相談事
「ただいまー!あ、和也居たんだ?丁度良かった」
「おかえり!親友がいつ戻って来るか分からなかったからさ、放課後はココで待ってたんだ。でも『丁度良かった』って……帰って早々にどうしたん?」
ドルメアと人間を襲わない約束ができたので、アーロンに一言挨拶してからお土産を取りに行って、山の中の魔道具研究所へと戻ってきました。
リルがアーロンから騎士団への熱烈勧誘を受けたんだけど『弱いからヤダ!』って一蹴してましたよ…。ボスは1番強い奴がなるべき!っていう考え方らしい…。
「実は相談したい事があってさ。あ、でもその前にご飯にして良い?和也も食べる?」
「お、マジで?ラッキー!食べる食べる!」
「じゃあちょっと待ってて。お土産があるんだ」
「お土産?よく分からないけど、とりあえず了解!」
和也達に食べて欲しくて捕ってきたんだ。きっと喜んでもらえるんじゃないかな?
せっかくだから実験の成果も試して貰おう!!
………。
……。
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って!何これ!?」
「何って……知ってるでしょ?」
喜んで貰えると思ったんだけど、和也は記憶喪失にでもなっちゃったのかな?
「知ってるけど、信じられないと言うか……」
「見た通りのお刺身だよ?」
みんなへのお土産としてマグロもどきのマギルホーンを捕ってきたんだ。
マギルホーンはテレビで見たマグロの2倍くらいの大きさで、頭には槍みたいな鋭いツノが付いてた。カジキマグロの凶悪版みたいな感じかな…。
「この世界じゃ生魚を出してくれるお店なんて無かったから…」
「流通の問題があるもんね。時間停止機能が付いてるマジックバックは高いし…。そうなると自分で釣って捌く方が手っ取り早いかな」
でも、和也は時空属性を隠してたから海が無いアクル王国とか学術都市だと魚を捕りに行くのは難しいか…。川魚は刺身に向いてないのが多いらしいし…。
と思ったんだけど、和也は別のことが気になったみたいだ。
「え、親友は魚捌けるの?」
「そりゃあ、一人暮らしで毎日自炊してるから、それなりにね。マギルホーンみたいな大きな魚は初めてだったけど…」
「おぉ、尊敬だ…」
和也が両手を合わせて拝んできた。大袈裟な…。
「サイズが全然違うから流石に包丁じゃ無理だったけど、アンサラーを使えば普通の魚と同じ要領で行けたよ?」
「いや、普通の魚を捌ける時点で尊敬なんだって。普通の男子高校生的に。でも、実はそれ以上に気になってる事があるんだけど……」
そう言うと、和也は恐る恐る小皿を指差した。
お!気付いてくれましたか!
「これ…もしかして…」
「うん、醤油。作ってみたんだ」
「えっ!自作!?この世界の何処かにあったんじゃなくて??」
和也が凄く驚いてる。
でも実験中で完璧じゃないんだよな…。
「ど、どうやって作ったの?」
「この世界にも大豆とか小麦はあったじゃん?」
「確かに有る。植物は結構地球と似てるんだよな…。でも他のは?」
「そうなんだよね…。実は麹菌が見つからなくて、この世界にも有る別の菌で実験してるんだ。チーズで試したのは全然別物になったよ…。これはビールとかで使う麦芽で作ってみたやつなんだ。だからちょっと違和感あるかも…」
和也が目をパチパチさせてる。かなり驚いてる……と言うか、理解に苦しんでる感じかな…。
「すげぇ…。で、でも、醤油とか発酵食品ってかなり時間が掛かるんじゃないの?」
「時空属性のレベルが10になるとアイテムボックスの時間を早められるんだよ。だから、これも1年以上熟成させた状態だね」
「マジか…。まだまだ先は遠いけど俺も頑張ろう…」
アイテムボックスって言うだけあって空間の中を区切れるみたいなんだ。時間停止とか早めたりとかを区切りごとに設定できるのが便利なんだよね。
「まぁまぁ、とりあえず食べてみてよ」
「じゃ、じゃあ…頂きます!」
和也は僕が作った箸でマギルホーンの切り身を取ると、醤油に付けて口へと運んだ。
さて、どうかな……?
「うぅぅまぁああいいいいいーーー!!」
「大丈夫そうだね。良かった」
「ちょっと甘めで香ばしい感じもあるけど十分に醤油だよ!マグロもどきは寧ろマグロより美味しいんじゃないかな!?」
「それは人それぞれの好みによるだろうけど、でも味は濃厚だよね」
「うん!美味い!脂じゃなくて赤身部分の味が濃い!」
和也は凄く気に入ってくれたみたいで次から次へと刺身を口へと運ぶ。とりあえず喜んで貰えたみたいで良かった!
すると、そんな様子を見てた食いしん坊が我慢の限界になったみたいだ。
「ねぇねぇ!リルも食べていい??」
「勿論だよ。食べて食べて。あ、でも手掴みはダメだよ?お箸は難しいからフォークで食べようね」
「うんっ!」
という事で3人で刺身を食べたんだけど、出してた分は一瞬で無くなりました。5キロくらい有ったはずなんだけどな…。
まぁ、半分以上はリルが食べたんだけどね。
「美味かったぁ。まさか刺身で腹一杯にできる日が来ようとは…」
「そう言って貰えると捕って来た甲斐があるってもんだね。でも、こうなると米と味噌も欲しくならない?」
「確かになぁ。でも、とりあえずこれをクラスの皆んなにも食べさせてやれないかな?皆んな凄く和食に飢えててさ…醤油味を感じられるだけでも喜ぶと思うんだ」
うんうん。そうだよね。
「大丈夫だよ。マギルホーンは400キロくらいあるからまだ1%ちょっとしか使ってないし、醤油もまだまだ有るよ」
「マジで?さすが親友!」
話した通り食べ物の準備は大丈夫かな。ただ、1つだけ考えないといけない事がある…。
「問題が1つだけ。どうやって入手したのか説明できないとね」
「そっか。俺が入手した事にすると『何処で?』って話だし、親友が入手した事にすると『何故?』って話になるのか…」
「うん。特にライトが醤油の味を知ってるのは謎だよね」
「うーん……」
和也が頭を抱えてしまった。でも、そこは僕に案があるんだよね。
「和也、ちょっとだけ時間を貰えないかな?自然に食べて貰う方法があるかも」
「マジで?了解!じゃあその件は親友に任せるよ」
「ありがと。でさ、別件で和也に相談があるんだけど……」
「あぁ、帰って来た時に言ってたヤツね?ドンと来い!」
凄い自信だ…。その自信はいったい何処から来るのか…。
でも、いざと言う時に頼りになるのは、いつも和也なんだよね。
「和也ってさ、コンプレックスってある?」
「へ?随分と唐突だな。ん〜……無い!」
おっと……でも和也だもんね。苦手な事とかあってもコンプレックスには成らなそう。
「周りから揶揄われる様な事があって、ずっと悩んでて、苦しんでて、実はそれが意図的に仕組まれた事だとしたら……どう思う?」
「うっわ…。まぁ怒るかな。その仕組んだ奴に対して」
「そうだよね…。でも、それは実は父親で、しかも自分の為を思っての行動だったら?」
「えぇ?それ、どういう状況?誰のことなの??」
そりゃそうなるか…。訳分からないよね…。
「実はレオの魔法属性が無かった件についてなんだけど……」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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