魔法道具研究会
「親友、お疲れ…」
「お疲れ様。って言うか、本当に疲れてるね…。どうしたの?」
特別講習をした翌日、一緒に部活を見に行く約束をしていたので放課後になると和也が教室に来ました。生徒達は走り込みに行っているので教室には僕達だけです。
「今日Aクラスとの懇親会が有ったんだけど、精神的にかなり疲れる事が起きてさ…。まぁ当然っちゃ当然なんだけど…」
「気になるなぁ…。何があったの?」
「聞いてくれるか親友よ!」
もぅ…。話したかったんでしょ?
僕は『どうぞ』という感じで手を前に出しました。
「懇親会って中等部と高等部の各学年代表者が参加する感じだったんだよね。その代表者はみんなAクラスの人って訳」
「そうなんだ?同学年のAクラスじゃなかったんだね」
「そうそう。でさ、中等部3年の代表はアクル王国のアレク王子とバルトロ帝国のミレーヌ皇女だったんだよ」
「へー。2人は一緒に代表やってるんだ?もっと距離があるのかと思ってたよ」
ハルトが2人の関係を『ただのクラスメイト』って言ってましたからね。でも、一緒に学年代表みたいな事をやってるみたいです。
「そうだよね。敵対国同士で一緒に活動してるなんて正直驚いたよ。アレク王子がミレーヌ皇女を紹介してくれるって言ってたんだけど、正直無理だと思ってたからね」
あ、和也に勘違いさせちゃいました。ミレーヌの恋愛事情なんて知らないだろうし普通はそう思うよね。まぁいっか。
「それなら何も問題無いんじゃない?」
「それがさ…。ミレーヌ皇女に挨拶に行ったんだけど…凄い塩対応だったんだ…」
「え?ミレーヌが??」
「うん。塩対応って言うかむしろ攻撃だったよ。父親を殺しちゃったんだから当たり前だけどね」
あれ?ミレーヌがそんな事…って言うのも何だけど、皇帝暗殺を気にするかな?あいつ、むしろ自分で殺そうとしてた可能性があるんだけど…。
「どういう流れだったのか教えてもらえる?」
「えっと…最初はアレク王子とミレーヌ皇女が楽しく会話してたんだよね。何か動く手乗り人形を見ながら笑ってたよ」
あー、やっとプレゼント渡せたのか。でも、それは2人の時に渡した方が良かったんじゃないかな。ミレーヌ…。
「それでアレク王子が嫌われてないって分かったから、俺達は2人の席に行ったんだ」
「うんうん」
「予定通りミレーヌ皇女を紹介してもらおうと思ってアレク王子に話しかけたんだけど…」
「もしかして、その時点で機嫌悪くなってた?」
「ん?んー…。あ、確かに笑顔が消えてたかも!」
「やっぱり…」
好きな人との楽しい会話を邪魔された訳ですからね…。乙女心かな…。
でも、転移者との懇親会で学年の代表者なんだから、そこは割り切って欲しい所ですね。
「でも、その後はアレク王子が良い感じに紹介してくれてさ」
「へー。どんな感じ?」
「まず、犯人である勇者パーティとは別パーティな事を説明してくれたよ。でも、勇者のやった事について申し訳ないと思ってる。って事も伝えてくれたな」
「過剰に非難されない様に配慮してくれたんだね」
アレク王子って直接話した事はありませんが気の利く人みたいですね。アクル王国の後継教育をされてない良い子だってハルトが言ってたし、ミレーヌの色眼鏡って訳でも無さそうです。
「後は、白鳥さんが聖女な事を伝えてくれたな。奈落迷宮を踏破した凄い人で憧れてるんだって持ち上げてくれて…」
「憧れ…」
「うん。すげぇアピールしてくれてたぜ。なのに『あら。実は薄幸の聖女だというお噂を耳にしましたけど?本当は他の人が凄いだけでお荷物だったんじゃなくて?ホホホホ』とか言っててさ…」
「うわぁ…」
「立花さんが『お荷物なんて事は無いです!麗奈のお陰で快適に進めたんです!』って反論したら、『あらあら。メイドとして付いていったんですのね。栄誉を分けて貰えて良かったですわね』だってさ…」
何だその嫌味は!悪役令嬢かっ!!
