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新たな依頼

「ライト様。早速アクル王国の情報を集めていたのですが…。どうやらアーサー王が亡くなられたみたいです」

「え?病気とかか?」

「すいません。詳しい事はまだ分かっていなくて…」


 何かあったのかな?気になりますね…。とりあえず和也に聞いてみようかな。


「俺の方でも調べてみる。来て早々で悪いが今日はこれで失礼させてもらおう」

「承知致しました。行ってらっしゃいませ」


 俺は冒険者ギルドを出ると、久しぶりにレイオスで借りている俺の部屋へと移動した。そして、電話の魔道具を取り出すと和也に連絡してみる。


 プルルルルルルル…プルルルルルルル…プルルルルルルル…ガチャ


『よう親友…。どうした?』


 おや?珍しく和也の元気がありません。


「アーサー王が死んだって噂を聞いたから確認したかったんだけど…。それよりも和也の方が心配になったよ。どうしたの?」

『あー。王様の件は城内で騒ぎになってるね。聞いた限りだと心臓麻痺で急に死んだ感じかな?俺の方は………悲しい話なんだけど、心して聞いてくれ』


 え…何…?不安になるんだけど…。


「う…うん。何があったの?」

『平野未来さんが…死んだらしい…』


 ………………え?

 僕の駄目な所…こういう所ですよね…。


「ごめん…本当にごめん…」

『親友、どうした?』

「えっとね…。平野さんなら生きてるよ。僕が保護した。表向きは死んだ事にしたけど……」

『え………。マジで?』

「うん。元気にしてるよ…」

『う…ゔぅ…』

「和也?どうした?」

『そう…なんだ…。う…ゔぅ…良がった…』


 お…おやぁ?もしかして…。


「和也…泣いてるの?」

『う…うっさいな!だって…死んだと思ったクラスメイトが生きてたんだから…。そりゃあ泣くほど嬉しいさ!』


 そっか。ちゃんと伝えなかった僕への怒りなんかより、クラスメイトの生存を喜べる。そんな親友を…僕は誇らしく思います。


「ちゃんと伝えてなくて…ごめんね?」

『あ、そうだよ!異世界での1人暮らしは本当に大変だと思うけど、重要な事はちゃんと伝えて欲しいなぁ』

「ほんとゴメンて…」


 本当にね…。こんな事じゃレフの報告不足の事なんて何も言えませんね…。


『でも、みんなにはどう伝えようかな…。今みんな凄く落ち込んでてさ…。特に海老原先生が…』

「んー。イザベラ王女には平野さんは死んだと思ってて欲しいんだよね…。平野さん、イザベラ王女に使い捨てにされて殺されそうになってたんだよ…」


 電話の向こうで和也が絶句しているのが分かります…。


『マジか…。こっちでもイザベラ王女のヤバさを再認識して、城から出る話を進めてる所なんだ』

「おぉ!凄い!僕はみんなを連れ出す方法が思いつかなかったよ…。何か僕に出来る事とかある?」

『とりあえず今は無いかなぁ。気持ちだけ貰っとくよ』


 おっと…それは残念ですね…。でも、僕が必要無いくらい順調って事なんでしょう。


『で、話し戻すけど、イザベラ王女にバレたくないからみんなに言わないで欲しいんだよね?平野さんの安全の為に』

「そうそう。そう言う事」

『海老原先生とか立花さん白鳥さんにだけ話すにしても、親友の事も話さないと説明つかないしなぁ…』

「えっとさ…。『遺体は無いんだから、きっと生きてる!』って感じで説明できないかな?」

『また無茶振りを…。まぁ、でもやるしかないか』

「流石は和也!いつも悪いけどよろしくね!」

『あいよ!代わりに俺が泣いてたのは秘密だぜ?じゃあまたな!』

「うん!また!」


 ブツッ…ツー…ツー…


 親友は僕と違って頼りになる男です!僕に頼む事は何も無いって言ってたけど、何かこっそりプレゼントしてあげましょう!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 透と和也が電話で話している頃、勇者・城之内隼人の部屋にはベッドで布団に(くる)まる情けない勇者の姿があった。ベッドの傍らでは、兎人族のモモちゃんが心配そうに見つめている。


