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有効活用

「このまま…潰すか」

「いっ、痛い!やめて!何でもするから!!」


 ちょっと力を込めただけなんですけど…。ロウ達に比べるとなんとも低い苦痛耐性です。

 そして、自分の結界に絶対の自信が有ったんだと思うけど、実は安全じゃないって分かった途端にこの態度ですよ…。


 どうしようかな…。これくらいの実力なら、いつでもどうにでも出来る気がするんです。

 そうなると、『必要性も無いのに命乞いをしてる女性を一方的に殺す』と云うのは…正直なところ流石に気が引けます。


 それに、このままアンジェを殺しても、きっと何も変わらないと思うんですよね。アンジェの代わりを務める別の人間が発生するだけだと思います。

 大事なのは俺の怒りを発散する事じゃありません。教団が生み出してる不幸を減らす事だと思うんです。だから…。


「アンジェ、お前を殺すのはやめだ。但し、条件がある」

「はい!何ですか?何でもやります!」

「孤児院を使った悪行をやめさせろ。教団の中を改革するんだ」


 アンジェに達成出来るのかは分からないけど、例え数人助けられるだけになっても何もしないよりはマシだと思います。

 問題はアンジェが全力で取り組むかどうかですが、そこは一応方法があります。可哀想ですが、そこは自業自得という事で…。


「そ…そんな事……」

「無理か?それならば死ぬだけだ。お前に俺の秘密を1つ見せてやろう」


 そう言うと、俺の足元に闇が広がった。闇からはウネウネと触手の様なものが出てアンジェに絡みつく。


「ひっ、ひぃ!いや!やめて!!」


 闇は、口や鼻、耳などからアンジェの身体の中へと入っていった…。そして、全ての闇が無くなると、アンジェはその場に座り込む。


「何が起きたのか分かったか?」

「強力な呪い…闇属性魔法……。お前はやっぱりトオ「それ以上言うのはやめておけ」

「………私では解けない強力な呪いです。内容は何ですか?」

「俺の秘密を漏らさない事。そして、1年以内に教団の改善(・・)をする事。それが破られた場合、お前は死ぬ。それと、お前の聖属性魔法は封じておいた」

「そんな…」


 アンジェは絶望的な表情をしています。教団の改革ってそんなに非現実的な話なのかな…。

 でも、アンジェは気付いてない様子ですが呪いの条件は改革(・・)ではなくあくまで改善(・・)です。まぁ全力で改革に取り組んでほしいので、条件が緩い事は教えてあげませんけどね。

 まぁ気付いたとしても、聖属性魔法を取り戻す為に頑張ってくれると思います。


「お前が道具扱いして有効活用してきた人達のために、今度はお前が有意義な事をするんだ」

「分かり…ました……」


 さて、では僕もレイオスに帰りましょう。

 怒るのって疲れるよね。早くリルのモフモフで癒されたいです。でも、その前にイトの急用も聞いておかなきゃ。


「では頑張れよ。じゃあな」


 アンジェは返事をせずに項垂れてます。俺はそんなアンジェを放置してレイオスへと移動しました。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ライト様、何があったのかはセリアさんからある程度聞きました。それで、最終的にどうなりましたか?」


 レイオスに戻ってみると、バレッタ、セリア、ミク、ミミ、イトがズラッと並んで待ってました。

 どうやって話そうかな。呪いの事とかは言えないし…。


「そうだな。アンジェは一応改心して、教団を改善する為に活動する事になった。もうアンジェがセリアにちょっかいかけてくる事は無い。大丈夫だ」

「え!?あの状態からどうやったらそんな事に!?」


 や、やっぱり改心は無理があったか…。セリアがとても驚いてます。そりゃそうだよね。でも、詳細に説明するのは勘弁してください。

 こういう時は…チラッ。

 俺はバレッタの方を一瞬見ました。


「ライト様がそう言うのですから、そうなのでしょう。細かい部分を我々が知る必要はありません。ライト様を信じれば良いだけです。ひとまず、解決した様子で安心しました」

「そ、そうですか…?いえ、そうですね。大事なのはライト様が助けてくれて、もう大丈夫だって言ってくれてるって事です。ありがとうございました!」


 さすがはバレッタ!しかし、そこで空気の読めない男が納得できない様子で話しかけて来ました。この場にいる俺以外の男は1人だけです。


「僕が話そうとした緊急事態ってセリアさんの事だったんだけどさ、ほんた…ライトは僕の話を聞かないで行っちゃったじゃん?でも、セリアさんを助けに行ってたじゃん?どういう事?」


 なるほど、イトの話はセリアの事だったのか。確かに緊急事態だったね。

 って言うか、あれ?説明してなかったっけ?


「学術都市へ行く前に、みんなに渡したドルツ産宝石の土産を一度預からせて貰っただろ?」

「はい。確かに一度お返ししました」

「その時に魔法を付与したんだ。緊急時には俺へと通知が来る様に…。って、言ってなかったか?」


 付与魔法を覚えた後に作った和也達へのプレゼントには、実は緊急時の通知機能を付けてあるんです。

 それで、後付けでバレッタ達へのプレゼントにも付与したんですけど…。バレッタが珍しく呆れた表情をしてます…。


「初耳ですわ…」

「僕も初耳だね…」


 あれ?言ったつもりになって言い忘れてたのかな?

