初授業
「そろそろ学園に戻らないとなー♪」
え?僕、浮かれてますか?いやぁ、実はですね…。学術都市を囲む山脈は東西南北で所有者が分かれてたんだけど、その中の北側について購入する事ができました!
東西を所有してるのは個人や商会じゃなくて学術都市の運営組織でした。やっぱり交通の兼ね合いで管理してるらしいです。そして、南北は別々の人が所有してたのですが、何故か北側は売りに出されていました。
もちろん即決で買いましたとも!仲介業者さんが『ホントに買うの?』って顔をしてたのが少し気になりましたが、表情の理由が何であれ買わない手は無いでしょう。
購入手続きをした後、僕はすぐに山の中腹部へと行きました。そして、アイテムボックスから採掘ゴーレム達を取り出して、希少金属を優先して採掘する様に指示してみます。
すると…ゴーレム達は凄い勢いで洞窟を掘り始めました。これは期待できそうですね♪という所で、学園に戻る時間になってしまったという訳です。
「じゃあここはゴーレム達に任せて、僕は初授業に行ってみますか!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学園に戻ると、ちょうど午後の授業が始まる直前でグラウンドには高等部2年が全クラス集まっていました。臨時クラスになっているクラスメイト達もちゃんと全員いますね!
戦闘訓練を学年でまとめて実施する理由としては、成績順によるクラス分けとは別に『戦闘能力で実施内容を区切る』のが望ましいからって事でした。だったら戦闘訓練用のクラス分けとか作れば良いのに…。
「俺はお前達の戦闘訓練講師になったSランク冒険者のキャリー・ライトだ。よろしく頼む。まずはざっくりと力量毎に分けよう。冒険者登録をしている者はランク毎に固まってくれ。右手から強い順だ」
俺の説明を聞いて、みんながゾロゾロと移動を開始した。んだけど…。これは、もの凄い偏りだな…。結果としては次の通りとなりました。
Sランク、Aランクは0名。
Bランクは勇者パーティの5名のみ。
Cランクは賢者パーティの5名のみ。
Dランクは聖女パーティの5名のみ。
Eランクは臨時クラスが10名とAクラスから7名。
後は、Fランクが20%、Gランクが60%って感じですね。移動しなかった人は0人でした。
「全員冒険者ギルドに登録してるんだな。もしかして義務付けられているのか?」
「はい。我々は入学と同時にギルド登録が義務付けられています。中には僕の様に入学前から登録してる者もおりますが」
えっと、2年の学年代表の人だったかな?
じゃあ実力についてはギルドお墨付きの基準によって分けられている様なものですね。
Eランク以下は走り込みかな。Dランク以上は…。と考えていたら、生徒達の話し声が聞こえました。
「すげぇ。同い年でDランク以上かよ。しかもBランクまでいるなんて」
「Bランクの中心人物の方は勇者様らしいわよ」
「マジかよ。勇者様の仲間だから転校生はみんな強いんだな」
「そんな事も無いみたいだぜ?変な口調の奴はGランクだったしな」
まぁ生産パーティはランクとか興味ないだろうしね。それにしても、彼等の口調はちゃんと変な感じに変換されてるんだな…。
そんな勇者様を褒め称える声の中、上位ランクの方から騒がしい声が聞こえてきました。つまり、クラスメイトです…。
「ははっ。奈落迷宮を踏破した聖女パーティ様はDランク程度だったんですね〜?」
「何よ!護衛任務なんかやらなかったってだけでしょ!?」
「さあ?理由なんざ知らねーが、結果が全てなんじゃねーかなぁ?」
「じゃあ、この場で勝負して、その結果とやらを明らかにしましょうよ!」
双葉と龍彦ですね…。えっと…この2人って何かあったの?周りの人達は『やれやれ、またか…』って呆れ顔をしてます。
せっかくなんで、その流れに乗ってみようかな。
「よし。じゃあ最初に勇者パーティと聖女パーティの1対1星取り戦をするか。他の者は見学だ」
「賢者パーティは参加しなくて良いんですか?」
「賢者ケイスケだったか?お前達は集団戦に特化させているみたいだからな。今回とは別に近々パーティ戦をやりたいと思う」
「なるほど。見破られてましたか…。わかりました。今日の所は見学させて頂きましょう」
という事で、俺は生徒達に周りを囲んで見学する様に指示しました。なんだか本当に喧嘩のタイマン勝負みたいですが、1番見学しやすい形だと思ったんですよね。
「では、初戦は誰が出る?」
「「もちろん…」」
「私だぁ!」
「俺だ!!」
まぁ、そりゃそうですよね。聞くまでもない事でした。
「では、聖女パーティがフタバ、勇者パーティがタツヒコだな。命の危険を感じたら俺が止めるから全力を尽くせ。聖女もいる事だし死にかけても平気だろう」
