応えたい期待
※今回は和也視点になります。
「みんな勝ったよー!」
「双葉ちゃん、おめでとうー!」
「立花さん。決着つけれて良かったね」
白鳥さんと仁科さんがお祝いの言葉を立花さんに贈る中、俺は仁科さんに対する感謝の気持ちで胸がいっぱいになっていた。
もしいつも仁科さんに止められて説教されてなかったら…もし立花さんの怒りに触れていたら…俺は今ここに立っていないかもしれない…。
「た…立花さんおめでとう!龍彦のやつ、これでしばらくは突っかかって来ないんじゃない?」
「んー。今度装備有りで再戦する事になったから、そこで勝てれば…かな?」
もう次の戦闘予約が入ってたよ…。気付いてはいたけど、親友の言う通り立花さんはバトルジャンキーの気があるかもしれない。
「2戦目以降はどうする?私は何番目でも良いよ」
「あ、じゃあ俺が大将やって良い?」
「なんで?」
「向こうの大将は隼人だと思うからさ。あいつがそういう立場を誰かに譲るとは思えないし」
「へー。良いけど、和也くん随分とやる気だね」
仁科さんが『見直した!』って感じの表情で許可してくれました。でも…。
「あ、違う違う。捨て駒としてだよ?」
「………。」
仁科さんの目が『見直して損した…』って感じのジト目に変わりました…。
「いや、俺の魔法属性を見せる訳には行かないじゃん?だから、どうせ負けるなら隼人とやってくるよ。隼人の光魔法は危険だし」
「んー…。まぁ仕方ないね。分かった」
多分、仁科さんの言う『仕方ない』は、『勝つ為には』じゃなくて『負ける前提でも』なんだと思う。最初から諦めた姿勢なのは嫌だけど、仕方がないと納得してくれたんでしょう。
「じゃあ後は適当にジャンケンで良いかな?」
「うん!良いよ!」
「俺もかまわん」
公正なジャンケンの結果、次鋒は白鳥さんになった。相手は九嶋 羽衣さんか…。隼人の信者って感じで怖いんだよな。
「両者前へっ!」
「白鳥さんごめんね?2人のとばっちりで迷惑だよね。私達は適当にやりましょう?」
「良かったぁ!試合なのは分かるんだけど、クラスメイト同士で争うのは何だか苦手で…」
「だよね。じゃあ、一応軽めの魔法を撃つけど、適当な所でギブアップするね」
「え?良いの?」
「いいのいいの」
あれ?まぁ、龍彦がきっかけの勝負だからどうでも良いのかも?
「それではそろそろ始めるぞ?次鋒戦。はじめっ!「マナよ燃えよ灼熱の大蛇となりて我が敵を捕食せよ」
はやっ!九嶋さんが開始と同時に詠唱を始める。しかも、まるで早口言葉かの様だ。適当とか絶対に嘘だろっ!
「死ねーっ!!」
気持ちが溢れてるじゃん!!そして、九嶋さんから放たれた炎の魔法が白鳥さんに襲い掛かる。
しかし着弾前に白鳥さんの魔法も完成した。白鳥さんを中心に結界が広がると、九嶋さんが放った炎の大蛇を掻き消した。
九嶋さんは早口で詠唱を続けると、白鳥さんに対して攻撃魔法を連射する。結構魔力多いな…。
白鳥さんの周りは炎の海となり、絶えず爆発が繰り返される。しかし、白鳥さんの結界を破壊する事はできない。
「はぁ…はぁ…。ギブアップです」
「おい!白鳥さんに何してんだよ!」
見学してたクラスメイトから九嶋さんに野次が飛んだ。確か白鳥さんファンクラブ『愛しのオデット』のメンバーだったと思う。
「何言ってるのよ?命の危険があったら先生がどうにかするから全力でって話しだったでしょ?」
確かにそうなんだけどぉおおおお!白鳥さんとの約束………は、あれ?守ってるのか…。魔法撃ってからギブアップしてるね。
あれぇ?でも、こういう事だっけ?俺が考えてたイメージと全然違うんだけど…。
九嶋さんは何事もなかったかの様に勇者パーティの所へ戻っていった。そして白鳥さんもこっちに戻ってくる。白鳥さんの表情はロボットみたいにカチコチだ。
「怖かったよぉ…」
「よしよし。もう大丈夫だよー」
立花さんが白鳥さんを抱きしめながらナデナデしてます。魔法より九嶋さん自身が怖かったよね…。
でも、とりあえずこれで2勝だ!勝ち越しリーチ!
「次、中堅前に」
「とりあえず、ここは1勝返しとかないとマズいね。聖女パーティは仁科さん?相談なんだけど武器有りにしない?」
「良いよ。私もその方が嬉しい」
大原 隆哉の特性は狙撃手だったと思う。様々な投擲武器が得意みたいなので自分の得意分野に持ち込みたかったみたいだ。
はははは…。隆哉分かってないなぁ…。
中堅戦は、全試合の中で最も早く決着がついた。
「中堅戦。開始!」
試合開始と同時に動いたのは隆哉だった。懐からナイフを取り出すと仁科さんに投げつける。そして、ナイフと同時に取り出した短剣を構えると、投げたナイフを追う様に距離を詰めた。
その時…仁科さんの姿が揺らめいた気がした。そして仁科さんの姿が消える。
いや、本当に消えた訳じゃないんだけど仁科さんを認識する事ができない。
キィィイイイイイイイン………。
グラウンドに高い音が響く。すると、隆哉の持っていた短剣は刃の途中から切り落とされていた。
「参り…ました…」
背後から仁科さんにナイフを突きつけられた隆哉が敗北を宣言する。ただでも強い仁科さんが親友作成の装備を身に着けたらこうなりますとも。
という事で、星取り戦はストレートで勝ち越しとなりました!冷静を装いながらも隼人が青筋を立ててるのが良く分かります。やったぁ!
後は適当に負けても良いですよね?
っと思っていたのですが、ここで予定外の事が起きました…。
田中君の対戦相手は風属性と土属性の両方を持つダブルマジシャンの菊川 明日香さんで、言ったら悪いけど田中君は足が遅いから逃げられながら魔法を撃たれ続けたら負けると思っていました。
ところが、田中君の副将戦まで勝利できたんです。魔法を受けながらも突撃する田中くんの迫力に、菊川さんは尻餅ついて戦意喪失してしまいました。その結果…。
「和也くん。せっかくだから全勝を目指そう。和也くんならできる」
いやいやいやいや。無理っすよ!仁科さん!
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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