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vs 偽聖女

「『私の椅子』ってこの拷問椅子の事か?別に壊してはいないが」

「違いますわ。それの事です」


 アンジェはロウを指差してます。えっと、もしかして召喚された時の共通言語付与のバグですか?こいつらと言葉が噛み合わないんですけど…。

 まぁそんな事より、いま大事なのはセリアの事です。


「で、これ(・・)はロウの暴走なのか?それとも、お前の差し金なのか?」


 正直に答えてくれるかは分かりませんが、まずは素直に質問してみました。

 俺の質問を聞いたアンジェは何か考えてます。まぁ、即答できない時点でアウトな気もしますが…。


「ライトさん。私達同盟を組みましょう!そうですわ。それが良いですわ!」


 ほんと会話にならないんですけどー!!

 え?こいつらの言葉って実は共通言語じゃないとかって可能性あります??


「言っておくが、会話が成り立たない奴と同盟を結ぶつもりは無いな」

「んー。と、言われましても、これ(・・)というのが何を指してるのかが分かりませんわ」

「セリアを拘束して拷問しようとした事に決まっているだろう!」

「あ、そういう事ですか。それなら最初からそう聞いてくだされば良いのに。それなら答えられます。私はそんな指示してません(・・・・・)わ」


 堂々としてて嘘っぽくはないんだけど…。本当にアンジェは無関係なのかな?でも、だとしたら疑問があります。


「では、お前は何故この部屋に来たんだ?」

「指示はしてませんが、この部屋にいるんだろうなーっと思って様子を見に来たんですわ」


 ん?えっと…つまりどういう事だ…?

 指示を出すまでもなく当たり前の事(・・・・・・)だってことなのか?


「お前等は…いつもこんな事をしているのか」

「あ、何か勘違いされてますね?私達は快楽殺人者でも拷問嗜好の犯罪者でもありませんよ?」


 俺からしたら完全に犯罪者なんだけどな…。


「じゃあこれは何なんだ?」

「試練ですわ。神の意を理解できる様になる儀式です。試練を乗り越えた者は神の希望を理解し、自ら全てを話したくなるのですわ。信心深いロウの事ですから、きっと試練を与えてると思ったのです」


 それは、拷問の結果として喋ってるのを、自分達にとって都合の良い話にしてるだけだろう。


「試練だと言うのなら、当然ロウとかも受けたんだろうな?」


 拷問に対して都合の良い解釈してる訳じゃないのなら、教団内でも運用されてるはずですよね?でも、やってないんでしょ?

 って思ったのですが、アンジェの回答は俺の予想と違っていました。


「当然ですわ。まぁこれは一定以上の信者しかやりませんが、ロウは信心深いと言いましたでしょう?ここにある器具くらいなら全て経験してますわよ?」


 マジか…。あー、腕切られても指潰されても動けたのは、そういう訓練の賜物なのか…。


「じゃあお前はどうなんだ?」

「私ですか?何をおっしゃっているのやら…」


 アンジェは「ヤレヤレ…」という表情をしています。


「ロウ達は敬う立場、私は敬われる立場。私に試練は必要ありませんわ」


 つまりは、教団の中には支配層と被支配層があって、被支配層を狂信徒にする為の行為だって事だよね。

 俺から溢れ出る魔王覇気が…より強くなりました…。


「お前にとってロウ達の様な信徒は『物』なんだな」

椅子(・・)だって言ったじゃないですか」


 こいつ…何でこんな酷い事ができるんだ?聖女と呼ばれるほど町で人々に優しくしてるのは演技なのか?


「じゃあ、お前は…日頃人々に優しくしてるのは何なんだ?」

「ライトさんの疑問が理解できませんわ。自分の道具を修理したり大事にするのは当然なのでは?」

「道具…だと?お前は人々に愛を説いていると聞いていたんだがな。嘘だった訳か」


 俺の話を聞いて、アンジェはキョトンとしています。


「ですから、道具として愛してますわ」


 やっぱり、こいつらとは意見が合いそうな気がしません。


「安心してください。チェストと同じで私も差別なんてしません。人も亜人も等しく私が有効活用しますわ。肉壁になったり、実験材料になったり、交渉材料になったり、とても便利なんですのよ?」

「やはり、お前は聖女じゃないみたいだ」

「あらあら、女神って事ですか?それはさすがに僭越ですわ」


 本当に話が通じない…。


「と言う事で、お互いを知る事が大事なので包み隠さずに話しましたが、協力しませんか?勇者、賢者、聖女は生きてさえいれば良いです。飾りですから。貴方は勇者よりも強いでしょう?彼等を捕獲してくれれば報酬は何でも準備しますよ?」


 クラスでアクル王国派かゼノン聖教国派かに分かれてたけど、これはどっちもアウトだな。


「貴方は特殊な性癖とかありませんか?基本的に何でも答えられるので特殊な方が価値を出しやすくて助かるんですけど。良くあるのは子供でしょうか?いくらでも準備できますよ?」


