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共通の秘密

2023/10/17 ナレーション形式から仁科さん視点に変更しました。ストーリーは変わりませんが、仁科さんの考えが違って見えると思います。大きな手直しで申し訳ないです。

※今回は仁科さん視点になります。


「たっだいまー!」


 学園から提供された寮に和也くんがやっと帰ってきました。Sランク冒険者の人に呼び出されたから心配して待ってたのに、何だか能天気な挨拶です…。


「………おかえり。あの人に何かされなかった?」

「仁科さん。出迎えてくれるなんて嬉しいなぁ。心配してくれてたの?」

「当然。大事なクラスメイトだから。それに和也くんに何か(・・)あった時の為に私に言って行ったんでしょ?待ってないと何か(・・)を検知できない」

「ははは。事務的な所が大きそうだけど、心配してくれてありがとう!」


 むむむむむ…。何だか楽しそう…。凄く心配してたから早く結果を教えて欲しいのに…。


「何だか凄く機嫌が良いね?ちょっとウザい。で、どうだったの?」

「しれっと酷いな…。うん。何もされてないよ。むしろ嬉しい内容だった」


 嬉しい内容?有益な情報とかを貰えたのかな?でも、初めて会った人がいきなり何かをくれるのはおかしい。

 相手はあの仮面の人。立花さんと白鳥さんが高杉君と間違えた人。そして和也くんが喜んでる…。まさか…。


「もしかして…。2人は正解だったの?」

「ピンポーン!まさかだよね。Sランク冒険者の正体は親友だったよ」

「声が大きい…」


 一応風魔法で周りを囲ってるけど、完璧に音漏れを防止できてるか分からない。小声で話して欲しかったので、私は人差し指を立てて和也くんの口元に近付けた。『静かに!』という感じです。


「念のため和也くんの部屋に行こう。風魔法で音が漏れづらい様にはしてるけど、誰かに見つかっても面倒だし」

「俺の部屋に入る所を誰かに見つかると俺が終わるんだけど…」

あの人(高杉君)の情報が漏れるより良いでしょ?」

「そっすね…」


 読唇術が使える人に見られるかもしれないから、念のため部屋で話した方が良いと思う。

 それから和也くんの部屋に移動したけど、和也くんは凄く周りを警戒してた。私と噂されるのがそんなに嫌なのかな?ちょっともやもやするかも…。


「念のため風魔法も使っておくね」

「ありがとう。あれ?これは、もしかして…」

「どうしたの?」

「これって2人の間に何かが起きても誰にもバレないんじゃ…」

「そうだね…」


 シャキンッ!


 私はコクヨクさんから貰ったナイフを鞘から抜き放つとナイフに魔力を込めた。このナイフは魔力を込める程に切れ味が増す凄いナイフなんだ。

 デリカシーの無い男子には…罰が必要だよね?


「和也くんがどんなに切り刻まれて泣き叫んでも、誰も止めに来ないから安心して」

「ごめん!ジョーク!もちろん冗談です!いやぁ、仁科様。俺にそんな勇気ある訳ないじゃないですか!」

「そう。勇気は大事だと思うけど、今は高杉君の事を聞きたいから見逃してあげる」

「あざーーーっす!」


 もぅ…。最近、和也くんが土下座の体制になる速度が凄く速くなった。怒られる事ばっかりするから…。もしかして土下座を極めようとしてるのかな?

 このままだと話が進まないので、私はナイフを鞘に収めて和也くんに質問をしました。


「で、Sランク冒険者のキャリー・ライトだっけ?それが高杉君だったの?」

「うん。ビオス王国のレイオスって町で冒険者登録したんだってさ。それと…」


 それから和也くんは、高杉君が『トール』と『ライト』っていう偽名で二重生活してる事を教えてくれました。しかも、奈落の底で会ったコクヨクさんは高杉君の仲間らしい。じゃあ、このナイフは高杉君からのプレゼントだったんだね。

 それと、リルっていう狼とも一緒に生活してるみたいなんだけど、『今は実家に帰ってます…』とか奥さんに愛想を尽かされた旦那さんみたいな事を言ってたらしい。

 何だかややこしいな…。


「生活するだけでも大変なのに、何でそんな面倒な二重生活をしてるの?」

「親友は『流れで』とか言ってたよ」

「別の言い方をすると『行き当たりばったり』?」

「確かに…。でも色々と大変だったみたい。城之内の皇太子暗殺を止めてくれたのもやっぱり親友みたいだし」

「そっか。高杉君が苦しんでないなら私はそれで良いけど」


 まだクラスメイト達を説得できる自信は無いけど、高杉君は私達がアクル王国を離れた場合の生活環境とか生活費を準備してくれてるみたい。高杉君がSランク冒険者になってるって事は、その準備をするのに凄く苦労したんだと思う。

 それに、城之内君を止めてくれたり平野未来さんが殺されそうになった所を助けてくれた。それに比べて私達は…。


「んー。苦しんでる感じは無かったよ。あ、でも…」

「なに?」


 高杉君が苦しんでる事があって私達で助けになれるんだったら、出来る限りどうにかしてあげたいな。


「今は狼のリルちゃんをモフれないのが辛いって言ってた。『モフモフに包まれながら眠りたい!』だって」


 ………ん?つまり、逃げられた奥さんが恋しいって感じ?


