リルvsリューレ
明けましておめでとうございます!
引き続き宜しくお願い致します!!
「ま、魔族?いま魔族っておっしゃってました?」
「ルナ、気にしたら負けだにゃ…」
「で、でも…」
魔族を実際に見た事のある人間はほぼいない。厳密には、ヘルマンの様に人間の中に紛れている存在が居るため魔族と認識して見た事がある人間だが。
一般人の感覚としては『昔々、勇者と争っていた凶悪な生物』というお伽話の様な存在だ。
「ねぇ、リューレはヘルマンの仲間なの?」
「貴様…ヘルマン様の名を気安く呼ぶな。ヘルマン様は魔王様の側近であったアンフェル様の眷属なのだぞ?」
リューレの話を聞いてリルは首を傾げる。何故アンフェルの眷属だと気安く呼んじゃダメなのかが分からない。
「まぁいいや。たたかおー!」
「チッ、小娘が…。私が主体となって戦う。お前達はサポートに回れ」
「はっ!」
そう言うと、リューレはリルに突撃して槍を突く。部下達は魔法の詠唱を開始した。
リルは槍を避けると、空振りした槍の柄を掴んだ。
「はやーい!やっぱり強いね!」
「避けておいて何を言う…。だが、これは避けられるかな?やれ!」
「シャドウバインド!」
部下の1人が魔法名を唱えるとリルの影から触手の様な物が伸びてリルの足に絡み付いた。
「クハハハ。これで思う様には動けまい!」
「これ、おもしろーい!」
リルは影から伸びる触手を引っ張っていた。触手は硬いゴムの様な感じで、全く動けない訳ではないのだがかなり邪魔になる。
「チッ。余裕を見せられるのもそこまでだ!喰らえ!魔天流無限突きぃ!!」
触手に巻き付かれたリルに対してリューレが連続突きを放った。まるで突きの弾幕だ。
しかし、リルはそれをほぼ上半身だけで避けていく。リルにはハッキリと見えているみたいで余裕が感じられた。そしてリューレの槍を再度掴む。
「おのれ…。まさかこの様な小娘が無限突きを見切ったと言うのか…」
「槍はねぇ。ラインハルトに教えて貰った方が良いよ?ライトが尊敬するくらい凄いんだから!」
「ライン…ハルト?まさか…神槍の事か!?ふざけるな!」
2人は槍を握り合ったまま硬直する。同時に力を込められた槍がメキメキと悲鳴を上げた。
すると、不意にリルが槍を捻る。リューレは対応できずに横へと転がってしまった。
「くそ…今のはなんだ!?」
「ライトのまねー!槍じゃないけどリルもいつも転がされてるんだよ?」
ライトと比べればまだまだ下手なのだが、リルはライトとの戦闘ごっこを日頃から行う中で技術を自然と学習していた。
しかし、転がったリューレは槍を手放していない。槍を両手で掴むと再び槍が悲鳴を上げた。
「ちからもつよーい!」
「当たり前だ、小娘。たかだか人間が私の力に…ちか…ちからに……」
リューレの足が浮く。リルが槍の端を持ってリューレを持ち上げていた。
「ふ、ふざけるな!お前達、次だ!やれ!」
「「はっ!シャドウアロー!」」
リルの影から無数の矢が襲いかかる。
シャドウバインドに下半身を絡み取られているので避けられる訳がない。と、リューレは考えていた。
「死ねぇえ!」
リューレは持ち上げられたまま片手で短剣を取り出す。そして、リルに向けて短剣を放った。のだが…目の前にいたはずのリルの姿が…見当たらない。
「ぐふっ」
「か…かはっ…」
地面に降りたリューレは声のした方向…自分の部下へと視線を移した。
部下の1人は腹部を切り裂かれ、もう1人の部下は首筋をリルに噛み付かれて………振り回されている。
「鉤爪で切り裂かれた様な…いや、抉られた様な傷跡……暗器か?」
「リューレ様、違います!こいつ…素手です!私のシャドウバインドも爪で引き裂かれました!」
「何だと?チッ…。人間の戦い方ではないな…」
少し離れていた最後の部下は、何が起こったのかを俯瞰的に見る事が出来ていた。
リルはシャドウアローが自分へ届く前に触手を爪で切り裂くと、自分の横に生み出した空気の壁を蹴って部下達の前まで一瞬で移動していた。
