グルワール総合学園
「魔王様が講師をされるのは、どの様な所なのですか?」
「名前はグルワール総合学園だって。学術都市には複数の学園があるんだけど、その中でも最高峰の学園みたいだよ」
僕はコクヨクに乗ってグルワール総合学園に向かっています。新学期は来週から始まるんだけど、新任講師には事前に色々なレクチャーがあるんだって。
学術都市の入り口まではゲートで来たんだけど、そこから学園まではコクヨクの背中でゆっくり空中散歩しています。
「なるほど。魔王様に相応しい場所の様ですな。ちなみに『総合』と言うのは何でしょうか?」
「学校によって、礼儀作法、近接戦闘術、魔法とか特色があるみたいなんだけど、ここは全部を教えてるみたいだね」
「と言う事は、戦闘や魔法の指導者として呼ばれた訳ですな」
「そうだね…僕に礼儀作法の先生は無理だからね…」
「あっ!いやっ!決してその様なつもりで言った訳ではなく!」
良いんだよ…事実だから…。
「あ、見えてきたね。じゃあグラウンドに降りて貰える?」
「承知致しました」
コクヨクが急降下を始めるとグルワール学園にどんどん近付いて行きます。おや?何だろう…うっすらと見えるのは…。
「コクヨク!ストップ!」
「ぬ…ぬぅぅ!!」
パリンッ…
あ、やっちゃった…。
「も、申し訳ありません。今何かに当たった様な感じがしましたが…」
「うん。魔物避けの結界かな…」
「気付けませなんだ…」
「コクヨクには透明な紙切れみたいなもんだよね…。気付くの遅くなってごめん」
「そんな…滅相も御座いません…」
「とりあえずグランドに降りてもらえる?ゆっくりとね」
「はっ!」
コクヨクは円を描きながらゆっくりと下降しました。僕達がグラウンドに降りようとしているのを察したのか、どんどん兵士が集まってきます。
そして、コクヨクが着地すると兵士が周りを囲みました。みんな必死の表情をしてます…。とりあえず、いきなり襲いかかって来なくて良かった…。
俺はコクヨクから飛び降りると、両手を上げて敵意が無い事を示しました。
「警戒させてしまってすまない。特別講師として呼ばれたキャリー・ライトだ」
「そ…そのアリコーン?らしき馬は何だ?」
「あぁ。種族はアリコーンで合っている。俺の愛馬だ。見ての通り従魔登録済みなので安心してくれ」
「安心…だと?ならば、何故学園を護る結界を破壊したんだ!?」
だよねぇ…。下手に言い訳しないで正直に話しましょう。
「すまん。気付くのが遅くなって突っ込んでしまった」
「何を馬鹿な事を…。ずっと学園を護ってきた大結界だぞ!何の準備もせずに偶然で破壊できる訳が無いだろう!」
えー。そんなに大層な結界じゃなかったよ…。
「あの結界で撃退できるのはBランクくらいまでだろう?いや、Bランクだと数回しか防げまい」
「当たり前だ!Aランクの魔物なんぞそうそう発生してたまるか!Bランクを数回防げるのだから凄まじい結界ではないか!」
あれ?Aランクって結構倒してきたけど…。静寂の森とか奈落迷宮とかで…。
『ご主人様。静寂の森はあくまで異常な状態だったっす!あと奈落迷宮は大型ダンジョンだから最奥にAランクがいるっすけど、中級ダンジョン以下ではラスボスレベルっす!』
(え?マジか…)
「あー。悪い。信じて貰えないかもしれないが本当に意図したものではなくて、偶然破壊してしまったんだ」
「まだ言うか…」
さてどうしたものか…。と、困り果てていると、兵士の間を掻き分けて地位の高そうな老人が現れました。
「ガルデンよ。そこまでにしてあげなさい。その者が言っているのは多分本当じゃ」
「学園長。本気ですか?」
「ライト君はSランク冒険者。その従魔であるそのアリコーンも凄まじい力を感じるわい。本当に結界が耐えられなかったんじゃろう」
兵士長っぽい人はガルデンって名前みたいです。そして、この老人が学園長か。ちゃんと挨拶して結界の事を謝らないとね…。
「学園長。特別講師として呼ばれたキャリー・ライトだ。結界の事は申し訳なかった。事の重大さが分かってないんだが、結界は簡単に直せるのか?」
