救出
年末、思ったより忙しくなってしまい更新が遅れました。申し訳ないです。
「ゴーレムが喋った…だと?」
「隊長、ロボとは何でしょうか?」
牢屋の見張りをしていた兵士達がザザを見て驚いていた。ゴーレムに関するこの世界の一般常識としては、主に土や木で作られた単純作業しかできない使い捨ての存在なのだ。
上位のゴーレムだと岩や鉄で作られたものもあるが、自分で判断したり喋ったりするゴーレムは認知されていなかった。
「何の事なのかは知らん。しかし…喋る事には驚いたが随分とボロボロではないか?未完成なのか壊れたのかは知らんが、まるでスケルトンの様だ」
「確かに!」
「臆する必要は無いぞ!破壊してしまえ!」
「はっ!」
兵士達はザザの事を取り囲んだ。
すると、ザザの正面に立っていた兵士の姿が消える。消えた兵士は隊長の後ろの壁にめり込んでいた。
「松本。今の見えた?」
「いや、ゴーレムが兵士を吹き飛ばしたのは状況から分かるけど…まさか土屋は見えたのか?」
「あたしの特性は狩人だからね。目には自信があるんだよ。あのゴーレム……腕が一瞬で伸びて胸元に張り手してた」
「俺には見えない速度で?マジか。ゴーレムってすげーんだな」
「うちのオタク共もこんなの作れんのかな?」
「近藤達の事か?あー、もしかしたら作れっかもな。帰れたら聞いてみっか」
松本と土屋が雑談してる中、兵士達は必死の形相になっていた。
「気をつけろ!準備動作無しで攻撃が来るぞ!正面からではなく背後から攻撃するんだ!単純な動作しかできないゴーレムでは対応できる訳がない!」
「はっ!」
ザザの後ろにいた兵士が斬りかかる。が、ザザは振り返らない。しかし、兵士の剣はザザの手によって掴まれていた。
「た…隊長。まるで後ろにも目があるみたいです!」
兵士の発言は正しい。ザザは後ろにも目…と言うかカメラがあった。更に言うと後ろだけではない。
そして、ザザは掴んだ剣を握り潰した。剣の中心部分は手の型がついた棒状になっている。
「た…たたた…隊長!鉄製の剣では歯が立ちません!」
「何という事だ…下がれ!私が相手をする!」
ザザを囲んでいた兵士達はザザから離れる。そして、隊長は腰の剣を抜いた。隊長の剣は部下達の剣とは異なった輝きを放っている。
「私の剣はミスリル製だ!防げるものなら防いでみるが良い!」
隊長はザザの横に移動してから斬りかかった。兵士にしては十分に鋭い一撃だ。
パリィィィィィィィン!
ミスリルの剣は粉々に砕け散っていた。
振り下ろされた剣を払う様にザザが腕を振ると、接触した所からヒビが入りそのまま砕け散ってしまったのだ。
「そんな馬鹿な…。私の剣はミスリルだぞ?このゴーレムはいったい何でできていると言うのだ!?」
兵士達はザザの硬さに驚愕して近付けないでいる。
すると、ザザは兵士達を無視して松本と土屋が入れられている牢屋まで移動した。そして、牢屋の鍵を見つめる。
「カギ…カイジョ…シ…マス」
「そんな事もできるの?凄いわね。あたしの方からよろしくね」
「おい!勝手に決めんなよ!」
「こういうのはレディファーストでしょ?情けない男ね」
「別にダメとは言ってねーだろ…。勝手に決めんなってだけで…。分かったよ」
土屋の方から開ける事を理解したザザは、土屋が入っている牢屋の鍵を見つめた。
フィン フィン フィン フィン…
謎の音と共にザザの目が輝きを増す。
「え?何?ちょっと…怖いんだけど!?」
「サイショウ…シュツリョク…デ…ショウシャ…シ…マス」
ピュイン…
鍵は解除された。と言うか、消滅した。
「あ…あぶなっ!あたしが正面に立ってたらどうするのよ!?」
「こっわ…。後ろの壁まで穴が空いてるぜ?」
文句は言ったものの、土屋は扉を開けて牢屋の外へ出た。そして兵士達に話しかける。
「さて、どうすんの?このゴーレムを倒して、またあたし達を牢屋に入れる?勝てそうに無さそうだけどー?」
「く…まぁ良い…」
「………え?良い?」
「撤退する!急げ!」
「はぁ!?ちょ、待ちなさいよ!」
土屋は武器を持っていないので武力で止める事はすぐに諦めた。そして視線をザザへと向ける。
「ちょっと!あんたアイツ等を捕まえなさいよ!」
しかしザザは動かない。そして、代わりと言う訳ではないが松本が騒ぎ出した。
「そんな事より俺の方も開けてくれよ!」
「メインカメラ…ホワイトアウト…」
松本と土屋はキョトンとした表情をすると、お互いの顔を見た。
「「はぁ??」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「和也。衝撃音が出てたのはこの辺りだと思う」
「そ…そっか…」
僕達はスラム街を抜けて、町を覆う塀を飛び越えて、この場所まで走って来た。んだけど…何だか和也の様子がおかしいです。
「どうしたの?」
「コクヨクさんに乗ったのを思い出したよ…」
「えー。コクヨクよりは遅く走ったはずだよ?」
「そう言えば、あの時のコクヨクさんは全力じゃなかったらしい…あれで……」
もうちょっとゆっくり走った方が良かったかな?って、そんな反省をしてる場合じゃない!
