擬態
誤記報告ありがとうございます!非常に助かります!
※今回は佐々木視点になります。
「どぉおりゃぁああ!」
「みんな、今です」
大助がヘルベアーという3メートルくらいの巨大熊とがっぷり四つに組み合っていた。その隙に私を含む後衛陣がヘルベアーに魔法を打ち込む。
あんな獣に正面から立ち向かっていく大助の勇気は本当に凄い。
私達の魔法による集中砲火でヘルベアーは沈黙した。そんな少し焦げたヘルベアーを見て、大助が呟く。
「熊肉って美味いって聞くよな?」
「フォッフォッフォ。ヘルベアーは高級食材じゃよ」
「私が読んだ本にも書いてました。肉質はしっかりしてて旨味が凄いらしいですね。しかし、しっかり調理しないと硬いという話なので今は我慢して下さい」
大助が残念そうにしている。まぁ大助なら噛み切れない事も無いと思うのですが、大助だけ食べるのも良くないでしょう。
「あー、それじゃあ解体するからちょっと待ってくれ」
「私もやりますよ」
対象が大きいですからね。男性陣で手分けして解体を進めました。
あ、マーロン学園長は流石に参加してませんよ?肉体労働をするには年齢的に厳しいと思いますからね。
ところが、そうして解体作業を進めていると少し離れた所から中谷さんの叫び声が聞こえてきました。
「きゃー!学園長が!」
何をやっているのでしょう?危険なダンジョンだというのに、マーロン学園長と女性陣は彷徨いていたのでしょうか。
急いで中谷さんの所へ行くと、マーロン学園長は落とし穴に落ちていました。落とし穴の中は暗くなっていてよく見えません。
「ごめんなさい!私が光る何かを見つけて近づいちゃって…学園長は私を止めようとして…」
「そういう事ですか。分かりました。私が降りて探してみますので、皆さんは大助と一緒にここで待機を」
「ごめんなさい…。佐々木君、気をつけて!」
軽率な行動を注意するのは後にしましょう。今はマーロン学園長の安否が最優先です。
私は火魔法で灯りをつけてから飛行魔法を発動すると落とし穴の中へと降りてみました。10メートル弱で床にたどり着いたのですが、特に特徴の無い部屋に感じる。
いや、落とし穴の先なのだから特徴が無いのは特徴になるのか…。普通は落ちた者へダメージを与える為に杭とかが有るはずだ。
注意しながら周りを見渡してみると、すぐ近くでマーロン学園長が気絶していた。
「まったく…しっかりして欲しい所ですね。でも無事で良かった。上に連れて行きましょう」
私はマーロン学園長を抱きかかえると、飛行魔法を発動してみんなの所に戻りました。
「あ!学園長無事だったんですね。良かったぁ!」
「う…うぅ…。ワシは…どうしたんじゃ?」
上に戻ってから床に寝かせると、マーロン学園長は意識を取り戻しました。
「トラップに引っ掛かって落とし穴に落ちたんですよ。こういう事があるので、あまり彷徨かない様にして下さい」
「すまんかったの。了解じゃ」
「ウロウロしてたのは私達なんです。学園長は私達を注意する為に…。ごめんなさい」
ひとまずマーロン学園長が無事で良かった。それに中谷さん達も十分に反省してるみたいだ。
「そうですね。中谷さん達も気を付けて下さい。では解体の続きをします。こんな事があった後ですし横に居て下さいね」
「分かったわい。それにしても美味そうな熊じゃのう。生で齧り付きたくなるのぅ」
「帰ってからの楽しみにしましょう。もしくは食料が尽きたら食べれますよ」
「フォッフォッフォ。食料を食べ尽くしてしまいたくなるのぅ」
何を言ってるのでしょう…。冗談だとは思いますが本末転倒です。
そして、それから10分程で解体は終わりました。
「さて、それでは探索を続けましょう」
「おぅ!次は何と戦えっかなぁ」
しばらく進むと、学園長が周りをキョロキョロと見渡し始めました。
「マーロン学園長。どうされました?」
「何となく見覚えある風景なんじゃ」
「なるほど。前にこのダンジョンへ入られた事があるのでしたね」
「確かあっちに宝箱があったはずじゃ」
