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メイドゴーレムの事かぁ!!

※賢者佐々木視点になります。


「ミミックの中にあったこの剣だけどよ。俺らの中だと誰も剣なんて使わねーよな?どうする?」

「性能は分かりませんが強そうに感じます。ギルドで鑑定してもらって武器屋に売ってしまいましょう」


 賢者パーティは、ドッペルゲンガーを倒したあとマロンさんと一緒にダンジョンを歩いていた。マロンさんはマーロン学園長と久し振りの会話を楽しんでいる。

 そんな中、ドッペルゲンガーに襲われた時の宝箱…もとい、ミミックから取得した剣について大助と会話していたのですが、マーロン学園長と話していたマロンさんがこちらの会話に入ってきました。


「あ、武器屋に売るのは止めた方が良いっすよ」


 私としては売ってしまった方が良いと思ったのですが、マロンさんとしては駄目らしい。しかし理由がよく分かりませんね。


「売却しない方が良いのは何故ですか?」

「それ、剣じゃなくて魔物っす。今も隙を突こうと様子を伺ってるっす」


 ………は?


「ミミックの一種っすね。間違えて武器屋に売っちゃって武器屋惨殺なんてなったら牢屋行きっすよ?」


 それは困りますね…。しかし、剣の形をしたミミックなんているのですか?


「ミミックって宝箱だけじゃないんですか?」

「色々っすよ。無機物に化けて油断させるのは全幅的にミミックっす」

「では…魔物の中に魔物が入ってたって事ですか?」

「そうなるっすね」

「何だ?カンガルーみたいな奴だな」


 マロンさんの説明を聞いて大助は有袋類をイメージしたみたいだ。そう考えてみると少し可愛く見えてくるな。

 すると、危険を察した剣型ミミックは大助に柄を掴まれている状態で急に暴れ出した。四方八方に動き回ろうとして大助の手が振り回されている。

 空中で大助を引っ張ってる感じからして、この剣型ミミックは空を飛べるみたいだ。


「バレたカ。ハナセ!」

「喋った!?大助、絶対に離さないで下さい!」

「あぁ!勿論だぜ!」


 喋る剣なんて初めてみる。確かに知能の高い上位の魔物には喋る個体もいるとは聞いていたしドッペルゲンガーも喋っていたが…まさか剣が喋るとは思っていなかった。


「動きを見る限り、シンプルに刃の部分で突撃するスタイルみたいですね」

「でも、こいつの引っ張る力はかなり強えぜ。この勢いで飛んで来て刺さったら俺でも致命傷なんじゃねーかな」


 となると、オーガジェネラル等のBランクモンスターでも一撃で倒せる攻撃力って事になる。

 何気に…危険な魔物じゃないか…。可愛気なんて全然無かった…。

 しかし、そうなると疑問もある。


「何で今まで攻撃して来なかったんですか?」

「ソコのアクマが見テタ」


 なるほど、マロンさんが注意してくれてたんですね。でも、それならミミックの事を教えてくれても良かった気がしますが…。


「マロンさん、この剣を監視してくれてたみたいでありがとうございます。でも、気付いてらしたんですよね?何で教えてくれなかったんですか?」

「成長の機会を奪うのは良くないってご主人様が言ってたっす。だから、死ぬ寸前までは見守るっす!」


 そういう事ですか…自分で気付ける様になれと。更に言うと、気付かなかった場合は死に直結する事も実感させようとしてたのでしょうね。

 一見冷たい様にも感じますが、本来関係の無い他人の成長を考えているのは優さだと思います。


 それにしても、このミミックはどうしましょうか。魔物ではありますが、武器として使えそうなので実質的にはインテリジェンスウェポンみたいなものです。このまま壊してしまうのは勿体ない気がしますね。


「あなた、我々に従う気はありませんか?武器として使わせて頂けるのなら壊しませんよ?」

「フザけるナ!オ前らミナ殺しダ!」


 駄目か…。でも海老原先生の能力ならどうにかなるかも知れない。ここは一旦封印しておこう。


「大助、そのまま持っててくれ」

「おうよ!」

「マナよ。凍てつく牢獄となりて彼の者にひとときの眠りを与えよ」


 剣型ミミックに手を向けて詠唱すると、剣型ミミックの剣先から氷に包まれ出す。


「ヤメろー!」

「大助、氷が手の近くまで来たら離して大丈夫だ」

「分かったぜ」


 大助はその場にしゃがむと剣型ミミックを床近くに構える。そして、氷が手の近くまで広がって触れそうになると床に置いて手を離した。


「ぐ…ゲゲ…ぢぐショ……」


 私は剣型ミミックが完全に氷に包まれるのを確認してから拾い上げると、マジックバックの中へと収納した。


「ひとまずこの状態で持って帰る事にします」

「了解じゃ。喋る剣とはわしも初めて見たわい。では先を進もうかの」

「いえ、その前に確認したい事があります。学園長も薄々分かっているのでしょう?」

「何の事じゃ?」


 このダンジョンにはドッペルゲンガーやミミックなど人を騙す魔物がいる。そういうのとは違うと思うが、気になってる事は早めに明らかにした方が良いでしょう。


「マロンさん」

「なんすか?」

「貴方は人間じゃないですよね?」


「そっすね!」

「な、賢者様とてマロンさんへの無礼は許しませんぞ!って、え?」


 私が質問した瞬間に2人が反応しましたが、マロンさんがあっさり認めた事に気付いてマーロン学園長が困惑していた。


「学園長、マロンさんは別に人間に擬態してる訳ではないみたいですよ。行き過ぎた忖度(そんたく)は逆に失礼に当たるかと存じます」

「むむ…」


「人間じゃない事を知られるのも気にしてない。今の状態が自然体の様ですね」

「当たり前っす!私は私っす!ご主人様が作ってくれたこの身体に恥じる所は一切無いっす!」


 マロンさんが胸を張って仁王立ちしている。身長は小さいのに大っきく見えます。なかなか格好良いじゃないですか。

 それにしても、作ってくれた?


