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黒翼車

「ほうほう。なかなか面白いのう。しかし、魔物相手には威力が足りないんじゃないかの?」

「そうなんナリよ。生身の人間ならそれなりの効果ナリが、魔物相手に点のダメージでは弱いナリ」

「人間でも竜の鱗を使った鎧とかミスリル鎧とかだと通用しないでゴザル。強力な身体強化でも弾かれるかも知れないでゴザルよ」


 ここはリッチであるゴルドの屋敷 改め 魔法道具研究所です。

 いま地下にある研究室には、俺、和也、ゴルドそれと近藤君と田中君の5人がいるのですが、近藤君と田中君は自分達が作成した拳銃をゴルドに見せていました。

 生産同盟ですからね。2人を連れて来ない訳にはいきません。すると、怪訝な顔をした和也が近藤君に話しかけました。


「近藤達はゴルドさんが平気なの?アンデッドだけど怖くないの?」

「生きてる人間より怖いモノなど無いナリ」


 真理かも知れない。


「あと、死んでも残った強い想いに基づいて動いてるから行動も理解し易いナリよ。正直嫌いじゃ無いナリ」

「なるほど…。ゴルドさんの場合は聖騎士への復讐か…」

「復讐の手駒に成りうる我々を害する可能性は低いナリ」

「仲間になったからの。もう攻撃したりせんわい」

「それは『聖騎士にならなければ』という条件付きナリね」


 近藤君はホントに理解してるっぽいな…。実際に襲われた和也は不安かも知れないけど、確かに今なら襲ってくる事は無いと思う。

 とりあえず、そろそろ本題に入ろう。


「今日集まってもらった理由は顔合わせもあるが、お試しを兼ねて何か作りたいと思ってな」

「うむ。良いのう良いのう。若者はフットワークが軽くて良いぞ」

「楽しそうナリね。作るものは決めてあるナリか?」

「あぁ、馬車(・・)を作りたいと思う」


 すると、俺の発言を聞いた他のメンバー達は顔を見合わせた。


「どうかしたのか?」

「いや、ライト殿にしては随分と身近な物なのじゃなと思っただけじゃ」

「まぁ、確かにクッション性とか改善したいから良いナリよ」

「正直、魔剣を作るとか言い出すかと思ったでゴザル」


 いやいや、魔剣を作る方が簡単なんですよ?俺はアイテムボックスを開くとグシャグシャに潰れた鉄の塊を出しました。一言で言うとスクラップです。


「それは何ナリか?まさか…」

「鉄製の馬車だった物だ。車軸は折れ曲がり車輪は外れて粉々になった。叩き付けられた本体は潰れてしまってご覧の有様だ」

「どうやったらこうなるでゴザルか?」

「俺の愛馬に全力で引いてもらったらこうなった」

「コクヨクさんか…」


 そうなんですよ…。和也達も奈落の底で実感した『コクヨクに俺以外が乗ると危険問題』です!


