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特性

2023/02/25 話し方や表現等の見直しをしました。

「では早速ですが…皆さんの『特性(・・)』について調べさせて頂きたいと思います」


「特性ですか?それは何なのでしょうか?」

「そうですね…別の言い方をしますと『才能』です。戦士の才能があるのか、魔法の才能があるのか…何を覚えるのが効果的かがわかります」


 いまいち分かっていない様子で、海老原先生はキョトンとしている。


「では、まずどなたか調べてみましょう。やってみたい方いらっしゃいますか?」

「はぁーいっ!」


 即答で元気に手を上げる双葉。おいおいおい…。


「なっ、立花さん!駄目ですよ!何をするのかもわかってないのに…。まずは……先生がやります!」


 当然ながら海老原先生に止められる双葉。責任感が強く勇気もあって…正直、僕は先生の事を見直していた。


「どちらでも構いませんよ?アーティファクトに触れるだけですので特に危険もありません」

「ほらほら、安全だそうですよ。どうせ全員やるんですし、私にやらせてくださいよぉ~」

「だ・め・です!イザベラ王女様、まずは私がやりますのでお願いします」


 不満気な顔をする双葉。僕は双葉の腕を引っ張り小声で言う。


「双葉は強いから先生の安全を考えて手を上げたのは判るけど…それで双葉に何かあったら先生は凄く苦しむ事になる。今は先生に任せよう」


 頬を膨らませながら、しぶしぶ頷く双葉。よしよし。


「では、こちらの宝玉に触れて下さい。これは勇者様と共に魔王を倒したと言われる賢者様が作成されたアーティファクトです。宝玉内に特性が文字で現われます」

「わかりました。触れて…みますね…」


 海老原先生が宝玉に触れると、宝玉が輝きだし中に不思議な文字が現われる。あれ?でも…読めるぞ…?


「獣…使い?あれ…何で私はこの文字が読めるのですか…?」

「翻訳付与も成功していた様子で安心致しました。召喚魔法には、この世界の共通言語知識を付与する機能も備わっていると伝わっております」


 そう言われてみれば何故か言葉が通じているな…。文字も大丈夫みたいだ。


「それにしても獣使いですか…。異世界の方は珍しい特性を持つ事が多いと聞いておりましたが、事実の様ですね」

「珍しい…?イザベラ王女様、獣使いとはどの様な特性なのですか?」

「獣と魔力パスを繋ぎ意思疎通をする才能がおありの様です。魔力を伸ばすのが有効かと思われます」

「えっと…職業がもう決まっているという事ですか?」

「いえ、少し違います。あくまでも才能になりますので、特性は獣使いだとしても剣術の修行をして戦士になる事はできます。とは言っても、特性の能力を伸ばすのが一般的ですが」