「貴方は何なんですか?」

「私は型番M9V。ご主人様が作ってくれたバトルメイド型ゴーレムっす!」

「なんと!マロンさんはゴーレムだったのですか!?いや、しかし…こんなに表情豊かなゴーレムなど…」

「マーロン学園長はマロンさんが嘘をついていると?」

「いや…そんな訳はないですな。わしはマロンさんを信じますじゃ!」


 確かにマーロン学園長が疑念を抱いたのも分からなくはありません。授業で聞いた限りではマロンさんの様なゴーレムを作る事は今の魔法技術では不可能らしい。

 しかし、過去の文献を見た限りでは魔王軍の師団長…確かザザと言ったかな。かなり精度の高いゴーレムもいたらしいので有り得ないという事は無いでしょう。


「しかし、型番があると云う事はマロンさんは何体もいるという事ですか?」

「いないっす。マロンはオンリーワンっす」

「え?では、型番の意味は…」

「雰囲気っす!」


 そうですか…。


「とりあえず、マロンさんは私達に危害を加えないと云う認識で宜しいですか?」

「勿論っす。ご主人様からも『もし死にそうな人間を発見したら可能な限り助けてやれ』って言われてるっす。ゴーレムだからこそ命令には忠実っす!」


 ふむ…。完全に信用した訳ではありませんが、無駄に敵対するのは良策とは言えなそうですね。


「では、是非助けて欲しい事があります。マーロン学園長からマロンさんはこの迷宮に詳しいと聞いてます。攻略を手伝って頂けませんか?」

「そうっすね…良いっすよ!佐々木達はそれなりに強そうだから大丈夫そうだし先に進む道を開けられたら私も嬉しいっす!」


 了承して頂けて良かった。有識者の案内が有るのと無いのとでは大きな違いだ。


「ありがとうございます。助かります」

「じゃあ、簡単にこの迷宮の仕組みを説明するっすよ?この迷宮は構造が変動するっすけど東西南北に移動しない部屋があるっす」

「ふむ。何かしらの意味がありそうですね」


「その4つの部屋は扉が開かないんすけど、4箇所同時に押せば開くみたいっす。そして中にいる魔物を全部倒せば先に進む道ができるらしいっすよ」

「なるほど。しかし何故そんな事が分かったんですか?」

「扉の前に説明書きがあったっす!」


 変な所で親切なダンジョンですね…。


「分かりました。ではマロンさんに1番近い部屋まで案内して貰いましょう。その後は他パーティを見つけて調整ですね。マーロン学園長もそれで宜しいですか?」

「うむ。了解じゃ。ではそろそろ行こうかの」


 という事で今後の方針が見えた所ですが、ここで中谷さんが割って入ってきました。


「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「中谷さん、どうしました?」

「マロンさんとマーロン学園長の名前が似すぎてて…凄く混乱します!ここで呼び名を考えませんか?」


 なるほど。確かに分かりづらいかも知れませんね。特に緊急時に混乱する可能性があります。


「中谷さんとしてはどうしたいですか?」

「マロンさんの愛称を考えたら良いんじゃないかなって思うんだけど、駄目かな?」

「私の呼び名っすか?まぁ好きに呼んでもらって良いっすよ?」

「やった!可愛いの考えよう?」


 何だか中谷さんが楽しそうですね。こういうのが好きだったんでしょうか。意外です。


「めぐちゃん、何か良いのある?」

「うーん。じゃあマロリンちゃんとかどうかな?」


 何か鍋に入れたくなりそうな名前ですね…。


「んー。それじゃ結局似た感じじゃない?」

「えー。じゃあ萌っちはどうなの?」

「そうだなー。『マ』から始まらない方が分かりやすいと思うんだよね。マロンって栗だから…モンブランちゃんとか?」

「良いんだけど長くない?」


 ふむ…。個人的には分かり易ければ何でも良いと思うのですが…。何だか無駄な時間な気がします…。


「じゃあさ、そのまま『栗』を使って栗りん(・・・)ってどうかな?」

「あ、いいね!みんなはどう?」


「私はさっき言った通り何でも良いっすよ」

「特に異議はありません」

「まぁ良いんじゃねーか?可愛い感じだしよ。何だか聞いた事がある気もするけど」


 その他に反対意見も無かったので、マロンさんの事は『栗りん《くりりん》』って呼ぶ事になりました。


 大助以外の賢者パーティメンバーは勉強ばかりしていた真面目っ子なので、聞いた事がある原因については誰も気付いていなかった…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


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ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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