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ゴブリン殲滅戦

「リルー。おはよー」

「ワフゥ!」(おはよ!)

「リルには悪いけど、約束通り今日は宿でゆっくりしててね」

「ワフゥーン」(しょうがないなぁ)


 ゴブリン殲滅作戦に着いてくると、間違われて攻撃されちゃうかもしれない…。という事で、今日は宿で待っててもらう約束をしていた。

 代わりに昨日は、寝るまでリルと遊びまくったけどね。


「さてと…では北門に向かいますかね」


 僕は宿を出て北門へ向かう。到着した北門は500人くらいの人でごった返していた。

 これ…ほぼ雑魚狩り要員なんだよね?僕なんて要らないんじゃないだろうか…。


「あ、カインだ」


 周りを見ていたら、僕はカインを発見した。僕は宵の明光が勢揃いしている所に近付いていく。


「おはようございます。やっぱりみんなも参加するんですね」

「あれ?トールも参加するのか?Fランクになったんだな」

「ははは…。昨日、半強制的に上げられたんだ…」


 僕は昨日の事を思い出して苦笑いを返す。


「マジか…それは珍しいな…。でも、それだけ期待されてるってことか?」

「いやいや、ゴブリンキングの所為でしょ…」


「DランクとFランクの担当箇所が違うから今日はバラバラだが、今度一緒にクエストを受けよう」

「僕がFランクだからEのクエストかな?カイン達には物足りないんじゃない?」

「別に構わんさ。一緒に行けるのが楽しいんだ」


「ふーん…。カインとトールさん、いつの間にそんなに仲が良くなったのよ?」

「リーシア。この前トールと一緒に薬草採取クエストを受けてな」

「そうなんだ…。私も誘ってくれれば良かったのに…」


 いやぁ…。皆さん酔い潰れてたからなぁ……。話を変えよう…。


「えっと、冒険者ランク毎に分担してて、E以下が外周部分、Dが中層、AからCでキングに行くんだっけ?」

「いや、Aランクは遠征中で間に合わないらしい。だから、Cランクが側近を抑えてる間に、Bランクがキングをやる予定みたいだ」


 Cランクの人達が抑えるのは、同じくCランクのゴブリンジェネラルを筆頭に上位種ゴブリンだよね?数で負けてるから厳しそうな気が…。


「それだと側近を抑えるの厳しくないかな?Dランクの人も参加した方が良い気がするけど…」

「雑魚狩りも1人で何匹も担当する予定だから、そこを薄くすると死人が出そうって判断になったみたいだな」

「それで、キングにはギルマスが参加する事になったらしいわよ」


 なるほど…。色々考えてるんだな…。そんな話をしていると、そろそろ出発するみたいでバルさんが大声で話し始めた。


「みんな、集まってくれて感謝する!ゴブリンキングで1番危険なのは数だ!みんなが集まってくれたお陰で、その数に対抗する事ができた!」


 オオォォォォォォォォ!


「単体で見れば所詮ゴブリンだ!敵を分断して各個撃破すれば勝てない相手ではない!リッケルトの勇敢な冒険者達であれば遅れを取る事はないと信じている!」


 オオォォォォォォォォ!


「今回は俺も出る!俺にお前達の勇敢な姿を見せてくれ!さぁ行くぞ!リッケルトの力、見せてやれ!!」


 ヴオオオオオオオオオ!!


 こわ…。500人でも、全員が揃えて腹から声を出すとこんな感じになるんだな…。


 そう言えば、こんなに人が集まった理由だけど緊急クエストって特別報酬が出るらしい。普通に魔物討伐としての報酬に加えて、貢献度によって報酬が出るみたいだ。

 最低でも参加費が出るらしいので、お金の割りが良いみたいです。実益って大事だもんね…。


 それから門を抜けて、森へ向かって歩いてゆく。そして森の入り口に到着すると、各々の担当エリアに向かって散開していった。

 僕は1番端っこだ…遠いなぁ…。


 僕は担当エリアに到着すると、担当エリアが同じ人達と打ち合わせを始めた。

 簡単に言うと、更に担当を分けたのだ。戦ってる姿を見られたくないからね…。


 僕は担当場所の中心へ行くと、ゴブリンを探す為に探知魔法を使った。通常ゴブリンの5体前後の部隊が3つだな…。

 よし、今日は刀を試してみよう!


