死人に口無し?
『本当に……。申し訳ありませんでしたぁ!!』
「そんなんでゆるす訳なくない?マジありえないんだけど!」
「だよなー。こいつらどう詫びてくれんのかねー?」
ドールの伊藤を回収する為に和也達の教室に戻ってきたんだけど…。男子が全員正座して女子達に土下座していました。
井上さんと土屋さんが仁王立ちしてプリプリと怒ってます…。いや、土屋さんは少し面白がってる感じかな。
まぁ男子達は置いといて…。
「立花、白鳥、解呪は完了したみたいだな。ありがとう」
「あ、戻られたんですね。たぶん全員できたと思います。ただ…麗奈が無理して魔力切れ寸前なんです…」
「双葉ちゃん、私は大丈夫だよ!」
白鳥さんは笑顔で両腕を上げると力瘤を作るポーズをしました。力瘤は無いけどね。
でも、やっぱり無理をしてるみたいで顔色は悪そうかな…。
原因は魔力枯渇だから魔力を回復できれば良くなると思う。魔力回復ポーションは大量に持ってるんだけど……白鳥さんの魔力量はかなり多いから大量に飲まなきゃでお腹タプタプになっちゃうなぁ。
少量で回復するには……エリクサーが1番かな。部位欠損とか色々回復できる薬だから魔力だけの為っていうのは勿体無いかもしれないけど、まぁ沢山あるから別にいっか。
って事を考えてたら、バス先生が助言をくれました!
『魔力を渡す無属性魔法があるっす!トランスファーって言うっす!』
(へー、そんな便利魔法もあるんだ?初めて聞いたけど何で他の人は使わないんだろう?)
『無属性のレベルが5はないと使えないっす!前にも言ったっすけどレベル5は伝説の魔法使いって感じっす!』
そっか。何気に難しい魔法で使える人が単純に少ないんだね。
(なるほど。でも、クラスメイト達なら使える様になりそうじゃない?)
『そうっすね!ただ、魔力制御レベルが低いとロスが激しいので常用するのは厳しいと思うっす!魔王様は魔力制御レベル10なのでロス無いっすけど!』
ふむふむ。それならエリクサーよりトランスファーの方が良さそうかな?やってみるか。
「白鳥。俺の魔力を少し渡したいと思う。それで魔力枯渇の辛さが軽減されるだろう」
「え、良いんですか?」
「勿論だ。さぁ、手を出せ」
「はい…」
俺は白鳥さんの手を取ると俺の魔力が白鳥さんに流れ込むのをイメージした。実はここまでは何度かやった事がある。レオ達に魔力を実感させた時とかにやった方法だ。
問題はここから。俺の魔力が白鳥さんの魔力に変換されないと千葉みたいに苦しめる事になる。
(バス、ここからどうすれば良いの?)
『魔王様の魔力と聖女の魔力をちょっと取って混ぜるっす!それを聖女に戻して馴染ませるっすよ!それを繰り返すっす!』
(一気に変換するんじゃなくて少しずつ白鳥さんに馴染ませていくんだね。………こんな感じかな)
『そうっす!初めてだから時間掛かってるっすけど、慣れれば一瞬で出来る様になるっす!』
(ふむふむ。混ぜて、戻す。混ぜて、戻す。混ぜて、戻す…)
ちょっと慣れてきたかも。単純作業の繰り返しって何だかハマって来るよね。
「え…ちょ…凄い。一気に魔力が増えてます」
(混ぜて、戻す。混ぜて、戻す。混ぜて、戻す)
「も、もう無理です…。溢れちゃいます…」
「ライト先生ストーップ!!!!」
双葉は俺の腕を取ると白鳥さんから引き剥がしてそのまま投げた。
投げるのは良いんだけどさ…間接を極める必要性はあったのかなぁ…。
「悪い。ちょっと集中しすぎてたみたいだ」
「わざとじゃないのは分かりますけど…気を付けて下さいね?」
白鳥さんには悪い事をしてしまった。そんな白鳥さんの方を見ると…え?泣いてる?
