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先代勇者パーティ

1話に情報を詰め込みすぎたかもしれません…

※今回も隼人視点になります。


「何を言ってるんだ?正義は…悪を倒す事だろう?」

『善悪など立場による。あの勇者にとっては、自分が好き勝手するのを邪魔するものが悪だったのだろうな』


 自分の為に邪魔者を倒す?そんなのは正義じゃ無い。でも、勇者に選ばれた者がそんな事をするのだろうか?

 そうか、きっと思い違いだ!


「勇者の正義がそんな物の訳がない!勘違いなんじゃないのか?」

『そうか?お前は自分の都合で邪魔者を倒したりはしていないのか?』


 一瞬、高杉の顔が頭を()ぎった…。


 違う!別に俺の為にやったんじゃない!クラスのみんなが生き残る為だ!みんなの為に排除する必要があったんだ!!


「当たり前だ…俺の力はみんなを幸せにする為にある!」

『そうか。その『みんな』には何が入っているのだろうな。そして、何が入れて貰えなかったのだろうな』


 何だか嫌な言い方をしてくる奴だな…。


「じゃあ、お前の知る勇者はどうだったって言うんだ!?」

『きっと、お主と同じだ。異世界から一緒に来た者だけが仲間だったのだろう』


 くぅ…。俺が守るべき『みんな』を思い浮かべてみる。確かに思い浮かぶ顔はクラスメイト達ばかりだ…いや!ミミが居る!


『それ故に、我々を含めたこの世界の存在は全て、彼等にとって楽しむ為の道具だったのかも知れん。それに気付いたのは死ぬ直前だったがな。ん?いや、我々は死んではいないのか?』

アンデッド(死んでない)モンスターの定義など俺が知るか…」


 アンデッドの事は分からないけど、明らかに言える事もある。


「俺は別にお前達を利用したりしない!道具じゃ無い!ミミとかこの世界で知り合った守りたい存在もいる!」

『ほほぅ。その者は運が良いな。しかし、それ以外の人間には興味が無いのではないか?ゼノン教から施しを受けておらんか?』


 ゼノン教?急に何の関係が…。


「ゼノン教が何だって言うんだ?」

『ククク。知らぬのだな。愉快愉快。無知なるものに教える愉悦よ』

「貴様…ムカつくな…」

『そう怒るでない。変わらぬ日々を過ごす我々にとっては稀な機会なのだ』


 人格が残っているのにダンジョンに閉じ込められてるのは確かに辛そうだな。もしかしたら、こいつが喋りたがっていたのは娯楽が欲しかっただけなのかも知れない。

 そんなに教えたいなら…せっかくだから色々聞いて情報収集に努めるか。


「だったらゼノン教の事を教えてくれよ」

『うむ。良いぞ。地上に持ち帰れるかは分からんがな』


 このダンジョンを出るのは一筋縄では行かないだろうからな。俺達がライト先生からスクロールを貰ってる事を知らなければそんな発想になるだろう。

 もしかしたら『お喋りを楽しんだ後は生かしておくか分からないがな』って意味かも知れないけど…。


『ゼノン教はな。勇者達がこの世界を掌握する為に作ったシステムなのだよ』

「作った?ゼノン神を崇める為に生まれたんじゃないのか?」

『クククク…。ゼノンなどという神はおらんよ。勇者達は『人を操るならやっぱり宗教だろ』とか言っておったな。お前達の世界ではよくある事ではないのか?』


 難しい事を聞いてくる…。そういうのも有るんだろうが俺はあまり詳しくない。

 それにしてもこいつ…。


「やけに詳しいんだな。一緒に悪巧みをしていた様に聞こえるぞ?」

『うむ。実際に勇者と話はしていた。ただな、言い訳に聞こえるだろうが我々は実感できていなかったのだ。ゼノン教に関しても『民を束ねる手法』としてその様な方法があるのかと感心しただけであった。我々からすると神とは不可侵であり、ただただ崇めるものという理解であったからな』


 確かに言い訳だな。刺したら人が死ぬなんて知らなかったからナイフで刺しまくってました。と言ってる様なもんだ。


「お前は随分と勇者について詳しそうだが、人間だった頃はどんな立場だったんだ?」

『人間連合軍の代表をしていた。妹が勇者達を召喚した兼ね合いもあってな』

「エルザ…だったか」

『ほほぅ。妹の名は伝わっているのだな。まぁ勇者を召喚したのだから当然か』


 そんな指導者的な立場にあったのに、こいつは先代勇者がゼノン教で好き勝手するのを黙認していたのか…。


「信仰を使ってこの世界を牛耳って…勇者は何がしたかったんだ?」

『表向きは民の幸せの為に価値観を統一すると言っていたが、賢者と教皇の会話を盗み聞いた限りでは嘘だったみたいだな』


 賢者と教皇?勇者達の人間関係が良く分からないな…。


「嘘の内容も気になるが、その前に教えてくれ。その2人は先代勇者の仲間なのか?」

『クククク…。本当に何も知らぬのだな。勇者と共に転移してきたのは4人。指示役だった賢者、勇者の女であった聖女、犯罪組織ディアーボのボス役をやっていた男に、教皇役をやらされていた1番下っ端の男だ』


