、リルは皆んなの前では魔法禁止にしてるので、今は端っこの方でクモをカジカジしてます…。


「行けそうだから、このまま殲滅に入る!防御に専念しててくれ!」

「わかった。そうさせてもらうわ」


アリアさん達には防御に専念してもらい、僕達は戦闘を続けます。

しばらくすると、僕達6人でポイズンスパイダーの群を全滅させていました。


「よし、倒しきったな。フリッツ。怪我の程度は?」

「かすり傷程度だな。問題無い」


タンクが一番怪我を負うので、真っ先に確認したかったみたいですね。

そして、戦闘が終わったと判断したリーシアさんはカインの下へと向かいます…。

僕は近づかないておこう…。声はギリギリ聞こえるけど…。


「カイン。私の魔法がトールより弱いせいで、あなたに苦労させちゃったみたい。悪かったわね」


怒りってそう簡単には収まりませんよね…。


「え?いや…違うんだ…。リーシアに文句があった訳じゃなくて…ジャイロがズルいなぁと…」

「そう。ジャイロに巻き込まれて私も非難されたって訳ね」


カインがジャイロさんに責任を押し付けようとしたけど、リーシアさんは『結局、お前が私を傷つけたんだろうが?』という目でカインを見ています…。


「おいおい。2人とも分かってないな…。実は1番辛い思いをしたのは俺だと思うぞ」

「ジャイロ、どう言う事だ?」

「トールの魔法がもし俺に当たったらどうしようって…凄く怖かった…」

「「なるほど…」」


おぉぅ…すいません…。当たったら死んでしまう弾幕の中で戦闘してた感じなのか…。

ジャイロさん…。信じてくれてありがとう…。


そうこうしてるとアリアさんが近づいてきた。


「君達、ありがとう。助かったわ。私はCランクのアリア。そちらは?」

「俺たちはDランクパーティの宵の明光プラスだ」


プラスって…。気持ちは嬉しいけどね…。


「随分と余裕そうだと思ったら、Dランクだったのね。ふふふ…。CランクとDランクがたまたま通りかかるなんて、あなた達も結構ラッキーね」


アリアさんは新人冒険者の人に話しかける。

新人冒険者は3人組で、助けを求めにきた人以外は男性だった。


「本当ですね…。皆さんのおかげで命が助かりました…。ありがとうございました!」

「あの…何か私達にお礼できる事は無いでしょうか?お金はあまり無いですけど…」


んー。困った時はお互い様なんじゃないかな?

そんな新人さん達に、アリアさんが最初に回答をする。


「私は別に良いわ。気にしないで」


お…。アリアさんも僕と同じ考えみたいですね。


「あー、俺達もポイズンスパイダーの素材を貰えればそれで良い。気持ち的に感謝して貰えてるみたいだしな」

「はい。それはもちろんです。ポイズンスパイダーは、ほぼ宵の明光プラスさん達が倒したんですし…」


おぉ、ありがたいね。これでクエストもクリアです!


