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ルルス町

何名かの方、ブックマークして頂きありがとうございます!

皆さんに読んで頂けている事が実感できて、非常に嬉しく感じております!

引き続き頑張ります!


「もうちょっとで僕の番だね!」

「ワフーン!」(そうだねー)


 町に入るには検査が必要らしく、朝から行列ができていた。透は列ができ始めてからすぐに並んだので比較的前の方だが、既に後ろには結構な人数がいる。

 そして門兵は、流れ作業でどんどん確認していた。


「次っ!」


 ついに僕の番になった。無事に通してくれるだろうか…。


「身分証を出せ!それと、その動物は魔物か?魔物だとしたら許可証もだ!」


 しまった…そういう仕組みなのか…。どっちも持ってないぞ…。


「あの…。実は無くしちゃいまして…」

「何?身分証がない場合は保証金として銀貨1枚だ。元々持っていたとしてもまからんぞ」


 銀貨…確か城から持ってきた中にあったはず!

 僕はポケットの中でアイテムボックスを小さく開くと、銀貨1枚を取り出した。そして、その銀貨を門兵に見せる。


「えっと…これで宜しいでしょうか?」

「ん?なんだ…その銀貨なんか違うぞ…これ……古代銀貨じゃないか!」


 あれ…今の銀貨と違うみたいだ。もしかして使えないのかな…?


「おいおい、普通の銀貨は持っていないのか?」

「えっと…残念ながら…」


 若い門兵さんと話していると、その場にいた上司の様な男が割って入って来る。そして、若い門兵さんを連れて行き、何やらヒソヒソ話を始めた。


「そいつ…分かってないみたいだぞ…それなら…」

「しかし…」

「銀貨1枚には違いない…かまわん…」

「はぁ…」


 そして、若い門兵さんが戻って来た。


「仕方がない。今回はこの銀貨で勘弁してやる。通ってよし!」


 なんとも急な展開だった。


「えっと…この子犬も良いんでしょうか?」

「かまわん!さっさと行け!」


 なんだか闇を感じるけど…まぁ通れるなら良いか…。とりあえず、僕達は無事に町の中へ入る事ができた。


「おおー!人がいっぱいだ!こんなに見るのは久々な気がする!」


 すぐ出発するつもりではあるのだが、久々に人の営みに触れる事ができて嬉しくなっていた。


「とりあえず、現代の現金が必要だなぁ…。どこかで魔物素材を換金できないかな?人に聞いてみよう!」


 僕は出店を出している人に話しかけてみる事にした。肉の串焼きとかを販売しているみたいで、とても美味しそうな匂いがしている。


「すいません…教えてほしい事があるんですけど…」


 残念ながら反応が無い…。


「あの…すいません…」


 僕は店主のおっちゃんから睨みつけられた…。


「おい。ウチは串焼き屋だ。物を尋ねる時のルールも分からんのか?」


 あー、串焼きを買えという事か…。串焼き1本銅貨5枚ね。じゃあ銅貨は1枚あたり100円って感じかな。

 でも…その『買う為のお金』を入手する方法が聞きたい事なんだよなぁ…。


「実はですね…いま現金か無くて…。物品をお金に変えられる所が聞きたかったんです…」

「なんだよ。文無しかよ」

「良ければ場所を教えて頂けませんか?換金できたら必ず買いに来ますから!」

「しょうがねぇなぁ…。換金したいのは何なんだ?」

「ありがとうございます!魔物の素材なんですけど…」


 他にも売れそうな物は色々あるが、世間を騒がすリスクを孕んでそうなので無難な物を選んだ。


「それなら冒険者ギルドだな。この大通りを200メートル行った左側にドラゴンの絵の看板があるから、そこで買い取ってくれるはずだぜ」

「おぉ!ありがとうございます!それじゃ行ってきます!」

「ちょっと待て。これ持ってけ」


 おっちゃんは肉の串焼きを2本手渡してくれる。


「あ、でもまだお金が…」

「誰が文無しから金取るか。いいから持ってけ。その代わり、今度金がある時に買ってってくれよ」

「うわぁ…。ありがとうございます!」


 お言葉に甘えて、僕はその場で肉にかぶりついた。もう1本は串から外してリルに食べさせてあげる。


「う…うまぁーー!!」

「ワフゥーン!」(うまぁーい!)