 突っ込み所が多い…。だが、俺的に1番気になる所がある。


「勇者の仲間が犯罪組織のボスだと?そいつが…魔王なのか?」


 魔王も地球人なんだろう。しかも勇者の仲間なのに犯罪組織のボスだと言う。という事は、きっとそいつが魔王になる男なんだろう。

 と、思った…んだ。


『違うな。勇者達は魔王に対抗する為に召喚したのだ。まぁ魔王と勇者達は全員顔見知りの様だったが、ディアーボのボスをやっていたのは本当に勇者の仲間内だ』

「そんな馬鹿な…」

『まぁ実態としてはボス()であり、本当のボスは勇者だったがな』

「ゆ、勇者がそんな事をする訳がないだろう!しかも、お前はそれも黙認していたと言うのか!?」

『あぁ、黙認した。勇者から全国民を救う為には犯罪組織の管理も必要だと言われ、確かに逃げ場を準備する事で救われる者もいると考えたのでな』


 信じられない…。犯罪は悪だろ?悪は倒さないと駄目だろ?それなのに、むしろ増やす様なマネをするなんて…。

 だが、所詮は過去の話だ。いま文句を言っても何にもならない。とりあえず話を戻すか…。


「で、どう嘘だったんだ?」

『何がだ?』

「勇者が信仰で牛耳ろうとする目的だ!」

「隼人、冷静になれ!」


 話を逸らした俺も悪いが、大事な話を忘れられてイライラした。龍彦の言う通り冷静にならないと…。


『ククク。その話だったな。先程の話と繋がるのだが、大陸を股に掛けた大きな犯罪組織がなく、麻薬、人身売買、窃盗、詐欺などの犯罪市場が独占し放題だと言っていた。そして、その為の餌をゼノン教で集めろと…そんな話をしていたよ』


 脳が…言葉を理解するのを拒否している様に感じた。しかし、段々と染み込んでくる。理解が進むのと同時にどんどん怒りが湧いて来た。


「………は?何だよ…何だよそれは!!正義どころか大悪党じゃないか…。そんな奴が勇者なのか?勇者は正義なんじゃないのか!?」

『どうだ?勇者はお前が考える正義の体現者か?』

「ち…がう…。その話が本当なら…俺は先代を勇者とは認めない…」

『ククク。勇者の定義なんぞ我が知るか』


 畜生…。勇者達は日本で何をやってた奴等なんだ?まさか犯罪組織にでも所属していたのか?


「先代勇者はこの世界にくる前は何をしていたのか知ってるか?」

『そうだな…。確かケイジ(・・・)だと言っていたな。良くは分からぬが衛兵の様なものなのだろう?』

「ケイジ…刑事か?そんな人間がなんで…」


 俺は混乱していた。正義、悪、刑事、犯罪、勇者、魔王…全てがごちゃ混ぜになっている様で…。


『ククククッ!愉快だなぁ。私も昔は思い違いをしていたが、勇者と正義は無関係なのだろう。正義を目指すかは本人の意思次第だ』


 そういう事なのか?俺の正義が認められたから勇者に選ばれたんじゃないのか?

 だが、先代の勇者が正義を目指していた様には思えない…。


『で、お前は勇者だから正義を目指すのか?例えば勇者じゃなくとも正義を目指すのか?』

「勇者でなくても正義を目指す。当然だ!」

『であれば、勇者と正義の関係がどうであれ、やる事は何も変わらんのではないか?』


 それは…確かに…。


『さて、どうしたものかな。お前の正義の到達点は何処だ?正義に拘るのであれば考えた事もあるだろう』

「俺の正義のゴールは………」

『ゴールは?』

「親父の組織を潰して、苦しむ人達を救う事だ!」


『親父の組織?クククク…。なんだ、お主こそ悪の御曹司なのではないか。しかし、なるほどな。故に正義を求めるのか。面白い』

「お前に面白がられる筋合いはない!」

『正義を求める勇者の行く末か。気になるな。分かった、今日の所は我々が引こう。これからお前がどうなるのか…楽しみにしているぞ』


 リッチがそう言うと、リッチの姿が段々と薄くなっていく。そして、スケルトンやゾンビは地面や壁の中へと戻って行った。


「ちょっと待て!まだまだ聞きたい事がある!」

『我は今日の所は満足だ。また来る日を楽しみにしているぞ…』

「なんて自分勝手な…」


 そして、アンデッドの群は跡形もなく姿を消した。残っているのは勇者パーティの面々だけだ。


「隼人、なんか色々と聞けたな。ちょっと情報量が多くて混乱中だけどよ」

「そうだな。だが、一つだけはっきりとした事がある」

「なんだ?」


「ゼノン教は………敵だっ!!」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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