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感謝

2023/02/18 獣人が名前を言うのを書き忘れてたので追記しました…。ジャイロさんです…

2023/02/19 カインさんの名前が間違えている所があったので修正しました…。

 パッカパッカ。パッカパッカ。


 これは…意外と楽しいかもしれない。

 僕はジャジャに乗ってのんびりと旅行を楽しんでいた。ジャジャというのは乗っている馬の名前で、名前で何となく分かると思うけど牝馬だった。

 双葉との関係性は特にありません。本当ですよ…。


 ここはアクル王国とビオス王国を繋ぐ道の途中で、ビオス王国側の所です。

 はぁ…草原の匂い…癒される…。


 そう思って深呼吸したのだが…。深呼吸した空気には嫌な臭いが混じっていた…。


「リル!血の匂いがしてるのは何処か分かる?」

「ガウガウ!」(コッチから!)

「リル、連れて行って!」

「ワフーン!」(わかった!)


 僕は、匂いの元へと走るリルについて行く。間に合ってくれ…。


 しばらく走っていると、商人と冒険者らしき人達が20頭ほどの魔物に襲われているのが見えた。どうやら全部ゴブリン種の様だが…ホブゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンシャーマン、あの大きいのは…ゴブリンジェネラルか…。

 数が多い上に上位種が混じっており、冒険者は苦戦していた。


 かなり危険な状態だ…普通に近づいてから倒すのでは間に合わないかもしれない。転移を使う訳にもいかないし…遠くからバレない様に倒すことにしよう。


 トールでもないって事にしなきゃいけないから水属性以外だな…。よし!雷魔法にしよう!速度が速いし射程も長い。もし耐えられたとしても、少なくともスタンはさせられる。

 魔力を使って指向性を持たせると、対象を限定させる事もできた。


 ピカッ!ズガガガガガガン…


 僕の手から稲光が走りゴブリン達だけを伝わって駆け抜けた。


 プスプス……。ズ…ズズンッ……。

 雷の熱で焦げたゴブリンはそのまま倒れる。Cランクのゴブリンジェネラルも一撃だった。


「ふぅ…魔物は倒したけど…。回復はできるのかな?」


 僕は彼らが自分達で回復できる事に期待して、ひとまず見守る事にした。

 冒険者達は何が起きたのか理解できず一瞬キョトンとしていたが、とりあえず魔物が倒れた事を理解して仲間の治療を開始した。

 どうやら回復魔法が使える人はいないみたいだ。みんなポーションを使って回復している。


「カイン!カイン!しっかりして!」


 1人重症者がいるみたいです…。女性がポーションをかけているが、目に見える効果は無さそうだった…。

 魔眼で見てみると中級ポーションみたいだ。これで効果がないって事はかなり重症みたいだな…。


 治療に関する魔法が1番凄いのは聖属性だが、効果は劣るものの光属性と水属性にも回復魔法はある。トールを水属性って事にしたのも、それが理由の1つだった。仕方がない…。


「すいません!皆さん大丈夫ですか?」

「カインがゴブリンジェネラルの攻撃を受けて危険な状態なんです…。何か…何か回復の手段をお持ちじゃないでしょうか?」

「僕は水属性の術師で回復も使えます。絶対に助かるって保証はできませんが…使っても宜しいですか?」

「お願いします!どうか…どうか…」

「分かりました。やってみます。ちょっと離れていてください」


 女性はカインさんを地面に寝かせると少し離れてくれた。


 そして魔法を使おうとして……気付いた……。

 やべぇ、詠唱がわかんねぇ!無詠唱で使うわけにもいかないし…。こ…こうなったら…。


「マ…マナよ。水が…水の…治療が…ゴニョゴニョ…」


 はーずーかーしー!そんな即座にそれっぽいの思いつきませんよ!


 そして詠唱とは関係なしに魔法が発動し、水がカインさんの身体を覆う。特に息苦しさとかは無いみたいだ。

 傷がどんどん治って行く。えっと…こんなすぐに完治するのも不味いよね?申し訳ないけど…ちょっと傷を残して魔法を解除しよう。


「ふぅ…これで一命は取り留めたと思います」


 僕の声を聞いた女性は、すぐにカインさんの元へ駆け寄って様子を伺う。どうやら無事を確認できたみたいだ。


「あぁ、カイン!ありがとう!本当にありがとうございます!」


 悪い人達でも無さそうだし、どうにか間に合って良かった。

 すると、カインさんの治療が終わるのを待っていた商人風の人が話しかけてきた。


「カインさんを助けて頂いてありがとうございます。えっと…魔物を倒してくれたのも貴方様なのでしょうか?」

「いやいや違いますよ!僕はコッチが光ったのを見て駆けつけただけなんです。そしたら魔物も皆さんも倒れてたという訳です」

「なるほど…倒して頂いた方は見ましたか?お礼を言いたいのですが…」


 うわ…どうしよう…僕以外に目を向けさせないと……。


「えっと…。すぐに何処かへ行ってしまった人がいたんですけど…あの人だったのかなぁ?でも、仮面をつけてて顔は見えませんでしたよ?」

「そうなのですか…残念です…」


 よし!納得してくれた!