「その後もずっと話を曲解されるし、白鳥さんに嫌味を言い続けるし…。どうにか誤解を解いて謝罪を受け入れて貰いたかったけど駄目だったよ…。超疲れた…」
「思いっきりミレーヌの困った部分が出てるね」
「あれ?知り合いなの?って、弟の皇太子を助けたんだから当たり前か!」
「まあね。ライトとしてはアルバートを助ける前から知り合いだよ。実はさ…ミレーヌがそんな態度になってる原因に心当たりが有るんだ。たぶん父親は関係ないね」
「え?そうなの?」
「うん。ミレーヌってね…アレク王子の事が好きなんだよ…。アレク王子が白鳥さんを褒めたから嫉妬したんじゃないかな?」
「え、マジで?だとすると…それはヤバいかも…」
あれ、更に別の問題がある感じかな?
「ミレーヌがアレク王子を好きだと問題があった?」
「実はさ…アレク王子って褒めてたどころか白鳥さんにプロポーズしてるんだよね…」
「………それ、ミレーヌにバレない様にね」
マジか…。そんな事を知ったら、ミレーヌは何をするか分かったもんじゃありません。そして、そう考えた所である事が頭をよぎりました。
いやいや、まさかね…。念のため今度様子を見に行こうかな…。
「ミレーヌに会ったら僕からも少し話しておくよ」
「助かる!じゃあ、そろそろ部活見に行こうか」
「そうだね。遅くなっても何だし」
それから僕達は、気持ちを切り替えて軽い足取りで魔法道具研究会の部室へと歩いて行きました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうして分かってくれないナリか!」
「だから!無理だって言ってるでしょ!」
あれ…。魔法道具研究会に近付くと、いきなり怒鳴り合う声が聞こえて来ました。
語尾からして1人は近藤君っぽいですね。
「使う予定があるナリか?吾輩達は今必要ナリよ!」
「今は予定なくても必要になった時に入手できるとは限らないでしょ!高くて貴重なんだから!」
白熱してますね…。今は先生なんだし放置する訳にはいきません。よし!中に入って事情を聞いてみましょう!
俺は部室の扉を開けました。
「あっ…ライト先生…」
「おや、佐藤氏も一緒ナリか」
「うん。ライト先生と仲良くなってね。一緒に魔法道具研究会を見学に来たんだ」
部室の中を見渡してみると、予想通り近藤君と田中君の生産コンビがいます。
それと研究会の部員らしい人が15人くらいですね。その中の代表者っぽい女性と言い争ってたみたいです。
「外まで響いてたがいったいどうしたんだ?」
「魔法道具研究会がBランクの魔石を売ってくれないナリよ」
「売れる訳ないでしょ!」
えー。何を揉めてるのかと思えばそんな事ですか…。
「Bランクの魔石がどれだけ希少か分かってるの?欲しいと思った時にたまたま売ってるとは限らないんだから!冒険者ギルドに討伐依頼を出しても入手できるのは1ヶ月後とかになるのよ?」
「分かってるナリ。冒険者ギルドに行っても入荷待ちだったからお願いしてるナリよ」
「佐藤殿。聖女パーティなら持ってらっしゃらぬか?」
「田中君、ごめん。全部売っちゃったんだよね」
「そうでござるか…」
魔石って使い道が多いからランクが高いのはすぐに売れちゃうらしいです。役割としては地球で言うところの電池みたいな感じですね。
「コンドウ。俺が売ってやるから魔法道具研究会に迷惑かけるのはやめておけ」
「もしや、ライト氏は持ってるナリか?」
「あぁ」
そう言うと、俺はアイテムボックスからBランク魔石を何個か取り出して机に置きました。
「おぉ!Bランクの中でもかなり質が良さそうナリ!本当に売って貰って大丈夫ナリか?」
「1万個以上持ってるから気にするな。必要ならAランクも相当数あるぞ」
Sランクも何個か有るけどね。
俺の発言を聞いた近藤君はニヤリと笑いました。良い入手ルートを見つけたぜ!って感じでしょうか。
そして、それ以上に目を輝かせている人達がいます…。
「ライトせ・ん・せ♪魔法道具研究会にぃ魔石を寄付したくなりませんかぁ?わたしぃ寄付したくなるマッサージとかできる気がしますぅ」
いやいや!そんなモジモジしながら胸元を強調して猫撫で声を出してきても、さっき近藤君と怒鳴り合ってたの見てますからね?
まぁでも、魔石くらいで研究の役に立つのなら何個か寄付させて貰いましょう。言っときますが、決してマッサージ目的とかじゃありませんからね!
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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