「その通りね。ポイズンスパイダーを倒したのは宵の明光プラス達だし、私も素材は遠慮しておくわ」

「え?アリアさん。人助けをしたんですから、何か報酬があるべきだと思います」


アリアさんは僕を見てキョトンとした表情を見せる。


「あなた…会った事があったかしら?」

「え?どうしてですか?」

「何だか、呼ばれ方が自然と言うか…。以前から私の事を知ってる人が呼んでる感じがしたから…」


そんなに会った事がある訳じゃないけど…確かに初対面にしては気安すぎたかな…。


「えっと、先日のゴブリンキング関係の方ですよね?その時にお名前を聞いていたからかもしれないです…」

「あ…そうなのね。報酬があるべき…うーん…」


何か理由があるのかな?アリアさんは話す内容を考えてるみたいだ。


「いま私ね?憧れている人がいるの」

「え?あ…そうなんですね…」


いったい何の話だろう…。


「その人は、私がピンチの時に2回も助けてくれた人なんだけど…でも、何も見返りを求めない人だったの…」


ほ…ほぅ…そうですか…。


「その経験もあって今回助けに入っちゃったって所はあるかな…。でね、これで報酬を貰うのは何だか違う気がするのよ…」

「そう…ですか?」

「そうね。私の夢を応援すると思って、今回は無償にさせて貰えないかな?」

「分かりました…。そういう事でしたら…」


うーん。予期せぬ所でアリアさんの人生に影響を与えてしまったかもしれない…。


「本当は仮面とか付けてみたい所なんだけど…。それはまだちょっと恥ずかしいのよね…」


それは絶対に止めた方が良いと思いますよ…。

そして、カインがまた余計な発言をする…。こいつ…。


「あ、もしかしてゴブリンキングの時に助けてくれた人ですか?身代わりになってくれて逃げれたんですよね?」

「知ってるのね。その通りよ。ふふふ…何だか恥ずかしいわね…」

「あれ?アリアさん、恋とかしちゃってる感じですか?」


カインの不躾な発言でアリアさんの顔は真っ赤になる。

カイン…何を言ってるんだよ…。


「なっ!何を言ってるのよ!そういうのじゃなくて…そういうのじゃなくて…。憧れみたいなものなのよ…」


ほらね…。何か告白もしてないのに振られた気分ですよ…。


「ふ~ん…。そうですか。ひとまず了解です。それじゃあそろそろ素材集めて帰りますか!」

「そうね。私も今日の所は帰るわ。解体手伝うわね」

「ありがとうございます!」


それから僕達はポイズンスパイダーを解体して、リッケルトの町に帰りました。


回収したのは魔石、牙、毒腺、糸って感じで、毒腺と糸はカイン達が貰って僕は魔石と討伐証明部位の牙を貰います。

あと、魔石は新人くん達にも分けました。迷宮に行ったのに報酬無しっていうのは辛いもんね…。


…………。

………。

……。


「やっと着いた~!今日は色々と初めてな事があって楽しかったよ」


僕達はリッケルトの町に辿り着きました。アリアさんと新人くん達も一緒です。


「俺達もあんな群と戦う事になるとは思ってなかったからな。無事に助けられてよかった」

「皆さん、本当に助かりました。魔石まで頂いてしまって…」

「あぁ。次からはもっと気を付けろよ?」

「はい!それではお先に失礼します!」


そして新人君たちは僕達に挨拶をすると、ギルドの方に向かって消えて行きました。


「トール。分かってるか?」

「ん?何が?」

「彼らEランクだぞ。トールって(はた)から見ると彼ら以下の扱いなんだからな?」

「え…マジか…」


これは…本格的にEランクかDランクまではランク上げようかな…。


「じゃあ僕は武器屋に寄るから今日はここで!」

「あぁ、わかった。今日は楽しかったよ。またな」

「こちらこそ。自分でもちょっと進めてランク上げておくね」

「はははは。期待しないで待ってるよ」


ぬぅ…信用が無い…。

そして、そろそろ行こうかなと思ったら、雰囲気を感じ取ってアリアさんが話し掛けてきました。


「トールくん。せっかく顔見知りになれたから、これからは見かけたら声掛けてちょうだい」

「アリアさん、ありがとうございます!」


と言う事で、アリアさんとはトールとしても顔見知りになれました。


「それじゃまた!お疲れ様でした!」

「お疲れ!またな!」


…………。

………。

……。


「お…親父さん…。大丈夫ですか?」


武器屋に着くと、新しい刀は出来上がった所でした…。

親父さんにかなりの疲労の色が見えます…。


「芯を柔らかくして折れづらくした…。あと焼き入れの回数を増やして刃を堅くしてみた…。良くなったはずだ…」

「えっと…了解です。また、この刀の使い心地を伝えにきますね」

「あぁ、宜しく頼む…」


親父さんヘロヘロだ…。


「あ、あと今日はロングソードも売ってください」

「なんだ、剣も使い始めたのか?」

「はい。初めてみたらなかなか面白くて…。刀も剣も両方覚えて行こうかなと」

「そうか。まぁ買ってくれるなら俺はありがたい」


そして、僕はアンサラーに似たサイズの剣を選んだ。


「これにします。お幾らですか?」

「値段聞いてから決めろよ…。それは金貨10枚だ」

「はい。金貨ここに置いておきますね。今日はゆっくり寝て下さい…」

「あぁ…そうするわ…」


僕はロングソードを腰にさげて、刀とショートソードをこっそりとアイテムボックスに仕舞った。

これで、次は思う存分に剣を試せるね。


僕は冒険者登録上では魔法使いって事にしてるけど、人前で使う時に呪文が面倒なんだよね…。いっそのこと剣士にしようかなぁ…。

それにしても…アリアさんに憧れられるなんて…照れるなぁ…。こういう好意を向けられるのは初めてだ…。

そんな事を思いながら、僕は宿へと帰って行った。


心持ち、スキップとかしてたかもしれません…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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