常識
「先生、おはよう御座います。所で…その肩のは何ですの?飾り?」
「あぁ、鳥型のゴーレムだ。今作っているモノの兼ね合いで連れ歩く必要があってな。まぁ気にするな」
クラスを代表してルナが俺に質問しました。俺の肩には30センチくらいの鳥型ゴーレムが留まってます。
全くルナは何を言っているのか…俺はそんな奇抜なファッションセンスしてませんよ。して…ないよね?あれ…。もしかして漆黒の鎧とマッチしてる?
とりあえず、鳥ゴーレムはファッションじゃなくて別の目的です。色々と見せて勉強して貰わなきゃいけないんだよね。
「先生ならやりかねないので念の為の質問ですが…。まさか、それは空を飛べるとか言いませんわよね?」
「そりゃあ鳥なんだから当然飛べるが?」
え?何か生徒達が『やれやれ…』ってジェスチャーをしてます。何かおかしい所でもあるのかな?
「本気ですの?形は鳥ですが金属の塊ですわよね?先生には常識ってありませんの?」
そう言われても飛行魔法を付与してるだけなんだけど…。
『飛行魔法は一般的に認知されてないと思うっす!』
(そうなの?でも、コクヨクの馬車とかも浮かせてるよ?ミレーヌとアレクは受け入れてたけど)
『王族は過去にそういう魔法があった事を伝説として知ってるっす!だから2人とも呆れてはいたっす!』
(マジか…。あれ?でも、バスは現状とかの情報は分からないんじゃないの?)
『確かに元々持ってた知識じゃないっす!ご主人様と一緒に生活する中で覚えたっす!』
(なるほど。今の常識を新たに覚えたんだね!)
『そうっす!』
流石は僕の執事!なんだけど…僕は何か引っ掛かるモノを感じた。
(いつも一緒だから学習する機会は同じだよね?つまり、僕よりバスの方が常識的って事なのでは…?)
『そうっす!』
おぉぅ…はっきりと……。嘘を付かないのはバスの魅力ですよね。
この話を掘り下げると僕が悲しくなるだけだと察したので、僕は話を変えることにしました。
「まぁ、鳥ゴーレムの事は気にするな。それよりも今日からクラスの仲間が増える事になった」
「おっ!もしかして!」
「姐御かにゃ!?」
タマ…リルは年下だからね?
「リルだよー!」
『おぉー!』
「という事で、今日から一緒に授業を受ける事になったリルだ。みんな仲良くする様に」
「よろしくねー!」
「よし。じゃあリルは後ろの空いてる席に座るんだ」
「うん!」
リルが一緒に勉強できる事になってクラスのみんなが喜んでます。もちろんリルも。良かったね!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「みんな体力が付いてきたな。そろそろ次のステップに進もうと思う」
「やったー!」
放課後になってEクラス特別授業の時間という事で、クラス全員がグラウンドに集まっています。
ちなみに、リルには講師助手としてサポートして貰おうと思います。特に教える事は無いからね。
「ルナも走ってるのを見たぞ。何だかんだで体力の重要性を理解してくれたんだな」
「………勇者パーティと聖女パーティの戦いを見ましたの」
「ああ、あれを見てたのか。で、何か気付いた事があったのか?」
初授業の時の模擬戦を見てたみたいです。って事は授業をサボってた訳ですね…。後でお説教ですが今は置いといてあげましょう。
「魔法使いと戦士の戦いで、魔法使いが倒れて戦士が勝ってました。恐怖もあったんでしょうけど、体力不足で足がもつれた様に見えましたわ」
田中君と菊川さんの試合だな。田中君が負けると思ったのに、菊川さんが逃げながら魔法を撃ち続けられなかったやつだ。
「正直、魔法使いの役目は後方支援なので体力は不要だと思ってましたわ。でも、後方支援は主な役割であり最低限の役目なだけなのだと気付いたのです。その他の様々な不測の事態に対応出来る事が、更なる私の価値になるんですわ」
「そうだな。幅が広がるのは良い事だと思うぞ」
本当に色々と考えたんですね。確かに菊川さんに体力があって安全な距離を取り続けていたら結果は違っていたと思います。
「で、ライト先生。今日は何を教えてくれるんだ?」
「魔力感知と魔力操作をやりたいと思う。どちらも初歩の初歩レベルだがな。キッカケにはなるだろう」
おっと、レオがちょっと困った顔をしています。レオは肉体派だから魔力関係は嫌いなのかな?
