ランクアップ
2023/02/26 バレッタさんとギルマスのクエスト処理のやりとりが分かり辛かったので、表現を修正しました。早々にすいません…。
「そ…そうか……。では、まずは戦闘試験かな?」
口癖なんだろうか…何がヤバいんだか良くわからないが気にしないでおく事にしよう…。
受付嬢の選択を誤ったかなぁ…。
「はい。先ほどの冒険者登録申請の受理をもってGランクとなりますので、通常であれば先ずは戦闘試験となります。ただ…」
そう言って、バレッタがニコルに目を向けると…。
ブンブンブンブンブンブンブンブンッ!
ニコルは物凄い勢いで首を振っていた…。
「……。試験官が試験を拒否しておりますので、戦闘試験は不要と判断させて頂きます。これで、まずFランクとなります」
ん?戦闘試験はGランク同士の戦闘ではないのかな?もしかして支部によってやり方が違うのかもしれないね。
「それでは次はEランクへ向けて…となります。ライト様はランクアップの基本的な基準などはご存知でしょうか?」
「いや、知らないな」
「失礼致しました。では説明させて頂きます。まず、ランクアップの基準としましては、定量的なものと定性的なものがございます」
「そんなに明確なルールがあったんだな」
「あくまでも『基本的』であって、応用的な例外はございますが…」
基準を絶対とした場合、何かしらの不正や抜け道によって体裁だけ整えられても認めざるを得なくなるからな…。そういうのに対する予防的な定義なんだろう。
「なるほど。続けてくれ」
「はい。まずは定量的なものですが、これはクエストの達成状況になります」
「達成回数とかか?」
「はい、それが1つ。同ランクで1ポイント、上位ランクで5ポイントとして、100ポイントを目指して頂く事になります」
「なるほど。自分のランクよりも上位のクエストにチャレンジした場合は、その分評価されるのだな」
「その通りです」
上のランクにチャレンジする事はかなり評価されるみたいだ。上位ランク冒険者を増やしたいギルドの思惑が見える。
「そして、もう1つは達成率になります。クエストの成功と失敗の比率で、成功が70%を超えている事が条件となります」
「大半が失敗していても、長い期間やっていればポイントは溜まってしまう。それは駄目だという事だな」
「ご認識の通りです」
まぁそんなに失敗する事は無いだろう。達成率はそんなに気にしなくて良いかな。早くランクを上げる為に上位クエストを受けた方が良さそうだ。
「通常であれば、達成率を維持する為に同ランクのクエストが中心になるのですが…ライト様に関しましては上位クエストを中心に進めた方が良いと考えております」
「あぁ。俺もその方が有難い」
どうやら同じ様に考えてくれててたみたいだ。助かる。
「続いて、定性的な条件になります」
「あぁ、それは何だ?」
「ランクによって、必要な経験や承認があります。例えば、Cランクに上がるためには護衛経験が必要という感じです」
「魔物を倒すだけでは駄目なのだな」
「はい。冒険者は『何でも屋』です。上位冒険者にできない仕事がある事を良しとしません」
確かに傭兵ギルドとかって訳じゃないからな。冒険者ギルドは単純な戦闘集団じゃないって事か。
「理解した。1番ネックになりそうなものは何だ?」
「Sランクですね。ギルド本部と2つ以上の支部による推薦が必要です」
うわ…マジか…。ではレイオスだけでは完結しないって事かぁ…。
「なるほど。1箇所に篭っていては、他の支部を納得させる事ができないという訳だな」
「その通りです。1つはレイオスだとして、他にも顔を売っておく必要があります」
「ふむ…中々に面倒だな」
「これは私の方で意識してプランニングしたいと思います」
「あぁ、任せた」
どこの町が評価を受けやすいとか、色々とギルド内の事情も関係しそうなので、バレッタに任せる事にしよう。
「定性的な条件について話しましたが、これはCランクからになります。Eランクになる為には必要ありませんので、今はクエスト達成を中心に考えましょう」
「そうだな。ではどうすれば良いかな?」
「お持ちの魔物素材を確認させて頂けないでしょうか?」
おや。どのクエストを受けようとか、そういう話になると思ったのだが…。
「どういうことだ?」
「ライト様のアイテムボックスに、既にクエスト達成となる余剰な素材が無いかと思いまして」
