不死の鳥
「ぐはぁ!!」
「龍彦君!」
ライトがカタストロフタートルの所でマロンと合流してるころ、勇者パーティはフェニックスと戦っていた。
そして、フェニックスの攻撃を受けて吹き飛んだ龍彦は円盤の外に出てしまいマグマに落ちそうになる。しかし、身体強化した九嶋に腕を掴まれてギリギリ助けられていた。
「わりぃ!助かった!死ぬかと思ったぜ…」
「もう…。隼人くんに誰が必要かって分かってるでしょ?」
龍彦に対してニッコリと微笑む九嶋の後ろで、光輝く聖剣を振り下ろす隼人の姿があった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーーー30分前。
「スターライトシャワー!」
隼人が放った無数の光がフェニックスを貫く。しかし即座に穴は塞がり効果がある様には見えない。
「ちっ!やっぱり効かないか…。九嶋、水魔法を頼む」
「うん!任せて!!」
フェニックスは空を飛んでるので近接攻撃は難しい。菊川の飛行魔法を使う手もあるが、まだまだ未熟で速度や旋回能力に大きな差がある為、飛んだ所で攻撃の的になるだけだ。
特性が狙撃手な大原は遠距離攻撃を命中させるのは得意なのだが、ダガーを投げてもすり抜けるだけで効果は無かった。龍彦の遠距離魔法も土属性なのですり抜けてしまい通用しない。
そんな中、唯一効果があったのが九嶋の水属性魔法だった。水属性魔法をフェニックスに当てると炎が弱くなり飛び辛そうにする事ができた。
ところが、フェニックスは傷を負うとマグマの中へと逃げ込んでしまう。そして、マグマから出てくるとすっかり元通りになってしまうのだ。
その為、打開策が見つからないでいた。今撃ったウォーターボールもただの時間稼ぎだ。
「炎を纏った鳥じゃなくて、鳥の形をした炎だな。さて、どうすれば良い?」
「今は逃げた方が良いんじゃねーか?また今度リベンジに来よーぜ」
「駄目だ。勇者に逃亡は許されない」
龍彦は撤退を提案したが隼人はそれを受け入れない。逃げるなんてプライドが許さなかった。
「逃げるって言うか戦略的撤退だよ。こいつは倒すのに準備が必要なんじゃないかな」
「そうよ。水属性の術師やアイテムを揃えて挑むべきなんじゃない?」
大原と菊川も撤退を提案した。しかし、隼人は首を横に振る。
「駄目だ。ここで逃げたら俺は勇者じゃなくなる気がする」
「そうだよ!隼人くんに逃亡なんて似合わないもん。隼人くんの為にみんなももっと頑張らなきゃ!」
九嶋の発言は『私の様に隼人の役に立て』という感じだが、他メンバーが成果を出せないのは努力が足りない訳ではなくて相性の問題だろう。
そんな中、龍彦がため息を吐いた。
「分かった。できるだけ頑張ってみっか」
「え?龍彦君、それで良いの?」
「しゃーねーだろ。隼人がやるって言ってんだからよ。菊川達の事は俺が守るから、わりぃけど付き合ってくんねーか?」
龍彦が菊川達に頭を下げる。龍彦は隼人のやりたい様にやらせたいみたいだ。
「仕方ないわね…。分かったわよ。もぅ、頭あげて!」
「龍彦…ありがとう」
「気にすんな。お前を助けるのが俺の役目だろ?それより、マジでどうすんだ?対応策があんのか?」
龍彦の質問は当然のものだ。気持ちだけでは状況は改善されない。そして、隼人は龍彦に頷いた。
「絶対ではないけどな。あのスカスカな身体…スライムに似てる気がするんだ。きっと何処かに核がある」
「あー。確かにあの何も効いてねー感じは似てんな」
「だろ?魔法による点の攻撃では見つけられなかったが、聖剣の斬撃による線の攻撃なら核に当たるかも知れない」
「まぁ確率は上がっか…。分かった。時間は俺が稼ぐから斬りまくってやれ!」
「さすが龍彦だ。助かる」
聖剣と言えどもフェニックスとの接近戦は難しい。ここで言う斬撃とは、光属性の魔力を聖剣に乗せて放つ『飛ぶ斬撃』だった。
キィィーーーェ!
そして、マグマからフェニックスが出てきた。やはり炎の量は元の状態へと戻っている。
「じゃあ行ってくるぜ!」
「頼んだ!」
フェニックスへと突っ込んで行く龍彦。その口元は魔法を呟いている。
そして、龍彦に気付いたフェニックスは翼を大きく羽ばたかせた。すると、その翼から無数の羽が放たれて龍彦へと襲いかかる。もちろん羽は炎の塊だ。
「アースウォール!
龍彦が準備していた魔法によって地面から土の壁が現れた。そして、土の壁はフェニックスの羽攻撃を全て防いでいた。
「どんなもんよ!防御だったら得意だぜ!」
壁の事を憎々しげに睨むフェニックス。その隙を突いて隼人の放つ斬撃がフェニックスを切り裂いた。
しかし、フェニックスの傷は見る間に回復してしまう。
「ちっ、ハズレか。だが、まだまだ行くぞ?覚悟しろ、フェニックス!」
「私も援護します!」
菊川は土魔法でアースウォールによるバリケードを作成した。龍彦が隠れられる場所を準備した感じだ。
龍彦が挑発して隼人が攻撃する。フェニックスは龍彦に対して火球を放ち結果的に菊川の作った壁を破壊する。九嶋の攻撃が当たるとマグマに入って回復する。結局、それがひたすら繰り返されていた。
「くそ…。核に当たらない…」
「隼人君。本当に核なんてあるの…?」
流石の勇者様にも疲労の色が見え始めていた。その様子をチャンスと見たのか、龍彦を攻撃していたフェニックスが不意に隼人へ向けて火球を放つ。
繰り返される同じ行動に慣れてしまっていた隼人は、自分への攻撃に対して即座に対応できなかった。
「危ねぇ!」
龍彦はフェニックスと隼人の間に割って入ると、その身で火球を受け止めていた。
火球は弾け、龍彦は吹き飛ぶ。
「九嶋!水魔法を!」
「うん!」
九嶋はフェニックスに対してウォーターボールを乱射する。フェニックスはマグマの中へと避難した。
「龍彦、大丈夫か!?俺が呆けてたから…悪い!」
「ポーション飲めばまだ行ける。気にすんな」
「お前がいなくなったら俺は…」
「縁起でもねーな。俺はお前が親父さんに勝つまで付いてくから余計な心配すんなよ。それより…どうする?まだ続けるのか?」
結局解決策は見つかっていない。龍彦にはこのまま繰り返してもジリ貧に思えた。
「確かにこのままじゃ駄目だな。こうなったら奥の手を使う。線で駄目なら…面だ!」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!
あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!
ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!




