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迷宮入口

「勇者様!お帰りなさい!」

「モモ、しばらく帰ってこれなくて悪かったな」


 学術都市に戻った隼人が自分の部屋へ行くと、部屋ではモモが待っていた。


「大丈夫だよ!勇者様が頑張ってくれてるの知ってるもん!」

「モモだけだな。俺の事を本当に信頼してくれてるのは…」


 隼人がモモの頭を撫でると、モモはニッコリと微笑んだ。しかし、その顔には引っ掻かれた様な傷跡がある。


「どうした?喧嘩でもしたのか?」

「あ…その……」

「まさかイジメか?」

「違うの!実は……勇者様の事を『弱い』『偽物だ』って言う人がいて……私我慢できなくて…。ごめんなさい!」


 どうやらモモは、勇者を馬鹿にされたのが許せなくて自ら喧嘩を売ってしまった様だ。


「どうして謝るんだ?俺の為に怒ってくれたんだろう?」

「でも…私が悪い事をしたら勇者様が悪く言われちゃう…」


 モモの飼い主(・・・)は勇者という事になっているので、モモが何かした場合の責任は勇者隼人にあった。


「そんな事を言う奴等は放っておけ。それより…他人にはあまり効かないが…」


 そう言うと、隼人は引っ掻き傷のあるモモの頬を手の平で包み込む様に触れた。

 すると、手の中が輝き始める。


「勇者様…暖かい…」

「じっとしていろ。それくらいの傷ならすぐに治る」

「うん…」


「モモ、そのまま聞いてくれ。迷宮に潜ってくるから、また暫く帰って来れない」

「うん…」

「そして、迷宮から戻ったらクラスメイトから離れて旅に出たいと思う」

「え?なんで!?」


「残念ながら俺が弱いのは事実らしい」

「そんな事ないよ!」

「そうだな。あくまで『勇者にしては』なんだろうな」

「そんな事…」


 無い。モモとしてはそう言いたいのだが、勇者の平均能力なんて知らないので断定する事はできなかった。


「このまま誰かに教わっていても強くなれる気がしない。講師は成長した勇者より強い訳が無いんだから当然だよな…。だから俺は修行の旅に出る」

「私も…」

「駄目だ。今の俺の1番の特徴は『恐ろしく死に辛い』って事だと思う。だからこそ無茶ができる。だが、周りに人がいるとそういう訳にも行かない」


 そう言われたモモは、とても悲しい顔をした。


「足手まといで…ごめんなさい」

「そうじゃない。そう言う事じゃ無いんだ。モモが大事だから危険に晒したくない。事前に回避できるなら回避させたい」

「うん…」

「だから、暫く待っててくれないか?俺がいない間の事は龍彦達に頼んでおく」

「………」

「あと、モモの妹の事も探してみる」

「………分かった。勇者様、気をつけてね?」

「あぁ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「という事で、全員の修行は完了だ」

「おぉ!さすがはライトくんじゃの!」


 俺はマーロン学園長へ依頼達成の報告に来ていた。そして、また高級な紅茶が出される。


「良い香りだ。美味いな」

「それにしても魔法を使って器用に飲むのぅ」

「まぁ、慣れだ。こんな不躾な飲み方で悪いな」


 目の前に出してるゲートに、ちょっとずつ垂らしてる感じなんだよね…。マナー的にはとても悪いって事は分かってるんだけど、仮面を外す訳にはいかないからなぁ…。


「味わえて貰えとるんなら別に構わんわい」

「ありがとう。で、この後はどうするんだ?」


 人の準備はできた訳だけど、いつから迷宮に潜る予定なんだろう?

