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予想外の再会

「てめぇ!!何で仮面野郎がこんな所にいやがる!!」


 勇者様が怒鳴りながら俺に駆け寄って来ます。そして、右ストレートを放とうと、右手を後ろに引きました。

 そんなテレフォンパンチ当たる訳ないだろ…。


 俺は拳を出すタイミングで勇者様の左足を払います。殴る動作による力の方向と払われた足の方向が逆な為、身体を(ねじ)った勇者様は受け身を取る事も出来ずに真横から床に落ちました。


「ぐふぅ」

「俺がここに居る理由は臨時講師として雇われたからだ」

「隼人!大丈夫か?てめぇ何しやがる!」


 質問に素直に答えたって言うのに、何故か勇者パーティの新井龍彦が怒ってます。いきなり殴りかかって来たんだから、床を転がってるのは勇者様の自業自得でしょう…。


「やめんかっ!いったい何事じゃ!!」

「その通りです!新井君やめなさい!今のは城之内君に問題が有ると思います!」


 さすが海老原先生!ちゃんと公平な目で判断できる所は尊敬してます。きっと間違いを自覚させる事が隼人や龍彦の為になると考えてるんでしょうね。

 それにしても、隼人は事情を説明する気が無いみたいです。みんな原因が分からずに困ってるので、俺から説明してあげますか…。


「その男がバルトロ帝国の皇太子であるアルバートを暗殺しようとしたのを俺が妨害したんだ。それが気に食わないんだろう」


 おっと…。海老原先生を除いて『こいつか…』って目線が俺を刺します。どうやら隼人がアルバートを暗殺しようとした事や、そこで敗北した事はみんな知ってるみたいです。

 そして、海老原先生は俺に対して頭を下げていました。何故…?


「あなたが…。城之内君が罪を重ねるのを防いでくれたんですね。ありがとうございます」

「先生!何を言ってるんですか!俺に罪なんて無い!」

「私の力不足で城之内君に辛い思いをさせてしまいました。責任は担任である私にあります!」


 勇者様の責任まで取らなきゃいけないのか…。やっぱり担任って大変そうだなぁ…。

 でも、俺の意見は違うので一応言っておきましょう。


「いや。アルバートの暗殺は個人的な金銭目的でやったみたいだぞ。その責任を負うのは違うんじゃないか?」

「勝手に…俺のやった事を悪事にしてんじゃねーよ!」

「金の為に善良な子供を殺すのは悪事じゃないのか。それは知らなかった」

「やっぱりてめぇはぶっ殺す!」


 んー。何とも場が混沌としてきましたね。


「ここは学術都市じゃ。お主達は国家レベルの関係性がある様じゃが…学園都市にそれを持ち込むのは禁止しておる。今の関係は教師と生徒である事を忘れるでない!」


 って言われて納得できる訳もないと思うけど…。案の定、勇者様は激しく歯軋りをしています。


「一つだけ教えろ。お前はバルトロ帝国の人間なのか?」

「いや、護衛任務で一時的に雇われただけだ。ちなみに、冒険者登録を行ったのはビオス王国だが生まれはもっと遠い国だな。そして今は、グルワール総合学園から臨時講師の依頼を受けている」

「ちっ!金さえ積まれれば誰の依頼でも受けるゴロツキか」


 嫌味のつもりなのかな?何も響かないよ…。


「冒険者とはそういうものだな。金さえ積まれれば幼い子供でも殺そうとする暗殺者よりは気に入っている」

「何だと貴様!!」

「やめんかっ!!」


 さすがに学園長の一喝が飛びました。はいはい、黙りますよ…。すると、そんな空気の中で声を上げる人がいました。


「学園長。私も発言して宜しいかな?」

「ワギル先生。何じゃ?」


 談話室には初めからもう1人いました。クラスメイト達の接客を担当していたんでしょう。どうやら学園の教師だったみたいです。


「ライト殿。こちらに御座(おわ)すハヤト・ジョウノウチ様は勇者様で有らせられます」

「そうか。で?それがどうかしたのか?」

「ふむ。やはりそうなりますか」


 ワギルは何やら1人で納得すると、学園長に進言をしました。


「学園長。勇者様に対して尊敬の念を感じえないライト殿は、このクラスの担任として不適切ではないでしょうか?」

「は?こいつが俺達の担任だと!?そんな事が認められるか!!」


 あ、そう言えばその話まで辿り着いてなかったね。隼人がもの凄い拒否反応を示しています。俺だって嫌だよ…。


「勇者様は反対ですかな?」

「当たり前だ!こんな奴を信用できる訳がない!」

「仕方がないのう…。先程までのやり取りを見る限りでも厳しそうじゃしな…」


 お、担任は無くなった!良かったー!

 隼人の事を除いても、責任が重くて大変そうだし、毎日一緒だと聖女パーティに正体がバレそうだから断りたかったんだよね。


「じゃがな、戦闘訓練の授業はライト君が講師じゃぞ。学年合同じゃからそこは諦めてくだされ」


 ぐぅ…そりゃそうか…。残念。

 勇者様も心底嫌そうな顔をしています。別にボイコットしてくれて良いんだけど…。


「ちっ!仕方がない!しかし、指導内容に不手際があったら責任取ってもらうからな!」


 疲れる奴だな…。別に嘘を教える気は無いけど、身につくかどうかはお前次第だろう…。


「では、クラス担任はワギル先生じゃな。エビハラ嬢は副担任として生徒の心を支えてくれると助かるんじゃが。ちゃんと給金は払いますぞ」

「もちろんです!私の生徒達ですから!」


 えっと…クラス担任の話は無くなったんだから俺はもう要らないよね?


