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刺客

「時間…稼ぎ?」

「そうよ。暫く学園を混乱させて欲しいっていうのが依頼人の要望なの。そろそろ依頼人も目的を果たしたんじゃないかしら?ちょっと予定より短いけど貴方を引き留めておいたんだから十分よね」


 色々話してくれるなぁと思ったら…俺をここに留めておく為だったのか…。


「まんまと踊らされた様だな。話した内容は嘘だったのか?」

「さて、どっちでしょ〜?なーんてね。話した内容は本当よ。信じるか信じないかは貴方次第・だ・け・ど!ねぇねぇ、どっちだと思う?」


 こいつ…。いや、ここで更に時間を費やすのは避けたい。


「依頼人とやらの目的は何だ?」

「ふふふ。そんなこと言うと思ってるの?」

「既に目的を達してるのなら言っても良いんじゃないか?言わないなら……言いたくなる様にするしかないが」

「えー。こわーい。拷問とかされちゃう感じ?」


 あまり本気に取られてないっぽいな…。まぁ実際何をするか思いついてないしね。

 うーん。パッと思いつくのは…。


「コクヨクに紐で括って引っ張ってもらうか。あぁ、コクヨクというのはアリコーンの名前だ」

「それ…拷問って言うか処刑方法じゃないの…」

「地面ならそうかもな。俺としては空を高速で駆けて貰おうと思ったんだが」

「…………。」

「生身のまま地上1000メートルを音速で振り回されるなんて、なかなか出来る経験じゃないぞ」

「…………。」


 伊藤の催眠術は厄介だけど身体能力はそんなに高くなさそうだ。

 俺がその気になればいつでも捕まえられる。っていうのは反応を見る限り理解してるみたいだな。


「ただ、紐が耐えられるか…と言うか、無理か。まぁ紐無しバンジーも楽しいんじゃないか?」

「中等部よ…」

「何がだ?」

「中等部にいるレオ(・・)っていう男の子に用があるらしいわよ。私になんてかまってないで早く行ってあげたら?」


 俺の背中を…悪寒が走り抜けた。


「何だと…」

「その子の魔法属性がナンタラって…きゃあ!」


 俺は伊藤の背後に転移すると雷魔法のスタンガンで気絶させた。後で回収するから暫く眠っていて貰おう。

 そして、俺はそのままE組の教室へと転移した。


 間に合ってくれ…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 --30分前。


「男子達…本当に大丈夫かしら?」

「駄目だと思うにゃ〜」

「心配だね…」


 席に座ったままボーッとしている男子達を見てルナとチャーリーが心配そうにしていた。タマはそんなに気にしていない感じだ。


「そう言えば…他意は無いのですけど、チャーリーは平気なんですのね」

「うん。意識はハッキリしてるよ…」

「まぁチャーリーの心は女の子なんですから当然と言えば当然なのかしらね」


 女子達がそんな話をしていると、人の姿のまま机の上で丸まって寝ていたリルが不意に目を覚ました。


「わふ…。ねぇ、何か近付いて来てるよ?」

「まぁ廊下は何人か歩いてますわね」

「えとね。そういうのじゃなくて、もっと強いの」


 リルは何か強い存在の気配を感じていた。実は相手は気配を消しているつもりなのだが…。

 それが段々と教室に近付いて来ている。


「気配かにゃ?んー…タマには分からないにゃあ」

「ちょ、ちょっと待って!」


 リル達の会話を聞いていたサリーが何かに気付いた様子で驚いた表情をしていた。そして、そのままリルに質問をする。


「リルさんが…強い(・・)って感じる相手なんですか?」

「うん。いま近付いて来てるのは強いと思うよ?」


 クラスメイトという事になってはいるが、リルの実力が自分達と桁違いである事はクラスの全員が理解していた。

 その中でもサリーは、その差は1桁や2桁では収まらないと考えている。


「みんな!戦闘準備!周囲を警戒してっ!!」

「え?え?急にどうしたんですの?」


 女子達は各々の武器を構える。しかし、男子達は無反応なまま椅子に座り続けていた…。


「…きた!」


 リルは地面を蹴ると一瞬でレオの横へと移動した。そして、レオの影(・・・・)から伸びる槍を掴む。