 僕の記憶力よりもバレッタの記憶の方が信用できるので、これは言ってませんね…。


「行動が変わるので先に言っておいて欲しかったですわ」

「ライトは意外と忘れっぽいから気をつけて。僕は無駄な人探しを数日やらされた事とかあるからね」


 イトめ…平野さんを探させ続けちゃった時の事をまだ恨んでるのか…。意外としつこい性格なんだな。

 って、俺とイトは同じ人格なんだった。帰ってリルに癒されよう…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ーー4日後。


「おはよう。少しお話し大丈夫かい?」

「構わないぞ。誘拐犯」


 早目に学園に来ると教室の前でチェストが待ち構えてました。

 クラスメイト達を誘拐したのは、ゼノン聖教国の仕業である可能性が高いと思ってます。アクル王国の仕業に見せかけて隼人達をゼノン聖教国に引き入れたかったんでしょう。

 もし正解なら、指揮官はチェストかアンジェですよね。


「僕は偽聖女のお守りなんて任されてる可哀想な男なのに、酷い事言うね」

「お前も仲間に対して偽聖女とか言うのは酷いんじゃないか?」

「んー。仲間って感じでもないんだよね。天使とツェペラウスじゃ微妙に目的とか違うし。だから今回みたいに邪魔になる事もある」


 それは、俺を調べた事?セリアを攫った事?それとも、俺と同盟を組もうとした事?


「全く、事情が分かってないんだから調査だけしてれば良かったのに」

「よく分からないが、事情を伝えなかったお前にも原因が有るんじゃないか?」

「ははは。一理あるね。でも、仲間じゃ無いからさ」


 チェストは両手を肩の高さまで上げて『困った困った』という感じのリアクションをしています。


「それよりさ、本題に入っても良い?」

「勿論。むしろ早く話してくれ」

「聖女とか言われておいてなんか呪われてるんだけど、うちの偽聖女。聖属性魔法を使おうとすると気持ち悪くなるんだってさ。でも、原因とか心当たりについて何も答えないんだよね」


 話ってその件か。アンジェは無事(?)に学術都市へ帰って来れたみたいです。


「天罰が当たったんだろ?」

「聖職者なのに?それは笑えるね」


 お前は笑っちゃ駄目だと思うけど…。


「しかも、任務を放り出して聖教国に帰るとか言い出してるんだよ」

「帰れば良いんじゃないか?」


 改革を進めないといけませんからね。国に帰らないと呪いも解けないでしょう。


「アンジェが呪われたまま聖教国に帰る訳にはいかないんだよ。凄く怖い上司に僕が怒られちゃうんだ」

「そんな事知るか。だったらお土産でも買って帰れば良いんじゃないか?学術都市饅頭でも作ってやろうか?『学術都市に行ってきました』って焼印を入れてやるよ」


 適当に提案してみたんですが、予想外にも正解だったのかチェストが『うん、うん』と頷いてます。


「マンジュウは知らないけど、お土産は僕も同意見なんだ」

「ほぅ。何を持って帰るつもりなんだ?」


 チェストの雰囲気が緊張感を持った様な気がします。


「キャリー・ライトの……命かな」


 そう言うと、チェストは豆粒の様な物を取り出して口の中に放り込みました。


「チェスト、俺の命はお前では無理だ」

「そんな事は分かってる!だから聖遺物を使おうと……ライト、貴様何をした!?聖遺物を飲み込んだはずなのに感覚が無かった!効果も出てこない!」


 俺は手の平を前に出してチェストに質問しました。


「聖遺物ってこれの事か?」

「何故そこに…」


 豆を飲み込もうと開いた口の中に、ゲートが出来てるの気付かなかったでしょ?日頃仮面を付けながらゲートで食事してるから口のサイズでゲート作るの慣れてるんだよね。


「さあな。お前が投げるのを失敗しただけじゃないのか?」

「そんな訳がないだろう…」


 これ何だろう?聖遺物とか言ってるけど、魔眼で確認してみようかな。


『アルラウネの種:マンドラゴラ等の魔性植物を混ぜた魔法薬』

『飲んだ生物を半植物化する。痛覚が無くなり、再生能力を持ち、巨大化する事が可能となる。基本的には元の生物に戻る事はできない』


 うわぁ。ホラー映画の世界じゃん。チェストの奴、こんな物を飲むつもりだったの?


「お前、この種の効果を知ってて飲もうとしたのか?」

「当然だよ。強くなれば、よりあの方のお役に立てる様になる。僕の命の有効活用(・・・・)さ」

「………。」


 俺はそのまま手の平を握り、手の中にあるアルラウネの種を握り潰した。


「あっ!何をする!どれだけ貴重な物か分かっているのか!?」

「貴重だろうと害にしかならない物は処分するべきだろう」

「くそっ…。聖遺物まで無くして、このままおめおめと帰る訳にはいかない!」


 チェストは腰の剣を抜きました。

 まだ生徒が来てなくて良かったけど、ここが学校なのを忘れてませんかね…。


「帰りたくない?じゃあ、俺が強制的に帰してやるよ」

「何を言っ……」


 喋ってる途中のチェストが一瞬で姿を消しました。ゼノン聖教国の首都への強制転移です。

 ゼノン聖教国の首都はサリオンに連れて行って貰ってますからね。


 この日のうちに、アンジェもゼノン聖教国へ向けて出発しました。


 それにしても教団の考えは全く理解できません。アルラウネの種だって、()遺物だって事は教団的には素晴らしい物だって事になってそうです。

 有効活用って本来は良い言葉だと思うんですけど、しばらくは嫌いな言葉になりそうですよ…。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


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ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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