「そろそろ俺は帰らせてもらうぞ?」

「うむ。そうじゃな。では、明後日から宜しく頼みますぞ」


 はぁ…。何だかどっと疲れた気がします。こんなに精神的ダメージを受けるとは…さすがは魔王の天敵、勇者様。

 俺は急いで談話室から出て行きました。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「平民が伝統あるグルワールに来てんじゃねーよ!貧乏人がどういう不正して入ってきやがったんだ!?」

「や…やめなさい、君達。これ以上するなら先生も黙ってられませんよ?」


 学園の事を早く覚えようと思って校内を適当に歩いていたのですが、何だか揉めている集団を発見しました。

 数人の男子生徒達が女子生徒と大人の男性を取り囲んでいます。大人の男性は先生みたいですね。


「び…貧乏じゃないもん!それに、ちゃんと試験を受けて合格したもん!」

「合格したって言ってもEクラスへの編入じゃねーか。堂々と言ってんじゃねーよ」


 えっと、確かAからDまでが成績順の通常クラスで、Eは何かしらの理由で通常クラスに馴染めないって判断された生徒を集めたクラスだっけ。

 それと、編入って事は、俺と同じで明後日が初登校になる生徒なのかも。


「てめぇみたいなのがいると学園の価値が下がるだろうが!」

「さっさと荷物持って故郷に帰れよ!」

「や…やめたまえ…」


 この先生…悲しい事に生徒達から全然相手にされてません…。凄く細いし気も弱そうだからかな…?

 これは、黙って見過ごす事は出来ないですね。


「おい。いったいどうしたんだ?」

「何だ?てめぇは」

「明後日から戦闘訓練の授業を受け持つライトだ」


 何やら引っ掛かる部分があるのか、男子生徒達は何かを思い出そうとしていた。そして、見る間に顔が青くなって行く。


「ライトって…今年の武闘大会で金クラス優勝した…」

「スタンピードを力尽くで押さえ込んだって聞いたぞ…」

「それでSランクになったって…」

「ビオス王国ではドルツの領主をボコボコにしたり国王に喧嘩売ったらしいぞ…」

「や、やべぇ…」


 おー!目的通りライトの名が広まってるじゃないですか!しかも、ローレンスに喧嘩売ったのは誤解があるけど、それ以外は事実だし。


「な…何でもありません!」

「僕達はこれで失礼させて頂きます!」


 男子生徒達は回れ右すると、ダッシュで逃げて行きました。まぁ、追いかける必要は無いでしょう。


「大丈夫か?いったいどうしたんだ?」

「グスッ…。ライト先生…ありがとうございます…」


 ………え?悔しくて泣いてるこの女子生徒…見覚えがあるんですけど…。


「サリーちゃん?」

「え?何で私の名前を?」


 おっと、しまった。サリーちゃんが急に名前を呼ばれて驚いています。でも、どうにか説明はつくかな。


「あぁ。君のお父さんが営んでいた宿屋を買い取らせて貰ったのが俺だ。営業はサハルに任せているが」

「あっ!トールさんが壊したお店を買い取ってくれた人なんですね!ありがとうございます!お陰でグルワールに入る事が出来ました!」


 ぐぅ…。言葉のナイフが胸に刺さるぜ…。


「当然だが買い取る前に店の事は調べていたからな。それでサリーの事も知っていた訳だ」

「なるほどです!」


 ふぅ…。どうにか誤魔化せたかな?それにしても予想外の再会にビックリです。そういえば、宿屋を売却して引っ越す理由は、サリーちゃんが学術都市に合格したからだって言ってましたね。

 そして、話が途切れるのを待っていた先生が話し掛けてきました。


「あの…。助かりました。僕は2年Eクラスの担任をしているオスカーと言います」

「あぁ、さっきのは何なんだ?」

「サリーさんに学校の案内をしていたんですけど、たまたま学校に来ていた生徒達に見つかってしまいまして…」

「サリーが虐げられる理由は?」

「その…。グルワールに入れるのって、基本的には王族、貴族、大商人の子息子女なんです。だから町の宿屋出身であるサリーさんの事が気に入らないんだと思います」


 おぉ!そんな条件の中で合格をもぎ取ったのか。サリーちゃん凄いじゃないか。


「Eクラスはサリーさんに限らず不当に嫌われる子が多いんですが…僕が力不足なばっかりにみんなに辛い思いをさせていて…。僕がライトさんくらいの力を持っていたら…」

「力だけの問題でもないと思うが。まぁ何か俺に協力できる事があれば手伝おう」

「え?本当ですか?」

「ん?あぁ、もちろんだが」

「本当に本当ですか?」

「だから、本当だと言っている」


 俺の返事を聞いたオスカーは、急に顔が綻んだと思ったら天に祈りを捧げていました。何だか嫌な予感がします…。


「いったい、どうしたんだ?」

「ライトさん!2年Eクラスの副担任(・・・)をお願いします!」

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


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ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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