石集め
誤解訂正ありがとうございます!非常に助かります!
「バレッタはいるか?」
「あ、ライト様。こんな時間に宜しいのですか?学園は?」
「大丈夫だ。今日の午後には初めての戦闘訓練があるが午前は予定がない」
「そうなのですね。承知しました」
俺はゲートでレイオスの冒険者ギルドへとやって来ました。バレッタにお願いしてた事があるんですよね。
「本日は如何なさいましたか?」
「あぁ。頼んでいた石集めはどうなっているかと思ってな。実は使い方に目処がついて必要になってきた」
「なるほど…」
すると、バレッタは申し訳なさそうな顔をしながら宝石ケースの様な箱を取り出します。そして、箱を俺の方へ向けると蓋をパカっと開けました。一見空っぽに見えますね…。
「やはり厳しい状況です。金額の問題では無く、そもそも流通していません。八方手を尽くして今の所これだけです…」
これだけ…。つまり空ではない…。
そんな話をしている俺達の所にギルド職員のニコルが近付いてきました。
「ライトさん。お久しぶりです!ライトさんに穴を開けられた剣は家宝として家に飾ってますよ!」
「久しぶりだな。まぁ喜んで貰えて何よりだ」
「今日は何してるんですか?それ…砂粒?」
ニコルが手を出して宝石箱の中を触れようとしました。しかし、鋭い目付きになったバレッタがそれを止めます。
「触らないでください!それで金貨50枚ですよ?無くしたらニコルさん弁償できますか?」
よく見てみると確かに砂粒みたいな欠片が入ってます。これで金貨50枚…日本円で5百万!?
「は?この粒が何なのかは知らないが、この量じゃミスリルだとしても銀貨1枚しないだろ」
「それ…オリハルコンです…」
ニコルの手は無言のまま引っ込みました。誰だよ…そんな希少金属で仮面作った奴は…。
百粒くらい集めればナイフくらいにはなるかな…。
「バレッタ。その1万倍くらい欲しい」
「聖剣を何本溶かすつもりですか…」
そっかー。希少だとは思ってたけど、ここまで希少だったかー。
「他の金属はどうだ?」
「アダマンタイト、ヒヒイロカネも同じ状態です。ミスリルならば10トンほど集まりましたが」
「そうか。ミスリルは更に倍くらい集めておいてくれ」
「承知致しました」
「2人の感覚やべぇな…。ミスリルだって希少金属なんだが…」
んー。重要な金属が全然集まりませんね。これは採掘した方が早いかも。受け継いだアイテムを溶かすという方法もあるけど…それは最終手段にしましょう。
「バレッタ、引き続き宜しく頼む。俺は俺で他の入手方法を考えてみる」
「承知致しました」
さて、採掘する為には人手が必要ですね。俺はバレッタ達と別れて転移部屋に行くとゲートを開きました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「バス。希少金属の鉱脈ってどういう所にあるのかな?」
「ご主人様が求めてる希少金属は、高密度の魔力に晒され続けて金属が変化した物っす!だから魔力密度の濃い所に多いと思うっす!」
それはどこなんだ…。んー。ダンジョン周辺とかかなー?
僕はいま、赤目ゴーレム生産工場を奥に向かって歩いていました。採掘作業とかゴーレムの方が得意な気がするんですよね。
「レイン居るかな?」
「はい。お帰りなさいませ、ご主人様」
「なかなか来れなくてごめんね」
「いえ、マスターのご用件がある時に来て頂ければ大丈夫です。あ、『私など都合の良い女にして下さい』の方が適切でしょうか?」
「適切じゃないです…」
レインの言語システムは何だか不安になりますね。先代…まさかわざとじゃないよね?