「あ!名乗りもせず申し訳ありません。私はドミニクと申します。リッケルトで雑貨店を営んでいるしがない商人です。お名前をお伺いしても?」


「トールと言います。リッケルトで冒険者になろうと思い旅をしていました」


「おぉ!同じ目的地とは奇遇ですね!宜しければ一緒に行きませんか?」


 これは願ってもないお話しだ。リッケルトのことを色々と聞ける。ドミニクさん的にも戦力が増えて嬉しいんだろう。win-winってやつだね。


「是非お願いします!」

「よかった!こちらこそよろしくお願いします。荷運び用の物ですが是非馬車にお乗りください。トール様の馬も楽になりますし」

「ありがとうございます。所で…様付けはやめて下さい。言われ慣れてなくてドキドキしちゃいます」

「ははははっ!ではトールさんと呼ばせて頂きますね。私にも敬語は不要ですよ?」

「はい!ありがとうございます」


 まぁ、不要と言いつつ多少は使うのが良い距離感というものですかね…。


「ドミニクさん。魔石だけ回収しといたぜ」

「ありがとう。大事に保管しておいて、仮面の人に会えた時にお渡ししたいと思います」


 仮面の人へのお礼用に魔石を回収したみたいだ。申し訳ないけど、渡せる事は無いと思います…。

 そして、僕はジャジャの手綱を馬車へと繋がせてもらってから馬車に乗った。


「いやぁ、それにしてもトールさんや仮面の人がたまたま通りかかってくれてホントに助かりました!」

「そう言えば、なんであんな状況になったんですか?」


「私の…判断ミスなのです…」


 ドミニクさんが重い雰囲気で話しだした。


「最近、ゴブリンが増えているとは聞いていたんです。それで、いつもはEランクを護衛に雇うのですが、今回は奮発してカインさん達Dランクを雇いました…」


 Fランクが初心者、Eランクが半人前、Dランクが一人前だったかな。


「そのせいもあって、私も油断していたのでしょう…。いつもならゴブリンが出た時、如何にして逃げるかを考えるのに…今回は戦闘を選択してしまいました…」


 日頃と違う状況になると…日頃と違う発想をしちゃうもんですよね…。


「そしたら後から上位種が続々と出てきまして…。私の判断ミスでカインさんを死なせてしまう所でした。情けない限りです…」


 ドミニクさんがとても反省している…。

 しかし、そんなドミニクさんへの回答は、予想外の所から聞こえてきた。


「ぐ…。ドミニクさん…それは違う…。俺達も戦わせて欲しいって言ったんだから…お互い様だ…」


 倒れていたカインさんは馬車に担ぎ込まれていたのだが、どうやら目覚めたみたいだ。そして、僕を見つめて来る。


「君が助けてくれたんだね?朧げながら覚えてるよ。ありがとう」


 カインさんは辛い身体を起こして僕に感謝を伝えて来た。そんな無理しないで下さい…。


「それにしても…俺は夢でも見てるのかな?それとも実はあの世だったりするのか?あの傷がこんなに治ってるなんて…」

「凄い水魔法でしたよ。あんなに見事なもの私は見たことがありません。」


 しまった。かなり抑えたんだけど、まだ強かったか…。


「あれは本人の回復力を上げる物なんです。なので、たぶんカインさんの回復力が凄かったんですよ」

「ふむ…そうなのですかな…」


 この会話は危険だ!話を変えよう…


「そう言えば聞きたい事があるんですけど…」

「はい。何でも聞いてください」


「リッケルトって冒険者の町って言われてるじゃないですか?それって何でなんですか?」

「あ、それはですね。近くにダンジョンや魔物の森があって狩場が多いんですよ。まぁその分危険も多いんですけどね…」


 なるほど…僕にはお誂え向きな環境みたい。楽しみだね。早く着かないかなぁ…。


「あ、そう言えばリッケルトまではあとどれくらいなんですか?」

「何事もなければ明日の昼ごろなんですが…魔物の襲撃が多いのでどうなるか…」


 それから他愛無い会話を続けていると、日が傾き始めてきた。ここまでの間にゴブリンの襲撃は2回もあった


「うーん…どうしようかな…」


 ドミニクさんは何か悩んでるみたいだ。


「どうしたんですか?」

「実は…この先2時間ほど行った所に水場がありまして、今日はそこで野営する予定だったんです。ただ…予想以上に魔物の襲撃が多かったので遅れている状態でして…」

「なるほど…。日が暮れた後に進む危険をおってでも水の確保を取るか、水を諦めるかを迷ってたんですね」


 うーん…。正直な所…僕達は止まっても進んでも平気なんだけど…。みんなは安全を取った方が良いんじゃないかな?