「そう。心配した私が間違いだったみたい。けど…」


 その気持ちはよく分かる。私だってモモちゃんをなでなでしたい。何で城之内君なんかに…。

 でも、じゃあそんなに忙しい中で(いと)しい奥さんから離れて、何で学園に来てるんだろう?


「そうなると、高杉君は何でこの学園に?」

「それそれ。学園で帰還魔法を調べる為に学園講師の仕事を受けたんだってさ。どうやらアクル王国の召喚魔法陣じゃ帰還できない事が分かったみたい。魔力溜めてないとか以前の話だったね…」


 うん。安定のアクル王国。

 そんな事より、遠く離れた学術都市で出会えちゃう立花さん、白鳥さん、高杉君の運命の方が興味あるな。


「そっか。それで学園に来たら立花さんと白鳥さんに偶然見つかっちゃったんだ?」

「凄いよね。あんな格好で、あんな喋り方で、髪の色とかも違うのに…俺は気付けなかったよ…」


 あれ?もしかして立花さん達が気付けたのに自分は気付けなかったから悔しいのかな?

 うーん。立花さんは幼馴染だから一緒に過ごした時間が違うし、言っちゃ何だけど白鳥さんはストーカーレベ…ん、んん。愛の重量が関取レベルだから相手が悪いと思う。

 うん。たまには私が慰めてあげよう。


「普通無理。しかもあの距離で確信するなんて、あの2人が特殊だよ。だから、和也くんの愛が足りない(・・・・・・)訳じゃないから気を落とさなくて大丈夫」

「え?どういう慰め!?いやいや、『親友への愛の深さで2人に負けちまったぜ…』とか気にしてないよ?ただひたすらに2人の凄さに脱帽するばかりだよ?」

「え?違うの?」


 あれ…。和也くんの高杉君に対する友情は既に愛と呼べる感じだと思ってた。でも、白鳥さんの愛とは別ジャンルか。

 もし同ジャンルだったら手島さんが喜んじゃうね。それも面白いかも。


「そりゃそうだよ!俺達にそんな属性は無いって!!」

「残念。手島さんが喜ぶと思ったのに」

「俺達を生贄に捧げないで!こんな危険な話は終わり!」


 むぅ…強引。何だか、こんなに否定されると逆に応援したくなっちゃうかも…。


「えっと…。でさ、親友と同じ部活?サークル?みたいのに入って一緒に帰還魔法を調べようと思うんだ。丁度良いのが無かったら2人で部活を作るかも」

「分かった。立花さん達に怪しまれない様に話しを合わせておくね。でも、和也くんが時空属性を使える事は他の人にバレない様に気をつけて」

「そうだね。気をつけるよ。ありがとう!」


 やっぱり、和也くんは自分が思ってるより高杉君ラブなんじゃないかな?『どんな部活があるかなー?』とか言いながら高杉君との生活を想像してウキウキしてる…。

 周りの人にバレない様に2人でこっそり帰還魔法の研究するんだよね。もしかしたら…。


「共通の秘密が愛を育てるかも。2人で秘密を守りながら頑張る内に段々と…」

「仁科さん、いま何か言った?」

「ん。何でもない」


 透と和也の事で想像を膨らませる仁科さんは、自分と和也が透の秘密を守りながら頑張ってる事には気付いていなかった。




----------------------------


※ここから先は修正する前のナレーション形式になります。

※仁科さんの気持ちが表現できてないので、上の形に修正しました。

※ナレーション形式の方が好きな方がいるかもしれないので一応残しておりますが、ストーリーは同じなので特に読む必要はありません。


「たっだいまー!」

「………おかえり。あの人に何かされなかった?」

「仁科さん。出迎えてくれるなんて嬉しいなぁ。心配してくれてたの?」


 和也は、学園から提供された寮に入った所で仁科さんに声を掛けられた。みんな既に寝ているのか近くに人の気配はない。

 ライトの呼び出しに応じて図書室へ行く事を仁科さんにだけ共有していたのだが、どうやら帰りを待ってくれてたみたいだ。


「当然。大事なクラスメイトだから。それに和也くんに何か(・・)あった時の為に私に言って行ったんでしょ?待ってないと何か(・・)を検知できない」

「ははは。事務的な所が大きそうだけど、心配してくれてありがとう!」

「何だか凄く機嫌が良いね?ちょっとウザい。で、どうだったの?」

「しれっと酷いな…。うん。何もされてないよ。むしろ嬉しい内容だった」


 和也の話を聞いた仁科さんは考える仕草をする。そして、何かに気付いた様子で和也に質問をした。


「もしかして…。2人は正解だったの?」

「ピンポーン!まさかだよね。Sランク冒険者の正体は親友だったよ」

「声が大きい…」


 和也の話を聞いた仁科さんは人差し指を立てて和也の口元に近付けた。『静かに!』という感じだ。


「念のため和也くんの部屋に行こう。風魔法で音が漏れづらい様にはしてるけど、誰かに見つかっても面倒だし」

