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歩く災厄

昨夜投稿される様に更新したはずだったのですが、先週に引き続きまた更新内容が反映されず数時間分の作業が飛びました…。

保存ボタン押す前にバックアップ取る様にします…。

 ーーライトとリヴァイアサンが戦う30分前。


「マロンパーーーッンチ!!」


 マロンが壁…の様に見えるカタストロフタートルの足に渾身のパンチを打ち込んだ。しかし、衝撃は全て分厚い皮に吸収されてしまいカタストロフタートルからは何の反応もない。


「マジっすか…。攻撃されてる事に気付いてもいないっすね。いや、気付けない程度のものは攻撃とは呼べないっすね」

「皮だけで何メートルあるんじゃろうな…」


 攻撃してくる素振りも無いのでひとまず近付いてみたものの、2人は何も出来ずに途方に暮れていた。一言で言うと『相手にされてない』というのが適切な状況だ。


 カタストロフタートルは象亀の様なフォルムなのだが足の長さだけでも500メートル程で腹の部分は遥か上空にある。歩くだけで様々なものを破壊する姿は正に災厄そのものだ。


「以前お話しした通り奥の手として持ってきたスクロールがあるんじゃが…。流石に効きそうにないのぅ」

「何を持ってきたっすか?」

「実はですな…魔王が作ったと言われとるスクロールなんですじゃ!なんと雷を生み出す事が出来るらしいんですぞ!」


 マーロン学園長が持って来たのは武尊が作成した雷魔法のスクロールだった。一般的には知られていない雷魔法の存在を話してマーロン学園長はドヤ顔をする。

 マーロン学園長は栗りんが驚いてくれると思い込んでいた。


「あー。雷魔法っすね。スクロールの魔力だとBランクまでは効果的っすけど、カタストロフタートルには効かないから使わなくて良いっすよ」

「え?そ…そうなんですかの?もしかしたら通用するやも…」


 効かなそうとか言っておきながら実は自信があったのか、栗りんに良い所を見せたいマーロン学園長が食い下がる。


「別に無駄使いするのは止めないっすよ?」

「ぬぅ…。いや、栗りんが言うならそうなんじゃろう。分かりましたじゃ…」


 栗りんが雷魔法に驚かなかった事や通用しないと言われた事でマーロン学園長は肩を落とした。


 その時、突然凄まじい魔力(・・・・・・)が2人の事を覆い尽くす。いや、2人だけではなく周辺が全て覆い尽くされている。


「な、なんじゃ!?足が勝手に震えるんじゃが…」

「え?この魔力は…」


 2人は当然知らない事だが、この時ライトが『虚無』を発動させようとしていた。

 そして、その魔力はすぐに消える。


「い…今のはなんだったんじゃ?まさか魔力じゃったのか?あんな…恐ろしいものが…?」

「え?え?ご主人様の魔力を感じたっす…どういう事っすか??」


 栗りんが珍しく取り乱している。そして、栗りんの呟きにマーロン学園長が目を見開いた。


「ご主人様じゃと?まさか…今の恐ろしい魔力の事を言っとるんですかの?」

「今のは確かにご主人様の魔力っす…」

「何て事じゃ…。栗りんを作れるのじゃから凄い方なのじゃろうとは思うとったが…まさかこれほど規格外とは…」

「でも…ご主人様は5年前に…」


 この時、栗りんはライトの魔力の事に気を取られて………油断していた。


「マロンさん不味い!上じゃ!」

「え!?」


 栗りんが上空を見上げると、そこにはカタストロフタートルの腹が迫っていた。

 たぶんただの休憩で身体を地面に落ろしてるだけだ。しかし、他の生物においては必殺の一撃であり、もう範囲外に出るのは間に合いそうにない。


「マロンキィーック!!」


 栗りんは即座にキックを放った。自分の足元に対して。

 もしかしたら、即座にマーロン学園長を見捨てて自分だけ走り出せば範囲外に出るのは間に合ったかも知れない。しかし、栗りんにそんな選択肢は無い。

 彼女にとって重要なのは『人間を助けてやってくれ』というご主人様のお願いである為、マーロン学園長の生存率が1番高くなると判断した行動を実施する。


「この穴に入るっす!早く!」

「いや、しかし…」


 問答をしている時間は無い。栗りんはマーロン学園長を掴むと無理矢理穴に放り込んだ。

 そして、自分は上空に向かって構える。このままだと衝撃波でマーロン学園長が粉々になる可能性が高い為、出来る限り衝撃を緩和しようとしていた。


「マロンアタァーーーーーック!!」


 ズウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン………


 栗りんによる攻撃の効果は感じられぬままカタストロフタートルは地面に腹を着けた。

 潰される樹々、砕け散る岩山、荒れ狂う爆風、立ち昇る砂埃……とても生物が生き残れる状況には感じられない。


 そんな風景を少し離れた場所から見ている者がいた。後ろには銀色に輝く馬車が…黒翼車が止まっている。


「早速見つかって良かった。所でマーロン学園長、この少女は誰だ?」

「………え?は?ワシ…生きとるんかの?」


 マーロン学園長は地面にへたり込みながら混乱していた。カタストロフタートルの腹が当たると思った瞬間、急に風景が変わって座り込んでいたのだから混乱するのも無理はない。