 この1か月…殆どの食事がただ焼いただけの肉だったのだ…。ちゃんと調理された食材…。タレの染みた肉は、今の僕には至福の料理だった。

 どうだリルよ!これぞ人間の文化、料理だ!


「おぅ。そんなに喜んで貰えるとは嬉しいな」

「ありがとうございます!必ずまた来ます!」


 僕はペコペコとお辞儀をしながらその場を後にした。こういうのは嬉しいね。素材が売れたらまた来よう!


「竜の看板…竜の看板…。あ、あった!」


 これが冒険者ギルドかぁ…ドキドキするなぁ…僕はそーっと扉を開けて中を覗いた。

 中は、半分が酒場で半分が受付カウンターになっていた。


「おい邪魔だ!入るならさっさと入れ!」

「あっ!すいません!入ります入ります…」


 後ろから急かされて、焦りながら中に入った。す…凄く見られてる…。注目を浴びてしまった様だ…。


 さっさと要件を済ませてしまおう。僕は腰を低くして奥へと進んだ。受付カウンターには案内札が立っていたので、内容を確認する。


「えっと…ここはクエスト受注で…ここは達成報告で…買取はその他になるのかな」


 僕は『その他』のカウンターに行ってみる事にした。ここは誰も並んでいなかったので、すぐに受付嬢さんと話をする事ができた。


「今日はどうされました?」

「えっと、魔物の素材を売却したいんですけど…ここであってますか?」

「あー、はいはい。合ってますよ。それで、売却頂けるのは何ですか?ゴブリンの魔石とかでしょうか?」


 受付嬢からは『どうせ大した物じゃないんでしょ?』という雰囲気を感じる。さてさてどうしてくれようか…。でも目立ち過ぎるのは駄目だしなぁ…。

 あと、ポケットから出てきても自然なものじゃないとね。


「買い取って頂きたいのはバジリスクの魔石なんですけど…」

「は?それはどういう冗談ですか?」

「いやいや。本当ですって。これです」


 僕はポケットから出してる様に見せかけて、アイテムボックスからバジリスクの魔石を取り出した。奈落の底で狩ったやつなので、地上のよりちょっと強いんだけどね。


「なっ…確かにこれは…。ちゃんと調べてきますので少々お待ち下さい」

「はい。宜しくお願いします」


 10分ほどが経って、受付嬢さんは奥から戻ってきた。


「お待たせ致しました…。確かに本物でした…。こちらをお売り頂けるのでしょうか?」

「はい。お願いします」

「ありがとうございます。それではこちら…金貨50枚で買い取らせて頂こうと思いますが、宜しいでしょうか?」


 そう言って、受付嬢は金貨の入った袋を机の上に置く。

 うーん…。まったく相場がわからない…。


(おーい!バス!相場とかわかる?)

『ご主人様、ごめんなさいっす!この世界の(ことわり)として普遍的なものは分かるんすけど、変動する内容の現状とかは分かんないっす!』


 なるほど、そういう基準なのか…。

 じゃあ、試しにちょっと揺さぶってみようかな…。


「う~ん…。この魔石って、バジリスクの魔石の中でもかなり質が良いと思うんですけど?」

「うっ…。確かにその通りですね…。でっ…では…60枚で如何でしょうか?」


 そして、受付嬢は追加の袋を机の上に置く。事前に準備してあったのか…。じゃあギルド的に妥協できる線として事前に相談してあったんだろうね。

 だったら、そんなに相場からズレてるって事は無さそうだなぁ。


「はい。じゃあ金貨60枚でお願いします」

「ありがとうございます。ではこちらを…」


 僕は金貨の入った袋を受け取ると、上着のポケットに入れた。カモフラージュとして鞄を持ち歩いた方が良いかなぁ…。


「ところで…お客様のお名前と、どうやって入手されたのかをお聞きしても宜しいでしょうか?」

「えっと…僕って冒険者登録してないんですけど、その回答は強制なんですか?」

「あっ、いえ。そんな事はございません」


 すると、酒場で飲んでいたゴロツキから野次が飛ぶ。


「おいおい坊主!盗んできたんじゃねぇだろうなぁ!」

「まさか自分で倒したなんて言わねぇよなぁ?」


 うん。関わらない方が良さそうだね!


