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変動迷宮

ーー勇者達が迷宮に入った直後。


「龍彦、悪かった。もう大丈夫だ」

「頼むぜ。勇者様よ」


 龍彦に羽交締めにされて迷宮へと入った勇者隼人様は既に落ち着きを取り戻していた。龍彦から解放された隼人は、聖剣を鞘に収めてその場に座り込んだ。


「それにしても、魔族があんなに強いとはな」

「魔族は人間よりも遥かに強力じゃよ。渡り合えるのは一部の上位冒険者や各国の名だたる実力者くらいじゃ」

「俺達はBランクだぞ?まぁ実力はもっと上だと思っているがな」

「下位魔族でBランク相当じゃな。門番殿は明らかに上級な雰囲気じゃったから…もしかしたらSランク以上かもしれんの…」


 今の時代、純魔族に出会う事はまず無い。マーロン学園長が言っている下位魔族とは、純粋な魔族ではなく使い魔であるレッサーデーモンの事を指していた。

 その上に、Aランク相当の力を持つ一般純魔族がおり、更にその上にはSランク相当の貴族級純魔族がいる。ちなみにヘルマンで男爵級だ。


 そして隼人は、マーロン学園長の発言に疑問を感じていた。


「以()だと?」


 隼人が認識している魔物のランクはSランクまでだった。『Sランクかも』ではなく『Sランク以上かも』という事は、Sランクより上の存在が居る様に聞こえる。


「あくまで可能性じゃよ。基本的にはAランクまでに括れない忌避すべき存在がSランクじゃ」

「だよな。じゃあ、その上って何だ?」

「Sランクの中でも明らかに桁が違う存在がおる…らしい…かもしれない……のじゃ」

「何だそれ」


 マーロン学園長の発言は非常に曖昧なものだった。かなり自信が無さそうに見える。


「何かと言えば、神話の中で登場する存在とかじゃよ。実在しとるのかも分からんが、もし存在していれば明らかに他のSランクと一線をかく存在をSSランクとしておるのじゃ」

「念の為の設定という訳か。例えばSSランクに設定されてる魔物ってどういうモノなんだ?」

「有名な所ではバハムートじゃな。神話に出てくる最古の竜の一体じゃ。そのブレスは大陸を海に沈めたとも言われておる」


 話を聞いていたクラスメイト達は息を呑んだ。しかし、隼人はあまり信じていない様子だ。


「眉唾物だな」

「まぁ、神話とはそういうもんじゃろ」

「あの魔族にそのレベルである可能性が?」

「分からん。ワシがそんな次元を見抜ける化け物に見えるかの?」

「そりゃそうだな」


 あっさり認めるのも失礼な気がするが…。マーロン学園長は、自分では判断が付かないレベルという意味で『Sランク以上』と言っただけの様子だ。


 すると、話が一区切りした所を見計らって白鳥さんが隼人に話し掛けた。


「城之内君?透君の話は後でって言ってたけど、今なら大丈夫だよね?」


 白鳥さんの怒りは、まだ収まってなかったみたいだ…。白鳥さんから話し掛けて貰えたっていうのに、隼人の顔面は蒼白になっていた。


「い、いや、白鳥さん。それは地上に戻ってから話しましょう。今はダンジョン…そうだ!俺達は先に奥へ進もうと思います」


 白鳥さんが忘れる事を願って時間を稼ぎたいのだと思うが、とりあえずこの場を逃げたいという気持ちが在り在りと見えてしまっていた。

 そして、この場を任されている佐々木が隼人を止める。


「城之内。勝手な行動は控えてくれ」

「佐々木、俺は別に我儘を言ってる訳じゃないんだ。どうせバラバラに進むんだろ?だったら先生を待ってる意味は無いんじゃないか?効率を考えれば先に行くべきだ」

「確かに一理あります。しかし、ライト先生が無事がどうか分からない。それによって私達の行動も変わってきます」


 場合によっては、頼れるのかどうかで進むのか撤退するのかの判断が変わってくる。

 ゲートのスクロールを渡されているので迷うくらいなら撤退した方が安全なのだが、ゲートのスクロールは高級品なので出来れば使いたくないと佐々木は考えていた。


 しかし、ここで隼人から予想外の言葉が出てきた。


「ライト先生なら大丈夫だ」

「何故そう思うんですか?」

「悔しいがライト先生は強い。あの魔族よりも圧倒的にな」

「それは…本当ですか?」

「あぁ、確実だ。両方と対峙した俺には分かる。ライト先生の強さを認めるのは癪に障るがな…」


 隼人はアンフェルの実力をマーロン学園長以上に見抜いていた。

 ここから1つ分かる事がある。隼人は相手の力量が分からないから無謀な相手でも突撃しているのではなく、相手の力量を理解した上で突撃してるという事だ。でも、勝てるつもりではいる…。つまり、勇者様は自分の事が見えていないんだろう…。


「しかし…」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


 佐々木が反論しようとした瞬間、大きな音が響いてきた。そして、嫌な予感がした佐々木は入り口を見る。扉があった場所は壁になっていた。


「入り口が無くなってしまったな。どうする?佐々木」

「はぁ…。確かにこれはライト先生を待っても意味がないですね」


 佐々木が前を見ると、道は9本に分かれていた。


「では、ここで分かれて先に進む事にしましょう。あまり無理はしない様に。踏破よりも全員生きて帰る事を優先してください」

「分かった。では俺は真ん中の道を行く。白鳥さん、話の続きは地上に戻ってから」


 そう言うと、隼人は逃げる様に真ん中の道へと入っていった。

 白鳥さんは無言で隼人を睨んでいる。本当は地上に戻っても話の続きをする気が無いのだと理解していた。


「では、賢者パーティは1番右の道を行かせて貰います。聖女パーティはどうしますか?」

「私達は左から2番目を進んでみるね」


 佐々木の質問に双葉が即答した。既に決めていた感じだ。


「分かりました。では、くれぐれも気をつけて下さいね」

「うん。佐々木君たちも気をつけて!」


 そうして、賢者パーティとマーロン学園長は1番右の道へと進んで行った。残るは聖女パーティだけだ。


「じゃあ私達も行きましょうか」

「むー…」

「もう。麗奈ったらいつまでもほっぺた膨らませてないの」

「だって…双葉ちゃんは悔しく無いの?」

「まぁ最初はイラっとしたけど…。でも、私達は透が生きてる事を知ってるんだし、城之内君の軽口に捉われる必要は無いと思う。まぁ、城之内君が透に何かしたんなら話は別だけどね」

「うん…分かったよ。ひとまず忘れる事にするね」


 『何か』どころか殺そうとした実行犯なんだけどね…。

 すると、白鳥さんが落ち着いたのを見て和也が双葉に話し掛けた。


「立花さん。何で左から2番目の道を選んだの?理由が有りそうな感じだったけど」

「あ、土魔法の探知でね、一定範囲の土が触れてる所の様子が感じ取れる様になったんだ」

「そうなんだ?じゃあ宝物とか見つけた感じ?」


 和也は探知魔法で良いものを見つけたからこの道を選んだのだと考えた。つまり、まだ立花双葉という女性に対する理解が足りていなかった…。


「その道からオーガの大群がこっちに向かってるみたい。大群って言うか大軍(・・)?」

「………え゛?」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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