 そして、栗りんはライトにお姫様抱っこされた状態で気絶していた。


「マーロン学園長、とりあえず落ち着け。そして状況を教えてくれ」

「ライト君?そうか、ライト君が助けてくれたのじゃな?」

「そうだな。で、この少女は何だ?そして、賢者パーティは何処にいる?」


 ライトは自分達以外が連携して行動していた事を知らない為、マーロン学園長と一緒にいるはずの賢者パーティが見当たらない事が気になっていた。


「その方が栗り…いや、マロンさんじゃ。ワシの名前と似てて混乱するから今は栗りんと呼ぶ事になっとる。生徒達は他の部屋じゃよ。賢者パーティが東、勇者パーティが南、聖女パーティが西じゃ」

「そうか、俺達以外は合流できていたんだな」


 そんな話をしていると、ライトに抱えられている栗りんの目が開かれた。感情の感じられない瞳がキョロキョロと動き、周りの様子を確認している。


「周囲の危険度低下を確認。保護モードを解除します。………。型式M9V、個体名『マロン』再起動を完了しました。各機能オールグリーン」


 身体が破損する事を覚悟した栗りんは一時的に自分の性能を低下させていた。機能を簡素化・単純化する事で被害の連動を避けるモードだった。

 そして、そんな栗りんの目に光が戻る。


「カタストロフタートルはどうなり…あ、ご主人…様?」

「いや、残念ながら違う」

「でも…装備も魔力も同じっす…」


 ライトも何となく察してはいたが、アンサラー、漆黒の鎧(ルティーヤー)、愚者の仮面は武尊が愛用していた装備だった。


「ライト君…貴方が『ご主人様』じゃったんかの?」

「いや違う。ただ、正直に言えば親戚だ。どうやら魔力の質が似てるらしい」

「親戚レベルじゃないっす!ご主人様そのものっす!」


 ライトはリルからも武尊本人だと言われた事を思い出した。もしかしたらリルも魔力で判断していたのかも知れない。


「他でも同一人物だと間違われた事がある。余程似ているのかも知れないが…別人だ」

「そう…っすか……。残念ですが了解っす…」


 ライトにハッキリと否定された栗りんは表情を曇らせてから下を向いた。ライトには何の非も無いのだが、居た堪れなくなったライトは栗りんの頭を撫でながら話を続ける。


「他の生徒達も回収して地上へ戻る。マーロン学園長と栗りん?は、ひとまず黒翼車に乗ってくれ」

「了解じゃ。ライト君、すまんが宜しく頼むぞい。ささ、栗りんはこちらへ」


 マーロン学園長は栗りんを黒翼車へとエスコートする。そして、乗る前にコクヨクを見た栗りんは『何だか見覚えのあるアリコーンっすね…。』とか呟いていた。


 という事で順番に黒翼車へと乗り込んだのだが、マーロン学園長が中を進んだ所で車内に絶叫が響き渡った。


「何なんじゃこれはぁーーーー!!やたら大きな部屋じゃし、家具は学園長室より圧倒的に豪華じゃし…天蓋付きベッドまであるのは流石におかしいじゃろ!」


 マーロン学園長は黒翼車の中に広々とした空間が広がっている事に驚いていた。


「そう言えば乗せるのは初めてだったな。時空魔法で空間を(いじ)ってある。それと(くつろ)いで移動できる様に適当だが一通りの家具を用意した。別に汚しても平気だから安心して使ってくれ」


 まぁ嘘ではない。空間を広げた訳ではないが他の場所と繋げるという弄り方をしたし、家具も研究所に使ってるアンデッド屋敷にあったのを適当に配置しただけだ。

 但し、家具はアイテムボックスを使ってピカピカの新品状態にしている。アイテムボックスに入れてから汚れだけを指定して外に出すと、残った本体は一瞬でピカピカになるという寸法だ。

 その為、壊してしまったら駄目だが汚すくらいなら何の問題もなかった。


「そ、そうなんじゃな…。全く安心できんが了解じゃ…」


 マーロン学園長は少し納得のいっていない顔だが、とりあえず了解した。しかし、別の場所で更なる疑問が発生する。


「あ、ちっこいリルが居るっす。何でちっこいんすか?」

「リルはちっこくないもん!」


 リルが大狼の姿になってしまいそうな雰囲気を(かも)し出している。しかし、魔物としての姿をマーロン学園長に見られる訳にはいかない。


「リル、駄目だぞ?それと栗りん、その話はまた今度にしてくれ」

「リルちっこくないもん…」

「分かりましたっす。……ご主人様」

「いや、だから…。まぁ良い。コクヨク、出発だ」

「ヒヒーン!」(承知致しました!)


 という事で、黒翼車に乗った一同はカタストロフタートルを放置して別の部屋へと向かった。そして、黒翼車が全く揺れない事についてマーロン学園長がまた絶叫するのだった。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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