クラスメイトへの説明
「急に集まって貰って悪いのぅ」
「あぁ、それは別に構わない。だが、学園長の話の前に聞きたい事がある」
学園長に相談した翌日、俺の希望通り参加可否を確認する為に、勇者、賢者、聖女の3パーティが学園長室に集められました。
あと、保護者として海老原先生も一緒です。
隼人が『別に構わない』とか言ってるけど、どうやら勝手に代表して答えてるみたいですね。勇者パーティ以外の何人かは『勝手に何言ってんの?』って感じの顔を隼人に向けてます。
でも、空気が読めなくなるスキルでも持ってるのか、隼人は周りの目線を無視して質問を始めました。
「チェストは…。ゼノン聖教国の人達は何処に行ったんだ?」
「ふむ?そんな事が気になるんですかの?」
「色々と話していた事があったのに何も言わずに消えたんだ。気になって当然だろう」
学園長からしたら『2人が内々に話してた事なんて知らんがな』って感じだと思うけど…。
でも学園長は大人ですね。って言うかお爺ちゃんなんだけど。隼人に対して冷たくあしらわず、真面目に回答してあげてます。
「彼等はゼノン聖教国に帰ったみたいですな。そもそも彼等の目的は大結界の確認だったらしいですからのぅ。それはとっくに終わっとりましたし、いつ帰ってもおかしくない状態でしたぞ?」
「だが、俺に一言も無く帰るのはおかしくないか?」
えっと、どう言う意味だろう?もし『勇者である俺様に対して』って意味だとしたら傲慢な感じが恥ずかしいです。
それとも、何か具体的に話を進めてたのかな?
「申し訳ないのじゃが、ワシにはご挨拶が無かった理由までは分かりませんのぅ」
「そうか。そうなると本人に確認するしかないな。チェストに連絡する手段は…」
「城之内、そろそろ良いですか?みんな学園長の話を聞きに来てるんです」
この場の主旨とは関係無い話を続ける隼人にイライラしてきたみたいで、佐々木が話にカットインしました。
「佐々木、何を言ってるんだよ。これはクラスのみんなにも関係する確認じゃないか」
「城之内がそう思っているだけでしょう?私には彼等が国に帰ったという情報だけで十分ですよ。リスクが減って良かったです」
「なんだと…」
城之内と佐々木が睨み合って剣呑な雰囲気を出してます。もし武器を抜いたら…俺が割って入らないとですね。
でも、そんな事態にはなりませんでした。
「2人とも止めなさい!みんなで日本に帰る為には力を合わせることが重要です。そして、力を合わせる為には冷静に話し合える能力が大事だって先生は思います!」
「すいません。私とした事が冷静さを欠きました」
「ぐぅ…。でも、先生……」
佐々木は素直に謝ったんだけど、勇者隼人様は納得できてない感じです。やっぱり空気が読めなくなるスキル持ってるだろ…。
「城之内君がゼノン聖教国に身を寄せたいと考えてる事は知ってます。でも、それは意見が分かれてて、また改めて検討する事になってる認識ですよ?」
「それは…確かに…」
隼人が海老原先生に押されてる!
「城之内君がゼノン聖教国の動向を知りたいのは仕方がないと思います。でも、その理由をクラスメイトに責任転嫁するのは、先生違うと思います!」
「は、はい…。確かにそうですね。すいませんでした」
おぉ!隼人を納得させるなんて…。海老原先生さすがっす!!
「では、そろそろワシからの話をさせて貰っても良いかのぅ?」
「はい。生徒達への話とは何でしょうか?」
意気消沈した隼人に代わって海老原先生が学園長に返答しました。と言うか、そもそもこうあるべきですよね…。
学園長からの話は俺が聞いた内容とほぼ変わらず『秘密のダンジョンの存在』『その特性』『複数パーティで挑んで欲しい』というものでした。
学園長からの話を聞いて、まずは龍彦が質問をしました。
「話は分かったけどよ、それで俺達にどんな利益があんだよ?」
「そうじゃのう。途中で見つけた宝物や魔法道具は当然発掘者のものじゃ。SSランクの迷宮じゃから、どれだけの物が見つかるか計り知れんぞ?」
「なるほどな。そこは博打になる訳だが、そもそも冒険者はそういうもんだし、悪い話な訳じゃねーか」
俺は『楽しそう』だけで行こうとしてましたが、龍彦はちゃんと行く価値があるのかを考えてたみたいです。
「私からも質問宜しいですか?」
「賢者殿、どうぞどうぞ」
「ありがとうございます。学園長はなぜ踏破したいのですか?」
あ、そう言えば聞いてなかったな。さすがは賢者様!
「ふむ…。まずは興味じゃな。秘密のダンジョンに関する情報を受け継いだものの、難易度が高すぎてチャレンジもできん。そんな時に勇者様達が現れた。行くなら今だと思った訳じゃ」
「なるほど、そうですか。しかし『まず』という事はそれ以外にも?」
「んー。恐ろしく個人的でセンシティブな話じゃよ?ジジイの初恋とか、そんな話になるんじゃが…興味あるかの?」
わーお…。学園長の初恋って何十年前の話なんだよ…。
「い…いえ。それは結構です…」
「フォッフォッフォ。それは良かったわい。恥ずかしい思いをせんで済んだのぅ」
恥ずかしいとか言いながら学園長の表情がちょっと残念そうに見えるんだけど!?
実は甘酸っぱい話をしたかったんじゃなかろうか…。
「他に質問は無さそうじゃな。どうじゃろうか?受けてくれるかの?」
「勇者パーティは参加だ。みんな良いだろ?」
「あぁ、良いんじゃねーか?」
「城之内君に付いて行きます!」
勇者パーティの残りメンバーも頷いてます。勇者パーティは全員参加みたいですね。
「私も参加したいと思いますが、みなさんはどうですか?」
「もちろん良いぜ!」
「私達も…」
賢者パーティも全員参加か。後は聖女パーティです。
「私は鍛えたいから行きたいけど、みんなはどう?」
「双葉ちゃんが行くなら私も行くよ!」
「白鳥さんが行くなら俺も行く」
こういうのは芋蔓式って言うのかな?双葉、白鳥さん、田中君はコンボみたいな流れで参加になりました。たぶん和也も…。
「俺も行ってみたいな。何だか楽しそうじゃない?」
「はぁ…。そんな心構えだと死んじゃうよ?心配だから私も行く」
聖女パーティも全員参加という事ですね。
やっぱり学園長からの特別訓練依頼を受けといて良かったです。このままダンジョンに行かれてたら大惨事でした。
「という事じゃが。ライト君、この後はどうするかの?」
戦闘訓練の授業は対人間の個人戦を中心としてたんだけど、今回は対魔物のパーティ戦を想定して訓練しないといけません。
「ダンジョン内ではパーティ単位で行動する事になるので各パーティ毎に訓練したいと思う。まずは賢者パーティだ」
宵の明光からの受け売りですが、パーティ戦では役割分担とチームワークが大事らしいですからね。
「了解しました。ちなみに、我々から始めるのは何故ですか?」
「結局、まだ模擬戦をやれていないからな。お前達の実力が一番把握できてないからだ」
すると、佐々木は自信たっぷりの顔で発言しました。
「なるほど。では我々の力の程をお見せしましょう!」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!
あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!
ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!




