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ツェペラウス

誤記訂正ありがとうございます!

イージーミスも多かったのですが、根本的に間違えて覚えてる文字もありました…。勉強になりました!感謝です!

「おい、仮面野郎。その小娘は何だ?」

「俺のパーティメンバーのリルだ。リルにはお前達の育成を手伝って貰おうと考えてる」

「おいおいおいおい。なに寝ぼけたこと言ってんだよ!?そんなガキに教わる事なんざねーだろうが!」


 戦闘訓練の授業にリルを連れて行ったら隼人と龍彦から文句が出ました。見た目が女の子だから冗談だと思ったみたいです。


「はぁ…。お前達に見る目が無いのはよく分かった。俺は本気だ。まずは勇者の問題(・・・・・)解決を手伝って貰う」


 俺の話しを聞いた隼人は、話の内容が理解できなかったみたいでキョトンとしています。


「ははは。俺に問題?意味不明だな」

「そうなんだろうな。自分の問題を理解する能力が無いから改善されないんだろう」

「貴様…。だったら俺の問題は何だって言うんだ?」

「色々あるが、まず改善したいのは魔物慣れだな」

「魔物との戦いに慣れる事の何が悪いんだ?」


 魔物。特に知能の低い下級なのとしか戦わないんなら良いんだけどさ…。


「知能の低い魔物を力押しで倒す事に慣れてしまっている。その慣れが対人戦でも出ていて隙だらけだ。技術が無い。工夫が無い。やってる事が子供の喧嘩だ」

「ぐ…ぐぐぐ……」


 お、ちょっとは自覚があるのかな?でも龍彦はまだ納得行かないみたいです。


「俺らが戦闘の素人なのは認める。だが、そのガキより未熟って事はねーだろ」


 未熟だよ。リルは見た目より更に若くて5歳だけど、経験量が圧倒的に違う。


「リル。ハヤトとタツヒコを相手に模擬戦して貰っても良いか?」

「戦闘ごっこごっこだぁ!良いよっ!」

「普通にやってもリルにはつまらなそうだからハンデを付けよう。身体強化なし、力押しは禁止だ」

「うんっ!分かった!」


 リルは戦えるから嬉しそうです。そんな俺達の会話を聞いて、隼人と龍彦の額には青筋が立っています。


「ハンデだと?ふざけるのも大概にしろよ…」

「そのガキが死んだらお前(ライト)の責任って事で良いよなぁ?」

「文句を言うのはやってからにしろ。それと、お前達は2人同時だ。1対2でやる。」


 おっと。2人の青筋が切れそうですね。そして、リルは和也の所に行って何やら話し掛けてます。


「ねぇねぇ、カズヤ。剣貸して?」

「ん?持って来てないの?良いよ。はい」

「ありがとっ!」


 リルが武器を使うなんて珍しい。剣術スキルなんて持ってないけど、どうするんだろう?