しまった、結構辛かったのか!?
「麗奈、大丈夫!?痛かったの?」
「んーん…違うの…。全然痛かったり辛かったりはしなかったよ…」
どうやらトランスファーで苦しめた訳じゃなさそうだ。でも、じゃあなんで?
「麗奈?」
「双葉ちゃん…自分でもよく分からないの…。でも、凄く懐かしい様な嬉しい様な…幸せな感じがして…」
え…どういう事?
俺が混乱してると、双葉がこっちを向いて睨みつけてきた…。
「ライト先生、麗奈は大丈夫なんですか!?」
「ちょ、ちょっと待て」
(バス!これ、大丈夫なんだよね!?)
『大丈夫っす!害は無いっす!魔王様が幸せ者なだけっす!』
(何それ…どういうこと??)
「先生?」
「あぁ、すまん。白鳥の状態を確認していた。特に問題は見受けられないな」
「双葉ちゃん、ライト先生、ご心配をおかけしてすいません。私は大丈夫です」
「麗奈、ほんとう?無理してない?」
「うん、本当だよ。もう大丈夫。双葉ちゃんありがとう!」
本当に落ち着いたみたいだ。双葉の怒りも治ったかな…。良かったぁ。
「大丈夫そうだな。では、俺はドールの幹部を捕獲してくる」
「魔力、ありがとうございました!」
…………。
………。
……。
「ライト先生。こっちだ」
「ガルデンか。どうした?」
伊藤を気絶させた所に行ったら学園の警護隊長をしてるガルデンがいた。
「本来は俺がこの学園を守らねばならないのに…情けない。何もできなくてすまん」
「いや、特殊な相手だったし仕方がないだろう」
犯人は魔族と異世界人だったから普通の兵士レベルの戦力ではどうしようもなかったと思う。
「それよりも、ここに倒れていた女を知らないか?」
「あぁ、見たことのない不審者が倒れていたので、縛ってからそこの警備室に寝かしておいた」
「そうか。悪いがそいつに用事がある。渡してもらっても良いか?」
「あぁ。ライト先生なら問題無いだろう。こっちだ」
という事で、ガルデンと警備室に行ってみると伊藤はまだ気絶したままだった。
「おい。起きろ」
「ん…。んん……。あら、王子様のキスで目覚めちゃったのかしら?」
「仮面があるのでそれは無理だな」
「残念。それにしてもSランクってやばいわね。本気出されるとなす術ないわ」
「まだ本気じゃ無いがな」
「あら、怖いわー。で、レオくんは無事だったの?」
「まーな。で、こいつらが依頼主で合ってるか?」
そう言いながら、俺はアイテムボックスから部下魔族達の死体を取り出した。
「あらあら…随分と残酷な殺し方をするのね…。と言うか野生的な感じかしら?」
リルが倒した相手は腹が抉れてたり首が喰い千切られて落ちかかってたりしてるからなぁ…。まぁとりあえず…
「こんな奴等に手加減は不要だろう?」
「ふーん…。私には手加減してね?」
「それはお前次第だな。で、こいつらなのか?」
「そうよ。まぁ厳密には依頼主はリーダーの人だけどね」
まぁ9割方分かりきってた事ではあるけど、確定情報にするのは大事でしょう。
「こいつらの情報を吐いて貰おうか」
「知らないわよ。金貨2000枚で依頼してきた人ってだけ。情報欲しいのなら生かしておけば良かったのに」
「そうなんだがな。こいつは生かしておこうとしたのに相手のリーダーが殺したんだ。情報を渡したくなかったんだろうな。死人に口無しって奴だ」
すると、伊藤が首を傾げた。
「あら、何言ってるの?その死体には口があるじゃない」
お前こそ何言ってるんだ?そりゃあ物理的には有るけど喋れないだろ。
喋れない…よね?
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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