なるほど。これから新たに受けるのではなく、既に達成済みのクエストが無いか確認するのか。
「そう言う事か。大丈夫だ」
「ありがとうございます。それでは、ダイアウルフの皮や牙はありますでしょうか?」
「あるな。ただ、解体はしていない」
「承知致しました。手数料は発生してしまいますが、解体はギルドにて実施したいと思いますが如何でしょうか?」
「ああ、それで良い」
「クエスト達成に必要な部位は納品して頂き、クエスト達成報酬に替えさせて頂きます。その他のクエストに関係ない部位に関しましては、冒険者ギルドにて買い取らせて頂きたいと思いますが宜しいでしょうか?」
「他の事に使う予定はない。それで頼む」
「承知致しました」
アイテムボックスに溜まっているものが現金化できそうだ。助かるな。
「ちなみに数はお幾つでしょうか?」
「ん?ちょっと待て」
俺はアイテムボックスの中にあるダイアウルフの数を確認する。成長したアイテムボックスは検索の該当数を把握する事ができた。
「ダイアウルフは1254体だな」
「え?」
「どうした?ダイアウルフの数は1254体だが」
「なんてヤバ…あ、凄い数ですね…。少々お待ちを…」
そして、バレッタは何やら数え始めた。
「ダイアウルフは10体で1クエスト…。今残ってるのはククル商会から6回分…ロンド商会から3回分…ルック商会から4回分………」
こいつ…マジか…。
「ライト様…申し訳ありません…。現在クエストで消費できるのは130体分まででした…」
「他のクエストもあるだろうし構わん。どうせ使わないので一緒に買い取って貰っても良いか?」
「はい。大丈夫です。ギルドとしては助かります」
そしてバレッタは、横で停止しているニコルに対して指示を出した。
「ニコルさん。ギルド中にある時間停止機能付きマジックバックをあるだけ掻き集めてくださいませ」
「わ、わかった」
そして、ニコルはすぐに部屋を出て行った。
クエストはまだまだ有るだろうから、ダイアウルフはどうでも良いんだが…俺はもっと気になる事があった。
「1つ聞いてもいいか?まさか、全ての依頼の状況が頭に入っているのか?」
「はい。レイオス支部の物だけですが…」
「それは凄いな…」
「私が目指すギルド職員像においては、必須事項なのですわ…」
バレッタはちょっと照れている様子だ。
初めは心配だったが、これは当たりかもしれない。
「そ…それでは次に、グレイトボアの牙はお持ちでしょうか?」
「これも解体はしていないがあるぞ」
「こちらも数は200体以上でしょうか?」
「あぁ。その通りだ」
バレッタはうんうんと頷いている。
「ライト様…どんどん行きますね…」
…………。
………。
……。
「EランクとDランクのクエスト対象確認、ありがとうございました。実物は後ほど解体所で受け取らせてください」
「わかった…」
正直疲れた…。EランクとDランクの素材納品クエストっていっぱい有るんだな…。
「では確認させて頂いた結果ですが、まずEランクになるための上位クエストは十分に達成されておりました」
とりあえずEランクにはなれるみたいだ。
「むしろ余剰が大量にありますので、各1ポイントではありますが、Dランクに向けたポイントにも換算させて頂きます」
「効率的だな。了解だ」
「更に、Dランクになるための上位クエストも十分に達成されておりました」
「つまりはDランクまでは確定という事だな」
「はい。登録日でのDランク昇格は最短記録になります。おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう」
「余剰に関しましては、同様にCランクに向けたポイントに換算させて頂きます」
「あぁ、頼む」
「続いてCランクですが…。ここからかなり対象が少なくなります。カルキノス、ユニコーン、ブラッディベア、エント。この中でお持ちの物はございますか?」
知らない名前が多いな…
「ブラッディベアだけだな。ただ、20体ほどだ」
「じゅ…十分です。と言いますか…クエスト対象は1体だけになります…」
「そうなのか。まぁ仕方がないな」
「生息地が限定的な魔物が多いですから、ライト様がお会いする事が少なかったのでしょう」
俺が持っているのは、奈落の底の一部と魔物の森で狩った物が大半だから…確かに傾向が出てるな。
「まさか初日から関係するとは思っていなかったのですが…Cランクには定性的条件の護衛経験が必要となります。そこも含めてプランを考えさせて頂きます」