「それでは始めるぞ」


 リルとタツヒコが剣を構える。そして隼人は構えない…。って事は魔法かな?単純過ぎるだろ…。


「始めっ!」

「マナよ巡れ。光と成りて…」


 予想通り隼人は詠唱を始める。龍彦は壁役として時間を稼ぐつもりなのか、隼人の前に出てリルの持つ剣に集中していた。

 そして、リルが動く。


「ポイッ」

「なに!?」

「俺の剣!」


 リルは和也から借りた剣を龍彦の足元に捨てた(・・・)。剣先に集中していた龍彦は、そのまま剣を目で追ってしまう。

 ちなみに、自分の剣を投げ捨てられて和也が悲しんでるけど、今は放っておきましょう。


「えいっ!」

「あがっ……」


 龍彦に一瞬で近付いたリルは、視線がズレて隙だらけな龍彦の顎に右ストレートを入れた。

 力は弱目にしてくれてるけど鋭いリルのストレートによって意識を刈り取られた龍彦はその場に崩れ落ちた。


「ちっ!よくも龍彦を!喰らえライトニングアロー!」


 隼人の手から数十本の光の矢が扇状に放たれる。俺なら後ろに下がりながら避けるかな。しかし、リルは光の雨の中を前に進む。リルお得意の立体機動だ。

 リルは風属性魔法で空気を圧縮すると、空中に使い捨ての足場を作り出す。その足場を踏み台にして空中を縦横無尽に動くんです。


「とりゃっ!」

「ぐはぁあああ!!」


 リルは隼人の横を通り過ぎざまに、隼人の顔面をぶん殴った。振り抜かれた拳によって隼人は後ろに吹き飛ぶと地面を転がる。

 お、でも龍彦と違って意識は残ってるな。


「くぞ…。剣を捨てで隙を作るとが卑怯だぞ…」

「いつ武器を捨ててはいけないと決まった?自分の思い込みに相手が付き合ってくれると思うな。戦闘は隙の作り合いだ」


 隼人が鼻血を出しながら甘い事を言ってます。そんな中、何者かが俺達に近付いてくる気配を感じました。


 パチ…パチ…パチ…パチ


 ゆっくりと拍手をしながら豪華なローブに身を包んだ男が近付いてくる。


「覗きはもう良いのか?」

「やっぱり気付いてた?そうだね。僕ってば敬虔なゼノン教信者だから勇者様が虐められてるのは見てられないんだよね」


 見覚えがあるな。アンジェと一緒に来た聖騎士の中で、後ろにいた若い奴だ。


「別に虐めてた訳じゃ無い。むしろ本人の為にやってたんだ」

「ふーん。でも虐めてる当人ってそう言ったりするよね」


 話が通じないタイプか…。


「という事で、僕に勇者様の仇を討たせて貰えないかな?」

「お前もリルと模擬戦がしたいって事か?」

「まぁその少女でも良いんだけど。どうせなら君とかどうかな?ルールは何でもありでさ」

「俺か?別に構わんぞ」


 いったい何が狙いなんだろう?隼人の仇打ちってだけじゃない気がする。すると、俺の合意に対して笑顔で頷いた聖騎士は、何故か生徒達の方を向いた。


「この中にゼノン教徒の方はいますか?」


 Aクラスは殆どが手を挙げる。流石は最大宗教、多いな。しかし、何がしたいんだ?


「じゃああなた、こっちに来なさい」

「はい!何でしょうか?聖騎士様のお役に立てるなら何なりとお申し付けください!」


 聖騎士ってそんなに偉いもんなのか。それにしても、『何なりと』って大丈夫なのか…。


「その姿勢、素晴らしいです。貴方の信心が勇者様の助けとなります。ひいては勇者様をこの世に遣わしたゼノン神様にもお喜び頂ける事でしょう」

「はい!」


 聖騎士は自分が持っていた短剣を鞘から抜くと、その生徒に渡した。


「ライト先生が私の攻撃を避けたら、これで自分の喉を掻っ切りなさい」

「………え?」

「これは神に信心を見せるチャンスです。こんな機会はなかなか訪れるものではありません。良かったですね」

「あ、はい。ありがとうございます!」


 聖騎士は男の子の腕を掴むと、持たせた剣の刃を男の子の首に持っていく。そして、軽くお祈りをしてからこちらに振り返った。


「さて、やりましょうか」

「どういうつもりだ?」

何でもあり(・・・・・)ですよね?我々の最大の武器である『信心』を形にしたんですけど」


 マジか…。人質取って脅してるだけじゃないか。でも、生徒も自分の意思で剣を持ってるし…厄介だな。


「俺はそんな脅しを気にしないぞ?自分の意思で死ぬのなら勝手にすれば良い」

「えぇ。気にしないでください。こちらが勝手にやって、勝手に死ぬだけです」


 そう言うと、聖騎士は腰に佩いていたミスリル製のロングソードを抜いた。脅しである事は否定しないのね…。


「では…行きますよ!」


 俺はアイテムボックスから刀を出すと、聖騎士の一撃を受け止める。これは避けた事にならないよね?

