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ジャイアント双葉ちゃん

※今回は双葉視点になります。


「それじゃ、みんなが和也くんに夢中な間にオーガキングの前に行こうか」

「うん。和也くんがどれくらい持つか分からないし急いだ方が良いかも」


 確かに和也くんは魔力全開で戦ってる感じがする。服の効果でバフ?能力が上がってるらしいけど、それがどれくらいなのかは良く分かってない。


「麗奈と田中くんはサポートよろしく。何かあったら逃げるから、備えておいて」

「うん!分かったよ」


「それじゃ私が先行するね」


 仁科さんは奈落迷宮を踏破した時に貰ったお気に入りの短剣を構えると、体勢を低くしてオーガの集団の中に入って行きました。


 凄いなぁ…。相手に気付かれずにオーガの足元を通って、アキレス腱だけ切って行動不能にして行ってる。

 時々倒れたオーガが仁科さんを捕まえようとするけど、仁科さんの周りを渦巻いてる風に弾かれてて掴めないの。まるで鰻を捕まえようとして逃げられてるみたいな…。結果的に何だか仁科さんがヌルヌルと動いてる様に見える…。


 そうやって駆け抜けていると、私達はすぐにオーガキングの前に到着しました。


「殆どが和也くんに気を取られてたから簡単だったね。じゃあ、私は手下達が立花さんの邪魔をしないように対応しておくから」

「ありがとう!和也くんのお陰もあるけど、仁科さんも凄かったよ!」

「え?あ、ありがとう。無理しないでね」


 仁科さんなら15分位は時間を稼いでくれるかな。オーガが合計で千体いても直接相対できるのは10体かそこらだから、仁科さんなら体力が持つ間は負けないと思う。

 それじゃ、私はとりあえずキングに不意打ちでも…は、流石に無理だった。キングは私に気付いて見下ろしてる。


「コッチモ、コビト、イル。オマエ、アレ(・・)ノ、ナカマ?」

「アレ?あのピエロの事かな?そうだよ。怖いでしょ?」

「グヌヌ…」


 私達は小人かぁ。確かにオーガ基準だとそうなっちゃうよね。

 それと、和也くんへの恐怖は認めたくないみたい。でも、和也くんの仲間って事で私を警戒してるのが良くわかる。


 じゃあ、もっと警戒して貰える様に私も和也くんみたいに喋ってみようかな?


 無理!!やっぱり流石に無理!!


「と、とりあえず…行くよ!?」


 私はオーガキングの足元に近付くとローキックをした。

 か…硬ったぁ!!金属とは違うけど、肉って感じでもない。密度の高い分厚いタイヤを蹴ったみたいな…。


 オーガキングは特に痛がる様子もなく蹴られた場所をさすってる。


「オマエ、コビトニシテハツヨイ。デモ、オーガナラ、フツウ」


 誰がオーガよ!

 ふーん。そうですか、じゃあこういうのはどうかな?


「ツブレロ!」


 オーガキングは足を上げると、私の事を踏み潰そうとする。

 でも、その時オーガキングの軸足の横で地面から大きな土の腕が現れた。そして、オーガキングの軸足を掴んで払う。


「グォォォォォォォ!」

 ズドォォン…。


 オーガキングは後ろ向きに倒れた。何が起きたのか分かっていない感じだ。


「まだまだ続くよ!」


 地面からさっきより小さい腕が無数に出てきて、オーガキングの身体を掴んで床に貼り付ける。

 その姿は、まるで小人に捕まったガリバーみたい。


 抵抗できない様にしてから攻撃するのは気が引けるけど、ここはそんなに甘い世界じゃない。私は磔になったオーガキングの顔面を全力で殴った。


「ク、クククク。キカナイ!」


 やっぱり甘くない。私達の感覚で言えば子猫に肉球パンチされた感じなのかな?だとしたらむしろ癒されちゃうね!


 ピキ…ピキピキピキ…。バキッ。ピキピキ、バキッ。


 オーガキングを掴んでいた腕達が指先から壊れていく。オーガキングは上半身が自由になると残りの腕を壊して立ち上がった。


「グハハハッ!コビト、ヨワイ!ゴザカシイ、ダケ!」


 小賢しいってそんなに駄目なのかな?それも一つの努力で、足掻いた結果だったりすると思うんだけど。


 じゃあ、次の小賢しい所を見せようかな。

 合気道じゃなくて柔道だけど『柔よく剛を制す』って言葉があるよね。でも、魔物相手だとなかなか難しい。

 だから、私が目指すのは柔剛一体(・・・・)!私なりに考えたその答えを見て貰いましょう!


「それじゃ私のとっておきを見せてあげる!」

「グハハハッ!ドウセコビト。ヤルコト、クダラナイ」


 それは見てから言ってよね!