 到着したら各々開始する事になっていたので、僕は1つ目の部隊に近づいて行く。そして、敢えてゴブリンの前に姿を現した。

 僕に気付いて周りを囲み出す5体のゴブリン。


 僕は刀を正眼に構えた。

 目配せをするゴブリン達は、タイミングを合わせて一斉に僕へと襲い掛かる。


 相手のタイミングをズラす為に、前に出てから正面のゴブリンの頭を狙う。振り抜く感じではなくて、剣道のメンの様な動きで頭から喉まで切って即座に戻す。

 そして、左に薙いで2体目、前に進みながら左下からの切り上げで3体目と、左側にいた2体のゴブリンも倒した。


 うーん…刀は悪くないんだけど、技の繋ぎで僕の動きに引っ掛かる所があるなぁ…。


 僕は、元々は右側にいた2体へと振り返る。そして、前に走りながら1体を袈裟斬りにし、最後の1体は右に薙いで終わらせた。


 うん。通常ゴブリン相手であれば、刀には何の問題も無いね。問題は僕の技術だ…。


 それから、残りの部隊も刀で倒して、僕は自分の担当を終わらせた。

 確かに、普通のFランク冒険者の人には厳しい数かもしれない…。Dランク冒険者をゴブリンキングに連れていけないのも納得だ。


 さてと、後はどうしよう…。

 正直な所、僕はゴブリンキングに向かった本隊が気になっていた。やっぱり様子を見に行こうかな…。


 僕は、探知魔法で周りに人がいない事を確認してから、宿の部屋にゲートを開いた。そして、僕は部屋に戻ると愚者の仮面と漆黒の鎧(ルティーヤー)を装備し、髪の色を一昨日と同じ金髪に変える。


 それから改めて、森の中心地の上空へとゲートを開いた。地上だと、たまたま人と会っちゃうかもしれないからね…。


 僕は飛行魔法をかけてから、森へと続くゲートを潜った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



※トールが中心地へ向かう数時間前


「私がゴブリンキングと遭遇した場所は、ここから100メートルほど先になります」

「わかった。総員、気を引き締めろ!」

「仮面の人…どうか逃げれていて……」


 ゴブリンキングへと向かっている本隊は、アリアさんが道案内をしながら進んでいた。

 本隊のメンバーは、バルさんが元Aランク、Bランクが4人、Cランクが20人で、Cランクの中にはアリアさんとロラン君がいる感じだ。


 ゴブリンキングとの遭遇地点に近づいて行くと、段々とバルさんの顔が険しくなっていった。


「おい。なんだこの臭い…。大量の血の臭いか…」

「一昨日はこんな事は無かったのですが…」


 魔物の森は、魔物同士が常にひしめき合っている為、血の臭いはそこら辺でしている。しかし、ここまで濃い臭いはなかなかに珍しかった。

 そして本隊は、ゴブリンキングとの遭遇地点に到着した。


「こ…ここです…。でも…こんな気持ち悪い空間じゃありませんでした…」

「なんだろな。焼け野原なのに血の臭いが充満してやがる」


 僕はゴブリンキングを倒した後に、細切れになった肉片を焼いて魔石だけ回収していた。しかし、切り刻んだ時点で地面に大量の血が沁み込んでしまい、それが臭いの元となってしまった様だ。