「勇者様…。私の勇者様…。元気出して…」

「くそ…あんな仮面野郎に…。俺は勇者なのに…。最強なのに…」


 勇者はバルトロ帝国皇太子アルバートの暗殺未遂でライトに負けてから、ずっと部屋に引き籠っていた。


「勇者様…。勇者様が1番だよ!きっと相手がズルしたんだよ!」

「当たり前だ。そうじゃなきゃ…俺が…勇者が…負ける訳がない!」


 そして、勇者様が自分の殻に閉じ籠って心の傷を舐めて貰っている所にノックの音が響いた。


 コンッコンッ


「勇者様?イザベラです。入っても宜しいでしょうか?」

「な…何だ?俺の事を笑いに来たのか!?」

「入りますね」


 ガチャッ…


「なっ!勝手に…」

「勇者様。お久しぶりです」

(はぁ…。何とも見事な負け犬っぷりですね…)


 イザベラ王女は勝手に部屋に入るとベッドの横まで歩いて行く。


「勇者様。仮面の男に負けたのは、残念ながら現時点としては勇者様の方が弱いからです」

「何だとっ!?」

「勇者様の方が強いもんっ!」


 イザベラ王女の発言に、勇者だけでなくモモちゃんも怒り出しました。勇者は布団から出るとイザベラ王女を睨んでいます。


「あくまで『現時点としては』です。才能で勇者様が負ける訳がありません。仮面の男はかなりレベルが高いのでしょう」

「なる…ほど…」

「正直に申し上げて、わたくしの準備した訓練環境は雑であったと反省しております。申し訳ありません」

(まぁ、あー様に依頼されなければ育成する気が有りませんでしたからね…)


「確かにな…魔法の使い方を少し教えたら、後は勝手に迷宮に潜れ。だからな」

「はい。ですから、勇者様が負けた責任はわたくしに有るとも言えます」

「あぁ、その通りだ。非常に納得だ。で、イザベラ王女はどう責任を取ってくれるんだ?」


 イザベラ王女の所為でライトに負けたと責任転嫁した勇者様は、当たり前の様にイザベラ王女へ賠償を要求する。

 そして、イザベラ王女は微笑みながらそれに回答した。


「はい。学術都市と言うのですが、基礎から訓練するのに非常に良い場所があります。また、まだ承諾は頂けておりませんが、勇者様の光属性講師として最適な者に依頼を出しておきました」

(私が出しても断られるので別人を経由してですが…)


 イザベラ王女の言葉に、勇者は目を輝かせます。


「イザベラ王女!そいつに教えて貰えれば…俺はもっと強くなれるのか?」

「はい。確実に強くなれるかと思います」

「勇者様!良かったね!」

「あぁ、モモ。俺はもっと強くなって必ず仮面の男を倒してやる!」

「勇者様に喜んで頂けた様で、何よりです」

(倒せるかどうかは知りませんが、あー様が求める所まで強くなって頂きましょう)


 勇者は何も分かっておらず、モモちゃんと2人で喜んでいた。しかし、ふと何かを思い出した様子でイザベラ王女に質問をする。


「クラスのみんなはどうなる?それにアクル王国を離れても良いのか?」

「雑な訓練になっていたのは皆様同じですので、全員で学術都市へ留学して頂こうと考えております。これはエビハラ様も希望されておりました」

「海老原先生が…確かにみんな何もしてないからな…」


 信頼する海老原先生も望んでいるという情報は、勇者の思考を停止させ肯定に傾けさせた。


「あと、父上が崩御され、わたくしは暫くその対応に追われる事となります。皆様の支援を十全に行えなくなる事を考えますと、中立地域である学術都市であれば仕方がないと考えております」

「そう言えば、アーサー王は亡くなったらしいな…。こういう時は何て言うんだ?ご冥福をお祈りします。かな」

「はい。ありがとうございます」

「あと、次の国王は…イザベラ王女になるのか?」


 勇者は何か言い辛い事がある様子で、イザベラ王女の事をチラチラと見ている。


「今の所はその予定になります。大丈夫ですよ。アーサー王との約束(・・)は、わたくしが引き継ぎますので」

「そ…そうか。安心した。それでは、俺は学園都市へ行って強くなってくる。楽しみにしててくれ」

「はい。とても楽しみにしております」

(本当に…強くなって貰わなければ困りますよ…)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ーーその日の夜。


