作成依頼
「チャーリー。お前専用の設備を作っておいた」
「え?ライト先生、何の話…ですか?」
そう言いながら俺は教室でチャーリーにネックレスを差し出した。指輪の方が安全かな?とも思ったんだけど、指輪のサイズとか知らないし…。
「これは魔道具だ。魔力を込めるとゲートが開かれる。行き先は山の中に作った建物だから好きに使ってくれ」
学園内の土地を売って貰う事も考えたんだけど、それはそれで衆目を集めてチャーリーへの批判原因になりそう…って思ったので魔道具研究所の隣に新しい建物を作る事にしました。リッケルトで宿屋を新築した時の感じだね。
そして、時空属性魔法を使って黒翼号の扉みたいに直接繋げたって訳です!
「そんな…悪いです…」
「本当は根本解決してやりたい所なんだが、なかなか難しくてな。せめてもの暫定対処だ。チャーリーの事を心配してる人達の為にも受け取ってくれ」
「そう言われても…」
チャーリーは申し訳なさそうにしてなかなか受け取ってくれません。すると、話を聞いていたレオが後押ししてくれました。
「チャーリー、受け取っておけよ。お前が辛い思いをしてないかっていつも心配だったんだ。これで俺達としても安心だぜ」
「だ、そうだぞ?」
そう言うレオや俺の事を見てチャーリーが優しく微笑んだ。
「分かり…ました。ありがとうございます!」
「ねぇねぇチャーリー。どんな感じか見せてよ」
「私も気になるにゃ!」
「えっと…みんなに見せても大丈夫…ですか?」
チャーリーが俺に確認をする。当人達が問題無いなら勿論構わないよ。あくまで『チャーリーと共用したくない』って人と分ける為だし。
「俺は『好きに使ってくれ』と言ったぞ?チャーリーが良いのなら、別に問題はない」
「ありがとうございます!」
笑顔で礼を言うとチャーリーはネックレスに魔力を込めた。チャーリーの正面にゲートが開かれる。そして、女性陣は我先にとゲートへ潜って行き、全員が入るとゲートが閉じられた。
あの…初めて使うアイテムなんだからもう少し注意した方が良いんじゃないかな?みんな随分と時空属性に慣れたね…。
そうやって少し驚愕している俺にレオが話し掛けてきた。
「先生、ありがとな」
「俺の為でもある。気にするな」
「分かったよ。でさ、話変わるんだけどクラス対抗戦の組み合わせってもう決めた?」
決まってない…。実はいま凄く迷ってる所なんだ。
クラス対抗戦の代表者は各クラス9人で、4人組の団体戦が1回と個人戦が5回。団体戦が2ポイントで個人戦が1ポイントだから…つまり7ポイントを奪い合う感じらしい。
「難しいな。E組に人数的な余裕は無い。そして、戦闘向きなのとそうじゃないのがいる。団体戦は2ポイントだが、そこに戦闘向けなのを集めると個人戦で負ける可能性が高い」
「だよな…。他のクラスだと個人戦向けなのと集団戦向けなので分けたりするんだけど…」
「悪いがもう少し考えさせてくれ」
「分かったよ。まぁ、そもそもゾハルが間に合うのかって問題もあるしな…」
そうなんだよね…。このクラスには、まだ会った事がない停学中のゾハルって生徒がいる。暴力事件を起こしたのが原因だって話だけど…。
「E組の中だとあいつが1番強いんだけどな…。あ、女子達が帰ってきたみたいだぜ」
ホントだ。教室にゲートが現れた。
向こうでネックレスを使うと元の場所へと繋がるゲートが発生するって仕組みになってます。
「羨ましいにゃ〜」
「トイレもシャワーも豪華だったね〜」
「私達にも貸して欲しいですわね…」
ゲートから出てくるなり女子達がブツブツ言い出した。そりゃあせっかくの新築なんだから出来る限り良くするさ。
「あのお湯が出てくるシャワーは何ですの?お湯を溜めてあるんですの?」
「いや、勇者の仲間である生産パーティが作った魔道具だ」
「便座もヌクヌクだったにゃ。離れられなくなったにゃ…」
「それも生産パーティが作ったものだ」
「へぇ…。勇者の仲間って…凄いんですねぇ…」
クラスメイト達は現代日本に比べて生活レベルが下がってるのが辛かったらしく現代文明の再現を生産パーティに依頼してたらしい。
そう言えば、現時点で現代的なアイテムが広まってないのは何でなんだろう?過去に召喚された人達は作らなかったのかな?
