レオの原因
「おい!貴様、何様のつもりだ!?」
「えっと…悪を倒す光の使徒らしいけど…?」
Aクラスの教室へ戻った途端ザビルの取り巻きがトーマを問い詰めた。助けて貰ったのに酷い言い様だ。
Aクラスは扇型の教室でかなり広いのだが、2人は教台の前にある開けた空間で言い争っていた。
そして、トーマはミシェルから『君達は世界を救う為に選ばれた光の使徒なんだ!だから大事な人達の幸せの為に頑張らないといけない!』と言われていたのでそれを説明したのだが、実は話が噛み合っていなかった。
「ゼノン教内でのお前の立場など知るか!勝手に言い張っていれば良い!そんな事よりもお前が勝手にクラス対抗戦の代表者になる前提で話してた事について言ってるんだ!」
レオやザビルの出身地であるククルシアの国教はゼノン教ではなかった。ククルシアは領地の広さで言うと小国ではあるものの、その歴史は長くゼノン教が生まれる前から存在していたため国教も別のものなのだ。その為、ザビル達にはゼノン教の権威があまり通用しなかった。
そして、クラス対抗戦は全員参加ではない。クラス毎に人数が異なることもあり代表者が争う形になっている。つまり、リルに対して『クラス対抗戦で決着をつける』と宣言した事について取り巻き達は怒っているのだ。
「だって、代表者って強い順に選ばれるんでしょ?」
「だからなぜお前みたいな子供が選ばれると思ってるんだ!?ゼノン教の権力で無理矢理入って来たが、お前何歳だよ!?」
中等部2年は普通13歳か14歳だ。そんな中でトーマは10歳なのだから当然幼く見える。
しかしそこで、それまで静観していたザビルが話に割って入って来た。
「だったら実力を測ってみれば良いだろう?ちょうどお前がギリギリなのだから勝った方が代表になれば良いのではないか?」
つまり、この取り巻きが騒いでいたのは、トーマが代表になると外されるのが自分だからだった。
「僕はそれで良いです。貴方は?」
「も、もちろん良いとも。お前の様な子供に手を上げるのは良心が痛むがな!」
と言う事でAクラスでは代表者決定戦が行われる事になった。
このままグラウンドにでも移動するのか…と思いきや、取り巻きがその場で詠唱を開始する。
「では行くぞ!マナよマナよ…」
タイマン勝負なら詠唱を早く始めた方が有利なのがこの世界の常識だ。その為、取り巻きは不意打ちの様に勝手に勝負を開始した。
はっきり言って卑怯な行いなので、取り巻きに対する周囲の目は冷たい。
「さぁ行くぞ!今更後悔し「ピュン…」
光の線が取り巻きの太腿を貫いていた。
「え?…は?」
「もう始まってるって事で良いんだよね?」
太腿を貫かれた痛みはすぐには感じられない。しかし、段々と痛みが酷くなって行き最終的には激痛となる。
「い…痛い…痛いよ…。痛い痛い痛い!うわぁああ!!」
取り巻きは広がっていく痛みに耐え切れず床を転げながら泣き叫んでいる。
だが、周囲の視線は取り巻きではなくトーマに向けられていた。
「お前、いま無詠唱で光属性魔法を使った…のか?」
「うん。僕は光の使徒だから」
「なるほど。くくくく…」
ザビルは悪い笑みを浮かべる。そして、仰々しい仕草で周りに語りだした。
「年齢なんて関係無い!彼は我々の代表に相応しいと思うがどうだ!?」
「意義ありませんわ!」
「こんなに可愛らしいのに更にお強いなんて…」
即座に反応したのは女生徒達だった。目線が少し不穏な気がするが概ね賛成みたいだ。
「ザビル様。我々も賛成でございます」
「うむ。お前達はしっかりとトーマ君の支援をせよ。それにしても…」
ザビルは、女性陣に囲まれて困っているトーマへ目線を向けると独り言の様に呟いた。
「あの化け物の様な娘への対抗策をどうしようか迷っていたが…ゼノン教も偶には役に立つものよ…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ルーカスは『魔力制御デキテルー』で魔法を鍛えた方が良いかな?レオの属性魔法はどうしよう…。無属性しか使えないって事になってるんだよね…」
僕は魔道具研究所にあるザザの部屋でクラス対抗戦に向けた特訓内容を考えていました。すると、そこに突然大きな声が聞こえてくる。
「おーい!親友、居るー!?」
「ちょ、ちょっと!和也!」
「あ、居た居た!」
「『居た居た』じゃないよ!近藤とか生産パーティが来る事もあるんだから気をつけて!」
和也から親友とか呼ばれてたらライトの正体が僕だってバレちゃうよ。和也が『親友』なんて呼び方をするのは僕くらいなんだ…か…ら……。………。
ま、まぁ和也にはいつも世話になってるからね!今日の所は許してあげましょう!
「あ、そうだよな。ごめん…」
「まぁ、今日は近藤達は来てないし次から気を付けてくれれば良いよ。で、どうしたの?随分と慌ててる感じだったけど」
「それなんだけどさ…隼人と九嶋が行方不明になったんだ…」
…え?まさか誘拐!?それとも…。
「かけおち!?」
「いやいやいやいや、それはあり得ないっしょ。隼人が白鳥さんを諦める訳ないじゃん?」
「そっか…。じゃあ何でだろう?」
やっぱり誘拐なのかな?まさかミシェルが約束を破って…。
「モモちゃんの話では、隼人は『俺はもっと強くなる!』って修行の旅に出たみたいだね。たぶん龍彦を復活させる為のヒント探しも兼ねてると思うけど…。九嶋さんは隼人に付いて行ったんじゃないかな?」
何だよそれ…。今度会ったら寝てる間に隈取書いてまわし姿にしてやる…。
「そっか。隼人なら大丈夫だと思うけど九嶋さんは心配だね。それと、もし帰還方法が見つかった時に探すのが大変だ…」
「まぁ、隼人はイザベラ王女が帰還準備してくれてると思ってるからね…」
あー、準備が完了しそうか定期的に確認すれば良いと思ってるのか…。
「やっぱりイザベラ王女の事を隼人にも伝えておいた方が良かったかな?」
「いや、それは結果論だし、言ったらもっと面倒な事になってたんじゃないかな?」
「確かに…」
できればクラスメイトを守ってて欲しかったな…。まぁ正体を隠してる僕が言えた事じゃ無いんだけど…。
「ゼノン聖教国とかアクル王国が探してるみたいだから情報が入ったら教えるよ」
「了解!よろしくね」
さて、レオの魔法属性はどうしようかな…。呪いによる封印を解いてあげたいけど急に使える様になったら困ったりするかな?今まで誰も気付いてない事を考えると魔眼だから分かったんだろうし…。
んー、迷ってても仕方ない。本人に聞いてみよう!
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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