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逃げる勇気

すいません。仮で入れていた中途半端な物が反映されてしまいました。

ご覧になった方、申し訳ありません。

「みんな、今日の所は逃げよう!」

「立花さん。挑戦しない(・・・・・)って事で良いんだね?」


 双葉は撤退を即決した。それに対して仁科が確認をする。挑んだ結果の撤退ではなく、挑まずに撤退する事で良いのかと。


「うん。私達は英雄になりたいんじゃない。逃げられない状況なら仕方ないけど、安全に逃げられる状態なのに無謀な事をするのは違うと思う。必要なのは勇気で、蛮勇じゃない。いま大事なのは逃げる勇気だと思う」


 聖女パーティが世界を救う英雄を目指しているのなら、無謀とも言える困難を乗り越える経験が必要かも知れない。しかし、安全の為(・・・・)に強くなろうとしているのだから、『生き残れるのが奇跡的な行為』を選択するのはおかしいと双葉は考えていた。


「田中君の仇を取れなくてゴメンね…」

「いや、俺の為に危険な事をするのはやめてほしい。俺の役目はみんなを守る事なのに、俺の為に危険になってたら本末転倒だ」


 田中の発言を聞いて、白鳥は少し驚いてからニッコリと微笑んだ。

 以前の田中なら『俺の役目は白鳥さんを守る事だ』と言っていた所だが『みんなを守る』と言ってくれた事を嬉しく感じていた。


「そうだね。了解。念のため立花さんに確認はしたけど私もその方が良いと思う」

「じゃあ撤退決定って事でゲートを開くから地上に戻ろう」

「うん!佐藤くん宜しく!」


 この場に留まっている事に危機感を感じていた和也は即座にゲートを開いた。接続先は学園都市にある宿舎だ。

 しかし、白虎の視線が鋭くなる。逃げようとしている事に気付いたみたいだ。


 ゴンッッッ!!ビキビキ……


 白虎は白鳥の結界に体当たりをした。結界に弾かれて辛そうではあるが結界にもヒビが入った。どうやら自分の怪我を度外視して結界の破壊を優先したみたいだ。


「みんな、早くゲートに入って!私の結界も壊されそう!」

「マジで!?」

「麗奈の結界が壊されるのって初めてなんじゃ…。Aランクの魔物でも余裕で防いでたのに…」

「喋ってる場合じゃない。立花さんと田中くんは早くゲートに!」


 殿(しんがり)は何が起きても時空魔法で逃げられる和也が望ましい。そして、その前は結界を維持しなければならない白鳥が残るべき。聖女パーティでは逃げる時の順番をそう決めていた。


「悪い!先に行く!」


 いつもは白鳥を守りたがる田中も流石に残りたいとは言わない。ここで残ったら逆に白鳥を危険に晒す事になると分かっているから。白鳥の安全を考えるなら寧ろ早く移動するべきだと理解しているから。

 そして、田中の後に双葉と仁科が続いた。しかし、3人がゲートに潜ったのと同時に…。


 バリィィィィン!


 白鳥の結界が砕け散った。


「きゃぁ!」

「白鳥さん!飛ばすよ!」


 白虎は恐ろしく速い。ゲートを潜ろうとしてる間に攻撃される可能性がある。それに、ゲートを通られて白虎が学園都市に解き放たれたら最悪だ。

 即座にそう判断した和也は、ゲートを解除して白鳥を転移で飛ばした。転移先で何かと重なると危険なので、今は誰も居ないはずの白鳥の部屋へと。


 そんな白鳥が転移前に見た最後の風景は、和也の背後で爪を振り上げる白虎の姿だった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「え!?ゲートが閉じちゃった!」