 荷物の準備もあるけど、暫く戻って来れない訳だし迷宮は危険なんだから、残る人との調整もあると思う。


「そうじゃな。明日の朝にココ集合ではどうかの?」

「随分と急だな」

「行く事は前々から分かっとったんじゃから急という事も無いと思うがの」


 あー。確かに訓練と並行して準備しとけって話だね。でも、勇者パーティは不意打ちでダンジョンに置き去りにしたから何も準備できてないと思う。

 つまり俺の所為なんだけど…。


「今日帰ってきた勇者パーティはずっとダンジョンにいたから何も準備できてないな。早くマロンに会いたい気持ちも分かるが、少し時間を貰えないか?」

「ふむふむ。確かにワシの気が逸り過ぎとるのは事実じゃな。では、休憩も兼ねて3日後ではどうかの?」

「あぁ、それくらいなら大丈夫だろう」


 それくらい時間があれば準備は大丈夫そうかな。

 後は体裁をどうするのか確認しとかなきゃだね。


「あと、聞きたい事が有るんだが」

「何かのぅ?」

「ダンジョンの事は秘密なんだろ?そのダンジョンに潜っている間は、どういう扱いになるんだ?」

「ふむ。近々、勇者様達にワシからの特別試練があるって事にしとるんじゃ。ライト先生もその間は特別試練の講師をしてくれる事になっとる」


 なるほど。秘密の何かをやってるって事だけ(おおや)けにしてるのか。


「了解だ。居なくても不自然じゃない状態にしてくれてるなら問題ない」

「うむ。では、3日後によろしくのぅ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ーー3日後。


「全員、準備は万端かの?」

「あぁ、大丈夫だ。あと、念のため各パーティにはゲートのスクロールを渡しておいた」

「フォッフォッフォ。用意周到じゃのう」


 道に迷った挙げ句に資材が尽きて餓死とかって可能性もあるからね。何かあった時に戻れる手段はあった方が良いでしょう。


「マーロン学園長も入るんだろう?どのパーティと一緒に行動するんだ?」

「ふむ。勇者、賢者、聖女、ライトくん達の4パーティで行動する訳じゃが、ワシは勇者様と一緒に行動しようと考えとる」


 俺と一緒に行動するって言われなくて良かった。色々と隠しながら行動するのも大変だからね。

 でも、勇者パーティとしても望まない内容みたいだ。


「は?勝手に決めんなよ!?」

「そうだな。ダンジョン踏破の依頼は受けたが、学園長の子守りを引き受けたつもりは無い」


 学園長の話を聞いて龍彦と隼人が反応しました。それにしても、学園長を子供扱いするなんて…。


「寂しいのぅ。では、賢者殿はどうかの?」

「我々は構いませんよ。魔術師である学園長なら我々の戦闘スタイルとも相性が良いと思いますし」

「助かるわい。では、そういう事でよろしくの」


 本当は、勇者達の子守りを学園長にしてもらえると良かったんだけどなぁ…。まぁ仕方ない。


「で、どうやって行くんだ?」

「うむ。こっちじゃ」


 学園長はそう言うと、ベランダへ出る為の扉を開けて外に出た。ベランダに隠し扉でもあるんだろうか?


「全員外に出たみたいじゃな」

「あぁ。で、どこかに隠し扉でもあるのか?それとも空を飛んで移動でもするのか?」

「空なんぞ飛べんわい…。こっちじゃ」


 学園長はベランダへ出る時に通った扉へ向かうと、取手を握って扉を閉めた。


「どういう事だ?」

「この取手が魔道具なんじゃよ」


 学園長が取手に魔力を込めてから暗証番号の様な言葉を呟くと、扉の向こうから魔力が迸ってきた。

 そして、その状態のまま学園長が扉を開けると、扉の中は闇が渦巻いていた。


「特定の箇所とゲートを繋げる魔道具か」

「流石は時空属性持ちじゃの。その通りじゃ」


 これは結構便利だな。リッケルトの宿とか奈落の底と繋げておけば、俺がいなくてもリルだけで移動したりできるじゃないか。

 今度色々と繋げておこう!


「ゲートの中に入ると降りの階段になっとる。足元には気をつけるんじゃぞ?では行くぞい」


 ゲートに入ると、学園長が言っていた通り階段に出た。人工の洞窟を降って行く感じだ。

 なるほど…。ここが既に学園の地下1キロくらいの所なのか。


「ダンジョンの入り口はすぐそこじゃ。5分程で着くぞい」


 ダンジョンの入り口もだけど、俺の目的である禁書庫もだね。

 そして、5分程歩くと少し広めの空間に出た。ここか…。


「おやおや、まぁまぁ。ここに人間が来るとは珍しいですねぇ」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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