「私に負けても死ぬ事はないんだってよ?良かったね」
「あぁ、お前を殺す事はなさそうで安心したぜ」
この2人は本当に仲が悪いな…。あ、あともう1つ注意点があった。
「2人とも、学園の設備は壊さない様に気を付けろ」
「分かりました!」
「ちっ。弁償すりゃあ良いんだろうが…」
生物の治療はできるんですが、壊れた物の修理はできないんですよね…。まぁ自分で弁償するなら良いんだけど。
「では、初戦。フタバ対タツヒコ。開始!」
「マナよ巡れぇ!我が身を巡れぇ!我が血となりて…」
「どぉりゃあああああ!」
龍彦が身体強化の詠唱を開始する中、双葉は真っ直ぐ突っ込んで行った。立花流は護身術と言うよりも実戦派ではあるけど…いきなりそれかぁ。でも、軸はブレてない。双葉、強くなってるな。
双葉は龍彦の膝を蹴ると、そのまま回転して龍彦の側頭部へ裏拳打ち…つまりバックハンドブローを当てる。双葉は昔から当身が好きだったもんなぁ…。
「ってぇ…。駆け巡り敵を屠る力となれ…。こいつ、詠唱中にいきなり何しやがる…」
「あんたは変身ヒーローか!そんな隙だらけで待ってあげる訳ないでしょ」
「はっ!だが今の隙で仕留められなかったのは失敗だったな?お前に身体強化する暇なんて与えないぜ!」
「すぅ…はぁぁぁぁぁ…」
え?マジか…なるほど…。
双葉が息吹をすると、双葉の身体強化が完成していた。
無詠唱とまでは行かないけど、息吹の行動が身体強化のイメージと上手く噛み合ったみたいです。
「うぉらあ!食らいやがれ!」
双葉が身体強化してないと勘違いして油断している龍彦は、無防備に双葉へ殴り掛かった。
そして、龍彦の大振りな攻撃を避けた双葉は、龍彦の懐へ入り込んでボディへ連打を放つ。
「いってぇ!お前…いつの間に身体強化しやがった!?」
「うわぁ…流石はBランクの盾役。今ので全然平気なの?」
「ったりめぇだろうが。お前等とは鍛え方がちげぇんだよ!」
「ふーん。もうちょっと力を出しても平気そうね」
「あぁ!?舐めてんじゃねーぞ!」
「正当な判断のつもりだよ?ライト先生、本当によろしくね?」
おっと、命の危険がある事をするのかな?そんな双葉に魔力が集まっていくのが分かります。どうやら無詠唱で覚えてる魔法もあるみたいです。本を和也に渡して良かった。
「畜生…立花相手に詠唱するのは危険だな…。接近戦で押し切るしかねぇ。おらぁ!」
双葉へ殴り掛かる龍彦。さっきの大振りを反省したのか脇を締めてコンパクトにストレートを打ってきます。しかし、そのストレートを避けながら龍彦の腕を掴むと、双葉は一本背負いの要領で龍彦を投げました。いや、浮かせました。
逆さまになって空中に浮いている龍彦の腕を双葉が掴んでいるという状態です。重力魔法を覚えたんですね。って言うか…まさか…。
「なっ…なんだ…」
「行くよ?」
双葉は龍彦の腕を引っ張って地面に振り落としながら、重力魔法の効果を反転させます。
それ…地面に叩きつけるとクレーターができて相手が潰れる奴だ…。
そして、龍彦を振り下ろした結果、双葉達の周りには砂埃が舞い上がりました。
「え…えぇ?どうなったの?」
「これ、死んだんじゃないか?」
「普通に死ぬだろ…」
砂埃が無くなっていくと、そこには双葉の姿と龍彦を逆さに抱える俺の姿がありました。
「凄い。先生本当に助けられるんだね。でも、新井君の防御力を考えたら骨折くらいだったと思うけど」
「そうだな。でも言ったろう?学園の設備は壊すな」
「はっ…はは…。グラウンドを守ったのね。忘れてました…すいません」
双葉にクレーターの弁償をさせる訳にはいきませんからね。
「とりあえず、初戦はフタバの勝利。聖女パーティが1ポイントだ」
「畜生…。俺の装備があれば…」
お、意識あったか。龍彦もなかなか凄いな。戦闘技術はまだまだだけど、タフネスさには目を見張るものがあります。それと、確かに龍彦は戦士だから素手より武器の方が得意なのかもしれません。
「あれあれー?結果が全てだったんじゃないのー?」
「くっ…今日の所は俺の負けだ。素直に認めてやる」
「ふふーん。今度はお互いに装備有りでやろうね」
双葉はそう言い残すと白鳥さん達の所に戻っていきました。
とりあえず、今日俺は改めて心に誓いました。双葉を怒らせるのはやめておこう…。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!
あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!
ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!