 なるほど、特性は成長テーブルという感じかな。それと職業選択は自由だけど、才能が分かってるのに、あえて才能がない事をする人は少ないっていう訳だね。


「特殊なものとしては『勇者』等も有りますが、日頃から勇者らしからぬ行動を取っていると本当の意味での勇者にはなれない。その様な感じです」

「先生的には才能の有無よりも好きな事をやるべきだと思うのですけど…後悔しない選択をする為にも向き不向きを知る事は悪い事では無いですよね……」

「はい。才能を踏まえて選択できる事は良い事だと考えております」


 特性を調べる事の意義については納得できたみたいだ。そして、動物と話す才能がある事が判明した海老原先生に生徒達が話し掛ける。


「梓先生、動物とお話しできるなんていいなぁ~」

「ファンタジーな能力キターーーー!!」

「ファンタジーって言うかメルヘンだろw」

「あずちゃん先生に超似あってる!」


 メルヘンとか言われて顔を赤くする海老原先生。小柄で童顔だから確かに似合ってるんだよな…。

 安全だと分かった事と異世界ファンタジーを実感した高揚感で、少し場の雰囲気が柔らかくなった。


「はーい!じゃあ安全だって事もわかったので私やっても良いですよね?」


 また双葉が手を上げる。単純にやりたかっただけなのかな?はいはい、行っておいで。


「そ、そうですね。では次は立花さんやってみて下さい!」

「ふふふ。何だろ~。せっかくの異世界なんだし、私も先生みたいにファンタジーな才能がいいなぁ!」


 そして双葉が宝玉に触れると、宝玉に文字が現われる。


「え…?格闘家…?」

「ぶっ!く…くぅはっ…ぐはははははははっ!!やばい…流石双葉!超ぴったりの才能じゃんかっ!この道具の性能は証明されたなっ!!」


 僕は腹を抱えて大笑いしてしまう。だって…双葉の才能が肉弾戦って…ぷぷっ。


「透っ!後でぶん殴るから覚えておきなさいっ!!」

「悪い悪い。ほら、他の人も調べるんだから戻ってこい。ぷっ」

「高杉くん。先生は女性を傷つける発言をするのは良くないと思いますよ」


 先生に怒られてしまった…。周りを見てみると女性陣の視線が冷たい…。


「あ…はい…。すいません……」


 それから、皆の特性をどんどん調べて行く。次は佐々木みたいだな。


「それでは触れますね。ふむ…どうやら賢者(・・)の様です」


 その言葉を聞いた途端、アクル王国の人達が驚きの表情を見せる。


「えっ…本当ですか…?」

「おぉ、素晴らしい!」


 そして、表示された文字を確認する為に王女様が宝玉へと近付いて行く。


「申し訳ありませんが確認させて頂けないでしょうか…。はい…確かに賢者様ですね…」

「賢者か。まぁ確かに僕に相応しい才能ですね」


 アクル王国の人達の反応によって、クラスメイト達は凄い事が起きたんだと認識する事ができた。そんなクラスメイト達は佐々木を祝福して騒ぎ出す。


「流石佐々木だぜ!」

「よっ!クラス委員長!」

「頭が良い佐々木君にぴったりだよね!」


 王女様に関しては、どうやら神に祈ってるみたいです。そして、そんな王女様に対して佐々木が質問しました。


「伝説の特性が現われるとは…。神の導きに感謝致します」

「その伝説の特性とは何ですか?」

「魔王を倒した勇者、賢者、聖女の3つの特性はこの千年間現われていないのです。そのため伝説となっておりました」

「ふむ…。では僕の他に勇者と聖女もいるかもしれませんね。特性の確認を続けましょう」

「はい。賢者様、承知致しました」


 佐々木に促されて特性確認の続きが始まると、和也が僕に話しかけてきた。


「親友よ。そろそろ真打が登場すべきだと思うのだが、どう思うかね?」

「ん?真打って和也の事?」

「あぁ、もちろんだとも。俺の…完璧理論を聞きたいかい?」


 恰好付けてるつもりなのか、椅子に寄りかかって変なポーズで言ってくる。


「そうだなぁ。時間もあるし教えてくれよ」

「うむ。まず流れを考えると、きっとこの中に勇者と聖女はいるんだろう」


 いきなり理論じゃない所から始まった…。


聖女( ・)って言うくらいだからこれは女性だとして、残るは勇者だ。確認が終わっていない男子は5人…この中に勇者がいる!」


 あれ?女勇者の可能性は?


「そして、俺はこの中で1番勇者経験が豊富な自身がある!」

「あぁ…ゲームだけど、確かにそれはそうかもだね」

「という事で勇者は俺という訳だ。悪いな親友よ。では脚光を浴びて来るぜっ!」


 おぉ、和也がノリノリで向かっていく。大丈夫か親友よ……。

 和也は列の最後尾に並び、今か今かとか待ちきれない様子だ。そして和也の番になり、宝玉に手を乗せる。


「では行くぜっ!さぁ、勇者来いっ!!」


 輝く宝玉…そして文字が現われる。それを見てニヤリと笑う和也。え?嘘だろう…?