 しかもこいつ、結構強い。Aランク上位って所かな。聖騎士が全部このレベルだとすると聖教国はヤバい国なのかもしれない…。


「どうしたんですか?避けて良いんですよ?」

「この程度の攻撃なら避ける必要もないな」


 俺と聖騎士の剣戟の音が響く。


「流石はSランク、確かに強い…。少年!条件を変えます。次からはライトさんが受けても自害しなさい!」

「はっ、はい!」


 はい!じゃねーよ!

 こうなったら…やられる前にやるしかないか…。俺は刀を振り上げると、そこから袈裟斬りに刀を振り下ろす。

 分かりやすい動きだったので、聖騎士は剣を横に構えて受け止める姿勢をとった。よし、掛かった。


 キィイイイイン…


 ミスリルの剣は根本から切り落とされていた。つまり、俺の刀は妨げられる事なく聖騎士の首元を捉える。流石に寸止めですよ?

 何をしたのかと言うと、刀を振り下ろすのと同時にディメンション・ブレードで剣を斬ったんです。


「俺の勝ちだな。模擬戦なんだから死ぬまでやるとか言うなよ?盤外で命を掛けさせてるのも完全に納得してる訳じゃないんだ」

「そうですね。僕の負けです」


 そう言うと、聖騎士は少年の元へと移動した。そして、首に当てている短剣を掴んで回収する。


「少年、貴方の信心のお陰で私如きがライト様とやり合う事ができました。ありがとうございます」

「い、いえ。こちらこそ信心を示す場を与えてくださり、ありがとうございます」


 宗教って怖いな…。


「勇者様、申し訳ありません。別の機会にて必ず勇者様に対する無礼の報いを受けさせてみせます」

「え?あ…あぁ…」


 肯定するなよ!ちゃんと教えてただけだろ。こいつは本当に残念勇者だな…。

 そんな所で、ちょうど授業の時間が終わった。


「時間だ。今日はここまで。全員着替えて教室に戻れ」

「はーい」

「お疲れっしたー」


 生徒達は全員教室へと戻っていった。聖騎士もいつの間にやら姿が消えている。近くに気配を感じないのでそれなりに離れたみたいだ。


「はぁ、疲れた。主に精神的に…。リル、ありがとうね」

「全然良いよ!面白かった!」


 そう言えば、さっきの模擬戦で気になる事があったんだよね。


「リル。龍彦は怪我しない様に意識だけ刈り取ったのに、何で隼人は正面からぶん殴ったの?」

「えっとね。あいつトールが奈落の底に落ちてきた時に付いてたのと同じ匂いがするの!良く分からないけど…あいつ嫌い!!」


 無意識に僕の仕返しをしてくれてたのか…。リル、ありがとう!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「どうでした?」

「いやぁ、強い強い。流石は戦闘能力で成り上がったSランク。お前とは違うな。支給された聖遺物を使わないと僕には無理だ」


 ここは聖教国から来た人達に貸し出している学園の一室。そこにはライトと模擬戦をした聖騎士と偽聖女アンジェがいた。


「人を不正行為でSランクになったみたいに言わないでください。それと、天使とツェペラウスはラインが違うとは言え、外では言葉使いに気をつけてくださいね?」

「分かってるよ。外では『聖女様〜』ってやってるだろ?」

「分かってれば良いです。で、戦闘能力以外はどうでした?」


 聖騎士は『ん〜』と少し考えてからアンジェに答える。


「人質が有効そうなそぶりは無かった。本当にどうでも良いのかもしれない」

「そうですか。では、別の方法を」

「いや、だが結局人質は無傷で助かった。高い能力で無理やり成立させている演技の可能性も否定できない」


 アンジェは首を傾げて少し考える。


「つまり、よく分からなかったという事ですね?」

「正解っ!」

「はぁ…」


 アンジェは呆れてため息を吐いた。


「で、どうするんですか?アクル王国の女狐がいない今がチャンスなんですよ?」

「結局、人間は損得勘定で動く。それなら天秤の反対をとことん不幸にしてやれば、自ら望んで選び取るってもんさ」

「分かりました。ひとまずはあなたにお任せしましょう」

「心配するなって。このツェペラウス第九席、博愛のチェスト様に任せておけば大丈夫だ」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!

ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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