地中から結構な魔力を感じます。
「探知魔法で周辺を探してみるね」
「試しに俺もやってみるよ」
周りはほぼ草原なんだけど、僕は地面を重点的に探索してみました。
「あそこの草むらの中に隠し階段があったみたい」
「見つけるの早いなー!俺はまだ発動もできてなかった…。って言うか、過去形?」
「うん。今は隣に大穴が空いてて階段は剥き出しになってるね」
「さっきの衝撃音の影響かな?」
「多分ね。とりあえず降りてみよう」
「じゃあ親友よろしく!」
全然背中から下りる素振りを見せないと思ったら、このまま階段を降りさせるつもりなのか…。なるほどね…。
「分かったよ。じゃあしっかり捕まっててね」
「え?」
「穴の方で飛び降りるから」
「ま、待って!」
待ちません。
僕は穴の方に飛び込むと、重力に任せて落ちていきました。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
和也が紐なしバンジーで絶叫を上げてます。折角の無料アトラクションなんだから楽しんで欲しいものです。
もちろんこのまま地面と衝突なんてしませんよ?
僕はコッソリ重力魔法を使って着地の直前に減速させると、ストンッという感じで地面に降りました。
「どう?面白かった?」
「全然…。思ったより深いし…」
落ちながら15回くらい床を通り抜けた気がします。つまり地下15階みたいですね。だいたい50メートルって所かな?
この世界は結構建築技術が進んでるんですよね。機械じゃなくて魔法なんですけど。
さて、ここはどんな所…あれ?周りを見てみると、何故かザザがいました。土屋さんもザザの横にいて、松本は牢屋の中にいます。
えっと、俺、俺、ライト…。よし!
「俺達はお前達を探しに来たんだが、松本、土屋、状況を教えてもらっても良いか?」
「あ!ライト先生じゃん!早く助けてくれよ!」
「簡単に説明すると、あたし達はアクル王国に攫われたんだけど、このゴーレムが助けてくれたって感じ。ただ、レーザーであたしの牢屋を壊したら、レーザーが駄目になっちゃったみたいなんだよね」
「オレ…ハ……ロボ…ダ…」
「はいはい。ごめんね」
おおぅ…。カタコトだけどザザが喋ってるじゃないですか。しかも、俺は組み込んでないのにロボにこだわってるし…。
そんな感じでザザを見ていたら、耳元で和也が囁いてきた。
「ザザ、壊れちゃったみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。眼球同軸レーザーを撃ったから一時的に焼き付けを起こして目が見えなくなってるんだと思う」
「え?何でそんな問題があるのに目にレーザーを付けたの?」
「だって…かっこいいでしょ?」
あれ?駄目でした?そりゃあ指とかに付ければ便利だったかもしれないけど…目からビーム出したいじゃないですか。
「おい!早く助けてくれよ!」
はいはい。別に松本の事を忘れてた訳じゃないんだけどね。
「ザザ。メインカメラ以外は見えるか?問題無ければ鉄格子部分を素手で広げて人が通れる幅を作れ」
「ショウ…チ」
ザザは鉄格子を掴むと横に広げて道を作りました。
「何だよ…。レーザーなんて撃たなくても普通に壊せるんじゃねーか」
何で勝手に動いてるのかは分からないけど、まだまだ勉強中の赤ちゃん状態なんだよ。
すると、和也がまた囁いてきた。
「ザザはまだ弱いんじゃなかったの?」
「弱いよ。火器も無いし、質量も無いし、知識も不足してるから技術も無いし。でも、骨格は一番重要だから総オリハルコン製だし、コアは本物のザザのだから傷付けるのは難しいと思うけど」
「最強金属で作られたF1のエンジンを積んでる軽自動車って感じか…」
そうそう、そんな感じ。ちゃんとF1のボディを作ってあげないとね。
すると、土屋が少し猫撫で声の様な感じで話しかけてきた。
「ライトせんせぇ〜?このゴーレムって先生のなんですかぁ?」
「あぁ。まだ作成途中だがな」
「じゃ〜あ〜。最初から最後までライト先生が助けてくれたって訳ですねぇ?」
何だか土屋らしくない話し方で気持ち悪いな…。という事で土屋から一歩引いてしまった事もあってか、土屋の呟く声は俺には届かなかった。
「この先生はかなり使えそうね…」
土屋は俺に近付いてくると、背中にいる和也と瀬戸を引き摺り下ろした。
「男がおんぶなんてしてもらってんじゃないわよ!」
「お、おぅ…」
和也は勢いに押されて何も言えず終いだ…。そして、土屋はクネクネしながら俺の方を向く。
「それより私の事をおんぶしてよ。誘拐される時に乱暴にされて色々と痛いんだ。あたしの柔らかさを堪能して良いからさ…」
なんか怖いんですけど…。
「わ…悪いが俺はザザを運ばないと…」
「そいつは自分で動けるでしょ?」
「いや、故障している可能性があるから俺が持たないとだ。持たないと駄目だ。駄目だから仕方がないなぁ」
自分でも何を言っているのかよく分からなくなった所で、予想外の方向から救いの手が差し伸べられた。
「じゃあ土屋の事は俺がおぶってやるよ!でへへへへへ」
「キモいわね!松本は瀬戸の事をおぶんなさいよ!」
これは救いの手じゃなくて痴漢の手だったかも知れない…。でも、更に本命の救いの手が差し伸べられた。和也だ。
「えっとさ…ライト先生の時空魔法を使えば一瞬で帰れるから争う程の事じゃないと思うよ?それよりさっさと帰らない?」
確かに!
俺は佐々木が待つ宿舎へ続くゲートを作成しながら、和也の意見に賛成した。
「賛成だな。さっさと戻るぞ」
「仕方ないわね。分かったわよ」
結局、ザザは転移で研究所に送って、瀬戸を担ぎながら宿舎に戻りました。
アクル王国が誘拐したって言ってたけど、何でなんだろう?あの暗殺者達もアクル王国なのかな??
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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