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信用

「生かして?何のことじゃ?」

「まぁ言い辛いのも分かる。仲間達…特にリューレみたいな奴からすれば裏切り行為に見えるだろうしな」

「……おヌシが何を言っているのか分からんな」


 そうですか。シラを切り通す気ですか。

 じゃあ、そう考えた理由について説明してみましょう!


「ドルメア達の目的は仲間が襲われない事だろ?」

「そうじゃな」

「光属性を先に殺すというのは自衛の1手段でしかない」

「そうじゃが……何が言いたい?」


 ドルメアが少しイライラしてきた…。回りくどいかも知れないけど、直球で聞いたら違うって言われるだろうしなぁ…。


「ドルメアは『殺す事』にこだわってないんじゃないか?」

「こだわっとらんが、必要ならやるしかなかろう」


 ふむふむ。必要(・・)ならね。


「少し話を変えようか。この集落では光属性の暗殺実績は無いんだよな?」

「……そうだね。対象がいなかったからね」

「それは光属性の子供が産まれなかったって事か?1人も?」

「……他の集落では何人か居たみたいじゃがな」

「つまり、ドルメアの担当範囲では何故か(・・・)産まれなかったと?」

「…………。」

「レオの生まれ故郷はここから少し南にある小国だったな。そこはドルメアの担当範囲か?」

「…………。」


 返事してくれなくなっちゃったよ…。

 そして、ドルメアの沈黙で生まれた会話の隙間にリューレが割って入って来る。


「ど、どういう事ですか?ドルメア様!私達やヘルマン様を裏切っていたのですか!?」

「裏切ってなどおらぬ!」


 そ…そうだよね。俺としても裏切りではないと思うんだ。最初に言った通り手段の話だと思う。

 ただ、話を好意的に受け止められないとリューレみたいな反応になる可能性が高い。だからギールの前で『レオの暗殺を止めた理由』を聞いたときは回答を濁したんじゃないかな?たぶん…。


「ドルメアがリューレに掛けた呪いと同じものを見た事がある。厳密には『掛けられた状態』だがな」

「…………。」

「レオだ」

「…………。」


 俺には返事してくれないのね…。


「仲間のために光属性を減らす。その方法として、殺すのではなく呪いによる封印(・・・・・・・)を選んだんじゃないのか?」

「………チッ」


 え?舌打ちされましたよ?えっと、認めたって事で良いんだよね?

 今思えばレオの身を案じてる感じもしてたしドルメアは根が優しい気がする。いま凄い睨まれてるけどね…。


「レオの両親は知っているのか?」

「……選択は両親にさせた。暗殺されるリスクはあるが英雄となれる可能性を取るか、光属性を封印して平穏な日常を取るか」


 それ…英雄を選んだ瞬間に暗殺者になるのドルメアじゃん…。でも…。


「日常を選択した訳か」

「そうじゃな。父親は『目立たぬ様に生きさせる』と言うておった」


 子供を道具の様に扱う貴族って多いらしい。でも、レオの両親は違うみたいだ。

 あ!前にレオが両親の事で愚痴ってたな…。色々とやらせて貰えない。冷遇されてるって…。ちょっと事情が違いそうだ。


「それはヘルマンも協力してたのか?」

「いや、ヘルマンには話しておらんな。しかし、知っていた可能性は高い」

「そんなはずない!」


 俺とドルメアの会話を聞いていたリューレが『我慢できない!』という感じで割り込んで来た。


「ヘルマン様がそんな事を許すはずがない!ドルメア様は我々やヘルマン様を欺いていたのですか?強行派に属しながら実は強行派の邪魔をしてたという事ですよね?それでは穏健派のスパイではないですか!!」

「違う!リューレよ。ワシらの目的は敵となる(・・・・)光属性の減少じゃ。殺さずとも減るのなら目的は達しとるじゃろ…。必要以上に命を散らす事はない…と思わんか?」

「詭弁でしょう!事実、レオ・ザッハトールの呪いは解かれ光属性が増えました!殺しておけばこんな事にはならなかった!それはドルメア様も分かっていたから隠していたのでしょう!?」

「う…ぐぅ…」


 いやいや!長老押されないで下さい!レオを殺しておけば良かったなんてダメですよ!

 あと、勝手に解呪しちゃってごめんなさい!!


「レオなら大丈夫だ。勇者に騙されてお前達を襲う様な奴じゃない。俺が保証する」

「お前の保証なぞ何の価値があるっ!!」


 確かに!!

 とは言っても困ったな…。レオと接して来た俺には自信があるけど彼女達からすると分からない事だし…。


「特にお前は光属性持ちだろう!?信用なんぞできるか!!」


 そうなっちゃうのか…。魔法属性と人格って関係ないと思うんだけどな……。


「では、誰の言葉なら信じられる?」

「それは…………ヘルマン様」


 むーりー!!

