閑話② 受付嬢の夢
※この話はバレッタ視点になります。
はぁ…。今日も1日が始まりました…。
ここはビオス王国で1位2位を争う最大規模の冒険者ギルド支部、レイオス支部です。私はここで受付嬢をしています。
私って、なんで冒険者ギルドに勤めたかったのかしら…。そんな事はわかってます。忘れた事なんてありません…。でも現実は目の前にありました。
「バレッタちゃん。大通りに美味しい店ができたんだよ!一緒に行こうぜ!」
「いえ…結構ですわ。それよりも、クエストは受けませんの?しばらくEランクですけど…このままじゃSランクなんて夢のまた夢ですわよ?」
「え?何言ってんの?そんなの目指してないよ…。Cランクまで上がれたらラッキーだって思ってるくらいさ」
「そうですか…では、次の方がお待ちですので…」
はぁ…ラッキーでランクが上がってどうするのかしら…。
「おい!俺たちの冒険者登録をしろ!」
次は若い2人組がやってきましたわ。新規冒険者登録ですわね。申込用紙に記入してもらいます。
ふむふむ…まぁ普通の内容ですわ…。
「はい。記入内容は問題ありません。これでGランク冒険者となります。Fランクになるためには戦闘訓練が必要ですが如何しますか?」
「もちろん受けるぜ!試験官吹っ飛ばしてやるから、いきなりBランクくらいにしてくれても良いんだぜ?」
「そりゃあ良い。ちまちまやってらんねぇもんな!」
「おぅともよ!俺らみたいな優良物件は、さっさとランク上げて、稼いで、良い女をはべらすべきだぜ!」
「そうだ、何ならそこの受付嬢のねーちゃん。俺の女にしてやっても良いぜ?」
私は2人の話を無視して戦闘試験の資料を作成します。
「戦闘試験の準備ができました。訓練場へ行って、試験官にこちらをお渡しください」
「けっ!愛想の悪い女だぜ。まぁ俺らの実力を知ったら態度も変わると思うがな」
そうして新人達は訓練場へ向かいました。
はぁ…あの新人達が強く無いのは今までの経験上でわかりますわ…。冒険者登録って、実際はあんなのしか来ないのですよね…。
それから私は淡々と作業をしました。
「バレッタさん、イーヴィルボアの討伐依頼って出てなかったっけ?」
「それならククル商会から出てますわね」
「バレッタさん、これ新しいクエストです。連携しておきますね」
「ありがとうございます。あら…こちら討伐推奨場所が魔物の森になってますが、あそこにアラクネは出ませんわよ?これは静寂の森と間違えてないかしら?」
そうこうしていると、さっきの新人冒険者達が帰ってきました。身体中怪我だらけで、包帯グルグル巻きになってます。
そして…あれあれ?そのまま歩いて冒険者ギルドを出て行ってしまいましたわ。
「バレッタ。さっきの新人冒険者、Fランク合格だ」
試験官のニコルさんです。Cランク冒険者でもあります。
「ボロボロでしたけど、合格なんですね」
「まぁ、Fランクの戦闘試験なんて、子供過ぎて危険なのを止めるのが目的だからな、普通の大人なら合格するさ。さっきの奴らはギリギリだったけどな…」
「やっぱりそうですわよね…」
「ん?どうしたんだ?」
「ヤバい人っていないのでしょうか?」
「今の俺にはお前が1番ヤバい奴だけどな」
「私は昔から冒険小説が大好きだったんです。冒険者が世界中で活躍し、様々な実績を残して英雄となる…そんなヤバい姿に憧れましたわ…」
「あー、それなら俺も分かるぜ。剣聖シリウスの冒険シリーズは好きだったなぁ」
「あ、良いですよね。私も好きです。田舎でずっと修行してた男の子が常識を知らなくて、都会に出たら既に剣聖並に強くって、一気に駆け上がっていく所とか大好きですわ」
「お!バレッタ嬢も分かるねぇ。そうなんだよな、剣聖シリウスに憧れて冒険者になった所はあるなぁ」
「羨ましいです…。わたくしは運動神経が悪いし魔法の才能も無くて…。その道は早々に諦めました…」
「ふむ…。じゃあその後はどうしたんだ?」
「私にはもう1つ憧れてる事がありました。どんな冒険小説でも、英雄を支えるギルド職員がいるんです」
「あー確かに。剣聖シリーズのリンダちゃんみたいなね」
「まさにそうです。英雄の影の立役者。世界で活躍する英雄のパートナー…。そんなリンダちゃんに私はなりたい!」
「なるほど…」
「そのために受付嬢になったのに…そんなヤバい実力者に会えた事がありませんわ…」
「そうそう会える訳ないだろう…。会えるもんなら俺だって会いたいくらいだ…」
「何処かにヤバい実力者いませんか?」
「心当たりはないなぁ…。」
「残念ですわ…」
「じゃあバレッタが育成してみたら?」
「どうやってですか?」
「例えばそうだな…。おーい!先着1名様限定!自分の冒険者ランクより高いクエストを10個クリアした奴に、バレッタがデートしてくれるってよ!」
「「「「なにー?」」」」
それから、クエストの奪い合いが始まりました…。
「おい!そのCランククエストをこっちによこせ!お前には安すぎるだろ!」
「ふざけんな!値段なんかどうでも良いわ!お前はそのDランククエをやってろよ!」
「それじゃ意味ねーだろうが!」
この中に、英雄になれそうな人がいるとは思えませんわ…。
そんな中、入り口の扉が開きました。そこには漆黒の鎧に身を包んだ方が立っています。
え…なんて隙の無い立ち姿をしてるの…。あの鎧…革?見た事が無い素材…金属より堅そうなのにしなやか…。何なのあの剣…鞘の中にあっても圧倒的な存在感…。
何よりも…身体から染み出るオーラがヤバすぎですわ!
私は、思わずカウンターから飛び出て挨拶をしてしまいました。
「ほ…本日はどの様な御用件でしょうか?わたくしバレッタが対応させて頂きます!」
「あぁ。新規の冒険者登録を頼む」
やばーーーーーい!!
2章1話目を上げる前に、章設定とか1章を見直して更新とかする予定です。
更新情報がいっぱい行ってしまったら申し訳ありません。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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