「ふふっ…ふはははははははっ!何てことだ…俺が……『遊び人』だとぉ!?」


 その場に崩れ落ちる親友。やばい…これは笑えないかもしれない…。


「えっと…遊び人はどういう特性なのでしょうか?」

「それが……。申し訳ないのですが…私も存じ上げない特性になります……」

「この世界の人は働き者なんですね……」


 和也…この世界で初の特性かもしれないな…おめでとう……。海老原先生と王女様が切ない会話をしている中、白鳥さんが和也に話しかける。


「和也くん!勇者より珍しい特性なんて凄いよっ!」

「あ、うん…。ありがとう…。白鳥さんもまだだったよね?やってみる?」

「そうだね。私も確認してみようかなっ」


 お、白鳥さんが特性を確認するみたいだ。きっと素敵な特性に違いない。


「えいっ!えっと…聖女(・・)?」


「だよねー」

「やっぱりねー」

「だと思った」


 クラスの皆は納得のご様子。もちろん僕も大納得だ。


「えっ?本当に聖女様なのですか…?でもこれは…確かに…。素晴らしい、伝説の特性が2人も…」

「イザベラ様、やりましたな!」


 王女様と側近ぽい人が驚きの表情で喜んでいる。


「やっぱり1番の癒しは麗奈だね!このこのぉ…可愛い奴めっ!」


 白鳥さんの事を抱きしめながら嬉しそうにしている双葉がこっちを見る。


「あとは透と城之内くんの2人だけでしょ?さっさと確認しちゃえば?」

「まったく…そんな言い方ないだろ。そんなんだから特性が格闘家とかになっちゃうんだぞ」

「後で格闘家の恐ろしさをしっっっかりと刻み込んであげるからねっ!」


 双葉とそんなやり取りをしていると、隼人が前に出て来た。


「まったく…状況が分かってるのか?じゃあ俺から先にやらせてもらうぞ?」

「あぁ、お先にどうぞ」


 そして宝玉の前に立つ隼人。本当にこの中に勇者がいるんだとしたら、僕か隼人って事か…。

 勇者とか面倒臭そうな物はお断りだな…。どうか隼人が勇者でありますように!!


「では…行くぞ」


 宝玉の上に手を置く隼人。宝玉が輝き、文字が現われる。どうか!どうか勇者は隼人にっ!!ゴクリ…


勇者(・・)だ…」


『うおぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!』


 雄叫びが応接室に響き渡る。


「おぉ!勇者様っ!!」

「うっは。マジで勇者なんていたんだ?」

「城之内くんっ!素敵!!」

「隼人!すげーぞーっ!!」

「ゆ…勇者しゃまにっ…おっお会いする事がっ、出来るなんへ…えっ…えふぅ…」


 クラスメイトもアクル王国の人も大興奮だな。泣いてる人とかいるじゃん…。


「何という事でしょうっ!勇者様がこの世界に降臨致しました!!」


 おぉ…王女様までテンション上がってる…。


「賢者様っ!聖女様っ!そして…勇者様っ!!お願い致します!どうかお力をお貸し下さい!!」

「ちょっ、ちょっと待ってください!希望が見えて嬉しい気持ちも分かりますが、約束が違います!帰還の準備ができるまで訓練をするというお話しだったはずです!」


 暴走してる王女様に海老原先生が釘を刺す。うんうん、その通り。


「あ…はい…。奇跡を目の当たりにして…つい我を失ってしまいました…。申し訳ありません…」

「先生、まぁまぁ。もしかしたら帰還準備が整う前に、俺が魔王を倒してしまうかもしれませんよ?くっ…くくっ…」


 抑えようとしても笑いが漏れ出てしまう様子で、隼人が調子に乗った発言をする。予想以上にウザイな…。


「とりあえず特性確認を終わらせてしまいましょう。あと透1人ですしね。いやぁ、何が出るか楽しみですね」


 隼人がめちゃくちゃウザイので、さっさと終わらせて離れよう。後は無難な特性だろうと思い、気軽に宝玉に手を乗せる。勇者2人目とか…無いよね?


 宝玉に文字が浮かび上がる。


 え…どういう事?意味が分からない。

 いや無い無い無い。それは無いだろう…。

 信じられない思いを胸に、僕はその文字を呟いた…。




「…………………………………………………魔王(・・)

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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