「学園長のマーロンじゃ。残念じゃが簡単にはいかんのぅ…。結界は魔道具によるものなのじゃが、再起動には強力な聖属性魔力が必要じゃ。非常に大問題じゃよ」
それなら俺が対応できるかもしれないな。ただ、聖属性が使える事は秘密なので、場所と方法だけ聞いて後でやっておくか…。と思っていたのですが、学園長にも直せる見込みが有るみたいです。
「大問題ではあるのじゃが、今向かって来とる生徒が解決できるかもしれん。まぁ、その結果を見てから改めて考えるとしよう」
「分かった。もし依頼料とか掛かる様なら言ってくれ。あと、駄目だった時もな。俺の伝手に当たってみる」
「うむ。宜しく頼むわい。あと、再起動するまでの間に魔物が近付いて来た場合は撃退してくれると助かるんじゃが」
「あぁ、問題ない。俺が撃退しよう」
こんな街中まで魔物が来る事はそうそうないと思います。気をつけるべきは空かな。
「ふむ。心強い事じゃな。では、そろそろ本題に入るとしよう。あー、ガルデンよ、ご苦労じゃった。もう通常体制に戻っても良いぞ」
「…はい。分かりました」
ガルデンさんは少し納得してない感じですが、学園長に言われた通り校内に戻って行きました。
「ガルデンは学園を守る警護隊長でな。非常に熱心にやってくれておる。失礼が有ったかもしれんが大目に見てやってくれんかな」
「あぁ、気にしてない。職務に忠実だっただけだ」
「ふむ…。ライト君。戦闘訓練だけお願いしようと考えていたのじゃが、良かったらクラスも持ってみんか?」
え?それは…海老原先生みたいなクラス担任って事??いやいや、無理だよ!!
「そうじゃのう。新学期から増やす特別クラスが丁度良さそうじゃな」
「いや、俺は期間限定の臨時講師だろう?進級まで責任を持つべき担任はやめた方が良い」
「確かに一理有るのう。では、副担任ではどうじゃ?」
んー。担任よりはマシだけど…。そうして、俺が返答に困っていると、学園長が追い討ちを掛けてきました。
「まぁまぁ。ひとまず会うだけでもどうじゃ?5日後に到着する予定じゃから、生徒達を見てから判断しても良いじゃろ」
生徒によってやるか変えるのって何だか違う気がするけど…。もしかしたらこの世界では担任って言うよりも弟子って感じなのかもしれません。
「引き受ける可能性は低いぞ?」
「構わん構わん」
それから、今日学園に来た目的であるレクチャーを受けました。俺が担当するのは戦闘訓練の授業で、クラス毎ではなく学年合同で実施するらしいです。
後は、学食の使い方とか、図書館の使い方とか、部活の参加についてとか…学園内の利用ルールを聞いて今日は終わりとなりました。
「では、5日後にまた来るんじゃぞ。生徒候補と顔合わせじゃからな」
「あぁ、分かったよ。じゃあな」
学園長もしつこいですね…。
それから5日の間は、ほぼ町の図書館に入り浸りました。異世界転移に関する魔法を探す為です。しかし、町の図書館に有る本は一般向けという感じで、結果的にはイマイチな物ばかりでした。
次は学校の図書室を漁ってみましょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーー5日後。
さて、今日は俺の生徒候補という人達が来てるはずですね。
「学園長。約束通り来たが生徒達は何処だ?」
「代表者数名じゃが、今は談話室でくつろいでもらっとるよ。早速行ってみるかの?」
「そうだな。さっさと済ませてしまおう」
「かかか。酷い言い方じゃな」
それから学園長と一緒に談話室へと向かいました。目の前には豪華な扉があります。
この学園…全般的に内装が豪華なんですよね…。
コンッコンッ
「マーロンじゃ。入るぞい」
「どうぞ」
学園長に対して中から返事が返って来ましたが…あれ?何処かで聞いた事がある様な…。
そして、学園長が談話室の扉を開けました。
えっと…全然理解が追いつきません…。なんで此処に…海老原先生と勇者パーティが居るんですか??
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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