女性陣の企み
今回の話でちょうど200話になります!
いつもお読み頂きありがとうございます!
「あ、リルちゃん…だっけ?」
「うん!リルはリルだよ!」
学園の廊下で双葉がリルに話し掛けていた。たまたま廊下でリルと聖女パーティがすれ違ったのだが、リルに気付いた双葉が近付いていった形だ。
「アクル王国の王都で会ったの覚えてるかな?この前のダンジョンに行く時にもリルちゃんに気付いてたんだけど、話し掛けようと思ってたらバラバラになっちゃって…気になってたんだ」
「覚えてるよ!女の子泣かして奴隷にしようとしてたトレ…なんだっけ?に怒ってたお姉ちゃん!」
「そうそう。トレイラル伯爵の息子ね。覚えててくれて嬉しいな!」
話した時間が短かったのもあって双葉は忘れられてる可能性が高いと思っていた。しかしリルがはっきり覚えていたのでとても嬉しそうにしている。
しかし、実は顔ではなくて匂いで記憶されていた。リルが匂いの記憶を忘れる事はまずない。
「ちゃんと自己紹介できてなかったね。私はフタバ・タチバナ。こっちの可愛い子がレナ・シラトリで、こっちの美人さんがサキ・ニシナだよ」
「その紹介のされかたは初めて…」
「双葉ちゃんはいつもこういう紹介するんだよ。私なんて全然可愛くないのに」
「「それは無い!」」
即座に双葉と仁科に否定されるが、白鳥としては頬を膨らませて納得していない様子だ。
「でも、透くんはそう思ってくれてなさそうだし…」
「透が変なだけだから気にしちゃダメだよ。麗奈より可愛い子なんていないんだから」
「白鳥さんの気持ちに気付かない時点で残念な性格だよね」
「そもそも透って恋愛感情がお子ちゃまなんだよ。昔さ…」
リルは女性陣が話している『透』が『トール』であり『ライト』である事を知っていた。トールから聖女パーティ達は知り合いだと説明されている。
しかし、和也以外の事はよく分かっていないというのが正直な所だった。
そして、女性陣が透の話で盛り上がっている中、そんな和也がリルに話しかける。
「よっ!俺の紹介は不要だよな?で、こっちの大きいのがシュウヘイ・タナカだよ」
「よろしく頼む」
「よろしくねっ!」
とりあえず田中との挨拶を済ませると、リルは気になっている事を和也に聞いてみた。
「ねぇねぇ和也。あの2人はトールのツガイになりたいの?」
「ぶはっ!な…ななな、何言ってるんだよ!?」
「違うのかな?トールの話をしてる時の感じからそんな気がしたんだけど」
「さ、さぁ?どうだろうね?た、田中はどう思う?」
「俺に振るなよ…」
リルの突然の発言に恋愛偏差値の低い男達はただただ狼狽していた。
「リルはねぇ。いつもライトが『可愛い、可愛い』ってなでなでしてくれるよ!」
「そっか…。良かったね」
「うんっ!」
どうやら、リルは2人よりも可愛いと言って貰えてると理解して嬉しくなってるみたいだ。
そして、リルを放ったらかしにしている事に双葉が気付いた。
「あ、ごめんなさい。コッチで盛り上がっちゃって…。リルちゃんって凄く強いと思ってたらライト先生のパーティメンバーだったんだね」
「うんっ!ライトといっしょ!」
「そっか。良かったら今度ライト先生の事を教えて貰えないかな?」
「えー…良いのかな?」
双葉から何かを企んでそうな怪しいお誘いがあった。リルは透から『トール』や『ライト』の情報は秘密にする様に言われていたので、話して良いのか迷ってるみたいだ。
「あ、教えられる事だけで良いよ?」
「そうなんだ?それなら大丈夫!」
「やった!ありがとう!それじゃまた今度ね?」
「うんっ!またね!」
リルは単純に『教えても良い事なら教えても大丈夫』と思ったみたいだ。そもそも教えても良い事って何なのか…。
双葉はニコニコしながら、和也は不安そうな顔をしながら自分達の教室へと歩いて行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「やっぱりチャーリーが1番ですわね」
「え、私?そ、そんな事ないよ…」
「ダントツだにゃ〜」
今は昼休みなんだけどタマの席に女子が集まって何やら話してる。
何を話してるのか全く気にならないって言ったら嘘になるけど…男が割って入るべきじゃないよね。
「ライト先生は誰が1番可愛いと思うにゃ?」
おぅ…向こうから話し掛けられてしまった…。と言うか、これってどういう意味なんだろう?
