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特訓完了

「ライトさん。魔力操作を訓練した結果、こんな事もできる様になりましたよ」

「ほぅ?見せてくれ」


 パンッ!


 賢者佐々木が呪文を呟いてから壁を指差すと、オーガダンジョンの内壁が弾けました。


「火と水の合成魔法か?比率が難しそうだな」

「ははは…。1回見ただけで分かるんですね。これは水蒸気爆発です。一瞬で水を蒸発させられる比率で火属性と水属性を混ぜないと発動しないんですよ」

「繊細な魔力調整が求められるな。流石だ。今のは弱めに撃った様だが、威力を上げればかなり強そうだ」


 流石は佐々木だ。ちょっとコツを掴んだらどんどん新しい合成魔法を生み出してる。


「俺に見せてしまって良かったのか?奥の手として秘密にしてた方が良かったと思うが」

「切札は別に準備してあるのでご安心を」

「そうか。それならば大丈夫だ」


 賢者様は抜かりないね。既に飛行魔法も覚えたし、佐々木は目標をクリアしてると思う。


「どぉおりゃああああああ!!」

 グォォォオオオオオオ!ドガァアア!


「勝負ついたみたいだな」

「えぇ。今の千葉がジェネラルに負ける訳がありません」


 千葉が総仕上げとして『オーガジェネラルとタイマンを張りたい!』と言い出しました。Bランクとのソロ戦闘は危険でしたが一応勝てたみたいですね。


「千葉、怪我は大丈夫か?」

「あぁ。すぐに治る。…と言いてぇ所だが、魔力不足でちょっと掛かりそうだな」

「身体強化の応用である部位の特定強化。更に発展させた部位の集中強化はちゃんとできてたな」

「ライト先生ほどスムーズじゃねーけどな」


 僕が最近やってた特定部位だけの身体強化には、その先がありました。本来は全身をカバーする魔力を、その特定部位だけに集中させるんです。隙ができるので諸刃の剣なんだけどね…。

 これで身体強化のテクニックについては千葉に追いつかれちゃったかな。


「十分に実戦で通用するレベルだ。とは言っても、隙をつかれると危険な技だから油断しない様にな」

「あぁ、分かったぜ」


 他の3人も『魔法制御デキテルー』のレベル3をクリアした。中谷萌さんに関してはレベル4もクリアだ。

 これで多少は役に立つと思うし、少なくとも千葉に当てて足手纏いになる事は無いだろう。


「よし、賢者パーティは特訓完了だ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ライト先生!勝負!」

「タチバナ…開口一番がそれか…」


 続いて聖女パーティの所に来たら、いきなり双葉に勝負を挑まれました。


「自信があるって事で良いのか?」

「そうですね。少しは驚いて貰えると思いますよ?」


 双葉には土属性魔法の訓練を指示してた訳だけど、さて、成果の方はどうかな?


「では、見せて貰おうか」

「行きます!」


 双葉はそう言うと、走り込んで来ながらパンチを打つ為に腕を引いた。そして、そのまま腕を突き出してくる。

 まだ届かない距離なんだけど…。


「タチバナ、どういうつも…うぉ!」


 まだ届かない距離にいた双葉が、パンチを打つ動作をしながら俺の前まで滑る様に移動してきた。

 俺は驚きながらも、ギリギリの所で顔面を狙ったパンチを避ける。


「あー!避けられちゃった!」

「タチバナ、今のは何だ?」

「ふふふ。土属性魔法ですよ?土に運んで貰ってるんです」


 そう言うと、双葉は仁王立ちしたまま滑る様にして前に横に動いて見せた。何とも気持ち悪い動きだ…。


「それは…どういう理屈なんだ?」

「それは秘密です。それに、魔法なんですから理屈なんて関係ないかも知れませんよ?」


 んー。俺が知る限りは、この世界の魔法って何でもありって訳でも無いと思うんだけど…。


「隙あり!」


 双葉は続いてミドルキックを放って来た。

 いつもなら転換で躱わして反撃する所だけど、合気術は身バレの可能性があるから控えるべきだと思う。

 という事で、俺は双葉のミドルキックを腕で受けることにした。


「ぐっ、重いな」

「うわ…Bランクを一撃で倒せる蹴りに耐えたよ…」


 こんなに強い蹴りを放つと反作用で体勢が崩れそうなものだけど…。と思ったら、軸足の地面が三角形に突き出てて、双葉の足の裏を支えてた。

 短距離走のスターターみたいな感じだね。


「かなり自然に、かつ迅速に土魔法が使える様になってるな」

「ふふふ。少しは驚いて貰えてますか?」

「あぁ。しかし、小技ばかりだな。目的である『不測の事態において身を守る方法』とは言えないんじゃないか?」


 攻撃力とか戦闘能力は上がってるけど、今回のポイントはそこじゃなかったよね。


「それじゃ、攻撃してみて下さいよ」

「確かにそうだな。こちらが攻撃をしないと見せられないか」


 普通に身体強化をすると強すぎる。とりあえずAランクの魔物くらいの強さで行ってみるかな。

 声を掛けると展開速度の確認ができないので、俺はそのまま不意打ちで双葉に襲い掛かった。


「はぁーっ!!」


 双葉が気合を込めて地面に踏み込む。すると、双葉の周囲の土が盛り上がってきてドーム状に包み込んだ。

 俺はそのまま土壁を殴ってみるが、衝撃波で表面が削れたものの破壊には至らなかった。


「ふむ、それなりの強度だな。もう少し強めてみよう」


 今の双葉が不測の事態に陥る時って、相手はAランク如きじゃないと思う。次はSランク………コクヨクの高速タックルくらいの力で行ってみよう。


「行くぞ!!」


 ドガァアアアアア!!