「レオは魔力感知と魔力操作が嫌か?」
「嫌って訳じゃないんだけど…苦手なんだ。俺の実家は代々宮廷魔術師長を務めててさ…って言っても辺境の小国なんだけど。俺に魔法の才能が無さすぎて追い出された感じなんだよ」
才能の有無…。そんな理由で子供を追い出すのか…。
「レオは魔法属性を持ってないのか?」
「あぁ。無属性しかないんだ」
無属性もかなり使える属性だとは思うけどね。念の為、魔眼で確認しておこう。
「え…マジか…」
「先生?どうしたの?」
「いや、何でもない。とりあえず特別授業を始めよう。たぶんレオも大丈夫だ」
「そうかな?でも、先生を信じてみるよ」
見えたものを正直に話すと魔王スキルがバレる可能性がある。それに、誰が何の目的でやったのか…背景を調べてから話した方が良さそうだ。
「それじゃあ特別授業を始めよう。接近戦でも魔法の撃ち合いでも魔力は重要だ。効率良く最大効果を出す為には魔力操作が必要になる。そして、高等な魔力操作をする為には魔力を感じる事が必須だ」
「呪文を唱えれば自動的に魔力が操作されますわ」
んー。そうなんだけどね。逆に言うと呪文の通りにしかならないんだよね。
「ルナ。試しに魔法を撃ってみてくれ」
「分かりましたわ。マナよ。敵を撃つ水球とならん……ウォーターボール!」
ルナが撃ったサッカーボールくらいのウォーターボールが人のいないグラウンドの中心に向かって飛んで行きました。
「どうですの?」
「もっと小さい的を狙い撃たなくてはならない事を想定して、これくらいの大きさで撃ってくれ」
俺はオッケーマークみたいな仕草をして親指と人差し指でピンポン球くらいの輪を作る。
「え?それは…何て魔法になりますの?呪文を教えてくださいませ」
やっぱりそうなるのか。俺が魔法を覚えるのに使った先代の本でも『常識とか度外視してる』って非常識宣言してたもんね。
「別の魔法な訳じゃない。見ててくれ」
俺はサッカーボールくらいの光の球を作り出す。そして、それを更に縮めてピンポン球くらいにした。
「魔力を操作すれば大きさなんて自由に変えられる。更に言えば…」
俺は光球を縦横無尽に飛び回らせた後に、空へ向かって撃ち込んだ。空へ飛んで行く光球は途中で無数に分裂すると弾幕となって消えていく。
「こういう事もできる様になる」
「え?あ…えっと…え?」
「これは最終形だ。今日はその百歩手前をやると思ってくれ」
おぉ…みんなの目が爛々と輝いてる…。そんなすぐに出来る訳じゃないよ?
「周囲や離れた魔力を感じるのは難しい。まずは自分の中の魔力を感じる事から始めよう」
「先生は他人の魔力が見えますの?」
「見えるな」
「これがSランクの魔法レベルなんですのね…。分かりましたわ。茶々を入れて申し訳ありませんでした」
全員真剣な眼差しになりました。やる気に溢れてて良い感じです!
「じゃあ始めるぞ。全員目を閉じろ。そして魔力を腹の底に溜め込め」
何故かリルも一緒になってやってます。いや、リルができるのは分かってますよ?まぁ今はお願いする事も無いし別に良いか…。
「その魔力を全身に巡らせてみろ…。血と一緒に全身を巡らせる感じだ。左腕から左足、右足、右手、頭…」
お、魔法使いのルナや神官のロッテは流石に上手ですね。
「ルナとロッテ。いま左腕を通ってるぞ。どうだ?感じるか?」
「左腕の違和感…。何となく…分かりますわ」
「わ…私も…」
うん。この2人は問題ないでしょう。
「レオ、もっとゆっくりでいい。そうだ。いま左胸を通ってる。霧散させずにしっかりと維持するんだ」
「こ…これか…。これが俺の魔力……」
「魔力を見て具体的に教えて貰えるなんて…分かり易す過ぎだにゃ」
それから1人ずつ状態と本人の感覚を擦り合わせて行くと、全員が魔力を知覚出来る様になりました。
よし!レベル1だけど全員魔力感知スキルが付いたぞ。じゃあ、もうちょっと行けるかな?
「次に、その魔力が細胞に浸透して行くのをイメージするんだ」
「ライト先生。サイボーって何ですか?」
あ、この世界では通じないか…。ちょっと大雑把になっちゃうけど…。
「悪い。身体の肉に溶け込んで行く感じだ」
「分かりました!」
いいね!まだまだ遅いし効果も弱そうだけど、出来てはいる。質はこれから高めていけば良い。
「良いぞ。身体が軽くなっただろう?まだ効果は弱いが、それが身体強化だ」
すると、リル以外の全員が顔を見合わせてキョトンとしていた。そして、魔法関係の話だからかルナが代表して口を開く。
「えっと…まだ呪文唱えてませんわ?」
あ、これ…無詠唱魔法を教えた事になるのか…。でもまぁ、悪い事じゃないよね?
「あぁ。詠唱は必要ない。感じて操作したのが詠唱の代わりだ。俺も魔法を使う時に詠唱していなかっただろう?」
「む…無詠唱の身体強化魔法を教えて下さったんですの?本当に…先生には常識がありませんのね…」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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