それにしても…一瞬サリーちゃんの目がレイオス商人のロンドさんみたいに見えたんだけど…。たぶん気のせい…だよね?
「タマちゃん。ちょっと人探しを手伝って貰って良い?」
「もちろんだにゃ!サリーのお願いを断る訳ないにゃ!タマに任せるにゃ!」
サリーとタマは両手でハイタッチをした。仲が良くて微笑ましいな。
「という事で先生、私達はちょっと出てきますね」
「ん?あぁ、気をつけてな」
なんだろう…。ちょっとだけ不安なんだけど…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「こんにちわー。えっと、生産パーティのコンドウさんですよね?」
「な、なな、何ナリか?確かに吾輩は近藤ナリが…」
「私はライト先生のクラスのサリーって言います。お話ししたい事がありまして、少しお時間宜しいですか?」
高等部の廊下でサリーは近藤に笑顔で話し掛けた。しかし近藤は不審そうな視線をサリーに向けている。
「手島氏以外の女子から話し掛けられるなんて久し振りでビックリしたナリ…。吾輩に何か用ナリか?」
「私、コンドウさん達が作られたトイレやシャワーの魔道具を見たんです。あれは…素晴らしい物です!世間に広めるべきです!!一般販売のご予定は有るんですか?販路等は決まってるんですか!?」
「ちょ…ちょっと、落ち着くナリ…」
サリーの質問を聞いて近藤は納得した様な顔をする。そういう話でもない限り見知らぬ美少女が自分に話し掛ける訳がない…といった感じだ。
「そういう事ナリね。残念ながら販売用には作ってないナリ」
「それは何故なんですか?」
「単純に大量生産する環境が無いナリ。それに持ってる魔石が全然足りないナリよ」
「つまり『やらない』のではなく『やれない』という事ですね?問題が解消されれば販売する事もやぶさかではないと!?」
サリーが近藤へと詰め寄る。気圧された近藤は2歩ほど後ずさった。
「な…なんか怖いナリ…」
「あ、ごめんなさい…。ついつい熱が…」
「確かに『やれない』というのも理由ナリが、その他にモチベーションの問題も有るナリ。クラスメイトに頼まれたから作ったナリが、吾輩としてはもっと面白い物を作りたいナリよ」
「そう…なんですね。残念です。では…」
サリーの提案に近藤は乗り気じゃない感じだ。しかし、実はサリーの本題は別件だった。そして、サリーが本題の話をしようとした時、後ろからタマが顔を覗かせる。
「にゃにゃ!サリーが先に見つけちゃったにゃ?」
「あ、タマ。実はまだ相談中な「猫ミミー!!」
近藤の心からの叫び声が広い廊下へと響き渡った。
「うっさいにゃ…」
「ど、どうしたんですか?」
「ね、猫耳ナリ!本物ナリ!?」
タマを見ながら狼狽える近藤を見て、サリーは『ははーん…』という感じでニヤリと笑った。
「近藤さん。実は作ってほしい物があるんですよ」
「作成依頼…ナリ?そんな事より今は…」
サリーはそう言うと、チラッと一瞬だけタマの事を見てから視線を近藤へ戻した。
「ご満足頂ける報酬も準備できそうかなー…なんて」
「………。その話、詳しく聞かせてもらうナリよ……」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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