 こいつは何を笑顔で話してるんだ…。


「少年とかはどうです?他には『殺しながらやりたい』とかって希望もそこそこありますね。問題なく準備できますよ?」


 これがさっき言ってた『交渉材料としての有効活用』なのか?反吐が出る…。

 すると、顔面蒼白でセリアが立ち上がり、震えた声で喋り始めました。


「まさか…ゼノン教が運営してる全国の孤児院の子供達に…そんな事をさせてるんですか?」

「最近は女狐のお陰で孤児が増えてて供給過多なんですよ。だから全員って訳じゃありませんけどね。あ、貴方の孤児院の子達もちゃんと有効活用してあげますよ。私は差別とかしませんから」


「ふざけるな!!」


 俺は、限界を迎えて怒鳴り声を上げていた。

 ゼノン教って何なんだ…。神として崇められてる開祖のゼノンは、こんな事の為に宗教を作ったのか?


「あら、怒らせちゃいましたか?落ち着いてください。そうだ。これ、とても落ち着く匂いなんですよ」


 アンジェはそう言うと、懐から瓶を取り出して床に叩きつけました。すると、とても甘い匂いが部屋中に広がっていきます。


 もちろん分かってますよ。これが碌な物じゃないんだろうなって事は…。


(バス、この匂いが何か分かる?)

『ユメミ草を発酵させてから煮詰めた物にファントムトレントの樹液を混ぜた物っす!』

(えっと、つまり何だろう?どういう効果があるのかな?)

『依存率の高い麻薬っす!望んだ夢を見れるんすけど、ご主人様は毒物無効なので効果ないっす!』


 やばい!俺は平気だけどセリアに吸わせる訳にはいかない!


「セリア!この部屋の空気を吸うな!先に戻ってろ!」

「きゃっ!いったぁ……」


 俺はセリアの足元にゲートを作るとセリアを落として避難させました。イザベラ王女のパクリなのが悲しい所ですが…。

 出口はレイオス支部の転移部屋です。たぶん着地できなくて床にお尻をぶつけたんだと思うけど、今は我慢して貰いましょう


 そして、すぐにゲートを閉じると、俺はアンジェを睨みました。


「俺との交渉が無理そうだから麻薬で懐柔する事にしたのか?悪いが俺には効かないぞ?」

「参りましたね…。何でそんなに嫌がるんですか?欲しいモノが何もない人なんてこの世にいないでしょう?違う報酬が希望ならそれを言えば良いじゃないですか!」


 そんな事は簡単です。俺が欲しいモノは…大事な人達の幸せは…罪なく過ごす人々の幸せは……


「お前には準備できない。それがよく分かった」

「そうですか。交渉決裂みたいですね。残念です」


 俺は一歩一歩ゆっくりとアンジェへ近付いて行きます。しかし、アンジェは余裕の表情です。


「私をどうこうするつもりですか?言っておきますが無理ですよ?私が張っている結界はSランク最高の防御力を誇ってますから。貴方がさっきから出してるのも効いていないでしょう?」


 そう言えば、魔王覇気を浴び続けてるはずなのに全然効いてない感じですね。


「で?それがどうかしたのか?所詮は偽聖女の結界だろ?」

「なんで…すって……」


 アンジェ、いや、偽聖女の額に血管が浮き上がるのが見えました。


「Sランクになれたからと言って調子に乗らないで下さい!新参者の底辺Sランクのくせに!私は()が違うんですよ!」


 ()ねぇ。俺に言えるのは、少なくともサリオンやハルトの方が怖いって事ぐらいかな。


「私こそが聖女です!みんなは私を崇めるべきなんです!だから、特性だけで聖女に相応しくないシラトリは死ぬべきなんです!」


 怒りに囚われて、本音がボロボロ出てきてますね。俺には絶対にバラしてはいけなかった本音が…。


 俺は偽聖女が張った結界の前まで来ると、右手を出して結界に直接触れた。


「ははははっ!無理ですよ!私の作った結界は」


 ビキ…


「っえ……?」


 ビキビキビキビキ……バリンッ!!


 偽聖女は、俺が握り潰した結界があった空間を見つめている。そして、段々と顔面が蒼白になっていった。


「は?え?嘘…。そんな…そんな事って…」

「まぁ、偽聖女だからこんなものか」


 俺は偽聖女…まぁいっか、こいつにはこんな嫌味を言う価値もない。俺はアンジェへと更に近付いた。


「いや…嫌!近付かないで!こっちに来ないで!ロウ!早く起きなさい!」


 しかし、ロウが目覚める素振りはありません。まぁ、あと2時間くらいは無理でしょう。

 俺はアンジェの発言を無視して近付くと、アンジェの頭を掴んで持ち上げました。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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