日本でもアイドル雑誌とか見せられながら聞かれて困ったなぁ…。
「急にどうした?質問の意図が分からないんだが?」
「だから、クラスの中で誰が1番可愛いと思うのかを聞いてるにゃ」
うーん…。やっぱり分からない…。
リルは生徒って言うか相棒だから別だよね?
「単純に答えるなら、みんな可愛いと思うが?」
「違うにゃ!今求めてるのはそういうのじゃないにゃ!もっと生々しいのだにゃ!」
えー。話に出てるチャーリーも、タマも、レオとかルーカスも可愛く思ってる…けど?
「そう言われてもな…。可愛いって『愛おしく感じる』って事だろ?生徒として全員同じくらい可愛く思ってるぞ?」
日本でも本当に困ったんだよね…。アイドルとか詳しくないから性格とかも知らないし、愛おしく感じるかなんて分からないよ。
でも逆に、このクラスの生徒達は全員好きだから順位なんて付けるのは難しいんだよね。
「いつも淡々とされてるので、そう思って頂けてるとは思いませんでしたわ…」
「可能な限り第三者からそう見えない様に努力してるからな」
俺は正直な気持ちを言ったんだけど…何だかタマがフルフルしてて『怒り爆発しそう!』って感じになってる…。
「だからそういう事じゃないにゃ!顔の話だにゃ!」
顔?つまり外見が整ってるかって話なのか。でも、みんな整った顔立ちしてると思うしなぁ…。
うーん…愛…。あ、外見だけで愛でたくなるかって事か!なるほどなるほど、何となく分かってきたぞ!
「ちなみに、今1番人気なのはチャーリーだにゃ」
なるほどね。チャーリーは確かに整った顔立ちだと思う。でも、外見から愛でたくなるなら…。
「それなら俺はタマに1票だな」
「…………にゃ!?び、びっくりしたにゃ!理解するのに時間掛かったにゃ!」
あくまで『クラスの中なら』だけどね。クラス以外でリルを除いた場合は……。んー、あの人かなぁ……。
「ま…まさか私にも可能性があるのかにゃ…?」
「可能性?何の事か良く分からないな。ちなみに、クラス以外も含めればダリルという獣人の方が可愛かったぞ」
「にゃ!?ダ…ダリルって…」
おや?名前を聞いたタマがすぐに思い付いた感じの反応をした。知り合いだったのかな?
「二足歩行のマッチョおっさん虎だにゃ!ライト先生は…そういう趣味なのかにゃ…?」
「知り合いなのか?」
「親戚だにゃ…ショックだにゃ…。あれの何処が可愛いにゃ…?」
自分の親戚に対して酷い言い様だな…。帝国で開催された武術大会に出場してたAランク冒険者な訳だけど…。
「ふわふわの毛並みが素晴らしかったと思うが?」
「どういう基準だにゃ…」
呆れた表情のタマは急に何かを考え始めた。そして俺に聞こえない声量で呟く。
「それなら長毛種なミヌエット族のミケ姫が良いかにゃぁ…」
「どうした?」
「何でもないにゃ!こっちの話にゃ!ライト先生はもうあっち行くにゃ!」
自分から話し掛けてきたのに酷い奴だ…。
「分かった。それじゃまた放課後にな」
「さっさと行くにゃ!」
「もぅ…。タマがすいませんですわ」
結局何が知りたかったんだろう?
まぁ人間化スキルを説明できないから今回は例外にしたけど、1番可愛いのはリルのフェンリルバージョンだけどね!
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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