ギール
GW中にもう1話は上げたいと思います…
「アーロン、どういうつもりだ?」
「おいおい、随分と藪から棒だな。何の話だ?」
おや?アーロンはギールが魔族だって事を知らないのかな?
いや、まだ分からない。遠回しな言い方はやめて直球で聞いてみよう!
「何故、魔族を騎士団長として起用しているのか?と、聞いている」
言った瞬間、ギールが動いた。腰の剣を抜いて俺に切り掛かってくる。
速い…。が、脳の強化が必要な程じゃない。
俺は身体強化をしながら刀を出すと居合斬りの姿勢を取った。そして、ギールの剣が間合いに入った瞬間……ギールの剣から刃の部分が消える。
チンッ…
刀を鞘に納める音が静かな部屋に響いた。
「何を……されたのですか?」
「普通に斬っただけだ。で、続けるのか?」
「いえ、やめておきましょう。しかし、私を殺さなくて宜しいのですか?」
確か『仲間達には平穏を!』だったか…。
ヘルマン、それは相手次第だよ…。
「とりあえず殺意が無かった理由くらいは聞いてやる」
「そうですか。珍しい光属性使いですね…」
ギールが刃の無くなった剣を床に落とすと、そのままギールの影へと吸い込まれて消えた。
そして、アーロンの方を向く。
「アーロン様、私では試金石にさえ成れそうにありません」
「おいおい、私の事までバラすなよ…」
やっぱりアーロンは知っていた感じか。って言うか……失敗したのがバレなくて良かったー!!
相手の刃を斬って時間差でポトリ……みたいな事がやりたかったんだけど、俺の技術が足りなくて叩き折った上に吹き飛ばす形になっちゃった…。
俺の刀は衝撃でボロボロになってしまったので即行で隠しましたよ…。鍛冶屋のおっちゃんゴメンね…。
「それにしても……かかかかっ!凄いな!やはり気付くか。先に会わせておいて正解だった様だ」
「ギールに騙されている訳ではなさそうだな。魔族と知った上で騎士団長にしているという事か?」
「言ったろう?実力があればそれで良いと」
何故かアーロンがドヤ顔してるんだけど…。
「裏切られるかも知れないぞ?」
「まぁ軍事同盟みたいなもんだ。最初から忠誠心など求めておらん。裏切りの可能性を踏まえても有益だと判断した感じだな」
へー。かなりドライな回答だね。アーロンに対する印象って『適当な人間』って感じだったけど領主としては違うのかな…。
すると、アーロンの発言に対してギールが反論をする。
「寂しい事を言いますね?私は君の事が割と好きですよ?」
「かかかっ!悪い悪い。もちろん個人としてギー兄の事は信頼しとるよ」
「はいはい」
あれ?急に2人の雰囲気が変わったんだけど……関係性がよく分からないな。
「ん?あ、すまんな。客人を置いてけぼりにしておった」
「そうだな。2人の関係について説明して貰えると助かる」
「ふむ。今となってはこの見た目だが……ギー兄より私の方が圧倒的に年下なのだよ。子供の頃から世話になっててな。実は私の剣の師匠だったりする」
「筋肉バカに育ってしまって…。何処で教育を間違えたのか……」
「バカとは酷いな…。仮にも今の主人なんだが……」
忠誠心って感じじゃない。でも愛情は感じる。なるほど…これが2人の本来の関係性って訳か……。
「そんな事より。光属性使いは魔族を見たら問答無用で殺すと思っていたのだが……何故ギールを殺さなかった?」
「おい。そう思うのなら何故襲わせた?ギールが殺されても良かったのか?」
信頼する兄貴分なんだよね!?何で平気だと思ったの??
「質問に質問で返すのは……まぁ良い。何となくお前は殺さない気がした。それだけだな」
まさかの理屈ゼロでしたー!!
えぇ?そんな事ある??
「だが、正解だったろ?」
ぐぬぬ…。本能なのか経験則なのか……まだ俺にはできない判断だ……。
「で、何故殺さなかった?」
「さっきも言ったがギールから殺意を感じなかったからな。それと…」
ヘルマンがやった事は許せないし、リューレの事も許せる気はしないけど…。
「俺は可能な限り双方の意見を聞く事にしている。魔族側の事情を聞いてみたかった」
「ふむ…。まるで魔族と人間が対等かの様に話すのだな」
「ん?理性ある生物なのだから当然だろう?」
価値観は違うかも知れないけどコミュニケーションは取れるから別民族みたいなもんだよね?アンフェルとか普通に会話できたし…。
でも、俺の発言を聞いたアーロンは真面目な顔をする。
「なるほど。それは人間からすれば危険な考え方だな」
そうかな?対等じゃないなら下等扱いしろってこと?人間だけの利益を優先して虐げる…。それは嫌だな…。
それに、アーロンには先に言っときたい事がある。
「お前がそれを言うのか?ギールを兄貴と呼んでおいて?」
「がはははっ!確かに!!」
どちらかと言うと、俺よりアーロンの方が魔族の事を思ってる気がする。
俺は魔族を虐げるつもりはない。ただ…俺の大事な人達を傷付けると言うのなら容赦はしないよ?魔族であろうと…人間であろうと…。
「しかし、なるほどな。実際に魔族を前にしてもこれだけ冷静ならば……話してみるか?」
「誰とだ?」
「ギール達をまとめている長老だ」
ギールに俺を襲わせたのは長老に会わせても良いか判断する為だったのか。
思わぬ所で道が開けたな…。ギール達をまとめてる長老って事は町の魔族のボスって事だよね?って事は…。
「そいつはリューレのボスだな?」
「リューレ?知らん。初耳だな」
あれ?間違えた?
「あー。リューレなら私と同じ派閥ですよ。チームが異なりますのでアーロン様はお会いになった事が無いと思います」
「そうなのか?らしいぞ。そいつがライトがこの町に来た理由なのか?」
「あぁ。その事も含めて長老と話がしたい」
力尽くで見付け出す事になるのかな?と思ってたけど、冷静に話せるならその方が嬉しいな。
「よし分かった!私が話の場を設けてやろう」
「それは助かる。頼めるか?」
「がはははっ!任せておけ!」
良かったぁ!ギールに襲われた時はビックリしたけど、結果的には良い感じだ!
っと思っていたんだけど、リルが真剣な表情で近付いてくる。俺…何かミスってるのかな……?
「ねぇねぇライト…」
「どうした?」
何だか重い空気だ…。
「ご飯まだ?」
しまったぁああああ!!重大なミスでした!!
「リル殿、悪かった!遅くなってしまったが飯にしよう。リル殿の為に特別なメニューを準備させとるぞ!」
「ほんと!?わーい!」
アーロンありがとう…。思ったより頼りになる人だなぁ…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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