もう1つの再会
「みんな何処に行ったんだろう?」
「ワフーン!」(わかんなーい!)
「だよねぇ」
周りには僕等しかいないので、いまリルはリラックスできる狼の姿になっている。ただ、あくまでも小さいサイズだけどね。本当の姿だと道に詰まっちゃうから。
「ワフ?」(探知してみたら?)
「そうだね。ひとまずやってみようか」
とりあえず、全方位に100メートル位かな。
「ん?んん?え!?」
「ワフン?」(どうしたの?)
「なんか…この迷宮は絶えず動いてるんだけど…」
「ワフ?」(今は動いてないよ?)
「って思うでしょ?今僕らがいる場所も下に移動してる最中だよ…」
「ワフーン!?」(全然分かんない!?)
リルが、リルでも感じられなかった事に驚いていた。リルは五感がかなり鋭いので、地面が動いていれば震動を感じれる自信があったんだと思う。
「音を出して震動してる時だけが動いてるんだと思ってた。どうやらそれも罠っぽいね。音を出した雑な動きで油断させておいて、実は音を出してない時も動いて混乱させてるのか…」
「ガウッ!ワフーン!」(嫌な感じ!イジワルだねー!)
通説では神様がダンジョンを作ってるんだっけ?だとしたら神様って性格が悪いよね。まぁ通説が間違いで自然発生してるのかも知れないけど。
「とりあえず、近い場所には誰も居なそうかな。まぁ、元々バラバラで動く予定だったから探さなくても大丈夫だと思うけど、最終確認とかできてないのが少し不安なんだよね…」
「ワフ、ワフッ!」(いっぱい修行したから、きっと大丈夫だよ!)
「そうだね。じゃあ僕らは僕らで先に進もっか」
「ワォーン!」(わーい!)
…………。
………。
……。
グルォオオオオオオオオ…。ズズン…。
リルに倒されたアースドラゴンが膝を突いて崩れ落ちた。
「やっぱり普通にドラゴンとか出てくるんだね」
「ワゥーン!」(でもよわーい!)
「そりゃあリルからするとね。でも、ドラゴンより強い魔物っているのかな?僕の眷属以外だと今までで1番強かったのはイビルドラゴンだよね」
やっぱり最強のモンスターって言うと『ドラゴン』ってイメージがある。でも僕はあまり魔物に詳しくないからなぁ。
「どうかな?バスは知ってる?」
『ご主人様が今イメージしてるドラゴンは知能の低い下位竜っす!それより強いのは色々といるっすよ!』
「え?そうなの?そんなに居るんなら人間はもっと大変な事になってそうだけど…」
正直な所、下位竜が1匹現れるだけで町は壊滅すると思う。たまたまSランク冒険者とかAランク上位数人が居れば別だけど…。
『そのクラスになると人間に関わってくる事は稀っす!知能が高いっすからね!食料なら別の生物でも良いし、寧ろ人間を面白がってたり可愛がってる個体もいるくらいっす!』
魔物からしたら人間は簡単に蹂躙できる相手だけど、知恵を絞って対抗してくるのは結構面倒だと思う。それを理解してるっていうのは本当に知能が高そうだな。
「なるほどね。ちなみにどういうのが居るの?」
『まずは上位魔族、上位竜、始祖級バンパイア、リッチ、各魔物のカイザークラスとかっすね!』
魔族も含まれるのか…。ヘルマンで下級貴族の男爵級だったから、上の爵位はまだまだあるんだよね。
「確かに強そう。でも、その言い方からすると更に上位があるのかな?」
『あるっす!竜王クラス、ネームドの竜神や龍神、その他の神を冠する者達っす!でも、神クラスは大半が封印されてたり眠ってるっす!』
全部じゃなくて大半っていうのが気になる所だけど…。まぁ、そんなレアな存在と出会う可能性は果てしなく低いよね!
『ちなみにリルがこのクラスっすね!』
「………え?」
えっと…聞き間違いかな?もしくは、バスの珍しい冗談とか?珍しいっていうか初めてだけど…。
『まだ幼いのでSランクっすけど、神滅狼は本来SSランクの魔物っす!』
聞き間違いでも冗談でもありませんでした。
「どうりで戦闘ごっこがどんどん大変になってると思ったよ」
「ワフ?」(どうしたの?)
「リルは凄いなーって話をしてたんだよ」
「ガウガウ!」(リルは凄いよ!)
はははっ!謎に自信満々だけど実際に凄いからね。僕はリルの頭を撫でました。
「じゃあ、どんどん先に進もうか」
「ワフッ!」(うんっ!)
さて、リルの成長の為にも強敵と戦いたいな!と思ったその時、僕の頭の中で声が響いた。
『本体、いま大丈夫?』
(イト、どうしたの?何かあった?)
