禁書庫
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「お帰りなさいませ。ライト様」
「あぁ。マロンも一緒だ」
「無事に会えたのですね。良かったです」
俺が黒翼車から降りると、アンフェルが恭しく挨拶をしてきた。別にここが家って訳じゃないんだけどね。
フェニックスを倒した後、勇者パーティにも黒翼車に乗って貰って一緒にスタート地点へと戻ってきていた。
「アンフェル、ただいまっす!」
「はい、お帰りなさい。おやおや、ゾロゾロと…。今代の勇者も一緒なのですね。出発時の続きでもやりますか?」
「いや、お前と争う気はない。俺が悪かった」
え?隼人がアンフェルに謝った!?
って驚く所だけど、実は隼人には事前に忠告しておいたんです。アンフェルと喧嘩しない様に!って。
禁書庫の管理をしてるのはアンフェルですからね。
「おや、しおらしいものですね。まぁそれならそれで私は気にしておりませんので」
そもそも隼人が一方的に絡んでただけだからね…。それより、禁書庫に蘇生アイテムがないか確認しないと。
「アンフェル、禁書庫のアイテムを見せて欲しい」
「はい。勿論構いませんよ」
そうだ!禁書庫の管理をしているアンフェルに聞けばすぐに見つかるかも!
「探したいのは蘇生アイテムなんだが知らないか?」
「おや、帰還アイテムをお探しだったのでは?」
おっと、龍彦の事で頭がいっぱいになってた。でも、隼人達が居る前で帰還の話は不味いな…。
「あぁ、それも探してるが蘇生アイテムの方が優先だ」
「承知致しました。お探しなのはどのタイプでしょうか?」
「タイプ?そんなに色々あるのか?」
えっと、蘇生は蘇生じゃないの?ゲームとかのイメージだけど使えば目の前で復活する感じを想像してました。
「魂の定着状況、肉体の有無や破損状況によって異なります。例えば、死んだばかりで魂が離れていない場合は肉体を超回復する事で蘇生します。時間が経過して魂が離れてしまい肉体も損傷が激しければ、肉体の再生をしてから魂の召喚及び魂の定着という内容になります」
なるほど…。そりゃ状態によって必要な工程が違うのは当然だね。ゲームとは違う…か。
「肉体は残っていない」
「それは…」
「難しいか?」
「少なくとも5年前までに回収した物の中には御座いません。あっ…」
アンフェルが握り拳で手の平を叩いた。何かを思い出したって感じだ。
「アンデッドとして甦らせるのなら可能かと。肉体が無いのならレイス等になります。成長してリッチまで至れば自我も復活致しますよ?」
つまりシルバーみたいになるって事だよね?シルバーは研究所にいる元魔道具技師のリッチなんだけど…。
悪いけどアンデッドを『生き返った』とは思えないな…。魔族の感覚かぁ…。
「だめだ。人間として復活させたい」
「承知致しました。では、ここ5年の中で回収できている事に期待するしかありませんね。倉庫は此方になります」
そう言うとアンフェルが歩き始めた。俺も付いて行こうとしたのだが、そこに声が掛かる。
「俺も探す」
「私もです」
「あ、私も」
隼人、菊川、九嶋だ。そりゃあ居ても立ってもいられないよね。でも、3人は鑑定できないみたいだから探せないと思うんだけど…。
まぁ、本人の気が済むなら一緒に探して貰おうかな。
「好きにしろ」
「あぁ、分かった」
という事で改めてアンフェルの方を見ると…壁まで辿り着いたアンフェルが壁を歩いていた。地面とは垂直に…。
「どうされましたか?倉庫はこちらになります」
壁を上り切ったアンフェルが天井に手を当てると、魔法陣が現れてからゲートみたいな闇が生まれた。
「アンフェル、それは何だ?」
「これは私の闇空間への入り口になります。ここを倉庫として利用しておりました。皆さんの入室権限は設定致しましたので、どうぞ中へとお入りください」
どうやら身体ごと入れるアイテムボックスみたいな異空間みたいだ。
俺は倉庫へ入る為に壁まで移動したのだが…何故か隼人達が付いてこない。
「どうした?」
「それは…入っても大丈夫なのか?」
どうやらビビったみたいですね。いや、正しい危機管理能力とも言えます。
そんな隼人にアンフェルが答えました。
「んー。普通は駄目でしょう。この空間内は私の領域。私が貴方を殺そうとするなら、これほどのチャンスはありません」
「なん…だと…?」
「ですから、私を信用できるのならどうぞ。私はお勧めはしませんよ?」
隼人は一瞬躊躇したのだが、すぐに覚悟を決めた目になってアンフェルへと返答した。
「行く。お前の事を信用した訳じゃ無いが龍彦を救えるかも知れないなら…」
「どうぞどうぞ。お好きな様に」
隼人の言葉を聞いた菊川は、隼人、九嶋、自分へと飛行魔法を使った。俺には掛けてくれないのか…。
ライトは風属性と土属性を持っていない事になってるので、俺は跳躍して闇空間へと飛び込んだ。
「中は真っ暗闇という訳じゃないんだな」
「はい。ベースは闇ですが、この中で光を灯せば明るくする事も可能です」
闇空間の中はレンガ調の地下室みたいな雰囲気だった。
蝋燭の灯りが点いてる感じでぼんやりと明るい。ただ、正直なところ探し物をするのには厳しい明るさだ…。
「なんだ、辛気臭いところだな。マナよ灯れ。我が道を照らせ。ライト!」
遅れて入ってきた隼人が照明の魔法を使って周囲を照らした。見渡せる様になった部屋はとても広くて200平米くらいありそうだ。
奥の方には武器とか防具とかが種類毎に綺麗に並んでいる。ただ、手前の一角には様々なアイテムが煩雑に転がっていた。
「ここか?」
「はい、ご明察の通りです。その一角にあるものがここ5年で回収したアイテムになります」
「分かった。悪いがしばらく確認させてくれ」
「悪いだなんてとんでもございません。お好きなだけご確認ください」
さて、いっぱい転がってるから全部見るのは大変だけど…頑張りますか!