 双葉の作ったドームは………粉々になって吹き飛んでいた。

 ヤバいっ!やり過ぎた!!


「双葉!大丈夫か!?」


 すると、俺の後から声が掛かる。


「ふふふ。ライト先生もそんなに動揺する事があるんですね。ばっちり驚かせられたみたいで良かったです」

「タチバナ…。転移の様な移動術を覚えたのか?」

「あ、瞬間移動できる訳じゃ無いんです。移動速度は普通なんですよ。ただ、土の中を移動できる様になりました!」


 そんな魔法があるのか…。先代が残した魔法書にもそんなの載って無かったぞ…。

 あー、もしかしたら、先代も時空魔法を多用してたと思うから知らなかったのかも…。


「なるほどな。土の中を移動して逃げられたら、それを追える者はまずいないだろう。タチバナ、俺の出した課題は達成だ」

「やったー!!」


 和也のレベル上げも進んでるし、聖女パーティも大丈夫そうかな。


 って言うか、双葉はどこまで強くなるんだろう…?既に冒険者ランクAの実力は確実にあると思う…。

 双葉に蹴られた腕が痛いです…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「あいつ…。奈落迷宮に放置したまま全然来やがらねぇな…」

「このままだとイビルドラゴンに勝てる気がしないね…」


 イビルドラゴンを倒して奈落の底に行けたらコクヨクから連絡が来る手筈になっていたのですが、全然連絡が来ません。

 という事で様子を見に来てみると、イビルドラゴンの部屋の前で龍彦と原田が愚痴っている所でした。


「放置して悪かったな。その様子だとイビルドラゴンに何度か負けた感じか?」

「てめぇ!もっと早く来いよ!全然教育になってねぇだろ!」

「タツヒコ、落ち着け。勇者がいれば勝てると踏んでたんだが…。どうやって負けてるんだ?」


 目測を誤って放置してしまったのは事実だな。もう少し細かく見に来るべきだった…。


「とにかく避けられまくりだ。普通の攻撃じゃ効かねぇのに、大技だと転移で避けられる」

「勇者の光魔法なら通じるだろう?」

「だから!避けられまくりだっ!」


 どうやら隼人に問題がありそうだね。


「勇者。黙ってないで、イビルドラゴンに対してどんな光属性魔法を使っているのか見せて貰えるか?」

「俺が見込み違いだった訳か…。あぁ、見せてやるよ」


 そう言うと、勇者様は呪文を詠唱してから壁に向けて魔法を放った。

 光が消えると、壁には直径2メートルくらいの幅で深さ50センチくらい削られた跡が残っていた。


「なるほどな。お前の魔法の問題箇所を教えてやる」

「なんだ?言ってみろよ」

「広げ過ぎだ。これも雑魚慣れの一つだな」

「どう言う…事だ?」


 んー、どう言えば分かりやすいかな…。


「そうだな。今までは10ダメージで倒せる敵だった。だから10ダメージを100の範囲に広げる形で覚えている。だが、イビルドラゴンは100ダメージ以上じゃないと通じない。だから、魔法を絞って100ダメージを10の範囲で発動させるべきなんだ」

「なるほど。だが、問題は避けられる事なんだが?」


 そうだね。本当は無詠唱で魔法が使えると良いんだけど…。まぁ魔力を練るのを早くして、もっと小刻みに撃てる様になれば大丈夫でしょう。


「今の例だと100ダメ掛ける10範囲で千の魔力を使っている感じだ。そこを100ダメ掛ける1範囲で連発できる様にするんだ」

「更に絞る感じか…」

「スピードと手数を増やせ。相手だって魔力の限界も有れば、魔法連続使用の限界もある。削るんだ」


 すると、隼人は目を瞑って両手の間に魔力を集めた。さっきよりも全然少ない。


「10分の1くらいの魔力で…。発動は一瞬で良いし範囲をできる限り絞って、しかし威力は10倍で………シャイニングレイ!」


 隼人の放った魔法は、壁に直径1メートルくらいの穴を開けた。

 絞り切れてないけど最初だから仕方がない。方向性は合ってるから後は練習あるのみだ。


「良い感じだな。後は反復練習で更に絞り込める様にするのと速度を上げれば大丈夫だろう」

「感覚は掴めた。今日は練習に費やして、明日イビルドラゴンに再チャレンジする」


 いや…1日は厳しいんじゃないかな…。


「まぁ無理はするな。覚えられたら再チャレンジすれば良い」

「やる事は明確になった。お前はさっさと帰れ。明日、奈落の底に迎えに来い」


 えー。教えて貰ってその態度は………まぁいつもの勇者様か。

 もしかしたら、彼の意地に火を付ける様なことを言ってしまったのかも知れません。


「分かった。楽しみにしていよう」

「あぁ、明日は余裕で倒してやる」


 という事で、翌日僕は奈落の底で待っていました。すると、コクヨクがやって来て僕に予想外な報告を行います。


「ご主人様、ご報告があります」

「何だい?」

「勇者パーティがイビルドラゴンを倒し、奈落の底に現れました」

「え?本当に?」

「はい。満身創痍ではありますが」


 と言う事は、本当に1日で改善したって事ですね。正直、無理だと思ってました…。


「やるじゃん」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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