そう言うと、バレッタは30秒ほど考えてからプランを発表した。
「1番直近の護衛依頼は、10日後にあるCランククエストになります。ただ…」
「何かあるのか?」
「護衛依頼への参加は依頼主の合意が必要となります。ライト様の実力は十分ですが、対外的にはDランク冒険者ですので…参加を渋られる可能性があります」
「なるほどな。どうする?」
「同依頼者からの素材納入クエストが出ておりますので、こちらを先にやって実力を示しましょう」
なるほどね。そちらで実力を示しておけば、護衛参加を拒否される可能性が低くなるわけか。
「そして、護衛までの間にカルキノスの納入クエストとオルトロスの討伐クエストをやりましょう。これで、護衛から帰った際にCランクとなります」
「問題ない。完璧なプランニングだな」
「あ、ありがとうございます!」
俺に褒められて嬉しそうだ。
「あ、ギルドマスターにご相談がありますわ」
「なんだい?」
「今回納入された物品は大量になります。普通に処理してしまいますと、クエストが枯渇して混乱をきたしますので、少しづつ混ぜ込んで行きたいと思いますわ」
「んー。今あるクエストで達成手続きをしないという事ですよね?実際に達成してないなら達成ポイントは違う様に感じますが…どう思います?」
「勘違いなさらないで下さい。それなら混乱させるだけです」
「おいおい…」
「納入に問題がある訳ではありませんので、混乱する状態だというのが土台です。その上で、できる限り混乱させない為の歩み寄りとしての提案なだけですわ」
「ははは…。恐ろしい人だな…。まぁ分かってますよ。だからニコルに時間停止のマジックバックを集めさせているんでしょう?」
「その通りです。分かっていながらお人が悪いですわね」
現時点で実在するクエストだからクエスト達成扱いにするけど、実際は時間をかけて処理していくと…。その為に素材を長期保存するため、時間停止マジックバックが必要という話みたいだ。
こんな短時間で色々と考えているんだな…。そしてギルドマスターに対してもしっかりと言える…。確実に当たりだな。
「ライトさん、どうですか?時々言動はおかしいですけど、有能でしょう?」
「あぁ。想像以上だな」
不安に思っていたのが見抜かれてたか…。正直見くびってました…。すいません…。
そして、マジックバックを集めていたニコルが帰って来たのだが…そこで問題がおきた。
マジックバックの格納量と納入量を比較してみたら…格納量が足りないのだ。時間停止はレアだしね…。
「見込みが甘かったですわ…。申し訳ありません…」
ここまで話した内容を再検討するのも面倒だしな…。ここは手助けしようかな。
「あー。時間停止のマジックバックはいくつか持っている。貸そうか?」
「え?宜しいのですか?」
「正直、アイテムボックスがあるので全く使ってないからな。全然問題ない」
「あ、ありがとうございます!」
そして、俺は奈落の城で回収してきたマジックバックを取り出して、バレッタに渡した。
「大容量の時間停止マジックバックをこんなに…これだけでどれだけの財産になるか…。これレンタル料金とか凄い事に…」
「まぁその辺は気にするな。今回はこちらに原因があるからな」
では、解体場に行って納入してから、今日の所は帰ろう。と思ったら、バレッタに呼び止められた。
「ライト様。本日の報酬ですが、クエスト達成と各素材の売却で…金貨5409枚と銀貨50枚になります」
「ん?」
「あ!解体費用として金貨50枚を引かせて頂いております!」
いや…疑問に思ったのはそういう事じゃなくて…。5億円以上ですか?うわぁ…。
「あぁ、わかった。口座に入れておいてくれ」
「承知致しました」
あ、お金で思い出した。そう言えば忘れてたな…。
「ニコル。そう言えば、剣を壊して悪かったな。これで買い直してくれ」
俺は金貨を10枚ほど出しながら言った。
「い…いえ!記念に取っておきます!むしろ宝物です!家宝にします!!」
俺に向けるニコルの目が…少女漫画みたいだった…。
報酬金額ですが、1体何千円だろうとかクエスト分は色が着いて…とか考えて積み上げてみたら、こうなりました…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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