いつもイトにはレイオスの見張りをお願いしてるんだけど、ダンジョンに入ってる間は学術都市についてもお願いしていました。
レイオスか学術都市のどちらかで何かがあったのかも知れません。
『グルワール総合学園なんだけど、ゼノン教の大神官が来てて『学園長は何処だー!?ライトは何処だー!?』って騒いでる。どうする?』
(学園長はまだしも、僕に何の用が有るんだろう?)
『ごめん、目的は良く分からない。でも、子供を沢山連れて来てるよ』
んー。このダンジョンについて説明できないから学園長の行き先は曖昧にしてる。説明を求められてる人も困ってるだろうな…。
あと、子供連れで僕を探してるってなると、もしかしたら孤児院が絡んでるのかも知れない。
(分かった。僕が一旦戻るよ。すぐ行くね)
『了解。もし暴力沙汰になったら割って入るけど、基本的には待ってるね』
「リル、ごめん!ちょっと学園に戻るね」
「ワフーン…」(しょうがないなぁ…)
そう言うと、リルは人間の姿へと変身しました。
何で変身したんだろう?
「リルも付いてく!」
「良いの?待ってても大丈夫だよ?」
「だって、ここで待ってたらバラバラになっちゃうでしょ?」
あ、そっか…。ダンジョンが変動して待ってる側が勝手に移動しちゃうから合流できなくなるのか…。
リルは頭良いなぁ。って言うか、僕ってホントに駄目だなぁ…。
「じゃあ、パパっと終わらせてダンジョンに戻ろう」
「うん!」
という事で、僕とリルはゲートを使って学園へと戻りました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「学園長も教師も所在が分からないとは…この学園はどうなっているのですか!?」
学園に戻ってみると早速騒いでる人達を発見した。騒いでる人は豪華なローブを着ていて、如何にも『偉い人』って感じがする。
確かに数人の子供を連れてるけど、綺麗な服に綺麗な髪、しっかりとした姿勢…孤児って感じには見えないな。
そして、何故だかリルの機嫌が凄く悪い。
「リル?どうしたの?」
「グルルルルルルル…」
ゲートで学園に戻って来てからずっとこんな感じなんだよね。
うーん。とりあえず先に大神官をどうにかするか。
「いったいどうした?学園長と俺は特訓中なんだが?」
「貴方は?」
「知らずに呼んでいたのか?結構特徴的な仮面だと思うんだがな。俺がライトだ」
「なるほどなるほど。貴方が」
大神官は俺の事を上から下まで撫で回す様に見てきた。どうにも値踏みされてる感じだ。
「で、どんな用なんだ?」
「この子達を学園で預かって頂きたい。将来有望な子達ですから、しっかりお願いしますよ?」
もの凄く一方的だな。だが、これが普通の手続きなのか俺には判断が付かない。って言うか、学園の生徒受付って俺関係無いよね?
「それは学園の事務担当と話してくれ」
「ふむ。それもそうですね」
うぉーい!じゃあ何で俺を呼んだんだよ!?
「俺に何か用事があったんじゃないのか?」
「いえ、特にありませんよ?」
俺が後でこっそり大神官に呪いを掛ける事を決めた時、1人の少年が手を挙げた。少年と言っても幼稚園児くらいだけど。
「大神官様!ライト先生と遊んできても良いですか?」
は!?急にどうした?まぁ、普通に考えてオッケーが出る訳ないけどさ。
「おぉ、それは良いな。是非そうしなさい」
「おい!勝手に決めるな!」
こっちは早くダンジョンに戻りたいんだよ。それに、こんな怪しい仮面を付けた男と大事な子供を遊ばせちゃ駄目だろ!
しかし、俺が嫌がってるっていうのに少年はニコニコしながら近付いてきた。そして俺に抱きついてくる。
あと、何故かリルも抱きついてきて少年の事を睨んでる。本当にどうしたんだろう…。
少年はリルに対してニヤリと笑うと、俺の身体を這い上がって来た。幼児にしては随分と力が強いな。
無理矢理降ろすのも大人気ないか…。と考えていたら、少年が周りに聞こえない声量で俺の耳元に囁いた。
「とりあえず君の部屋に行こうよ。透君」
なん…だって?
「大神官様!ライト先生が遊んでくれるそうなので行って来ます!」
「うむ。気をつけるのだぞ」
「ねぇ。ライト先生の部屋はどっちなの?」
「こっち…だ…」
少年は俺の後を付いてくる。『僕は鬼ごっこが好きなんだー』とか話し掛けて来るが俺は相手にしない。
リルは『リルはかくれんぼが得意だもん!』とか謎の対抗をしてる。
「ここが俺の部屋だ」
「おー!結構良い部屋だね。でも生活感が全然無いや。日頃使ってないでしょ?」
「良いからさっさと入れ」
「はい、はい」
部屋に入ると俺はすぐに扉を閉めた。そして単刀直入に質問をする。
「お前は…何者だ?」
「色々と立場はあるけど透君が知ってるのだとアクル王国のSランクかな?いやー、久しぶりだね!まさか透君と再会できるなんて思ってなかったよ。それにしても大きくなったなぁ」
再会?えっと…。初対面…ですよね?
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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