そして、部下Aの腹部をすれ違い様に爪で切り裂き、そのまま部下Bの首筋へと喰らい付く。まるで犬が振り回して遊ぶ『ぬいぐるみ』の様に部下Bは床に叩きつけられていた。
「リューレ様!ここは一旦引いた方が宜しいのでは?」
「確かに…何やら普通ではない事が起きているな。一度撤退して立て直すか…」
すると、リルが撤退しようとしている2人に気が付いた。
「あっ!逃げちゃダメだよ!ホカクしてジンモンしないといけないの!」
「そう言われて黙って捕まる馬鹿がいるかよ。マナよ、我を映す鏡よ、我が分け身と成って踊れ!影人形!」
リューレが魔法を詠唱すると、リューレの影が立ち上がった。見た目としては本物と区別がつかない。
「「ククク、どちらが本物か分かるまい?」」
「えー!匂いもおんなじー!!」
もし逃げられたらライトに怒られるかも知れない…。リルは考えた。頑張って考えた。
結果……リルは確実に部下を捕まえる事を選択した。
「えーい!戦闘ごっこパーンチ!」
「ぐふぅ!!」
急にリルの標的となってボディブローを喰らった部下Cは、教室の壁に叩き付けられて崩れ落ちる。
「わふーん!これで安心してリューレ追いかけれるー!」
そう言いながらリルはリューレの方を向いた。
2人のリューレは…懐から取り出した短剣を投げようとしている。
「あれ?逃げないの?それ簡単に避けれるよ?」
「「お前はな」」
リューレは短剣を放った。リルとは別の方向に。
「ぐふっ……」
「あっ!だめー!!」
短剣は部下Cの頭部へ深々と刺さっていた。
そして、2人のリューレはそのまま近くの影へと入り込み、その気配は別々の方向へと離れていく。来る時もそうだったが、ヘルマンと違って長距離移動は出来ないみたいだ。
「えっと、えっと、リルはあっちのリューレ追いかけてくる!」
「リルさん、待って下さい!」
すぐに追いかけようとしたリルをサリーが呼び止めた。
「なに?急がなきゃ!」
「相手の目的はレオさんです。もしリルさんが追いかけた方が偽物だった場合、もし本物がその間に戻ってきた場合…最悪の事態になる可能性があります」
「うー。それはダメ…」
「私達にレオさんを守れる力があれば良かったのですが…。申し訳ありませんが、どうかこの場に残って頂けませんか?」
「わふぅ…。分かったぁ…」
「リルさん、ありがとうございます」
サリーはリルに頭を下げた。そして、クラスメイト達に指示を出し始める。
「みんな、怪我と装備の確認。動きに影響のある怪我はロッテさんに治療してもらって下さい。かすり傷程度のものはライト先生と合流できてからにしてロッテさんの魔力を温存しましょう」
また襲われる可能性を考慮して全員が準備を始める。そんな中、リューレの気配はリルが感じられる範囲の外へと消えていった。
「わぅ…。元の姿に戻って全員すぐ捕まえれば良かった…」
リルは人間化してると思う様に動けなくて力が発揮できない。確かに神滅狼の姿に戻れば一瞬で終わっていたかも知れないが…それはそれでクラスが大騒ぎになっていた気がする。
リルがそんな事を考えていると、突然教室の中に強い存在感が現れた。ライトだ。
「みんな無事か!?」
「ライト先生!良かった…。えっと、無事とは言いがたいのですが、とりあえず全員生きてます」
「そうか…意識は無いみたいだがレオも大丈夫そうだな」
みんなの無事が確認てきて胸を撫で下ろしたライトに、リルが近付いて話しかけた。
「ごめん…。ホカクできなかった…」
「何言ってるんだ。みんなの事を守ってくれたんだろ?情報収集は二の次で良いよ。ありがとう」
「うんっ!」
リルは笑顔でライトにしがみついた。ライトはそんなリルの頭を撫でる。
「まぁ、理由は何となく分かるしね。魔族の強行派か…」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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