「コクヨクとは何じゃ?」

「ここなら天井も高いし横幅も広いから大丈夫か」


 俺はゲートを開いてコクヨクを呼んだ。するとゲートからコクヨクの巨体が現れる。


「何じゃ?これは…アリコーンなのか?」

「あぁ。アリコーンの特殊個体だ。コクヨクが引いても平気な馬車を作りたい」

「なるほどのう…。これは面白そうじゃ」

「鉄より硬い金属が必要でゴザルな」


 おっと、勘違いさせてしまったみたい。問題は強度じゃないんだ。


「悪い。勘違いさせた。『平気な馬車』とは『壊れない頑丈な馬車』という意味じゃない」

「どういう事じゃ?」


 俺は再度アイテムボックスを開くと、続いて銀色に輝く馬車を取り出した。


「うわぁ…凄い綺麗だな…。神秘的だ…」

「まさか…ミスリルでゴザルか?」

「世界樹とミスリルだ。強度的にはこれで耐えられる事は確認できている」

「凄いのぅ。どれだけ金掛けるんじゃ…」


 ミスリルの方が傷付かないんだけど世界樹の方が折り曲がらない特性を持っていました。そこで、骨格は世界樹、それ以外は総ミスリルで作ってみたんです。

 これならコクヨクが引いても壊れません。だから(・・・)問題が悪化したとも言えます…。


「問題は中の人間ナリか」

「ご明察だ。舗装されていない道はとにかく跳ねる。更に急加速や急停止をするとな…。この馬車は総ミスリルのシェイカーと化す」

「それは死亡確定だね…」


 そうなんだよね。ミスリルの頑丈な壁に叩きつけられて酷い事になっちゃう。馬車の強度を保ちながらこの問題を解決しなきゃいけないんだ。


「ライト殿。ミスリルはまだあるんかの?」

「あぁ。世界樹の木材もミスリルもまだまだあるぞ」

「フォッフォッフォッ。こんなに潤沢な資源で実験ができるとはのう。嬉しい限りじゃ」


 ミスリルは1トンくらいしか使ってないからまだ9トンある。世界樹もまだまだあるけど、足りなければ取ってこれるしね。


「では、早速解決策を考えるナリ」

「まず、車輪は諦めた方が良いと思うでゴザル」

「俺もそう思うな。舗装されてない道を200キロ以上で走る感じだから、ゴムの車輪とかサスペンションとかでどうにかなる問題じゃないよ」

「浮かせる魔道具で振動を抑えるナリ。立花氏が授業で重力操作っぽい事をしてたナリ」

「ふむ。土属性の上位魔法に重力操作があるの」

「あぁ。それは俺が準備しよう心当たりがある」


 浮かせる魔道具は俺がこっそり作りたいと思います。とりあえず良かった。みんな何だか楽しそうです。


「では…次にじゃな…」


…………。

………。

……。


「やっと完成でゴザル…」

「まさか1日で作る事になるとはね…」

「佐藤氏の発想でゴールが見えた事もあって、止まらなくなったナリ」

「若者の発想は自由で素晴らしいのう」


 現在は翌朝の7時です。近藤君の言う通り、ゴールが見えて黙々とやってたら全員止まりませんでした。みんな学園に行く準備をしなきゃ…。


 コクヨクの馬車。つまり黒翼車ですが、全く揺れない馬車(・・・・・・・・)が完成しましたよ!

 どんなに走っても、飛んでも、急発進しても、急停止しても、アクロバット飛行しても、乗ってる人は何も感じません!


 ここに辿り着くまでは色々ありました。

 シートベルトで身体を固定する。→シートベルトが身体にめり込んで拷問。

 風魔法で遠心力の逆側から押してみる。→遠心力と風の板挟みで拷問。

 土魔法で乗客の重力を増やして身体を馬車に押し付ける。→乗ってる間は常に拷問。


 そんな中、和也が解決策を思いついた訳です。流石は親友!流石は時空属性持ち!

 それでは、そんな馬車に乗り込んで奈落の底を走ってみましょう!


 ミスリル製の豪華な扉を開けると、本来は4畳くらいしかない馬車の内側に100畳くらいの豪華な部屋が広がっていました。

 俺はソファに腰を掛けずに立ったままコクヨクに出発指示を出します。しかし、まったく揺れません。まるで地に足をつけている様な安定感です。

 そして、窓を開けて外を見てみると、どうやら森の中を走っている様子です。折れた木の枝や魔物が弾け飛んでますが、揺れや振動は何も感じません。大成功です!


 ふふふふ…。揺れない秘密は時空属性魔法のゲートにあります。

 いったいどういう事なのか種明かしをするとですね、黒翼車の扉をゲートの魔法道具にして屋敷の一室と繋げたんです。部屋の窓も黒翼車の窓と繋げたので外も見えたって訳です!

 つまり、黒翼車の中に入った様に見せかけて本当は屋敷の一室にいるので、黒翼車の振動は何も感じなかったんですね!

 地に足を付けている様な安定感なのも当然です。実際に一階の床に足を付けてるので。

 

 これで、いつでも黒翼車で移動できますよ!


 ………あれ?実際には馬車に乗ってないなら馬車の必要性は無くて僕だけ移動してからゲートで呼べばよいけどカモフラージュには馬車が必要で……。あれ?

 もしかしたら…睡眠不足で根本的に間違えたかも…?

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!

ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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