変動するダンジョンなので本当に50年前と同じなのか怪しい所ではありますが、ある程度の範囲がブロック単位で動く変動法則だったら………宝箱まで同ブロックという可能性もある。
「どうする?行ってみるかの?」
もしかしたら同じ所に宝箱が有るかも知れない。ダンジョンはいつの間にやら宝物が補充されていたりするので、行ってみる価値は十分に有ると思う。
「試しに行ってみましょうか」
「お、何だか楽しみだな。行ってみようぜ!」
「了解じゃ」
それからマーロン学園長の案内に従って進むと、道の横に小部屋を発見した。岩が沢山転がっているが奥の方には本当に宝箱が見える。しかも、かなりの大きさだ。
「ちょっと待って下さい。風魔法で中の確認をします。マナよ風となって広がり………。大丈夫そうですね。特に動くものやトラップっぽい空間はありません」
賢者パーティはレンジャー職がいないのが難点だった。風の通る範囲に対して魔法による簡易的な確認しかできない。
そして、更に問題なのが宝箱を開ける時だった。
「じゃあ宝箱を開けてみるぜ?」
「よろしくお願いします。中谷さんは回復準備。加藤さんはガス対応準備を」
「「はいっ!」」
宝箱にはトラップが仕掛けられてる事がある。しかし、宝箱の中なので風魔法ではよく分からない。
その結果、賢者パーティでは一番頑丈な大助が宝箱を開けてトラップは耐えるという…力技な対応をしていた。
ガチャッ
トラップは…発動しなかった。
「何かあるな。剣っぽいぜ」
大助が中を覗き込むと武器を発見した。このダンジョンならマジックアイテムの可能性が高い。
来たのは正解だったな。と思った瞬間…宝箱の蓋が急に閉じた。
「いてっ!いってぇ!何だこれ!?すげぇ力だ!」
大助が痛みを感じるってよっぽどだ。大助じゃなかったら上半身が千切られてるって事になる。
後から発動するタイプの罠だったのか?開けてから数秒後とか?とりあえず…。
「中谷さん、大助の回復を。他は魔法で宝箱を壊しますよ!」
「「「はいっ!」」」
各々詠唱を開始して魔法を宝箱に叩き込んだ。宝箱は金属製だったので、私は1番質量が重く衝撃を与えられる土属性を放った。
グルァアアアアアッ!!
「えっ?今の何?」
「宝箱が叫ばなかったか?」
「ミミック…という奴ですか」
どうやらトラップ付きの宝箱という訳ではなく、宝箱に擬態した魔物だったみたいだ…。
「学園長!50年前もミミックだったんですか!?」
「いや、そんなはずは無いんじゃが…」
「佐々木君!とりあえず千葉くんを助け出さないと!」
確かにその通りだ。
「大助!少し熱いが我慢してくれ!」
「おぅ!」
私は奥の手の1つである火と風の合成魔法を発動した。風魔法で酸素を集めて超火力の炎を棒状に生み出す。そして、その炎の棒でミミックへと斬りつけた。
グルルァァァアアアアアアア!!
大助の近くを斬ると流石に熱過ぎると思ったので端の方を輪切りに焼き切ってみる。宝箱の底の部分に内蔵が詰まっているみたいで、それが横から漏れ出てきた。
「おっ!力が緩んだぜ!これなら出れる。うぉおおおお!」
「良かった。ミミックに致命傷を与えられたみた…グフゥ…」
何だ?背中が…熱い……。
「きゃー!!」
「学園長!何をしてんだ!!」
学園長?私が後ろを振り向くと、マーロン学園長が私の背中をナイフで刺していた。
「な…何を…」
「ゲハハハハハハハ!1番強そうな奴に致命傷を与えてやったぞ!!」
マーロン学園長の口からマーロン学園長ではない声が聞こえてくる。しかも、口調もかなり違う。
「人間を食えんのは何年振りだ?もちろんさっきの熊も頂くぜぇ?テメェら囲め!」
すると、周りに転がっていた岩に亀裂が入り、人型へと変化していく。
くっ…マーロン学園長に擬態してたのか…。周りにある大量の岩も擬態…。もしかしたらこいつらはドッペルゲンガーという魔物なのかも知れない…。
ここは、こいつらの狩場だったのか…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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