「とりあえず周辺の調査を開始しろ!ゴブリンキングと仮面の人の形跡を優先的に探せ!」


 それからしばらく調査を進めるが、形跡は何も見つからなかった。


「んー。もしかしたら仮面の人は生きてるのかもしれんな。もし殺られていたら、装備の切れ端とか何かしら残るだろう」

「ほ…本当ですか?」


 バルさんの発言にアリアさんは期待の表情を見せる。


「まぁまだ分からんが可能性は高いな。だとすると、血の臭いの原因はそいつか?」


 流石は元Aランク…。バルさんは段々と真実に近づいて行く…。


「ここではこれ以上は見つからなそうだな。よし、この先の崖に移動する!」


 冒険者ギルドはゴブリンキングの巣について当たりを付けていた。この周辺には崖になっている所があり、そこにはいくつかの洞窟がある事が分かっている。

 その中の大きな洞窟を巣にしているのではないかと予想していた。

 そして、本隊は無事に崖へと到着した。


「よし、それではパーティ毎に散会して洞窟を調査する!奥へは行くなよ?入口周辺でゴブリンが生息している痕跡を調べろ!」


 そして、本隊の人達は分散してゴブリンのいる洞窟を探し始めた。しばらくして、バルさんの元に報告が上がる。


「ギルドマスター。ゴブリンが生息する洞窟を発見しました!大きさからしてゴブリンキングがいる可能性が高いと思われます!」

「よくやった!よし、移動するぞ!」


 本隊は改めて集合し、ゴブリンキングがいると思われる洞窟へと向かう。洞窟が見えるギリギリの所まで来ると、発見したパーティのリーダーが発言した。


「ここです。洞窟の入口にゴブリンとホブゴブリンが見張りとして立っています。そして、洞窟の大きさからしてゴブリンキングでも十分に生息できると思われます」

「あぁ、たぶん正解だな。キングがいないなら、もう少し小さい洞窟を選択するはずだ」


「ギルドマスター、どうしますか?」

「閉じた空間だと物量で埋め尽くされた時に動けなくなるからな。表に誘い出して叩くぞ」

「了解です。見張りを倒して臭いで誘い出しますか?」


「そうだな。血の臭いで誘い出す。うるさい魔法は禁止だ。警戒されない様に静かに行く」

「了解です。うちの風魔法使いが向いてると思います」

「よし。やれ」


 Bランク冒険者パーティの風魔法使いが見張りを倒す事になった。


「キングが出てきたら集中放火しろ。その後は予定通りの分担で行く。俺は遊撃として厳しい方に参加だ」

「了解です。では風魔法行きます」


 風魔法使いは詠唱を行い、遠距離からゴブリンとホブゴブリンを瞬殺した。風によって切り裂かれた死体からは、血の臭いが溢れ出す。


「弓構え。魔法準備。キングが出るまで待機だ」


 待ち構えていると、ゴブリンジェネラルが出てきた。


「どうしますか?やりますか?」

「いや、もう少しまて…」


 見張りの死体を確認したゴブリンジェネラルは、何やら洞窟の奥に向かって話している。すると、洞窟の奥からゴブリンキングが出てきた。


「今だ!撃て!」


 準備していた弓矢と魔法が、ゴブリンキングに向かって飛んでいく。しかし、ここで予想外の事が起きた。

 ゴブリンジェネラルが身を挺して壁となり、攻撃の半分くらいを受け止めたのだ。


 ドゴォン!トスッ、トスッ。ズズン…。


 魔法や矢を受けたゴブリンジェネラルはその場に崩れ落ちる。


 ギギャァアアアア!!


 そして、攻撃を受けたゴブリンキングは非常に怒っていた。


「ちっ!ゴブリンが忠誠心を見せるとは…。行くぞ!」


 こうして、ゴブリンキングとの戦闘が始まった。

 戦闘に集中する冒険者達は、上空で黒い渦が発生している事に誰も気付いていなかった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ゲートから出て地上を見てみると、崖の辺りが騒がしくなっていた。


「本隊がいるのはあそこかな?」


 僕は見つからない様に少し離れた所へ着地する。そして、地上を歩いて崖へと向かった。


「やっぱりバルさんがいる。ここが本隊だな。って言うか…ゴブリンキングだ…。2体目がいたのか…」


 討伐隊を組んでもらって正解だったな。バルさんはアリアさん達と一緒に側近達と戦っている。


 それから木に隠れながら様子を伺っていると、僕は1つの驚愕する事実に気が付いた。


「え?戦闘試験の時のGランクの人がいるじゃないか!」


 バルさん、何をやってるんだ…。いくら人手不足だからと言っても、Gランク冒険者をこんな所まで連れてくるなんて…。

 もしかして、だからバルさんがサポートについているのかな?実は縁故採用とかで特別扱いしないと駄目とか?ないか…。


 バルさんは側近をどんどん倒していく。とは言っても…ホブゴブリンやジェネラルは一撃という訳にはいかない。

 そんな中、洞窟の奥からはどんどん側近が補充される。Cランク以下とは言え、この数は厳しいかもしれない。


 バルさんが加われば余裕な目算だったのに…。側近の駆逐が間に合わず、ゴブリンキングと戦っているBランクにも側近ゴブリン達が迫っていた。


「ちょっ、ちょっとギルマス!話が違うじゃん!キング以外をこっちに向かわせないでよ!」

「悪りぃな!ちょっと踏ん張れ!何かおかしい!流石に多すぎる!」


「私が洞窟の入り口に陣取って、外に出てくるのを抑えます!」


 敵に補充をさせまいと、アリアさんはゴブリンが溢れ出てくる洞窟入口へと向かう。


「だめだ!アリア下がれ!」


 洞窟から出てくるゴブリン達がアリアさんに群がる。アリアさんは厳しい状況だが、ゴブリンキングと戦うBランクの負荷は減っていた。


「アリアさん、ありがとう!さっさとキング倒すから、それまでどうにか耐えて!」


 想定外の事象により、全員がギリギリの戦いをしていた。だが、想定外の事象とは、何かしら理由があるから発生するのだ。

 冒険者ギルドのメンバーは根本的な思い違い(・・・・・・・・)をしていた。


 ドガァアッ!!


 重い音が響く。そして……アリアさんは宙を舞っていた…。


 グギャァアアアアアアア!!


 洞窟の中から、更にゴブリンキングが現れる。


「そ…そんな…キング複数体が共存してるなんて…」

「キングが共存するなんて、更に上位の存在がいる時だけだろ…」


「いるぞ… ゴブリンロード(・・・・・・・)が!」

明日(木)の夜、第1章の最終話を載せる予定です。

その後、土曜までの何処かで短目の閑話を2本上げたいと思います。

で土曜日に章設定と1章の見直しをして、土曜の夜に2章1話目を掲載予定です。

行けるかなぁ…。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!

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