「部屋が変わってなくて良かった。何だかサンタクロースになった気分だね」


 透はアクル王国の王城にある和也の部屋に来ていた。和也はぐっすりと眠っていて、その枕元に金貨とマジックアイテムの入った袋をそっと置く。


「この装備を使えるのは和也しかいないと思ったんだよね。喜んで貰えると良いけど」


 一応、不審がられるといけないので『親友より』ってメモを残しておきました。


「さて、オマケは終わりにして本当の目的に行こうかな」


 僕はゲートを開いて中に入った。ゲートを出ると…そこはこの世界に来た時の魔法陣の部屋だった。


「よし、誰もいないね。魔法感知が10レベルになったから、この魔法陣を調べてみたかったんだ」


 僕は魔法陣に触れて魔力の流れを感じてみる。すると、魔法陣の構造が何となく分かってきた。


「なるほど…。中央に置いた物と近い魔力を持つ者を呼び出すのか…。しかも周囲にいる者ごと…」


 中心に、魔王に関連する何かを置いたのかな…。人工魔石か身体の一部か…。どうやらヘルマンが言っていた事は本当みたいです。しかも…。


「バス…。この魔法陣ってさ…」

『はい!何っすか?』

召喚専用(・・・・)で帰還には使えない気がするんだけど…合ってる?」

『そうっすね!帰還には何の役にも立たないっす!』


 うぉぅ…元気に答えてくれるぜ…。


「じゃあ、イザベラ王女が帰還の為の魔力を溜めてるっていうのは…」

『嘘っすね!ご主人様も分かってると思うっすけど、魔力は欠片も溜まってないっす!溜まった所で召喚しか出来ないっすけど!』


 イザベラ王女の目的が勇者なら…もう召喚の魔法陣を使う必要なんて無いもんね…。


「バスは帰還魔法の方法って知らないかな?」

『分からないっす!残念ながら全知って訳じゃないっす!』

「そう言えば気にして無かったけど…バスの知識って何か法則性があるの?」

『バスが知ってるのは…過去の魔王様(・・・・・・)が知ってた事だけっす!』


 なるほど…。過去に起きた事や魔法に関する事は大半知っているけど、全てじゃなくて、変動する物の最新情報は分からない…。そういう事だったのか…。


「過去の魔王が帰還方法を知らないって事は、転移による力尽くの成功者はいないんだね。先代以外は異世界人なのか知らないけど。これは自分で調べるしかないか…。バス、1番知識が集まる所って何処だろう?」

『今の1番が何処なのかは分からないっす!』


 そうだったね…。


「知識からのオススメは?」

『それは…学術都市(・・・・)っすね!』


 そうか…どうにか学術都市に侵入できないかな。明日バレッタにも相談してみよう。

 そして、僕はひとまずリッケルトの宿に帰りました。リルがいなくて寂しいけど…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「バレッタ、おはよう。ミミとクミも」


 学術都市の事を聞こうとレイオスの冒険者ギルドに来たのですが、3人とも朝から忙しそうにしています。


「ライト様、おはようございます」

「お兄ちゃんおはよう!」

「ライトさん、おはようございます」

「朝から随分と忙しそうだな」

「はい。ライト様がSランクになった事で指名依頼が大量に届いておりまして…。内容の整理をしておりました」


 そっか…俺の専属受付嬢とそのサポーターなんだから、忙しくしてる原因は当然俺か…。


「対応助かる。で、どんな依頼が来てるんだ?」

「そうですね…珍しい物ですと…」


 バレッタは1枚の指名依頼票を手に取りました。そして、それを俺に見せて来ます。


学術都市(・・・・)での臨時講師依頼とかありますね。拘束時間が長いのでライト様はお嫌かもしれませんが」


 おぉ!渡りに船!卒啄同時!は、ちょっと違うか…。

 とりあえず超ラッキー!バレッタ、臨時講師喜んでやらせて頂きます!!

2章の本編はここまでになります!2章は『ライトがSランクに至るまで』というのが主旨の章でした。

ちょっと間話を入れてから3章を頑張らせて頂きます!

引き続きよろしくお願い致します!

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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!


あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!

ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!

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