「受付嬢さん。それじゃ僕はこれで失礼します!」


 そして僕は急いで外に出る。


「おい!てめぇ逃げんじゃねぇよ!」


 僕の事を追いかけるゴロツキ。しかし、ギルドの外に出て探してみても僕の姿は見つからないのであった。


…………。

………。

……。


「おっちゃん!串焼き買いにきたよ!」

「お、買い取ってもらえたのか?」

「うん。ばっちり!だから大量に買わせてください!」


 僕は換金できたお金でさっそく串焼きを買いに来ていた。


「ははは。ありがとうな。何本行っとく?」

「えっと…5種類あるんだよね。じゃあ各20本ずつで合計100本お願いします!」

「は?おいおい…無理しなくて良いんだぜ。第一食べきれないだろ?」

「すぐ町を出なくちゃいけなくて、移動中のご飯にしたいんです。お金的にも大丈夫だし、腐らせないで全部食べる方法もあるので、本当に100本お願いします!」


 僕は1泊だけ宿屋で宿泊したら、明日の朝にはルルス町を出て行くつもりだった。


「んー、そうなのか。わかった。じゃあバンバン焼くからちょっと待ってな」

「了解!」


 そして、焼き上がるのを待ちつつ、僕はおっちゃんから色々と教えて貰っていた。


「伸び伸びと自由に生活するには、何処の国がおすすめですか?」

「そうだなぁ。やっぱり自由と言えば冒険者じゃないか?で、冒険者をやって行くならビオス王国が良いらしいな」


 ビオス王国…奈落の底の本では登場しなかったな…。


「ビオス王国って何処にあるんですか?」

「お前さん、他国の事を何も知らないんだな。西側にある隣の国だぜ。ルルス町はアクル王国の最西町だから、西に向かえば2日くらいでビオス王国に入るな」

「おぉ、そんなに早く…」

「特にリッケルトとレイオスって町が、冒険者の町として有名だぜ」


 ふむふむ…目的地はそこら辺かな…。


「さてと…全部焼き上がったぜ!100本で銀貨50枚だが…大量に買ってくれたからな。40枚で良いぜ」

「ワッフ!ワッフ!」(美味しいお肉!はやく!はやく!)


 2割引き!太っ腹なおっちゃんだなぁ。

 それと、銅貨5枚が100本で銀貨50枚って事だから、どうやら銅貨10枚で銀貨1枚みたいですね。あとは金貨がわからないな…。


「えっと…金貨だったら何枚になります?」

「お前さん算術が苦手なのか?騙される事もあるから覚えた方が良いぞ。金貨で払うなら1枚で、お釣りが銀貨60枚だな」


 なるほど。銀貨100枚で金貨1枚らしい。そうなると…銀貨が1000円くらいで、金貨は10万円くらいの価値なのか。

 え?っていう事は…バジリスクの魔石は600万円で売れたって事なの?すごい……。


 その時、ふと思い出す事があった。


「おっちゃん。この銀貨で払うとしたら何枚になるのかな?」

「ん?それは…もしかして古代銀貨って奴か?特殊な銀が使われてて歴史的な価値もあるらしい。確か金貨1枚くらいの価値があったと思うぜ」


 おいおいマジか、あの門兵…。本来は1000円の所を10万円持って行ったって事か…。今度から気を付けよう…。


「おっちゃん色々とありがとう!かなり助かったよ!」

「おう。こっちこそ大量購入ありがとうな!」

「じゃあ、そろそろ行くね!おっちゃん元気で!」

「お前も元気でな!悪い奴に騙されるんじゃないぞ!」


 僕はおっちゃんに大きく手を振るとその場を離れた。そしてリルにお肉をあげながら、今夜泊まる宿を探して町を散策するのだった。


…………。

………。

……。


 宿屋でゆっくりした翌朝は、馬を買いに行って、そのまま町を出た。なぜ馬を買ったのかと言うと、カモフラージュの為だ。


 自分の足で走った方が速いのだが、そんな姿を人に見られる訳にはいかない。かと言って、徒歩の速度ではあまりに遅すぎる。その結果、馬で移動している人を装う事にしたのだ。

 若くて元気な良い馬を買う事ができた。お金の力は偉大だね…。


 さて、一時的な予定だけど、ついにアクル王国にさよならだ。ビオス王国はどういう国かなぁ。


 僕はわくわくしながらビオス王国へと思いを馳せるのであった。


バレ…ン…タ…イン…?何それ?

日頃と何も変わらない1日だったから、きっとそんなものは存在しないんだよね?

都市伝説みたいなものだよね?はぁー騙される所だったよ…。良かった良かった。良か…った……


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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