 私は魔力を丹田に集中させる。そして、それを真下の地面に打ち込んだ。すると、私の周りの土が波打ち始める。

 更に、私を中心として渦を巻き出すと、その渦が迫り上がって私の事を覆い包んだ。


「立花さん!大丈夫!?」


 敵の攻撃魔法だと勘違いしたんだと思うけど、仁科さんから心配する声が聞こえた。

 もちろん大丈夫!って言いたいんだけど、この状態だと喋れないんだよね…。


 そして、私を包んだ土はそのまま更に迫り上がっていき、オーガキングよりも少し大きくなった所で人の形へと変わっていく。


「あ、もしかして立花さんの魔法?」


 土で出来た手は、仁科さんに向けてグッドサインを送っていた。

 そして、服とかのディテールまで整った結果、土は完全に私の外見になっていた。


「すごーい!ジャイアント双葉ちゃんだぁー!」


 麗奈が私の事をパンダっぽい感じで呼んでた。合ってるよね?まさか大食いな感じじゃないよね??


「細かい所まで再現されてる。8/1モデルのフィギアって感じ」


 つまり8倍って事だね。だいたいそれくらいの大きさかな?仁科さんは鋭いなぁ。


「双葉ちゃんはあのゴーレムに乗ってるのかな?」

「白鳥さん。あれはゴーレムではなくて一応鎧扱いなんだと思います」


 田中君、正解!麗奈(いわ)くのジャイアント双葉ちゃんは自動的には動かないんだ。

 中にいる私と同じ動きをするパワードスーツって感じかな。


「デカクナッタ、ダケ!ショセン、コザイク!」


 ダケとか言っておきながらオーガキングは金棒を手に取った。そして私に殴り掛かってくる。

 しかし、私は振り下ろされる金棒に手を充ててそれを受け流すと、腕を掴み、相手の勢いを利用して腕を捻りながら投げた。


 私は倒れたオーガキングに向かって人差し指を向けると、指をチョイチョイと曲げて『掛かってらっしゃい』ってやってみる。

 ジャイアント双葉ちゃんは喋れないのが欠点だなぁ。今度改良してみよう。


「コビト!チョウシノルナァァァァァ!!」


 怒って襲いかかってくるオーガキング。なんだけど、怒りに我を忘れて動きがメチャクチャだよ。

 隙だらけなので私はオーガキングを投げまくった。呼吸投げをされたオーガキングは、何で自分が転がっているのか分からないみたいで混乱してる。


 ふふふ…。日本が懐かしいな。道場で子供に教えてるみたい。


「グヌヌヌ…。ナンデアタラナイィィィィィィィ!」


 これが技だよ。貴方が小賢しい小細工と呼んでる、人間が積み上げてきた努力の結晶。


 小細工をする必要が無い質量と力は、確かにそれだけで凄いよね。でも、条件を近付ければ力に溺れてる貴方には負けない!


 まぁ…透だったら普通に勝っちゃうかもしれないけど…。


 頭に血が昇ってるオーガキングは、金棒を両手で持って振り上げると、それをそのまま私に振り下ろして来た。凄くわかりやすい…。

 そうだ!こんな所をパパに見られたら怒られちゃうけど…私の好きな技を使っちゃおう!


 私は振り下ろされる金棒を当然の様に避けてからオーガキングの背後に回った。そして、後から抱き抱える。


 更に土魔法を発動させると、私の後ろの地面から三角錐の棘が生えてきた。ライト先生からお墨付きを貰った強度だよ。

 この後、どうなるか分かるよね?


「ヤメロー!!」


 もちろんやめないよ!ジャイアント双葉ちゃん式バックドロップだぁー!!


 私は、頸椎から落ちる危険な角度でオーガキングを棘へと叩きつけた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「双葉ちゃんすごい!カッコよかったよ!」

「えへへ、そう?ありがとう!」


 私達の横には、串刺しになったオーガキングの姿があった。更に周りを見てみると、切り刻まれたオーガが山積みになってる。


 私とオーガキングの戦いを邪魔しようとした部下達が100体くらい仁科さんに倒されてた。和也くんの方はもっと酷い事になってる…。


 結果的に、オーガキングを倒した時はあっちでもこっちでもオーガがガクガク震えてたよ…。

 仁科さんと和也くんへの恐怖に耐えながら戦っていた部下達は、オーガキングが倒されるのと同時に一目散に逃げて行きました。

 来た時とは違って、道に詰まってて大変そうだったよ…。


 という事で、いま私達はお説教待ちをしています。

 はい、そうです。和也君が少し離れた所で仁科さんに怒られてるんです!


 少し聞こえる感じだと『ふざけ過ぎ』とか『事前に説明して』とか、そんな感じの内容みたい。要するに『心配させないで!』って事だよね?

 何だかんだで仁科さんは和也くんの事を気にしてるんだ。ピエロ服を着て欲しいって言った仁科さんにも原因はあるけど、私は乙女心の味方かな!


 そして、怒ってたというよりは心配してた感じなので、お説教はすぐに終わりました。仁科さんがこっちに歩いて来ます。

 あれ?和也くんは何故かまだ正座してる…。


「和也くんはどうしたの?」

「5分くらい1人で反省してから来るように言っておいたよ。立花さんに一つ忠告があって時間が欲しかったから」

「え、忠告?なに?」


 何だろ…ちょっと怖いな…。

 仁科さんは軽く深呼吸をしてから、覚悟を決めて話をしてくれました。


「ジャイアント双葉ちゃんはパンツまで細かく再現されてた。下からだと丸見えだったから気をつけて」


「………え?き、きゃあーーーーーー!!」

「良かった。立花さんもちゃんと乙女だね」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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