「俺の部屋に入る所を誰かに見つかると俺が終わるんだけど…」

あの人(高杉君)の情報が漏れるより良いでしょ?」

「そっすね…」


 それから2人は和也の部屋へと移動した。和也はやたらと周りを気にして挙動不審な感じだったが、幸運にも誰かに見つかる事はなかった。


「念のため風魔法も使っておくね」

「ありがとう。あれ?これは、もしかして…」

「どうしたの?」

「これって2人の間に何かが起きても誰にもバレないんじゃ…」

「そうだね…」


 シャキンッ!

 仁科さんはコクヨクから渡されたナイフを勢い良く抜くと、冷たい目で和也を見つめた…。


「和也くんがどんなに切り刻まれて泣き叫んでも、誰も止めに来ないから安心して」

「ごめん!ジョーク!もちろん冗談です!いやぁ、仁科様。俺にそんな勇気ある訳ないじゃないですか!」

「そう。勇気は大事だと思うけど、今は高杉君の事を聞きたいから見逃してあげる」

「あざーーーっす!」


 最近慣れてきたのか見事な土下座を見せる和也を見下(みおろ)しながら、仁科さんはナイフを鞘に収めた。


「で、Sランク冒険者のキャリー・ライトだっけ?それが高杉君だったの?」

「うん。ビオス王国のレイオスって町で冒険者登録したんだってさ。それと…」


 和也は、透から聞いたトールとライトの二重生活やコクヨクとの関係、あとリルっていう狼と生活してる事を説明した。


「生活するだけでも大変なのに、何でそんな面倒な二重生活をしてるの?」

「親友は『流れで』とか言ってたよ」

「別の言い方をすると『行き当たりばったり』?」

「確かに…。でも色々と大変だったみたい。城之内の皇太子暗殺を止めてくれたのもやっぱり親友みたいだし」

「そっか。高杉君が苦しんでないなら私はそれで良いけど」

「んー。苦しんでる感じは無かったよ。あ、でも…」

「なに?」


 仁科さんは透が辛い思いをしていないかを気にしていた様です。実は透に負担が偏ってると感じていて、申し訳ない気持ちを持っていました。


「今は狼のリルちゃんをモフれないのが辛いって言ってた。『モフモフに包まれながら眠りたい!』だって」

「そう。心配した私が間違いだったみたい。けど…」


 その気持ちはよく分かる。モモちゃんを撫でたいのを毎日我慢してる仁科さんは心から納得していた。


「そうなると、高杉君は何でこの学園に?」

「それそれ。学園で帰還魔法を調べる為に学園講師の仕事を受けたんだってさ。どうやらアクル王国の召喚魔法陣じゃ帰還できない事が分かったみたい。魔力溜めてないとか以前の話だったね…」


 和也の話を聞いた仁科さんは、そんなにショックを受けた感じはありません。既にアクル王国に期待することはやめているみたいです。


「そっか。それで学園に来たら立花さんと白鳥さんに偶然見つかっちゃったんだ?」

「凄いよね。あんな格好で、あんな喋り方で、髪の色とかも違うのに…俺は気付けなかったよ…」


 透の変装に気付けなかったと呟く和也を見て、仁科さんは珍しく暖かい眼差(まなざ)しを向けます。そして、優しく語り掛けました。


「普通無理。しかもあの距離で確信するなんて、あの2人が特殊だよ。だから、和也くんの愛(・・・・・・)が足りてない訳じゃないから気を落とさなくて大丈夫」

「え?どういう慰め!?いやいや、『親友への愛の深さで2人に負けちまったぜ…』とか気にしてないよ?ただひたすらに2人の凄さに脱帽するばかりだよ?」

「え?違うの?」


 仁科さんが少し残念そうにしています。さっきまで暖かかった眼差(まなざ)しにも落胆の色が見えました。


「そりゃそうだよ!俺達にそんな属性は無いって!!」

「残念。手島さんが喜ぶと思ったのに」

「俺達を生贄に捧げないで!こんな危険な話は終わり!」


 あくまで喜ぶのは手島さんだと言う仁科さんに対して、和也は強制的に話を打ち切った。


「えっと…。でさ、親友と同じ部活?サークル?みたいのに入って一緒に帰還魔法を調べようと思うんだ。丁度良いのが無かったら2人で部活を作るかも」

「分かった。立花さん達に怪しまれない様に話しを合わせておくね。でも、和也くんが時空属性を使える事は他の人にバレない様に気をつけて」

「そうだね。気をつけるよ。ありがとう!」


 そして、『どんな部活があるかなー?』とか言いながらウキウキしてる和也を見ながら仁科さんは小さな声で呟いた。


「共通の秘密が愛を育てるかも。2人で秘密を守りながら頑張る内に段々と…」

「仁科さん、いま何か言った?」

「ん。何でもない」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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