「そんな。和也くんと白鳥さんがまだ」

「くそ…。やっぱり俺も残るべきだったか…」


 田中、双葉、仁科がゲートから出ると、そこは聖女パーティの会議室として利用している双葉の部屋だった。

 そして、出た途端にゲートが閉じてしまった為、3人はとても混乱していた。


「俺達はゲートのスクロールを使ってないから残ってる。それでダンジョンに戻ろう」

「いや無理だよ。スクロールは和也くんが持って「きゃぁ!」


 田中の提案を否定する仁科の話を遮って、隣の部屋から聞き慣れた声が聞こえた。隣の部屋は白鳥の部屋だ。


「麗奈!」

「白鳥さん!」


 双葉と田中は即座に扉を開けて白鳥の部屋へと向かった。そして、双葉はノックもせずに白鳥の部屋の扉を開ける。

 部屋の中を見てみると、白鳥がベッドの上で尻餅を突いてキョトンとしていた。転移で強制的に飛ばされた為、ビックリして呆けてしまった様子だ。


「麗奈、大丈夫?」

「う、うん…。あっ!和也くんは!?あの虎さんに攻撃されそうだったの!」

「え、まだ戻ってないよ…。でも、和也くんなら逃げられてるはず!和也くんの部屋にも行ってみよう?」

「うん!」


 という事で、全員で和也の部屋へと移動した。男子部屋と女子部屋は分けてあるので少し距離がある。

 そして、双葉はまたノックをせずに扉を開けた。


 そこには…床に転がって大の字になっている和也の姿があった。


「死ーぬーかーとー思ったぁーー!」

「和也くん…良かった。やっぱり転移が間に合ったんだね」

「いや、間に合わなかったよ」

『え゛?』


 双葉の予想をあっさり否定した和也に全員の視線が集まる。すると、和也は立ち上がってからローブを掴んでヒラヒラとさせた。

 和也の行動の意味に真っ先に気付いたのは仁科だ。


「あ、1日1回の致死ダメージ無効?」

「正解!このローブが無かったら終わってたよ…」

「そっか。本当にギリギリだったね」

「逃げるだけなのにね。やっぱりあいつとは戦わなくて正解だったよ」


 和也の発言に全員が頷く。もし正面から挑んでいたら全滅していたと全員が実感していた。


「立花さん、これからどうする?」

「とりあえず他のパーティが戻ってくるのを待とう。他の部屋も同じ様な難易度だとしたら全員撤退してくるよね?」


 双葉としては、あの実力を見せつけられたら挑む訳がないと考えていた。しかし、その考えに誰も頷いてくれない。


「立花さん。正直な所、勇者パーティは分からないかな」

「確かにそうだね…」

「でも、とりあえず他パーティ(・・・・)を待ってみるのは了解」

「うん。じゃあ、みんなが帰って来るまではゆっくりしてよう!」


 実は仁科が言っている『別パーティ』とはライト達の事を指していた。もし助けに行くとしてもライトが居なくては無理だと感じていたので、今は待つ以外に選択肢が無いという考えだ。

 ただ、ダンジョンとは別件ならやる事があった。


「まだゆっくりは出来ないかな…。ここで立花さんに残念なお知らせがあります」

「え?な…なに?仁科さん怖いよ…」

「立花さんは何故白鳥さんと和也くんの部屋へ入る事が出来たのでしょうか?」


 双葉は仁科の質問の意図が分からずに首を傾げている。何故入れたのかと言えば扉を開けたからだ。


「気付いてないみたいだからはっきり言うね…。これ、白鳥さんと和也くんの部屋のドアノブです。鍵ごと壊れてます」

「あれ?そう言えば鍵…掛かってたはず…だよね?」


 双葉は焦りのあまりドアノブごと鍵を破壊して扉を開けていた。金属製なのに素手で壊して気付きもしないとは…。


「という事で、管理人さんの所に謝りに行かないとだね。私も付き合うよ」

「あ、もちろん私も一緒に行くよ!双葉ちゃん、心配してくれてありがとう!」


 そして、男性陣も双葉に対して頷いた。全員が連帯責任だと感じてるみたいだ。


「みんな…ありがとね…。今度から力加減に気をつけるよ…」


 という事で、全員で管理人室へと向かいました。

 長い管理人人生の中でドアノブを握り潰した奴なんて始めてだと言う事で、正座でこっぴどく叱られましたとさ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「酷い目に遭いましたね…」

「あんなのどうしろってんだろうな」


 双葉達がお説教から戻るとロビーで賢者パーティがソファーにもたれ掛かっていた。ぐったりしているが、全員揃ってるし重傷者はいなさそうだ。


「佐々木君、お帰りなさい。そっちはどうだった?」

「聖女パーティは先に戻ってたんですね。どうもこうも…龍に弄ばれて逃げてきましたよ」

「あ、戦ったんだ?」

「あれを戦いと呼んで良いのか…。相手が手加減してくれたから無事ですが、何をやっても効かないので諦めて帰って来ましたよ」


 白虎と違って龍は理性が高く人間に友好的だった。敵というよりは珍しい遊び相手という感じで賢者パーティを(もてな)したみたいだ。


「へぇ、優しい相手で良かったね。うちは虎だったんだけど問答無用で田中君の腕を食べられるし大変だったよ…」

「それは…どうやら我々の方がまだマシだったみたいですね」


「ところで、城之内君たちは帰ってきた?」

「いえ、まだみたいですよ?」


 佐々木の回答を聞いた双葉は何だか嫌な予感がした。ダンジョンの4つの扉を開いてから結構な時間が経っている。


「もしかして…逃げずに戦ってるの…?」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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