混乱は突然に
「最近良い匂いしない?」
「するするー!嗅いだ事が無い匂いだから新しい花でも植えたのかな?」
正門から校舎へと続いてる道を歩いていたら女生徒達の楽しそうな話し声が聞こえてきました。
仮面の所為かな?俺には分からないんだよね。でも…。
「くちゃい…」
リルが自分の鼻を押さえて辛そうにしてる。リルの良過ぎる鼻には臭く感じるみたいだ。
「やっぱりリルには臭いんだね。人間の姿でも辛そうだから狼の姿になったらもっと辛いのかな?」
「うん…もっと嫌な臭いがすると思う!」
「そっかぁ…。嫌な臭いってどんな感じなの?」
「んとね。何だかいっぱい混じってるよ!」
匂いが混ざってる?じゃあ花の匂いとかって訳じゃないのかな。
「そうなんだ?何が混ざってるのか分かったりする?」
「えっとね、甘い匂いとかスースーする匂いとかお酒みたいな匂いとか…色々だよ!」
そんなに混じってるのか…。そうなると確かに匂いがキツそうだけど、人間には良い匂いに感じるって事は絶妙なバランスで作られてるのかな…。
「じゃあ強過ぎる香水って感じなんだね」
「んー。そうなんだけど…。その中に凄く気持ち悪い臭いが隠されてるって感じなの」
「隠されてる…?」
この匂いは人工的に作られた感じだと思う。だとしたら誰かが何かしらの目的を持って意図的にやってる可能性があるって事だよね。
一応後で学園長に言っておくか…。
………。
……。
「くっさいにゃあぁぁああああああ!!」
教室に来てみたらここにも被害者がいた。
「獣人族には臭く感じるのか?」
「臭いにゃ!みんなが良い匂いとか言ってるの意味不明だにゃ!」
「人族が付ける香水とかはどう感じるんだ?」
「臭いにゃ!でもこれよりはマシにゃ!」
香水より臭く感じるのか…。やっぱりリルが言ってた隠されてる臭いが原因なのかな?
「そうか?すげぇ良い匂いだと思うけどな…」
「そうですね…。私もずっと嗅いでいたい気分です…」
「私も良い匂いだとは感じますけど……2人とも大丈夫ですの?」
レオとルーカスとルナにとっては良い匂いらしい。でも明らかに3人の状態は違っていて、ルナがレオやルーカスの事を心配している。
と言うのも2人の目がトロンとしてて意識が怪しい感じなんだよな…。
「ライト先生、何だか男子達の様子がおかしいですわ」
「そうだな。やはり匂いが関係してるのか?」
「状況的にはそうっぽいにゃ」
何かしらステータスにヒントが出てるかも知れない。魔眼でステータスを確認してみよう。
うーん……やっぱり呪いじゃないね。怪我もしてない……あれ?でも状態異常になってる。半トランス状態??
初めて見たけど、半トランス状態って何だろ?バスなら何か知ってるかな?
(バス。半トランス状態って何か分かる?)
『前頭前野の活動が低下してる状態っす!』
分からん…。
えっと、前頭前野って脳の一部だっけ?それしか分からないな…。
(どうしたらその活動低下状態になるの?)
『ドーパミンやノルアドレナリンが大量に分泌されるとなるっす!逆にセロトニンの分泌が低下してもなるっすよ!』
さっぱり分からん…。
とりあえず魔力は感じないし、医療ドラマに出てきそうな言葉からすると医学的な何かかも知れない。学園にはそういうのが得意な先生もいたはずだ。
これは『後で』とか言ってる場合じゃなさそうだな…。
「リル、学園長室へ行ってくるから男子達の様子を見ててくれ」
「うん!いーよー!」
「もし生徒達の命に関わる事があったら……全力で排除して良いからな?」
「え?いいの!?わふぅ!楽しみー!!」
いやいや。何も起きないのが1番だからね?
………。
……。
コンッコンッ…。
「マーロン学園長。いるか?ライトだ」
「はぁ…はぁ…。良い所に来てくれたのぅ…。入って良いぞ…」
何だか辛そうな声が聞こえてきた…。俺は急いで扉を開けるとマーロン学園長の姿を探す。
いた…。自分の机じゃなくてソファに横たわってる。
「大丈夫か?」
「すまんのぅ…。原因は分からんのじゃが身体が熱くなって意識が朦朧としてきたんじゃ…」
「学園長もか。男子生徒を中心に学園中の様子がおかしい。どうやら匂いが関係してそうだ。香や薬学に詳しい教諭とかいないか?」
「匂いじゃと?あの甘い匂いか?なるほどのぅ…。それならば魔法薬学のマリー先生じゃな…」
やっぱり関係の深そうな授業はあるみたいだ。
「マリー先生が何処にいるか分かるか?」
「そんなの分からんわい…」
そりゃそうだ…。全先生の行動を細かく把握してる訳がない…。
「じゃあ俺はマリー先生を探してくる。学園長は1人で大丈夫か?」
「うむ。ワシなら大丈夫じゃ。悪いんじゃが宜しく頼むぞぃ…」
という事で、マリー先生を急いで探しに行きましょう!
と思ったら部屋の外から大きな音が響いてきた…。
ドォオオオオン!ガラガラガラガラ…。ドォゴン!
何だ?まるで爆発したり何かが崩れてしまった様な…そんな感じの音だ…。
「な、何事じゃ!?」
「全く次から次へと…。学園長はここで大人しくしていろ。俺が対応してくる」
「そ、そうか。悪いが頼むぞい…」
俺は部屋を出てから爆発音のした方向へと走った。そして、現場に近付くにつれて状況が分かってくる。
「うわー。校舎の一部が崩れてる…誰だよこんな事したの…」
「ライト先生!みんなを止めて下さい!」
え…………双葉?
昔から良く聞いている声が聞こえた。珍しく焦ってる感じがする…。それに『みんな』って…どういう事だ?
「先生!こっちです!!」
双葉の声は崩れてる場所の下の方から聞こえた。どうやら誰かと戦ってるみたい……え?これは…どういう事だ??
俺の目に映っていたのは、暴れ回るクラスメイト達の姿だった。
暴れているのは男子だけか…。何やってるんだよ…和也…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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