「マスター。本日は私の身体をいじる為にいらっしゃったのですか?」
「言い方!まぁついでに魔力補充もするけど…。ここなら採掘用のゴーレムを作れないかなと思ってね」
「採掘用ですか。はい可能です」
お?随分あっさりと…。
「先代と同じ設計で宜しいでしょうか?」
「やっぱり先代も作ってたのか」
「はい。オリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイトを優先して採掘しておりました」
「ははは。似た行動になるもんだね。目的は同じだからそれで良いよ」
「承知致しました。1時間ほどお待ち頂ければ100体ほど生産可能です」
「100体も…。でも、かなり量が欲しいから人数は多い方が良いか。1時間なら午後の授業にも全然間に合うし、それじゃ宜しく頼むよ」
「はい。それではゴーレムZ7A型の生産を開始致します」
ゴウン…。ガッガッ。ガゴンッ。チュイーン…。
おぉ、何だか工場が動き出しました。こういうのってワクワクしますね!
「マスター。そう言えばどちらで採掘されるご予定ですか?千年前に先代魔王様がほとんど取り尽くしたと思われますが、どちらかに当てはあるのでしょうか?」
「………え?」
マジか…。だから奈落迷宮の城には希少金属のアイテムが沢山あったのに、現在はこんなにも流通してないのか…。
これは、アイテムを溶かす事も本気で考えないとダメかも…。
「じゃあ、とりあえず適当に近くの山を買って掘ってみようかな…。溶かすかはその後に考えよう…」
「マスターは今どちらにお住まいなのですか?」
「家はビオス王国のリッケルトだけど、今いるのは学術都市だね」
「ビオス王国に学術都市ですか?どちらも存じ上げない場所ですね」
「そっか。ビオス王国は数百年前にアクル王国から分離した国だから知らないんだね。アクル王国の西側にあるよ。って事は、学術都市も千年前には無かったのかな?」
学術都市の歴史は知らなかったけど、レインが知らないって事は千年前の戦争が終わった後に出来たのかもしれません。
「なるほど。ビオス王国について理解しました。学術都市も私のデータベースには存在しない単語になります」
「学術都市は大陸の中心にある街で、どこの国にも属してない独立行政地域なんだ」
僕の話を聞いたレインは、「はて?」という感じで首を傾げました。
「中心?そこは周りを山に囲まれている窪地ではありませんか?」
「確かに山に囲まれてるよ。その中は窪地というよりは平原だね」
「なるほど。とても懐かしいです。人間はあんな場所に街を作ったのですね。しかし平原になっているとは…過ぎた時の長さを実感致しました」
あんな所?何かあるのかな?レインは結構詳しそうです。
「あの土地はどんな場所だったんだ?」
「あそこは、魔王軍と人間連合軍が最も大きな衝突をした場所です。魔王様の極大魔法でクレーター状になったのですが、千年の間に土が被さって平原になったのですね。山の部分はクレーターの縁です」
………今、さらっと何言った?あの広大な土地が魔法によるクレーターで、あの山脈はただの縁だと?
だが、そこまで考えて俺は気付いてしまいました。俺も確かに出来…いやいや!これ以上考えるのは止めておこう!
「あの土地は、流された大量の血と膨大な魔力が渦巻く混沌な土地となっていました。もしかしたら縁の山脈には希少金属の新たな鉱脈があるかもしれませんね」
「マジか!それは出来る限り買いたいな。権利関係とかすぐに確認しないと!」
確か鉱石採取はしてなかった気がします。国道みたいになってる道の周辺はダメだとして…売ってる場所ないかな…。
「マスター。ゴーレムが完成致しました」
「丁度良いね!了解!全機アイテムボックスに回収させてもらうよ!ゴーレムも情報もありがとう!凄く助かった!」
「それが私の存在意義です。マスターのお役に立つ事ができて嬉しく思います」
「それじゃまた来るね!」
僕は逸る気持ちを抑えてレインに挨拶をしました。
すると、レインは両手の握りこぶしを顎に置いて上目遣いでこっちを見てきます。カワイイ…。
「行ってらっしゃいませっ!ご主人さまっ♪」
レインはブレないね…。
それから僕は採掘ゴーレムを回収して学術都市に戻りました。山が買えると良いな。
そして、僕がいなくなった後の工場では、レインが独り言を呟きながら考え事をしていました。
「クレーターは平地になった…。という事は、穴の底に発生していた迷宮も埋まったという事でしょうか。マロンは大丈夫かしら?私の様に故障してないと良いけど」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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