チャーリー
「おい、ちょっと付き合えよ。悪い様にはしねぇからさ」
「や、やめてください…」
夕方の特訓が終わった後に教室へと向かっていたらチャーリーが知らない学生に絡まれていた。タチの悪いナンパみたいな感じかな?
「おい、何してるんだ?」
「は?俺に言ってるのか?俺はこいつの噂を聞いたから見にきたんだよ」
チャーリーが美少女だって噂かな?チャーリーに好かれたいんなら、こんな嫌われる行動やめれば良いのに…。
「とりあえずその手を離せ」
「うっせぇな!テメェには関係ねーだろ!?向こうに行ってろよ」
思いっきり関係あると思うんだけど…。中等部ではEクラス以外関わってないから俺の事を知らないのかも…。
「関係はある。チャーリーの副担任だ。まぁ副担任じゃなくても割って入るがな」
「ちっ、教師なのか…」
「あぁ。教師だから今は優しく接してる。最後の忠告だ。その手を離せ」
俺は少しだけ魔王覇気を出した。本当に少しだけなんだけど相手の男は見る間に顔が青ざめていく…。
「う…うぁぁぁぁぁ…。す、すいません!ただの興味本位だったんです!D組に気持ち悪いやつかいるって聞いて…」
おい…。それは女の子に使って良い言葉じゃないだろ…。
「う…うぐ…ゔぐぐぅぅ………」
「せ、先生!落ち着いて!私は大丈夫だから!」
あ…れ?どうやら無意識の内に魔王覇気が強くなってたみたいだ…。失礼な生徒を見てみると白目で泡を吹きながら気絶していた…。
「やり過ぎたか。まぁ外傷も無いし大丈夫だろう」
「あの…保健室に連れて行った方が…」
「この後俺が連れて行くから心配するな。ところで、こういう事はよく有るのか?」
「はい…。ときどき…」
酷いな。でも、俺の特訓を受けてる今のチャーリーならこいつくらい倒せそうなものだけど…。
「チャーリー、お前は既にこいつより強いと思うぞ?何故やり返さなかったんだ?」
「それは…そうかも知れません…。でも、無闇に人を傷つけたくなくて…。教わった事を暴力にしたくなくて…」
なるほど…。チャーリーにとっての戦闘訓練は武術というより武道なのかも知れない。スポーツと言っても良いかも。
命の価値が安いこの世界では甘い考えなんだと思うけど…暴力が嫌いなチャーリーの優しさを可能な限り尊重してあげたい…かな。でも…。
「分かった。率先して戦闘しろとは言わない。しかし、本気で身の危険を感じたら防衛はしてくれ。お前が傷付くと悲しむ奴がいっぱいいるって事を忘れるな」
「え?あ…はい…。ありがとうございます」
無抵抗主義な人もいるけど、それはそれで凄い事だと思うけど、やっぱり僕は大事な人達が傷付けられるのは嫌なので…。
「後は更衣室で着替えて帰るだけだろ?もう暗くなるし早く帰って疲れを取った方が良い」
「そうですね…。あの…それでは失礼します…」
チャーリーは俺にお辞儀をすると、そのまま走り去って行った。
さて、俺はこの失礼な生徒を保健室まで運んであげますか…。
…………。
………。
……。
「きゃーーーーー!!」
「え!?わ、悪い!!」
俺はチャーリーに謝罪をしてから即座に教室を出た。
な…ななな…何でチャーリーが教室で裸になってるの!?お、落ち着け俺…。えっと、状況をまとめると…。
気絶した生徒を保健室へ連れて行って軽い説教をしてからゲートで教室に来たんだけど、ゲートを出ると更衣室に行ったと思っていたチャーリーが教室で着替えをしていた…のか……。
まさか女子が着替えをしてるなんて予想外だ…。悪意は無いよ!本当だよ!!
「改めて悪かった。決してわざとじゃない。以後気をつけるので許してくれ」
「は…ははは…はい。私もごめんなさい…。大丈夫…です…」
「それじゃあ俺は帰るな?また明日」
「はい。また明日…」
壁を挟んで教室内のチャーリーに改めて謝罪をした結果、一応許してはくれました。一応ね…。
今日はもう帰ろう…。そして、リルと遊んで気持ちを落ち着かせよう…。
という事で、俺は魔道具研究所へ繋がるゲートを開くと逃げる様に飛び込んだ。そして、教室に1人で残されたチャーリーは少し呆けた後に自分の身体を見つめる。
「み…見られ…ちゃった…?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー2日後。
あれから特にチャーリーから怒られたりはしていない。今まで通りな感じだ。
なんだけど…何だか他の生徒達の視線に違和感を感じるんだよな…。
すると、レオがみんなを代表する感じで俺に話しかけてきた。
「ライト先生、ちょっと話があるんですけど…。放課後に時間貰っても良いですか?」
みんなにも聞こえる声量だ。全員が把握してる内容みたいだな。レオの言葉を聞いたチャーリーが若干緊張するのを感じたから…もしかしたらチャーリーの話なのかも知れない。
みんなから『デリカシーが無い!先生サイテー!!』って怒られるのかな…。覚悟を決めなくちゃ…。
「あぁ、分かった。ちなみに今でも大丈夫だぞ?」
「ありがとうございます。でも…」
あ、レオの心の準備も必要だったかな?何だか『急に振られても…』って感じの困った顔をしてる。
「話は早い方が良いにゃ。レオ、いま話しちゃうにゃ!」
「マジか…。分かったよ。じゃあ今話しちゃいますね?」
「予定を狂わせたみたいで悪いな。俺は大丈夫だ。で、何の話だ?」
「その…話っていうのはチャーリーの事です」
やっぱりチャーリーの事だったか…。
「見たん…ですよね?」
「あぁ。チャーリーには悪い事をした。これからは教室への直接移動は控える」
「あ、それは別に良いんですけど…」
あれ?教室への直接移動しても良いの?そしたらまた事故が起きるかも知れないけど…。普通は更衣室を使うから平気なんだろうけど、チャーリーが教室を使うなら駄目だと思うな。
「って事は、もう知って…るんですよね?」
「何の事だ?」
「チャーリーが…………本当は男だって事です……」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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