俺はとりあえず転がってる剣を拾って見つめてみた。
「ミスリル製で火魔法が付与されてるな。実用的だが蘇生とは関係なさそうだ」
「凄い…。ライト先生はそんな事も分かるんですね」
「まぁな。菊川達はどうやって調べるつもりだったんだ?」
「とりあえず発動させれば分かるかなって…」
マジかー!えっと、バスさんや。止めた方が良いよね?
『何が発動するか分からないから危険っす!それに回数制限があった場合にムダ打ちになってもったいないっす!』
だよね…。でも、危険だって言っても納得しなさそう…。説得するなら回数制限かな。
「だったら止めておいた方が良いな」
「それは何故ですか?」
「強力なアイテムには回数制限が有る事が多い。蘇生ともなれば使い捨ての可能性が高いだろう。せっかく見つけても、無駄に発動させて使えなくなる可能性があるぞ?」
俺の話を聞いた3人は手に持っていたアイテムをそっと床に置いた。そして、隼人が悔しそうな顔をする。
「俺は…龍彦の為に何もしてやれないのか…」
「その気持ちは大事に取っておけ。必要な時に頑張れば良い」
「くそっ…」
そう思うなら、そもそも仲間を危険に晒した無謀な挑戦をしなければ良いのに…。さて、それじゃあ片っ端から確認しますか!
…………。
………。
……。
「これも違うな…」
真実の指輪、嘘発見器か。この指輪を付けてる奴が嘘を吐くと宝石が赤く輝くと…。これはこれで使えそうだけど、人間関係が壊れそうで何だか怖いな…。
町ではなかなか見れない高品質な武器や防具が多かったけど、効果が特殊な装備も色々とあった。他人の夢の中へと入れる帽子とか、誰でも指定した相手と念話ができる宝玉とか、蓄音機になる石とか。
偽りの姿を見破る鏡とかもあってビビったんだけど、見破れるのは隠蔽スキルまでで魔王スキルである秘匿は見破られなくて助かった…。
それにしても蘇生系のアイテムが見つからない…。と考えていたら隼人から小声で話し掛けられた。
「ライト先生。気になってた事があるんだが聞いても良いか?」
「何だ?」
「何故、あの魔族はライト先生に敬語だったんだ?」
あー。確かに魔王だと認識されてからの敬う様な姿勢は気になっちゃうよね…。どうしよう…。
「それはだな…。お前達を逃した後に奴と戦ったんだが俺が勝ってな。どうにか従わせる事ができたんだ」
「そうなのか…。俺じゃ手も足も出なかったのに…」
まぁ嘘って程でも無いよね?戦ったし、アンフェルが白旗あげた感じだったし…。
「あと、もう1つある。ライト先生は地球への帰還アイテムを探してるのか?この世界の人間が何故だ?」
やっぱり聞こえてたか…。うーん。完全な嘘を吐くのも何だしな…。
「あぁ、それはお前達の為だ。お前達は自分達の世界に帰りたいんだろう?」
「俺達の為?何故なんだ?何が狙いだ?」
「別に変な狙いは無い。袖擦り合うも他生の縁と言うだろう?教師として生徒を助けたいと思っただけだ」
「そうか。でも帰還方法ならイザベラ王女が準備してくれてるぞ?」
………………え?何を言って…。
あー!イザベラ王女が帰還準備をしてなかった事は隼人達に言ってないって和也が話してたな。そっか、そういう認識なのか…。
「それは知らなかった。では余計なお世話だったかも知れないな」
「そうだな。まぁ、理由は分かった」
上から目線は気になるけど、とりあえず納得はして貰えたみたいだ。そして、隼人とお喋りしながらも俺はアイテムの鑑定を続けていた。
これが最後だ…。
「彷徨のコンパス。目的地を思い浮かべると目的地以外を指し示すコンパス。意味不明だな…」
「畜生!結局蘇生アイテムなんて無かったのかよ!どうしてくれるんだ!?」
どうしてくれるんだって言われてもね…。そんなの決まってる。
「他の場所を探してみる。他の方法を探してみる。決して諦めはしない」
とは言ってもどうしよう。嘘っぽいけど念のためイザベラ王女が本当に持ってるか確認してみようかな…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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