 って言うか、ヘルマンを倒した事はリルが話したって言ってたけど…。


「お前がヘルマン様を倒したとかそこの小娘がくだらん嘘を言っていたが…いまヘルマン様は何処にいるんだ?」

「嘘じゃないもん!」


 あー、信じてくれてないのか。というか、信じたくないのか……。


「リルの言ってる事は本当だ。ヘルマンは俺が倒した」

「そんな馬鹿な…。ヘルマン様が目的を達さずに心半ばで倒れる訳がない…」


 いや、魔王復活っていう目的は達してるかな…。迷惑な話だけど…。


「ドルメア様はこいつの言う事を信じるのですか!?」

「そうじゃな…」

「馬鹿な!!光属性使いの言う事ですよ!?」


 そう言えば、ドルメアは結構素直に俺の言う事を信じてくれるな。敵だと思われてるならもっと非協力的になりそうなものだけど……。


 そしてドルメアは1度溜め息を吐くと俺の事をチラッと見てから口を開いた。


「ワシは良い光属性使いに会うた事がある。こやつはあの方に似てる気がするんじゃ。ヘルマンが我等の事を託したらしいしの…」

「ヘルマン様が?何を言って…」


 すると、黙って聞いていたギールが口を開いた。


「ドルメア様、私も気になります。『あの方』とは?」

「……………………。はぁ、魔王様(・・・)じゃ」

「「!?」」


 ドルメアの言葉を聞いてギールとリューレは顔を見合わせた。


 俺のことバレてるのかな?いや、証拠も無いし確信までは至ってないと思うんだけど……。


「光属性が使えるからといって全員が敵な訳ではない。魔王様の様な方もいらっしゃる。穏健派の様にただ我慢して人間の好きにさせるのはワシには無理じゃが……可能な限り血は流しとうない。魔王様も望まんと思う」

「なるほど。魔王様はそういう方だったのですね」


 ギールは納得した感じかな。ドルメアを責める雰囲気じゃない。でも、リューレはまだ不満気だ…。


「リューレよ。光属性を隠してたのはすまんかった。しかし、決して裏切ってた訳ではないのは信じとくれ」

「……ドルメア様の事は分かりました。しかし、そいつを信用するかは話が別です!」


 結局はそこだよね…。魔王だって名乗ったら信用してくれたりするのかな?でも、それで信用されるのも違う気がするんだよね…。


「ドルメア様、質問しても宜しいでしょうか?」

「なんだい?」

「ライト殿と魔王様が似ていると言うのは?」


 ギール…余計な事を聞くなぁ……。


「ふむ、雰囲気や考え方がな。おぬしらには分からんのじゃろうが魔力も何処か懐かしさを感じるんじゃ」

「それは…」


 うわ…俺と武尊おじさんの魔力は似てるらしいからね…。やっぱり何か勘付いてるのかな…。


「ただ、本人が自ら語らぬのならば追求すべきではない。色々と事情があるのじゃろうしな」

「……なるほど。承知致しました」


 あれ?思ったより怪しまれてる…。なんでそんなに確信してるんだろう?


 そして、話に付いて行けてないのがもう1人。


「ドルメア様、ギール、先程から何の話をしているのですか?」


 リューレが疑問を投げかけるが、ギールはそれを無視して喋り出した。


「リューレ、私はライト様を信用しても良いと思います。レオ・ザッハトールの事はライト殿にお任せしましょう」

「ギール!何を言うんですか!?」


 お!ギールは信用してくれるんだ?援護が助かる!


「ドルメア様の事は納得したのでしょう?であれば、後は長老の判断に従うべきです。貴方の罪は命令違反ですが、更に繰り返しますか?」

「ぐっ…それは…」

「今は自身の反省に集中しなさい。さぁ、手を」


 リューレは不満そうな顔をしながらも両手を前に出した。そして、リューレの手首にギールが枷を付ける。


「ドルメア様。私はリューレを牢に入れて参ります」

「ふむ…頼んだわい…」

「それではライト殿。失礼致します」


 そう言うと、ギールはリューレを連れて部屋の奥へと消えていった。そして、部屋にはドルメアとリルと3人きりになる。

 護衛いなくて良いのかな?信用されたって事なら嬉しいけど…。


「ふぅ…。今日は色々と疲れたわい…」

「疲れてるところ悪いが、1つ聞いていいか?」

「本当に最後にしとくれよ?」


 ドルメアは精神的な疲労が凄そうだ…。リューレの前でバラしちゃってごめんね…。

 でも、どうしても聞いておかなきゃいけない事がある。


「俺達は何者(・・)だと思ってる?」


 どうやら俺が魔王だと怪しまれてるっぽい。誰も聞いてないこの状況でドルメアの真意を知りたかった。


「ワシは千年以上生きておる…」

「あぁ、生き証人だしな」

「つまり、リル様(・・・)におうた事もある。そういう事じゃ」


 あっ!そっちからか!!

 って事はかなり最初っからバレてたって事だよね?道理で色々と素直に話してくれた訳だ…。


「ワシらはレオ・ザッハトールに手を出さんと誓おう。他の集落にも声を掛ける。それで良いか?」

「あぁ、助かる。もし他の集落に反対されたら教えてくれ」

「潰さんでくれよ?」

「それは相手次第だな」


 今日は俺の信用が全然足りないって事がよく分かったよ…。これから積み上げて行かなきゃだね!

 そういう意味でも最初にドルメアの集落と話せたのはラッキーだった気がする。他も話が通じたら良いんだけど…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


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