 すると、影の中から声が聞こえた。


「な…何故気付いた!?」

「えっとね。ヘルマンみたいに気配が出たり消えたりしてたよ?ずっと誰かの横だったから近くの影を移動してるのかなって思ったの」

「チッ…」


 声からすると若い女性の様だ。

 リルが槍を引っ張ると布で顔を覆った黒装束の女がレオの影から飛び出して来た。


「何なんだお前は?折角ターゲットを木偶にさせたっていうのに…」

「リルはリルだよ!」

「邪魔だな…先に()るか…」


 女は鋭い視線でリルを見ながら物騒な言葉を口にする。しかし、リルは全然気にしていなかった…。


「ねぇねぇ!」

「……なんだ?」

「他のちょっとだけ強い3人は出て来ないの?」

「………チッ。不意打ちは無理そうだな。出て来い」


 女が指示をすると、女の影から黒装束の男が3人現れた。3人はリルに向けて剣を構える。


「リューレ様。如何致しますか?」

「全員殺せ」

「はっ!」


 そう言うと、リーダーの女がリルに襲い掛かった。


「お前の相手は私だ!」

「え?ダメ!4人ともリルと戦うの!!」

「そうは行かん。部下が目的を果たすまで私と遊んで貰おうか。聞きたい事もあるしな」


 そんな部下の1人はルナへと斬り掛かっていた。チャーリーとサリーが助けに入るが3対1でも押されている。

 もう1人はタマとロッテに襲い掛かった。その実力は本物で接近戦が得意なタマでも身を守るので精一杯だ。


 そして最後の1人は……危険が訪れているのに全く動く気配が無いレオの元へと向かっていた。

 リルがレオを助けに行こうとするが女が邪魔をする。一定の距離を維持しながら影から伸びる無数の闇の槍がリルを牽制していた。


「ダメ!!じゃまー!!」

「くふふふ…。行かせませんよ?」


 部下Cの刃がレオの首へと襲い掛かる。

 誰も止める事が出来ずレオの首が飛ぶ…と思われた瞬間、部下Cとレオの間に空気の塊が発生して部下Cを弾き飛ばした。


「おい!何が起きてんだ?こいつら何だ?」

「ゾハルないすだにゃ!」


 レオを救ったのは最近まで停学していたゾハルだった。ゾハルはレオと部下Cの間に割って入ると部下Cに向けて剣を構える。


「貴様…何故男が正気を保っている?」

「遅れて来たら校内の様子がおかしかったからな。変な匂いが怪しいと思って風魔法で正常な空気を維持してんだよ」

「器用な真似を…」

「これでも中等部トップの風属性使いなんでな」

「面倒な…」


 攻めあぐねているのは部下Cだけではなかった。ルナに襲い掛かった部下Aが女へ報告を行う。


「リューレ様。この者達、無詠唱で魔法を…。防御に専念されると時間を要する可能性が…」

「チッ、情けない。役立たずが」


 リューレは即座に考える。リルとか言うチビを1人で抑えている間に部下にターゲット(レオ)を殺させる……ことは無理そうだ。危険なのはこのチビ1人。それならば全員掛かりでこいつから消す方が良さそうだ…。


「ちゃんとリルと戦おうよー!」

「仕方がない。お前から相手をしてやる。だが、殺す前に聞いておく事がある」

「なーにー?」

「何故、行方不明となっているヘルマン様の事を知っている?まさか今どちらにいらっしゃるのかも知っているのか?」

「知ってるよ!ライトに負けてあの世(・・・)って所に行ったんだって!」


 リルの言葉を聞いてリューレは一瞬フリーズした。しかし、すぐに復活すると頭を横に振って苦笑する。


「笑えぬ冗談だな」

「冗談じゃないよ。アクル王国で貴族やってた魔族のヘルマンでしょ?」

「そうか………貴様を殺してからライトを問い詰めることにしよう。お前達、先にこのチビを()るよ!」

「はっ!」


 部下達がリューレの元に集まる中、リルはライトの言葉を思い出していた。ライトは『もし生徒達の命に関わる事があったら……全力で排除して良いからな?』と言っていた。


「レオが殺されそうだったって事は……戦闘して良いってことだよね?わふぅ♪」


 リルが嬉しそうにリューレ達を見つめていた。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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