「そうなんです…。でも決めました。今日は街道沿いに止めて過ごしましょう。あまりに襲撃が多いので…夜に移動するのは危険だと判断しました。少し不便をおかけしますが大丈夫ですか?」

「僕は大丈夫ですよ。何なら水は僕が出しましょうか?」

「おぉ!それは助かります!宜しいんですか?」

「僕も使いたいですから。困った時はお互い様ですよ」

「ありがとうございます。では、ここら辺で止めて食事と野営の準備をしましょう」


 僕達は馬車を止めると、冒険者の人達が野営の準備を初めた。僕は準備してもらった桶に水を入れて行く。

 そして、御者の人は食事の準備を始めた。どうやら僕の分も準備してくれるらしい。えっと、貰ってばかりは何か悪いし、じゃあ肉串をお裾分けしようかな。


 リルは別で5本くらい食べるから良いとして、ドミニクさん、御者さん、冒険者さんが5人と僕で8人か。肉串には4つ刺さってるから、5種類を2本ずつの合計10本バラせば、ちょうど分配できるね!

 僕は御者さんに肉串を10本渡した。料理にボリュームが出るって喜んでもらえて良かったよ。


「ははは。なんかキャンプみたいで楽しいなぁ」


 僕は焚き火の前で火に当たっていた。

 でも実は…何気に探知魔法を使っている…。ゴブリンいるねぇ…。


「ワフッ!グルルル…」(倒してきて良い?)

「良いんだけど、死体の処理はどうしようか?放っておくと別の魔物を呼んじゃうよね?」

「ガゥ!ガウガウ!」(全部食べるから大丈夫!)

「あぁ、悪食ってスキルで丸呑みできるんだっけ…うん、じゃあ良いよ」

「ワフーン!」(やったー!)


 そして、リルが尻尾を振りながら走っていくと、後ろから話しかけられた。


「悪い。少し良いだろうか?」


 話しかけて来たのは、野営の準備が終わったカインさんだった。


「パーティメンバー達が改めてお礼を言いたいらしくてね…。ついでに紹介させてくれないかな?」

「そんな、お礼は十分頂いてますよ?」

「まぁまぁ、そう言わないでくれ。俺達はDランク冒険者パーティの『宵の明光』で、俺がリーダーのカインだ。今日は本当に助かった。ありがとう」

「私は風魔法使いのリーシアよ。カインを助けてくれてありがとうね」


 カインさんを助けて欲しいって言ってた女性はリーシアさんって言うらしい。あの雰囲気からして…リーシアさんはカインさんの事が好きっぽいな。


「俺はフリッツだ。ありがとうな」

「キールって言います。カインさんの件はもちろん、水とかもありがとうございました」


 最後の1人を残してお礼を頂いた。しかし、最後の1人はフードを深く被って、なんだか不安そうにしている。

 そして、不思議な事を言い出した。


「俺も…話しても大丈夫なのか?」


 どういう意味なんだろう?いまいち良く分からなかった。


「もちろんです。どうしてですか?」


 僕の発言を聞いて、最後の1人はローブを脱いだ。そして…僕は驚いていた……。

 筋肉質な身体なのだが、全身が毛で覆われていて…顔が犬の様な形をしている。獣人ってやつみたいだ。


「いや…アクル王国から来たみたいだから…。あの国では俺達は魔物扱いされてるから、話したら不快に思われるかもと思って…」


 マジか…。


「えっと、こんな聞き方をするのも失礼だと思うんですけど…違うんですよね?」

「もちろんだ!魔物は魔石から力を得る魔の眷属。俺たちは獣の特性を持った人族だ!そもそもの成り立ちが違う!」


 あぁ…。クリシュナさんもそんな事を言っていたなぁ…。魔石を持つものが魔物だと…。


「僕はそんな偏見を持ち合わせていませんから。大丈夫ですよ!」

「そうか…ありがとう。もちろんカインの事もだが、理解してもらえて嬉しいよ。俺はジャイロだ。よろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします!」


 今日は色々と感謝されて…何ともむず痒い1日だなぁ…。


「みなさん。食事の準備ができましたよー!」

御者の人が僕達を呼んでいる。


「さて、ご飯みたいですよ。皆さん行きましょう」


 本日のメニューは、野菜たっぷりのスープに黒パン。そして僕が提供したお肉に甘辛いソースが掛かったものだった。お肉はそのまま出さずに少しアレンジしたみたいだ。

 僕たちは仲良くご飯を食べた。うん!美味い!


 そして僕は、お肉を提供した事を御者の人にバラされて…またみんなにお礼を言われていた…。

またブックマークして頂いた方がいて、感謝感激です!

みなさん、当作品を見つけて下さりありがとうございます!


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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